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『クリエイティヴ脚本術』~運命の輪(ホイール・オブ・フォーチュン)

2011年11月02日 | 思考の遊び(準備)
クリエイティヴ脚本術―神話学・心理学的アプローチによる物語創作のメソッド
James Bonnet,吉田 俊太郎
フィルムアート社

以前に購入して、ずっと積んであった本なんですが、最近、自炊にかけて(笑)ようやく読み終えました。なかなか、興味深かったです。副題が「神話学・心理学的アプローチによる物語創作のメソッド」とありますが、まあ、そんな感じです。
以前、海燕さんが、読み終わっていて言ったように、学問的にどれだけの説得力を持ち得るかは分からない、ある種の直感に満ちた指摘なんだけど、こういうのって、多分「聞いて、心当たりがある」事の意味は大きいと思います。まあ『物語』を愉楽しむ分には、そういう事はけっこう重要なんです。

読んでいて、印象に残ったのはアーキタイプの事。ユング心理学の角度から物語を解き明かそうという試みは多く、ユング自身、神話という物語を研究の対象にしているワケですが、僕自身も、このブログでユング心理学を参考にした、物語解釈~物語が如何にして人の心理にはたらきかけ入り込むか?~を考えたりしているので、この本の話もとても参考になりました。
あと『面白かった』のは、ゴールデン・パラダイム、あるいはストーリー・ホイールですね。そこらへん、ちょっと書き留めておきたいと思います。とりあえずアーキタイプから…。

■アーキタイプとか

ユング!ユング!ユング!(1)
ユング!ユング!ユング!(2)

(↑)以前、ユング心理学の物語解釈的な考察を書いた記事はこっちですね。それで、この本ではキャラクターのアーキタイプ(元型)を次の旧種類に分けています。

1.エゴ(ヒーロー) 2.霊 3.心理 4.感情 5.身体 6.アニマとアニムス 7.トリックスター 8.門番 9.シャドウ

ん~……「霊」と「心理」と「感情」と「身体」のアーキタイプですが、これは読んでみると、どうも父性と母性、さらにポジティヴとネガティヴに大別される者のようです。一般に「グレートマザー」、「老賢者」と言われる者を細かく分類したように見えるんですが……もう少し読み解くと、主人公(エゴ)に振りかかる“抑圧”と“導き”は「霊」、「心理」、「感情」、「身体」に分けられる…と言う事のようです。……しかし、よく分からないので、この四つは寝かせておこうと思います。(´・ω・`)
あと、ここでは補足的にしか持ち出されていない「老賢者」と「グレートマザー」ですが、どうも言葉が先行してイメージに多少偏りも生んでいる気がするんですよね。(「老賢者」にしてもユングが、個人的なイメージを述べた言葉のようですし)これは単純に「父性」のアーキタイプ、「母性」のアーキタイプと言った方が、存在を捉えやすくなる気がしています。

それから物語を眺めていると、アニマあるいはアニムスは、まずほとんどいますね。当たり前ですけど(笑)あと、シャドウもいます。こじつければ大抵います(`・ω・´)この主人公とアニマ/アニムス、シャドウの関係がスタンダードな物語構造と言えそうです。まあ、違う形のも(そう、解釈できそうなものも)あるんですけどね。コアから複雑な絡みを見せて“拡がって”ゆく形は“これ”という気もします。

「門番」は、僕が持ちだしたアーキタイプ『祭壇』に近いものを感じますね。『祭壇』をもっと広義に汎用的にしたものにも思えますし…違うものにも思えます。(さっき、寝かすと言いましたが、どちらかというと「霊」のアーキタイプに近いものに思えます)しかし、「門番」はその役目ずばりから、見立てを誤ることはなさそうに思います。ブレを生まないのは言葉としていい場所に言葉を置いたと言えます。
また、アニマ/アニムス、シャドウと並んで有名なアーキタイプの「トリックスター」ですが「心の解放」という心理的要求から来たキャラクターに観える反面、停滞を嫌うという物語要求から顕現しているキャラクターにも思えます。…これは「門番」も同じかもしれませんね。

まあ、そんな感じに他の本も読み進めながら、自分の中で使える『言葉』に変えて行こうと思っています。

■ゴールデン・パラダイム



この本を読んでいて一番、面白かったのは(↑)上の図にあるようなゴールデン・パラダイムのモデルですね。矢印方向に向かって進むストーリーの推移をモデル化したものですが、これは同時に人間の心理的変化を顕すモデルでもあります。
大雑把に言うと、ストーリーというのは、長い大きな物語になると大体ここを矢印方向に沿ってぐるぐる廻っているよ。そう観えない場合でも、この輪の一部分を切り出してそこから変化した部分を描いた物語(ストーリーフォーカス)になっているはずだよ。…というもののハズ。(´・ω・`)
人間万事塞翁が馬という分けでもないんですが、人間の物語なんて長~い目で観てゆくと、大体、上昇と下降の繰り返しで、しかもまあ、大体同じ場所を廻っている。それをスパイラルに発展していると解する事もできるけど、しかし、振りかかる試練も突破も、同じようなものと言えば、同じようなものとも言えると。

このモデルに対して「大きな物語」の例として『アーサー王伝説』を当てはめていたりしたんですけど「ああ~、確かにそんな感じだねえ…」と。同じ、場所をぐるぐる回って絶頂と下降を繰り返す。フェーズごとの分類などに、まだ細部の検討の余地がありますが、同じ輪をくるくる廻る感覚って、最初に言ったように、直感的に、ああ、正しいかもって思えるんですよね。
ゴールデン・パラダイムは他にもストーリー・ホイールと言った別の輪(リング)があったりするようなのですが、フェーズ毎の内容は多少調整が施されていますが、基本動作は一緒のようです。

長い物語、大きな物語はこの輪(リング)が観えてくる事、あるいは一本道まっすぐの物語に観えても、物語の枠外まで含めてその背景を追ってみると、やはりこの輪(リング)が出てくるという指摘は『受け手』に物語に対する、いいイメージ付けを与えていると思います。
まあ、今日はこんな所ですが、そこらへん含めて検討し検証を重ね、上手い事こう言った定義やモデルを利用し紹介する形をとって行きたいと思っています。


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