セレンディピティ日記

読んでいる本、見たドラマなどからちょっと脱線して思いついたことを記録します。

戦国時代のミッション・インポッシブル

2006-07-26 21:51:09 | 文化
岩井三四二「難儀でござる」(光文社)を読んだ。本当はもっと読みたいプロットの歴史小説がいくつかあるのだが、それらはしばらく店頭からなくならないだろうからと購買を控えていた。ところがこの本は興味の度合いはそれらの本より低かったのだが、すぐ店頭から消えてしまうかもしれないと思い買ってしまった。でもおもしろかったので失敗ではない。著者の岩井三四二さんについては「十楽の夢」を読んで、中世の伊勢長島や尾張などの社会や地理の描写に感心した。それで本の帯を見て買ったしまった。
戦国時代に解決の展望のつかない課題を与えられた人々が主人公。8編の短編集で一話ごとに主人公が違う。「難儀でござる」という短編はなく、これが全編に共通するテーマと言うことになる。
ミッション・インポッシブルといっても、トム・クルーズのような超人的な活躍はしない。またシャーロック・ホームズのような天才的な頭脳を持っているわけでもない。むしろ平凡な能力の人々だ。その中の一人は太原雪斎という今川義元の有名な軍師だから平凡とはいえないかもしれないが、その雪斎も「策などない」と困っていた。
そう問題の解決は、あらかじめの設計図によるものではなく、まず問題に取り組んでそのなかで偶然現われる霧の割れ目の瞬間を掴むことだよね。