salt&pepper days 

ともすれば、子どもとの時間に埋もれそうな日々。でもやりたいことは他にもいっぱい。刺激を求めて悪あがき中。

本の感想・種を越えた愛

2009-12-08 01:53:45 | 本・雑誌
師走突入。

でも引き続きハイペース(私なりの)で
本を読んでます。

そろそろサンタの準備もしなきゃだわ。
年賀状はどうする。
大掃除だ、大掃除。

でもまだまだ大丈夫?? 
現実逃避で本を読む。


今回もまた、穏やかでない話です。

『犬身』(松浦理英子・著 朝日新聞社)

2年ほど前に出た本で
当時、書評でずいぶん取り上げられて
絶賛している人も少なくなかった記憶。

簡単にあらすじをいえば…
(多少のネタバレあり)

「自分は半分、犬の魂を持って生まれたのではないか」
と強く感じながら生きてきた女性が
ある愛犬家の女性陶芸家と出会い
「犬になって彼女のそばで暮らしたい」と願う。
そして、共通の知人であるバーテンダー、
実は狼人間らしき男性によって
ある条件の上、願いが叶えられ…。

ここで描かれる、飼い主の犬の間にある「愛」の形は
ともすれば生理的な嫌悪を感じかねない。

そして思う。
私はペットに対して「愛情」は持つけれど
それは「愛」とは違うのかも。

愛情なんていう生易しいものではなく
もっと生々しい、血のたぎるような愛。

道ですれ違う、かわいいお洋服着せた犬を
散歩させている方たちから
そういう「匂い」はしない。

不幸な愛情体験や、歪んだ家族関係や
人間としての生き辛さが生む
悲しくも優しい関係。


個人的には、ここでの人間と犬の関係どうこうよりも
人間同士の関係の不自然さが気になった。

母と息子、娘の歪んだ関係の説得力が…。
娘の苦しさはわかるけれど、なんか弱い。

人間時代の友人の存在を、最後まで
もっと際立たせてほしかった。

バーテンダー、主人公、陶芸家、それぞれの会話、
行動が、ところどころ不自然。


大作であることは間違いなく
動物をかわいがるとは
美しく優しい行為であるべきとの固定観念から
無意識に目をそらしていることに
触れてもいて、魂こもった作品だと思うからこそ
気になってしまいましたが
私の読みが甘いのかな。

これも個人的感覚だけど
飼い主と動物のこういう関係って
猫と築きやすいような。
犬も猫も飼ったことある上で、そう思いました。


ラストはあっけないです。

でも、最終的には幸せといえるのか。

そもそも、個人的な幸せは求めていないのか。

犬好きの人は、これを読んでどう思うのだろう。