まろの公園ライフ

公園から世の中を見る

『コンビニ人間』を読む

2016年08月17日 | 日記

今年も上半期の芥川賞と直木賞が決まった。
芥川賞は村田紗耶香さんの「コンビニ人間」(文学界6月号)
直木賞は荻原浩さんの「海の見える理髪店」(集英社)だった。

毎年恒例のことながら
受賞者の晴れやかな笑顔はいいものである。
そして、ちょっぴり羨ましい・・・(笑)

芥川賞の村田紗耶香さん(36)は
18年間、コンビニでアルバイトを続けて来て
授賞式の日も午前中はいつものように勤務についていたと言う。
まことに自然体と言うか、一風変わっていると言うか
彼女自身、コンビニを「聖域」と呼ぶように
生活のためと言うより、大切な人間観察の場であるらしい。

文藝春秋誌に全文が掲載されているので
さっそく読んでみることにした。
受賞時からこの本のタイトルに強く惹かれていた。
と言うのも、私自身が日に何度もコンビニを利用するほどの
相当な「コンビニ中毒者」であるため
そんな日常的に見慣れて聞き慣れたコンビニの雰囲気を通して
彼女が何をどう描くのか、興味津々だったのである。

コンビニは「マニュアル」の集積のような職場である。
すべての商品が購買データをもとに過不足なく効率的に並べられ
接客やサービスの言葉遣いさえ細かく決められている。
ある意味、非人間的な職場でもあるのだが
自ら「社会の不適格者」を任じるを主人公の古倉恵子は
全てをマニュアルで管理されたこのコンビニという世界こそが
自分が最も自分らしく生きられる場所として
イキイキと張りきって働いている。
36歳の未婚女性、恋愛経験セックス体験もない異端児。
ある日、そんな彼女のもとに婚活目的で
白羽と名乗るアルバイト男性が入店して平穏な暮らしは一変する。
とまあ、詳しいストーリーは省くが・・・
店長はじめスタッフの人間模様がリアルに描写されていて
その描き方にユーモアがあって実に面白い。
やがて恵子の新たな決断が思わぬ波乱をもたらすのだが・・・

そこには何よりも「現代」が息づいている。
人間にとって何が「異常」で何が「正常」なのかを
あらためて考えさせられる作品である。
皆さんも、ぜひ一読を!