道南限定新品種「タマフクラ」 大粒で加工業者注目 収量の安定化が課題
道南で今年初めて一般に栽培された極大粒の 白目黄大豆「タマフクラ」の収穫か終盤を迎えて いる。粒の大きさと「道南限定」の希少さに、食 品加工業者らが注目する一方、一年目は春の低 温で出芽率が低く、栽培技術の課題も浮き彫り になった。コメの「ふっくりんこ」に続く地域ブランド 化に向け、関係機関は安定収量を上げる技術確 立と、販路開拓に力を注ぐ。
「こんなに大きな粒はほかになく、味も甘くてクリ-ミ-。期待は大き いですよ」。1・2㌶の畑でタマフクラを育てた檜山管内厚沢部町の木 村容男さん(58)は声を弾ませる。ただ、春の低温と収穫期の雨で収 量は伸びず「従来の豆より難しい。天候に合わせた種まきや管理方 法の確立が必要」と課題も口にした。タマフクラは、道立中央農試(空 知管内長沼町)が黒大豆「新丹波黒」と白目黄大豆「ツルムスメ」を交 配し開発した。百粒の平均重量が、既存の大豆「ユウヅル」の42㌘と 1・5倍もある。晩生のため、道は道南地方での栽培を推進し、今年は 檜山管内3町の約15㌶、渡島管内6市町の約2㌶で作付けされた。 ブランド化にこだわる背景には大豆の価格低迷がある。新函館農協 (北斗市)によると、昨年の入札価格は60㌔当たり8千~9千円。大 豆の収量は10㌃当り平均180㌔前後と少なく、農家はタマフクラに 単価アップの期待を込める。同農協は経費を引いて利益が出るよう、 従来の2倍ほどの価格帯での販売を目指している。煮豆や豆腐などで の利用が想定され、関心を示す大手食品加工メ-カ-なども出てきた が、価格交渉はこれからという。一定量を安定供給できる体制づくりも 課題だ。渡島農業改良普及センタ-によると、今年は5月下旬の種ま き後、低温続きで地温が上がらず、半分程度しか出芽しない畑もあっ た。収量が不安定なら生産者が導入に二の足を踏むことになり、道立 道南農試などが不出芽の原因究明や対策の手だてを進めている。新 函館農協厚沢部基幹支店は「2、3年、産地は苦労するだろうが、価 格面でユ-ザ-(加工業者)の理解を得ながら、大切にブランドを育て ていきたい」と話している。