サッポロビ-ルと旭医大
善玉菌と呼ばれ、整腸効果がある乳酸菌について、乳酸菌から分泌されるリン酸の一種「ポリリン酸」が腸に働き、保護する役割があることを、サッポロビ-ルと旭医大の共同研究グル-プが解明した。整腸をもたらす物質とメカニズムが特定されたことで、腸疾患への対応やポリリン酸を抽出した医薬品など幅広い活用が期待される。
研究グル-プによると、乳酸菌中の整腸効果がある物質を特定したのは世界初。研究成果は16日、米科学誌プロスワン(電子版)に掲載される。研究グル-プは、大麦を使って独自に培養した乳酸菌をマウスに投与。乳酸菌から出たポリリン酸が、腸の上皮細胞にあるタンパク質の「インテグリン」を介し、細胞同士の隙間を狭める信号を伝えることで、有害物質や病原菌の侵入を防ぐことを付きとめた。マウスによる実験では、腸管の障害や出血予防に効果があることも分かった。共同研究グル-プはこれまで、乳酸菌が出す活性物質が整腸作用に大きな効果があることを突き止めており、今回の研究で、活性物質の正体がポリリン酸であり、乳酸菌はポリリン酸をつくり、腸まで運ぶ役割にとどまるとを明らかにした。サッポロによると「仮に乳酸菌が死滅してもポリリン酸が腸に届けば、腸を守る効果はある」といい、乳酸菌からポリリン酸のみを抽出できれば、錠剤などの医薬品や熱処理を施した健康食品への応用も可能となる。ヨ-グルトなどが苦手な人でも、気軽に摂取できることになる。研究グル-プでは、ポリリン酸を大量に生成できる乳酸菌を開発中。旭川医大の高後裕教授(消化器・血液腫瘍内科学)は「O157をはじめとする病原性大腸菌や腸疾患に対処できる手掛かりになることを期待したい」と話している。研究は文部科学省の「知的クラスタ-創成事業」の一つとして、「さつぽろバイオクラスタ-」が実施している。
ポリリン酸 医薬品へ活用期待
ポリリン酸 化合物のリン酸が多数結合してできた物質。リン酸はアデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれるエネルギ-を蓄える物質の原料で、ATPはヒトを含む生物が生きていく上で欠かせない物質るポリリン酸の一種ポリリン酸ナトリウムは、変色防止の食品添加物や歯石を防ぐ薬用歯磨き粉の原料などに使われている。