冬も水張り イトミミズが土づくり 農薬不要 不稔少なく
冬にも水田にみずを張り、イトミミズなど自然の力を借りて土壌を豊かにする「ふゆみずたんぼ」(冬期たん水水田)が、道内でも注目されている。化学肥料や農薬が不要な農法で、道内でも6戸が試みていり、今年の天候不順の中でも平年作を確保した農家が多かった。高い安全性からコメが高く売れる利点もあり、徐々に広がりそうだ。「専門家に調べてもらったら、10㌃に10億匹ものイトミミズがいることが分かりました」。10月末、空知管内月形町の若槻潔さん(53)が水を張った水田を前に笑顔を見せた。稲作と肉牛飼育に取り組む若槻さんは、消費者に安全なコメを届けたいと常々考えていたが、知人から「ふゆみずたんぼ」の話を聞き、2005年秋から7・7㌶の水田のうち約1㌶を「ふゆみず-」にした。冬に水が凍る懸念もあったが、雪が覆うことで田に張った約10㌢の水は完全には凍らず、水底でイトミミズは活発に動き、春までに土を軟らかく肥えたものに変えたという。軟らかくなつた土に雑草の種が埋れるためか、雑草も減少。通常より施肥量を2割減らしたにもかかわらず、冷害の今年も「(もみに実が入らない)不稔の発生が少なかった」。(若槻さん)。この実績に、視察が相次いでいる。道内の「ふゆみず-」は若槻さんら石狩、空知管内の4戸が4年前に試みたのが最初。水を張る手間はかかり、収量自体も変わらないが、無農薬のコメとして「ななつぼし」など他の道産米に比べ5、6割高く売れてる。その後、石狩管内当別町の2戸も始めた。約50㌃を「ふゆみず-」にし、コメの通信販売に加え、団子も販売する石狩管内当別町の竹田広和さん(42)は「水を張った効果かどうか分からないが、今年、『ふゆみず-』の稲はほかの水田より不稔が少なかった。応援してくれる消費者も増えている」と今後に期待している。
※ふゆみずたんぼ 約300年前に会津地方(現在の福島県西部)で生まれた自然農法。微生物やイトミミズが稲わらなどの分解を早めるほか、飛来する水鳥のふんも土を肥やすとされる。水田に戻ってきたクモやカエルが害虫を食べる効果もある。環境意識の高まりで、1990年代末ごろから見直す動きが出始め、宮城県や千葉県など全国各地で取り組む農家が増えている。