上川管内下川町の吉田公司さん(49)、真由美さん(45)夫妻と、一人っ子の早奈恵さん(15)はみんな1年生だ。夫妻は毎日朝からトマト栽培のハウスに、早奈恵さんは下川商業高に通う。公司さんの祖父は網走の畑作農家だった。旭川で公務員をしていた父親と帰省するたびに思った。「農家はしんどい」大学を卒業後、20年以上、東京と札幌で塾講師一筋。だか゛、少子化の波が業界を襲う。「年収は10年で150万円も減った」。将来への不安が募り」一昨年春に退職。体力の続く限り出来る仕事として農業を思い出した。「もうからない」と思っていたのに、ネットで知った下川町では4人の新規就農者がトマト栽培で成功していた。早奈恵さんの将来についても「子供2人を大学進学させた人がいた」ことで踏ん切りが付き、夏に一家で札幌から引っ越した。1年半、農家研修し、今年はハウス3棟でトマト2400本を育てる。農作業は切れ目ない。でも、「自然の中で生かされている感じ」が心地よい。早奈恵さんがネズミ退治用に酪農家からもらってきたネコの「トム」も加わった一家には、5月末の初収穫の楽しみが待っている。
道とHAL財団 失業者の技能活用 農産品開発や営業担って
財団法人北海道農業企業化研究所(HAL財団)と道は、農業に関心を持つ失業者を雇用し、農業生産法人に送り出す事業に乗り出した。さまざまな資格や経歴を持つ失業者を、農作業を担う人材としてではなく、農業関連の企画や販売など多様な部門に活用するのが狙い。このような取り組みは「全国的にも珍しい」(道農政部)といい、成果が注目される。国の緊急経済対策による道の緊急雇用創出推進事業を活用した。本年度は道の委託料3400万円で、HAL財団が失業者30人を5カ月間雇用(月給13万8千円)。人材を求める農業生産法人に送り出し、仕事ぶりが認められれば6ヵ月以降は直接雇用してもらう。人材として想定しているのは、食品や衛生関連の資格や、商品開発、流通管理、営業部門などの経験を持つ失業者ら。不況下の雇用の受け皿として全国的に農業が注目されているが、単に生産現場だけでなく、加工による付加価値の増大や販路改築など生産法人の多様化する事業にも、失業者の技能を生かしてもらうことを目指す。HAL財団によると、すでに十勝、石狩管内の農場や、根室管内の牧場など16法人が受け入れを申し出ている。失業者が実際に農業生産法人で働くのはお盆過ぎとなる見通し。HAL財団の大沼康介・業務推進部担当部長は「農業が雇用の受け皿として注目されていながら、失業者の就職を多面的にサポ-トする団体がなかった現状を変えられれば」と話している。失業者、農業生産法人ともに申し込みはHAL財団の「ギャラリ-農窓」(札幌市中央区南2西6)の窓口とホ-ムペ-ジで可能。問い合わせは農窓℡011・200・8383へ。
酪農大が協定 受講や実習支援
酪農学園大学(江別)が、江別、千歳、恵庭、北広島の4市とJA道 央、千歳開拓農協でつくる道央農業振興公社(恵庭)と、農業後継 者や新規就農を目指す人材の育成に向けて協定を結ぶことになっ た。協定では、社会人なども含めた就農希望者を一般学生とは別 枠で受け入れ、農業法や農業経済などの講座で学んでもらう。大学 側は受講料などで優遇措置を取り、公社側は通学費用を補助する。 協定に先立ち、すでに21-29歳の4人の若手農業者が同大で講 義を受けている。また、公社は学生の農業実習の受け入れ農家を 紹介する。同大は酪農学部で年間約270人の農業実習の受け入 れ先が必要で、これまで遠方の農家にも頼ってきた。受け入れ先の 提供により「近隣農家だと、大学で学びながら実習にも長く取り組め る利点がある」(酪農大)としている。実家が農家ではない卒業生に は、公社が農地をあっせん、貸与するなど地元での就農を後押しす る。自治体と農業系の大学が教育や研究のため協定を結ぶ例はあ るが、4市にまたがる広域の取り組みは珍しいという。