自殺予防 (岩波新書) 価格:¥ 777(税込) 発売日:2006-07 |
わが国の自殺者は年間三万人を超える。1998年から始まり、 一向に減少しない。2005年交通事故死は6、871人、自殺者は 32、552人、何と4・7倍。自殺の原因は不況やいじめにあると単 純には割り切れない。大半がうつ病と関連があるとされているが、 原因には複雑な問題が絡み合っている。高橋祥友の「自殺予防」は 自殺を自由意志に基づいて選択された死ではなく、「強制された死」 としてとらえ、自殺予防の十箇条を提案している。
- うつ病の症状が出る
- 原因不明の身体の不調が長引く
- 酒量が増す
- 安全や健康が保てない
- 仕事の負担が急に増える、大きな失敗をする、職を失う
- 職場や家庭でサポ-トが得られない
- 本人にとって価値あるものを失う
- 重症の身体の病気にかかる
- 自殺を口にする
- 自殺未遂におよぶ
自殺予防の取り組みは、国内外の例が紹介されている。うつ病の早 期発見には内科医の役割も大きい。不況、過重労働などの労働条 件も問題になる。しかし、一番大きいのは家族の協力であろう。自殺 者の遺族のケアも不可欠である。それにしても、なぜ豊かであるはず の社会にうつ病が増えているのであろうか。
「日本型うつ病社会」の構造―心理学者から見た停滞 する日本の現状と未来 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2003-04 |
人間関係が本質問題で、きっかけが生活問題であると見るのは、 心理学者加藤諦三である。うつ病増加の原因はバブル経済崩壊 後の不況ではなく、戦後静かに進行してきた家族、職場、学校で の人間関係の希薄化が主たるものであると述べている。経済成長 がこころの病を生み出した。そして今や、グロ-バリズムという魔 物が、日本的文化を飲みほす。情報化、特にIT化がそれを増長す る。日本人の心のバランスをかろうじて保ってきた年功序列、終身 雇用、運命共同体的企業が失われつつある。経済成長万能、経 済最優先の考え方を改めなければ日本に未来はないと力説する。
薬でうつは治るのか? (新書y) 価格:¥ 819(税込) 発売日:2006-09 |
現実のうつ病診療では、人間関係にその原因を求めることは少なく、 副作用の少ない新薬が繁用されている。薬優先の治療に疑問を投 げかけるのは片田珠美「薬でうつは治るのか?」である。片田もうつ 病増加の原因は日本人が外部の規範から開放され、本来得意では ない「自発性」「自己主張」「自己責任」に疲れてきたためと述べてい る。真面目で几帳面、責任感の強い人は他人から与えられた役割を 忠実に果たすことに存在基盤があるからだ。変化のスピ-ドや格差 の質も問われなければならない。うつ病増加は先進国に共通した悩 みである。自殺率が高いのは日本や東欧諸国の特徴である。薬で うつ病が治る人も多い。一部の人は治らない。生き方を見直すことや 社会の病根を見つめなおすことは市民すべての課題である。 北大大学院教授前沢正次解説
SSRIが発売されると、どの先進国でも5-6年でうつ病が倍増、10年で3-5倍に増えるということらしいです。