ラムサ-ル条約決議案 各国に慎重対応求める
世界各国で急速に進むバイオ燃料の開発が、貴重な湿地の生態 系破壊を招いていると警告し、(アセスメント)の実施など慎重な対 応を求めるラムサ-ル条約締約国会議案が21日、明らかになっ た。10月28日から韓国で開く会議で採択を目指す。地球温暖化 対策や原油高騰を背景にバイオ燃料の原料になる植物の栽培は 拡大している。決議案はこれによる環境破壊への懸念の高まりを 示したもので条約に加盟する約160の国の政策にも影響を与えそ うだ。条約の科学技術評価委員会がまとめた決議案は、東南アジ アなどの湿地の天然林が破壊され、バイオ燃料に使われるアブラ ヤシの林に転用された結果、土壌中の温室効果ガスが大量に大気 中に放出されるなど、さまざまな悪影響が既に報告されていると指 摘。自然の湿地を改変してバイオ燃料関連植物を栽培する際には、 計画段階からアセスメントを行い、災害防止機能、食糧生産や水資 源確保への貢献など、湿地が持つさまざまな機能に配慮することを 条約締約国に求めた。また、バイオ燃料の原料として検討されてい る植物には大量の水が必要な種があるとして、栽培が湿地の周辺 である場合でも、湿地への水の供給などに悪影響を与えないよう対 策を取るべきだとした。決議案には、評価委の下で湿地保全に配慮 した原料作物栽培の指針をつくることも盛り込まれた。
北海道新聞論説委員 堀野 収
リンゴが落ちるのを見て万有引力を着想したニュ-トンは、ずぬけた 才能の持ち主だった。力学の法則と万有引力の法則を組み合わせ れば、地上の物体の運動も惑星の運動も統一して説明できると考え た。大著「プリンキピア」にそれが結実し、彼の物理学は不動の地位 を得た。しかし晩年のニュ-トンは物理学ではなく、神学や錬金術に 没頭した。科学者の集まりであるロンドン王立協会の総裁になってか らは権勢を振るい、それゆえ英国の科学は大陸に後れを取ったとい われる。
◇
現代科学の最大の問題の一つは地球温暖化だ。地球温暖化に関す る政府間パネル(IPCC)が昨年公表した第4次報告書は「20世紀後 半の気温上昇は人為的である」として二酸化炭素(CO2)などの排出 削減を訴えている。これに疑問を唱える学者らがいる。懐疑論者には、 IPCC報告書は晩年のニュ-トン並みに頑迷固陋な存在と映るのだろ う。懐疑論の中身は多様だ。「温暖化は起きていない」「寒冷化の兆 候がある」「CO2は温暖化の結果として増えた」「CO2より水蒸気の 方が温暖化効果が大きい」などと続く。洞爺湖サミットが終わった今も 書店に懐疑論やそれに類する本が並んでいる。「地球温暖化・・・そん な瑣末なことはどうでもいい」とする本も、「リサイクルは無駄」との主張 もある。だがIPCC報告書を、晩年のニュ-トンと一緒にはできないだ ろう。報告書は世界130カ国の450人が執筆し、2500人の科学者 が内容に目を通した。しかも人為的による温暖化説については、90% の確かさでしかないとして、論争に応じる余地を残している。地球温暖 化は気候変動や生態系の変化など複雑な要素が折り重なって、現象 として現れる。この複雑系を解くのは、ニュ-トン物理学で天体の運動 を説明するほど簡単ではない。科学論争は大いにやるべきだ。それで も懐疑論には首をひねる向きが多い。現象の一部を切り取り、部分的 な因果関係を頼りに全体を論じ、温暖化否定に結び付けるような論法が 目立つからだろう。現実の問題と、どう向き合うのかも気になる。温暖化 が事実なら、いま排出抑制をしなければ、将来深刻な状況に陥る可能 性が大きくなる。懐疑論者が「地球は温暖化していない」と言うのなら、 仮説としてではなく、温暖化が起きていない確かな根拠を示す必要が あると思う。
◇
懐疑論の幅は広く、「温暖化は文明を発展させる」というのもある。温暖 化で真っ先に打撃を受けるのが貧困国だということをどう考えるか。社会 の課題にどう優先順位をつけるかは、別の問題だ。学者と称する人が評 論家的な言動に終始するのも品性を疑いたくなる。懐疑論が多少なりと も支持される背景には、怪しげな温暖化対策がまかり通る現実がある。 そのまま燃やせば効率がいい廃プラスチックを、わざわざ液化して燃料 にする。食べ物から燃料を作る-。安値で意義が疑わしい計画に税金や 社会の労力が投じられているのは、たしかにおかしい。だからといって懐 疑論が正しいことにならない。なにが確かで、どうすればいいか。当たり 前だが一つ一つ吟味するしかない。
最大6・4度?IPCC第4次報告 上昇予測、実は下方修正(精度も悪化) 北海道洞爺湖サミットでも論議の前提となっている気候変動に関 する政府間パネル(IPCC)の「地球温暖化」予測が書き換えられて いた。薬師院仁志・帝塚山学院大教授は「実質的な下方修正」と指 摘する。
研究者が指摘 IPCC第4次報告(2007年)は、2100年までの昇温予測を「1・1- 6・4度」とし、日本ではこの「最大6・4度」なる数字が騒がれた。だが、 これは第3次報告(01年)の「1・4-5・8度」という予測を上方修正し たと言うより、上にも下にも拡大し、あいまいにしたにすぎない。要する に、予測精度自体が下方修正されたのだ。のみならず、第4次報告で は、昇温の予測値もまた、実質的に下方修正されている。IPCCは、 対策の程度に応じた複数のシナリオを作成し、各シナリオごとに昇温 予測の最大値と最小値を算出する。さらに、各シナリオに「ベストの推 計」を設け、極端な値を除いた最も現実的な予測値を明示している。 第4次報告では、持続発展型社会の場合の予測幅は1・1-2・9度で、 そのベスト推計値は1・8度、化石エネルギ-重視型社会の場合の予測 値は2・4-6・4度でそのベスト推計値は4・0度となる。つまり、「1・1 -6・4度」という両極端の中で、IPCCが゛ベストとする予測は「1・8- 4・0度」なのである。だが、第3次報告では、同様のベスト予測が「2・0 -4・5度」であった。すなわち、昇温予測は明らかに下方修正されたこ とになる。結局、人為的温暖化を唱えるIPCCでさえ、その昇温予測の 精度を下方修正したのである。なお、海面上昇に関しては、予測の制度 を上げた一方で、その最大値は88㌢(第3次)から59㌢(第4次)へと 大幅に下方修正されている。
やんしいん・ひとし 1961年大阪生まれ。専攻は社会学。著書に「地 球温暖化論への挑戦」(八千代出版)など。
地球温暖化論への挑戦 価格:¥ 2,100(税込) 発売日:2002-02 |
衛星デ-タ、見えぬ兆候
地球寒冷化が現実のものになりつつある。過去 30年、米航空宇宙局(NASA)が気象衛星NO AA(ノア)で精密に測ってきた大気温度のデ- タは、「地球温暖化論」に全く合わない。特に最 近一年半は、明確な「慣例化」の兆候を見せている。(橘井潤)
過去30年最近1年半は寒冷化
ノアによる観測は1978年12月にスタ-ト。4百-5百㌔上空を毎日 三周しながら、地球をなめるように計測している。大気については、酸 素分子が出すマイクロ波の振動数を測り、誤差0・01度の高い精度で 温度に換算する。デ-タは常に更新・公開中。都市化などに乱される 地表の温度計とは違って、大気温度をそのまま映し出すデ-タだ。 図はその中で「地球全体・対流圏中層(高度約4千㍍)」の大気の温 度の変化を月ごとに見たグラフ。79-98年の月ごとの平均値を算定 し、それと比べた「ずれ」を示した。横軸の赤線より上は平均より温度 が高かったこと、下は低かったことをそれぞれ示す。グラフを見る限り、 30年間に温度が高い時期も低い時期もあったが、「温暖化」が進んで いる兆候は全く読み取れない。 渡辺正・東大生産技術研究所教授は「温度が高かった時期の大半が エルニ-ニョ現象を反映している。特に大規模な『ス-パ-エルニ- ニョ』(97年春-98年春)の影響が大きかったことがうかがえる」と言 う。また、「メキシコ・エルチチョン(82年)、フィリッピン・ピナッボ(91年) の両火山の噴火でも、火山灰で日照が遮られ、以降数年間の温度が 低かった」とも指摘する。一方、最近の一年半に注目すると、0・5- 0・6度も単調に下がり続け、「温暖化」どころか急速な寒冷化が読み 取れる。渡辺教授は「地球の気温を大きく左右する太陽活動が弱まっ ているため」と推測。気温低下がまだ一度にも満たないため、急を要す る話ではないが、「地球寒冷化」は今後も進む可能性があるという。「二 酸化炭素(CO2)による地球温暖化」が定説のように語られている北海 道洞爺湖サミット。宇宙からの正確な観測デ-タからは、全く異なる地 球の姿が浮き彫りになる。
エルニ-ニョ現象、ラニ-ニャ現象 太平洋赤道域の中央部から南米 のペル-沿岸にかけての広い海域で、海面水温が平年に比べて高くな り、半年から一年半ほどその状態が続くエルニ-ニョ現象。数年に一度 発生する。反対に、同じ海域で海面が平年より低い状態が続くのがラニ -ニャ現象。それぞれ世界各地の気温や降水量に大きな影響があると される。
この50年ぐらい、すなわち1945年以降の50年間で、世界の人口 が約20億人から3倍の約60億人強に増加したといいます。個々の 恩恵度に差異はあっても、当然生存する上で食糧生産量は3倍に アップしているのでしょう。地球という限られた範囲の中で、自然の 恵みを享受しながら年々生産量を増加させていった。その中でも、 最も重要な位置を担うのが、“水”であるといえます。水分の働きの 最重要課題は、動物でも植物でも適温に保つ働きだといいます。 特に植物は樹木ても草花でも根から水分を吸収し、適温で個体を 維持しながら蒸発することのくけ返しで、他の養分を吸収しながら生 育していく。すなわち、植物は水なくして育たない。そのためアメリカ 合衆国のある地域の地下水で、何世紀にもわたって貯水されたもの が、現在は半減しているとのことです。また他のアジアの地域で、 灌漑のため大河の途中で何箇所も引水したため、湖が干上がった とのことです。第二次大戦後、日本のように大幅に食事内容が変革 した国は世界に類を見ないといいます。逆に最近は、日本の伝統的 食事文化が海外で人気であることは、自国のカロリ-過多な食事内 容に一因しているようです。西洋ナイズされた、日本の食事事情は お米文化から大きく変遷しています。アジア地域での稲作農法が、 長い歴史で最も適しているとのことです。しかし、他の文化を取り込 んで咀嚼し、独自の文化を形成することが、日本という国を世界の リ-ダ国へ飛躍した原動力となっているようです。実戦の戦場では 大敗を喫した日本国は、企業戦士が海外で、彼の地で勇猛果敢に 戦い、経済大国へ変貌したことを戦士たちに感謝し、現在の日本の 平和と安定した生活が存在することを今一度考査し認識するべきの ようです。
仏教や儒教の教えを基盤に、八百万の神々が統治する多神教の 国であることも異彩を放っています。その上130年前、文明開化と の位置づけを持つ明治維新以降の政策で、我が国で延々と築いて きた文化や伝統が危うく全面否定されそうになったことです。戦後 食糧不足が解消されるとともに、嗜好の比重が高まり、大きく変貌 しております。そのことを可能にしているのは、種々の問題はあっ ても、治水や灌漑事業等でのダム建設や河川工事、また発電所な どの整備であることは否定できません。人口は増え続けると言う仮 説は、否定されつつあります。我が国の人口問題がそのことを証明 しています。だが、発展途上国は、食糧問題解決のために郷土の 自然破壊を続ける可能性は大です。最新農業技術などや我々が当 たり前と思っているソフト面での援助や協力が雇用創出に貢献でき、 自立の道が開かれたら環境問題は自ずと解決していくのではない か。夫々の民族の違いによって、個々に新たな文化が芽生える、そ のことが、より良い交流を生む、そんな気がします。 我国の主食であるお米から、小麦粉を大量に使用した食品へ大きく 変わろうとしています。ところが英知を結集して、新たな動きが出て きています。それは生産方法がアジア地区で最も有利な、米作を如 何に有効に利用するかと言うことです。米粉と小麦粉とのコラボレ- ションです。ただ米粒を粉にするのには、技術的、価格的、適合した 品種改良などクリアしなければならないことが山積しているとのこと です。だが、一部実用段階に入り一割混入のパンなど市販され好評 を得ているとのことです。ぜひ食して協力したいものです。フランスで は保護政策ではあるが、食糧自給率120%強とのことです。我国は カロリ-ベ-スで39%とのことです。最近の農家は、非常に魅力的 な場所に変わっているとのことです。体験就農できるか個所も多々あ るようで、そんな個所での体験実習の話題を散見することがあります。 ヨ-ロッバで千人規模、二千人、五千人などの独自の特産品を有す る小村が点在するとのことです。農業とはかかわりのない、終の棲家 にもなったりしているようです。北海道にはそんな場所も可能性を秘め ているようです。
気温上昇 根拠あいまい 渡辺・東大教授 CO2削減論の暴走懸念
北海道洞爺湖サミットの主要議題とされる「地球温暖化」と二酸化 炭素(CO2)削減。国際機関である「気候変動に関する政府間パネ ル(IPCC)」が温暖化の進行とその主因を温室効果ガスと主張し、 半ば自明のこととして扱われているが、「科学的根拠があいまい」と 批判の声もある。あえて少数意見に耳を傾けてみた。
渡辺正・東大生産技術研究所教授著「地球温 暖化論のウソとワナ」(伊藤公紀横浜国立大大 学院教授と共著、KKベストセラ-ズ)の副題は 「史上最悪の科学スキャンダル」。温暖化論の疑 問点を鋭く指摘している。渡辺教授の見方は-。
※かなり刺激的な表現ですね。 「今この瞬間の日本ではね。『温暖化論』を、CO2など温室効果ガス が地球を暖めて悪影響を生むという『科学』の面と、CO2の輩出を減 らせば温暖化を防げるという『対策』の面から見てみましょう。全容か゛ 分かったかのように語られますが、実はどちらも一面的かつセンセ- ショナルに取り上げているだけなのですよ」 ※「科学」の面から伺います。 「まず、元のデ-タが問題。世界の気象観測点には制度のあやしい 所が驚くほど多い。先進国の大都市はエアコン排熱などの影響で温 度計の数値がじわじわと上昇中。発展途上国では、思いつきの数字 を日々記録した例さえある。世界の気温変化を正確につかむのはま だ無理です」 ※「何が起きているのか」、正確には分かっていない、と 「一方、将来の予測は、もっと難しい。計算機シュミレ-ションは万能 ではありません。変数が多くなればなるほど難しいし、プログラム次 第でもくろみどおりのデ-タを出すことも可能です。気候を変える要因 のすべてを取り込めていない現在の気候モデルは、基礎研究段階に すぎないのですね」 ※異常気象が多発するとか、国土が水没するとかの主張もあります。 「根拠はほとんどありません。ほんの一例だけをみても、話題となった ゴア氏の著書『不都合な真実』など、『キリマンジャロの氷が温暖化で とけている』というのが、明らかに周辺一帯の乾燥による昇華(氷が水 を経ず直接水蒸気になること)であるなど、とても科学的証拠に基づく ものではありません」 ※「対策」の方はどうでしょう。 「『科学』面があやふやな現在、的外れの恐れが大きい。CO2の温室 効果を主因とみるIPCCの結論も、科学界の総意ではありません。地球 の気温は絶えず昇降を繰り返し、図上(クリックで拡大)のように太陽活 動と深く関連していると見る研究者も多い。最強の温室効果ガスである 水蒸気とか雲はどうか。すすなど浮遊微粒子の影響は・・・。対策を考え るのは、そのへんがすっかり分かってからでも遅くはありません」 ※しかし、「CO2削減」という言葉を聞かない日はないほどです。 「企業や役所が『節電で○○㌧のCO2を削減した』と胸を張る。でも浮い た予算は別に使うから、結局CO2が出ます。『カ-ボンニュ-トラル』をう たうバイオ燃料生産が熱帯林を壊すなど、CO2削減論の暴走は実に深 刻です」
※日本は削減への努力が足りないとの論調もあります。 「70、80年代の血のにじむような省エネ努力の結果、日本は先進 工業国の中で最も出さない国になりました。ものすごい成果ですよ。 CO2排出総生産(GDP)の変化を重ねてみれば(図下)、86年以 降はぴったりと一致します。経済活動に必要なギリギリのCO2しか 排出していないということです。諸外国はそれ以前の段階なのでま だCO2排出を減らす余地があるけど、日本はもう無理。2050年ま でに70%削減なんて、無責任な空論です。本気で実行したら産業 は壊滅し、失業者があふれる。それでいいのですか?」 ※とてもそこまで考えての議論とは思えませんね。 「そもそもCO2が増えるのは悪いことなのか。光合成の研究者とし て言いますと、CO2の増加は植物の生育を速め、食糧の増産につ ながる。『CO2が増えている』という話を初めて聞いた80年代、『こ れで世界の飢餓が少しは減るぞ』と胸が躍りましたよ。『温暖化対 策』に使われる毎年一兆円もの税金や、今後『排出量取引』に飛ぶ 莫大なおカネは、医療や福祉、教育に回す方が、何十倍も賢いでし ょう」
武田・中部大教授100年後の予測不可能
武田邦彦中部大教授の話:まことしやかに語られているが、百年後 を予測することは不可能だし、すべきではない。社会は刻々と変化 するので、百年間に科学ももっと様変わりするだろう。そもそも定説を 翻していくのが研究者の仕事。「百年間今のままなら」と仮定するの は、学問・研究の放棄だ。国際機関や国の研究機関が「百年後の気 温が最大6・4度上がる」とか「白神山地のブナ林が消える」とかいう のは無責任きわまりない。 たけだ・くにひこ=1943年、東京生まれ。専攻は資源材料工学。 著書に「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」(洋泉社)など
環境問題はなぜウソがまかり通るのか (Yosensha Paperbacks (024)) 価格:¥ 1,000(税込) 発売日:2007-02 |
環境問題はなぜウソがまかり通るのか2 (Yosensha Paperbacks (029)) 価格:¥ 1,000(税込) 発売日:2007-09-12 |
温暖化で病気増加? 感染症拡大 疑問の声
「地球温暖化は人間の健康に深刻な影響をもた らす」。環境省のパンフレット「STOP THE 温 暖化」はこう警鐘を鳴らす。熱波などによる熱中 症に加え、病原体を媒介する動物の成育域が拡 大し、マラリアやデング熱などの病気が増えるた めだという。「環境問題のウソ」などの著書がある 早稲田大の池田清彦教授(理論生物学)は「温 暖化になれば即マラリアやデング熱がはやるというのは間違い。歴 史的にも、マラリアはインフラ整備が進めばほぼ起きない。音頭は関 係ない」と批判する。
もめたIPCC
地球温暖化について評価する国際機関「気候変動に関する政府間 パネル」(IPCC)が2001年に第3次評価報告書をまとめた際も、温 暖化による感染症の流行をめぐり、もめたことがある。報告書作りに 参加したマラリア研究の第一人者が「マラリアが起きるかどうか分か らない」と書いたところ、「起きる」ように記述が変更された。研究者は 報告書から自分の名を外すよう求めたという。温暖化と感染症の関係 について、海外の研究者からも疑問の声が上がる。米国の気象学者 S・フレッド・シンガ-らは著書「地球温暖化は止まらない」で、「マラリ アの最悪の拡大は1920年代にロシアで起ったもの」と気温と無関係 なことを紹介。各種統計を基に「むしろ寒さのほうが、厚い気候の2倍 も健康にとっては危険」と断じている。
絶滅論に異議も
一方、IPCCは「温暖化で多くの生物種が絶滅する恐れがある」と 主張する。池田教授は「温暖化すれば確かにチョウなど北上してく る昆虫も多くなる。放っておけば今そこにいる種にとって生息環境の 悪化になる。ただ、既存種をそのまま保護すれば良いという考えは どうなのか」と疑問を投げかける。「例えばタイワンザルとニホンザル の交配を『遺伝子汚染』として騒ぐ人がいる。しかし、生物にとっては 狭い地域の個体群で交配するより、よその個体と混血した方が遺伝 的多様性が増大され、生き残る確立が高まるのではないか」国立環 境研究所地球環境研究センタ-(茨城県つくば市)は「温暖化により 暑さに弱い生物の一部は滅ぶか゛、代わり増える種もあり、進化も起 る。生物的に考えれば正しい」と池田教授の説を認める。ただ、「実 際には、この説と裏腹に地球上の生物は急速に数を減らしている」と みている。池田教授は言う。「環境問題は人によって議論百出。石油 資源の枯渇が見えており、将来的な温暖化シミュレ-ションだってど んな数字を入れるかで、変わってくる。本当のところ、100年後の気 候がどうなるかは、だれも分からない」温暖化一つとってもさまざまな 考え方があるのは事実。不透明な部分があるからこそ、さらに、議論 を深めてゆく努力が必要ではないだろうか。
リサイクルはエコ?
「ごみは分別すれば資源。プラスチックは燃やす より、リサイクルした方が温室効果ガスを減らせ る」-国の音頭で始まったごみの分別。多くの国 民はこれを信じて可燃、資源、不燃などにごみを 分別してきた。
焼却に石油使用
しかし、異論もある。「ごみの分別は逆に多くの 石油を消費し、資源の無駄遣い」と批判するのは 「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」の著書もある中部大(愛知 県春日井市)の武田邦彦教授(資源材料工学)だ。武田教授は「燃え るごみは、プラスチック類が分別されたことで、燃焼に必要な熱量が減 った。熱量不足を補うため石油を使う自治体もある」と指摘。プラスチッ クなどの資源ごみも「リサイクルはわずかで、ほとんどが埋め立てされ、 逆にごみが増えた」とみる。実際、プラスチックの分別をやめる自治体も 目立ってきた。東京23区清掃一部事務組合は4月から、マヨネ-ズ容 器や発泡スチロ-ルなど可燃ごみに切り替えた。同組合は「処分場の 長期有効活用とごみ焼却に伴って発生する熱エネルギ-の回収のため」 と説明。プラスチック焼却で温室効果ガスが出るものの、自家発電など により、差し引きでは二酸化炭素(CO2)の削減が期待される。道内で も登別市か゛2000年からプラスチックごみを可燃ごみにしている。
同市環境対策グル-プは「石油を使わない限り、 プラスチックを燃やさないと、ごみはうまく燃えない」 という。もともと、プラスチックごみが不燃とされたの はリサイクルに加え、燃焼で猛毒のダイオキシンが 発生するとされたからだ。だが、01年にダイオキシンの毒性を疑う論文 が発表されたり、高温で燃やせば発生しにくいことがわかってきた。
官の筋書き 妄信招く 善意が逆手に・・・
「あなたはなぜ、政府と違うことを言うのですか」。武田教授は電話 で抗議を受けたことがある。自著に「ペットボトルはリサイクルをする と、多くの石油を使う」と書いたからだ。「多くの人が、政府の言うこ とをそのまま信用しているのには驚いた」と語る。政府は地球温暖 化やメタポ健診など推進したい政策に沿った研究には重点的に資金 を出す。一方、政府の方針に反対する研究者は自腹を切ったり、低 予算で調査、研究を余儀なくされる場合が多い。「そうすると、こうな るのです」と武田教授。学会の主流は政府の意向に沿った研究者で 占められ、報道もその見解にそったものになっていく-。「官僚のシ ナリオを追認するだけの研究。異論のない社会は健全なのか。環境 問題はそうした中で提起され、国民の善意が逆手に取られているの ではないか」。武田教授の嘆きは深い。
温暖化CO2が主犯?
北海道洞爺湖サミットを前に、地球環境問題が 大きく関心を呼んでいる。官民一体で温暖化対 策やリサイクル、省エネが進むが、一方でその 効果や目的を疑問視する専門家も多い。異論を 唱える3人の意見を基に、環境対策のあり方を あらためて考えた。(萩野貴生記)
6月25日に北大で開かれた地球温暖化講演会。 「温暖化の原因はコンピュ-タ-シミュレ-ション から二酸化炭素(CO2)の可能性が高い。ただ、 科学はわからないことが多く予想は外れるかもしれない」。国立環 境研究所(茨城県つくば市)の江守正多・温暖化リスク評価研究室 長は将来に含みを残す発言をした。環境省が作製した冊子「STOP THE温暖化」。20世紀の100年間に地球の平均気温は0・6度上 昇し、原因は化石燃料を燃やして排出されるCO2と記されている。 今や温暖化の“主犯”はCO2で定着した感があるが、異議を唱える 学者がいる。「『地球温暖化』論に騙されるな!」を書いた東京工大 の丸山茂徳教授(地球惑星科学)だ。
人為的影響には異論 雲によって変動
地球の大気の主成分(体積比)は窒素が78・08 %、酸素が20・95%CO2は0・04%。丸山教授 によると、人類の行為で増えるCO2は気温に換算 すると、年0・004度の上昇にしかならない。丸山 教授は「温暖化ガスの多くが水蒸気で、気温の変 動は水蒸気の塊である雲の量の影響が大きい」とみる。デンマ-クの 研究グル-プは昨年、太陽活動が地球温暖化に影響を与える仕組み を発表した。大要の活動により雲の量が変化し、気温も変わる。気温 変動は人為よりも自然現象に左右されるというのだ。CO2が温暖化を 促すのではなく、気温上昇が逆にCO2を増やすという見方もある。温 度上昇で海中のCO2による温暖化脅威説は「世紀の暴論」との論文 を発表した。ハワイなどでの観測から、気温の上がった半年-1年後 にCO2が増えることが裏付けられたという。
寒冷化の不安も
では、CO2がなぜ“悪玉”とされたのか。丸山教授は「石油資源の ピ-クが見えてきた中、中国やインドなどの消費を迎え込む狙いが ある」とみる。むしろ懸念するのは寒冷化だ。丸山教授らの研究グ ル-プは「太陽活動のピ-クは過ぎている」とし、35年までに地球 の平均気温は0・5度低下するモデルを出した。日本付近は1度下 がる見込みで、「北海道では稲作ができなくなる恐れがある」と懸 念する。今年1月の世界の平均気温は前年比0・5度、低下するな ど既に兆候が現れているという。丸山教授は「日本はCO2削減より、 食糧の安定確保など持論可能社会に向けた投資を優先すべき」と 訴える。これに対し、国立環境研究所センタ-は「温室効果は水蒸 気が最大に寄与している」と丸山教授らの主張を認める。ただ、「過 去50年の気温上昇は人間が出したCO2などの温室効果ガスとい う考えは学会の主流」とし、一線を画す。CO2主犯説一色に染まる 現状。そこからは専門家の意見の違いや、将来の不確実性は見え てこない。
花がグングン環境にもグ- 関西電力など六ヶ所村で検証
電気とその発電時に出る熱、二酸化炭素(CO2) の三つを花卉栽培に生かす「トリジェネレ-ショ ン」の国内初の大規模実証研究が、青森県六ヶ 所村で始まった。発電時の排熱を活用するコ-ジ ェネレ-ション(熱電供給)は一般家庭にも普及し つつあるが、さらにCO2を温室に供給して植物の 生育を促す仕組み。温室効果ガス削減策としてで そうだ。(東京政経部 関口裕士)
関西電力などか゛、トヨタ自動車系列で花卉栽培 を手がけるトヨタフロ-リテック(六ヶ所村)の国内 最大級約2㌶(幅88㍍、奥行き230㍍)の温室内 で始めた。来年度までの2年間で費用対効果を検 証する。発電は出力50㌔㍗のマイクロガスタ-ビ ンによるコ-ジェネシステムで行い、電気は夜間や 日照の少ない日のナトリウム灯照明などに、排熱 は温水の供給に利用する。さらに従来は大気中に 放出していたCO2を、温室内に巡らせた配管から 均一の濃度で供給。植物の光合成(光エネルギ- を用いCO2と水から炭水化物と酸素をつくる作用)を促す。関電による と「植物のCO2吸収量を数値化するのは難しい」が、重油からの転換 による効果などを含め、従来のシステムよりも少なくとも年間約90㌧ のCO2が削減でき、30%の生産性向上を見込める。温室全体で最低 20%のCO2削減が期待できるという。トリジェネシステムの設置費用 は約7千万円。電気料金など維持費は従来より軽減されるという。トヨタ フロ-リテックは年間約2百万鉢のミニバラやポインセチアなどを生産し ており、水野勝義取締役は「環境にやさしい技術で栽培した花という付 加価値をPRしたい」と話す。トリジェネは、日照量の少ないオランダやデ ンマ-クなどで実用化され、国内でも大阪ガスが青森県藤崎町の農協 と共同でトマトのハウス栽培に活用している。関電エネルギ-ビジネス戦 略グル-プの手島泰マネ-ジャ-は「一石二鳥にも四鳥にもなる取り組 み。熱需要の大きい北海道なら特に効果が期待できる」と話している。
原料生産で生息地破壊 多様性条約事務局 国際基準づくりを提案へ
二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないとして各 国で急速に進むバイオ燃料の開発が希少な生 物種の生息地を破壊、絶滅を招き、世界の生物 多様性減少の一因になっているとの報告書を、生物多様性条約の事 務局(カナダ・モントリオ-ル)が2日までにまとめた。 報告書は「バイオ燃料生産の拡大政策を進める化学的な根拠はな い」と現状を批判。19日からドイツのボンで開く条約の締結国際会 議で、環境破壊につながらないバイオ燃料であることを認証する制 度や国際基準作づくりに向けた作業を進めるとの決議を採択するよ うに提案している。報告書によると、原料作物の栽培方法によっては 土壌中のCO2が大気中へ放出される量が増えるため、バイオ燃料 の利用は温暖化防止に貢献するどころか、温暖化を加速させる恐れ もある。報告書は、トウモロコシやサトウキビ、アブラヤシなど現在の バイオ燃料の原料作物は天然の林や湿地、草地などを切り開いて生 産され、生物の生息地を破壊して危険性があると指摘。東南アジア など多くの国で、既に森林破壊などを招いているとした。これらの作 物を育てるために大量の水資源が必要で、淡水の生物の生息状況 を悪化させるとの懸念も表明した。バイオ燃料作物の栽培は土壌の 劣化を招きやすく、自生地ではない地域にまで栽培が広がると、在 来種に影響を与え生物多様性の消失を招く原因になると警告してい る。
一方、バイオ燃料の縮小は、化石燃料(石油)の市場価格の更なる 高騰を招き、市場経済に与える影響は計り知れなく、現実的ではな いとの話もある。より良い解決策を早急に願うところです。
ヒ-トポンプ 空気熱源 効率も改善
エアコンや冷蔵庫に使われている「ヒ-トポンプ」。 空気の熱を熱交換器で冷媒に集め、冷媒を一気 に膨張させると周囲の熱を奪ってク-ラ-に利用 できる。東京電力とデンソ-、電力中央研究所は このヒ-トポンプを使った給湯器を開発。売り上げ 台数が百万台に達した。20年ぐらい前までヒ-ト ポンプは効率が悪く、電気を大量に消費したが、 「冷媒や電源、熱交換器など要素技術の改善で大幅に改善した」と 東京電力の小池明男販売営業本部副部長。最新型では、投入した 電気エネルギ-の約四倍の熱エネルギ-を得られ、家庭の給湯や暖 房をすべてヒ-トポンプに置き換えると、国内の温室効果ガス排出量 の約十分の一に相当する1億3千万㌧の削減が可能と試算している。 従来の燃焼式の給湯器と比べ、エネルギ-使用量を3割、排出二酸化 炭素(CO2)を5割削減。割安な夜間電力を使えば、経費も月1000円 程度で済む。課題は、ガス給湯器に比べて給湯器本体か゛割高なこと と、お湯をためるタンクの置き場所が必要なことだという。
冷暖房や照明 IT制御で住宅の省エネ
日本の家庭部門からの二酸化炭素(CO2)排 出量は、京都議定書の基準年(1990年度)と 比べ30・4%も増えた。政府は、エネルギ-の無 駄遣いを控えるよう呼び掛けているが、家庭か らの削減を進めるにはどうすればいいのか。東 大の坂村健教授が提案するのはIT技術の活用 だ。一人しかいないのに、大きな部屋全体を暖めるのは無駄が多い。 部屋の中にセンサ-や組み込み式のコンピ-タ-を搭載した小型 の冷暖房器具、照明をたくさんつければ、人の動きに応じて細かく 機器を制御し、小型のエネルギ-で人のいる周りだけを快適にするこ とは不可能ではない。窓が自動的に外気の温度を検知して開閉す れば、夏場に涼しい風が吹いた時だけ窓を開けて外気を取り込む こともできる。家全体のエネルギ-使用状況を、テレビの画面で一目 で確認できるようにすれば、省エネの達成感を味わえる。住宅事業 も手掛けるトヨタ自動車は2004年、こうした坂村教授の考え方を取 り入れ、空調や照明、エネルギ-を自動最適制御する実験住宅を愛 知県長久手町に建設した。同社は「CO2削減で住む人に我慢を強 いるのはよくない。豊かさ2倍、環境負荷半減を実現する未来の住 宅を形にした」と話している。
風や光で生み出す水素 発電所分散し電力供給
温室効果ガス排出量を大幅に減らすために、 二酸化炭素(CO2)を排出する石油など化石 燃料の利用は極めて制限されることは確実だ。 風力や太陽光などのCO2を排出しないクリ-ン エネルギ-にかかる期待は大きいが、天候によ つて発電量が変わるなど、出力変動が大きく安 定供給ができないという問題点がある。産業技術総合研究所の西尾 匡弘グル-プ長が解決策として研究するのが、風力発電などによ って得られた電気で水素を生み出してためておき、必要に応じて熱 や電力を地域に供給する「分散型電源ネットワ-ク」だ。発電した電 力が余ったら、水を水素と酸素に電気分解して貯蔵。風がやんだら 水素を使った燃料電池で発電する仕組み。気候の変化による影響 を受ける心配はない。実用化へのポイントは、こうした仕組みの小 規模の発電所を、住宅や工場の近くに分散配置すること。燃料電 池から出る熱も無駄にせず利用できる上に、長距離を送電する際の 電力のロスも少なくなるからだ。「今のように消費地から離れた大規 模な発電所から電力を供給する中央集約型より、柔軟で効率的な 仕組みができるのではないか」と西尾グル-プ長は話している。