病人を作り出す危険性 過剰検診や投薬に警告
がん検診の大罪 (新潮選書) 価格:¥ 1,260(税込) 発売日:2008-07 |
医療崩壊の原因は医療費抑制策や新医師臨床研修制度ではなく、過剰な医療サ-ビスによると考える人もいる。病気を早期発見するための検査が逆に病人を増やしている実態がある。早期発見された病気を薬で治療しても必ずしも長生きできるわけではない。本来あるべき予防とは何か、厳しい問題提起をしているのは、岡田正彦「がん検診の大罪」である。メタポリック症候群の判定基準では腹囲が男性は85㌢、女性が90㌢以上となっているが、信頼できるデ-タによる論文では「BMI=ボディ・マス・インデックス、体重(キロ)を身長(メ-トル)の二乗で割る=27以上、腹囲は102㌢以上でない限り、放置しても命にかかわることはない」ことを教えてくれる。警告的な意味はあっても、病人を作り出す検診はその必要性が危ぶまれる。糖尿病では空腹時血糖の基準値を10㎎/dl下げると患者は3倍に増える。著者によると、高血圧の治療薬は現在よく処方されている5種類ともプラセ-ボ(偽薬)と比較して、総死亡、脳卒中死亡、心筋梗塞死亡のいずれも減らすことができない。一方で治療しても副作用や他の病気などで死亡する人もいる。降圧薬を飲まない人は脳卒中や心筋梗塞が増えても、寿命は飲んでいる人に比べてほとんど変わらない。コレステロ-ルを下げるスタチン系の薬剤だけが、現在唯一総死亡を減少させる薬であるという。これさえも生活習慣の改善よりは効果が少ない。がんに関しても検診の有効性は証明が難しく、放射線を用いた検査によって日本人の3・2%ががんになっていることが推測されるという。特にバリウムによる胃検査やC丁検査は気をつけた方がよいと警告する。
患者さんには絶対言えない 大学病院の掟 (青春新書INTELLIGENCE) 価格:¥ 788(税込) 発売日:2009-02-03 |
過剰医療、過剰検診の背景には何があるのか。大学教授の非常識に怒りをぶつけるのは、中原英臣「患者さんのは絶対言えない大学病院の掟」である。メタボの診断基準やコレステロ-ルの基準値など決めてきたのは、大学教授が中心メンバ-になっている委員会である。これらの人たちの多くが、実は製薬会社から多額の寄付金をもらっている。大学教授を頂点とする医療界はひたすら患者を増やすように努力してきたのではないか。「小さな親切、大きなおせっかい」である。そこに厚生行政も絡んで、困った構図ができてしまっている。
老いない技術-元気で暮らす10の生活習慣 (祥伝社新書115) 価格:¥ 840(税込) 発売日:2008-06-26 |
予防の基本は検診や薬でなく生活習慣改善である。林泰史「老いない技術」は食事、運動を中心にした生活技術をていねいに説明している。生活改善はゆるやかに進めるべきこと、足や膝が痛くてもできる運動法、心の休養法、社会参加の重要性もわかりやすい。(北大大学院教授)