晴れた。
梶取(地名)で幟があがると連絡があったので小梅も行った。
同伴は梅本の家内と東の娘のとよ。
大いに賑わっていた。
河原は蟻のように人が出て渡し船に乗れないかもしれない。
早く帰れば空いているだろうと急いで帰途についたが往くときより大勢になっていた。
三、四艘の船は全部満員で危ないことこの上ない。
人は乗ろうと急ぎ、船頭は乗せまいと棒でつく。ますます危ないことだ。
しかし、水はひどく少なくて川を上るのは無理。
板〆の襦袢を着て踊り歩く者、女の子供をかけて十四、五人有る。
女がた二人、これは昨日の和歌祭礼で餅つき踊りに出ていた者らしい。
男ら踊る者は紫の縮緬の手ぬぐいで顔を包み目だけ出しているので誰ともわからない。
主人は夕刻に北野へ行く途中に大鈴木の門の前で踊る者を見たという。
よくよく見ると踊りを指揮していたのは表具師だったそうだ。
この度は賑やかにせよとのお上からの内々の御すすめがあったゆえ、下駄なしで足袋のまま座敷へあがってきた。
御殿の女中らも梶取へ参っており一位様(十代藩主で隠居の治宝公)に申し上げるとのことで皆々おおいに弾んでいる。
手習い子まで襦袢に縫いやら色々立派にして揃って行く由。
一人前を倹約しても一両より下では納まらないそうだ。
家の貧富に従って精一杯はずんで出す。
さてさて、手習いの師匠はこのようなことは叱るべき筈のところを、大工町の師匠は特に悪く、自らも男を持ち一向に師である道を知らないようだ。
安兵衞が裏代えに来る。これは先に渡した分。
しかし、それは買うてくれとのことなので野口で買う。四十五文。
とよの母がきた。妹の奉公のことでの相談だ。飯を食べさす。