二月十二日
今日も快晴。
安兵衞が庭仕事に来る。
母君は寺参りがてら出口の田中に行く。
供のいさは先に返すはずなのに夕方まで帰らない。
塩路嘉一郎が凍り豆腐百持参して来る。
文選2冊貸した。
主人は二時頃から三浦へ行って留守。
江戸から水野殿の弟と留め役がくるそうだ。
どんな趣意かわからない。
権七もくる。
主人は東大介を連れて八時頃に帰った。酒を出したが、東はかなり酔っていたので飲まずにしばらくして帰った。
その後、主人は山本督学へ行き酒を吞む。
今月の二日に伊豆の国箱根で大地震があって75人死んだそうだ。
家もずいぶん崩れたらしい。往来も二日間止まったという。
昔、源平の乱が起こらんとする前、養和の年、地震、大風、火事などさまざまの怪異があっての餅に戦が起こった。なんと恐ろしいことか。
さて、伊達当春が詠むのに「鶯や籠の中でも春は春」という。
伊達と玉置はいろいろと歌や詩を作る者。非常にたくさんあるので数え切れないがその中からいくつか。
伊達つらにおどりくるひし二羽雀 曲がりし竹の外知らずして
忠の字をわうれた竹のすずめども おどりが過ぎてあみの乗り物
山中でつかみ死にたる粟や黍 死んだ後まで餅につきける
宮崎がいさめの太鼓やぶれ せけんへ聞こえなりのわるさよ