ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート

「神話探偵団~スサノオ・大国主を捜そう!」を、「ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート」に変更します。雛元昌弘

神話探偵団101 褶墓(ひれはか)はなぜ円墳から、前方後円墳に変えられたか?

2010-11-17 20:50:57 | 歴史小説

褶墓(ひれはか:日岡陵) 
ウィキペディアより(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E5%B2%A1%E9%99%B5)

「しかし、孝霊天皇から見て、4代目の崇神天皇が孝霊の子の若建吉備津日子を吉備に派遣したというのは2世代離れていますし、6代目の景行天皇が若建吉備津日子の子の印南別嬢を正妃としたというのは3世代離れています。また、景行天皇と印南別嬢の子のヤマトタケルの曾孫を景行天皇が娶ったというは4世代も離れています。さらに、ヤマトタケルの子(後の仲哀天皇)と、景行天皇とヤマトタケルの曾孫の間に生まれた子の孫の香坂王と忍熊王が後継者争いをするというのも、5世代離れています。この時代の記紀の記載は信用できますかね?」
高木は食い下がった。
「どんなヘボ作家でも、小説を書くなら、逆に、もっと辻褄をあわせるんじゃない。こういう混乱があるということは、記紀は、むしろ伝えられてきた話をそのまま記録した、ということじゃないの」
ヒメは作家だけに、記紀創作説には組みしない。
「安本美典氏の古代天皇の平均在位年数が10年前後という分析からみて、この時代の天皇は記紀に書かれたような親子相続ではなく、兄弟相続であったみるべきじゃないかな。そうすると、年代の矛盾はかなり縮まるな」
カントクはいつもながら女性に組みする。
「当時の結婚年齢が15歳と言われていますから、さらに、年代の矛盾は解消される可能性がありません?」
ヒナちゃんにもやんわりと反論されてしまった。
「記紀作成の頃の政治情勢を考えると、多くの天武天皇の皇子との後継者争いにおいて、持統天皇は孫への皇位継承に執念を燃やしていたから、記紀は親子相続が正当であるように系図を書き換えられている可能性は高いね」
長老にまで言われると、高木は引き下がる他はなかった。
「ボクちゃんの提案は、面白いじゃない。是非、次の機会に『ヤマトタケル探偵団』で追求しましょうよ」
どうやら、ヒメは次の歴史推理小説のテーマを見つけたようだ。一同は、日岡神社から歩いて日岡陵に到着してからも議論を続けていたが、話題を切り替えるいいきっかけであった。
「『播磨国風土記』では、亡くなった印南別嬢を日岡に作った墓に葬るために、遺体を印南川、現在の加古川を渡って運んでいた時に、突風が吹いて遺体が川中に沈んでしまい、見つかった櫛箱と褶(ひれ:肩掛け)を代わりに墓に葬った。それで褶墓(ひれはか)と名付けた、とされています」
高木はざっと説明した。
褶墓は宮内庁指定の陵墓になっており、外からしか見ることはできなかった。日岡山頂上から下って西大塚古墳、南大塚古墳、西車塚古墳を見た。2基は全長74m、90mの前方後円墳で、もう1つは径23mの円墳である。
「こには4基の前方後円墳と23基の円墳があり、褶墓古墳は全長85.5mの前方後円墳とされていますが、明治中期の修復の時に前方部を付け足した、とも伝えられています」
高木は歩きながら解説した。

「これらはいつ頃の墓なの?」
ヒメからの質問はいつもの順番どおりである。
「ホームページで調べた範囲では、古墳時代前期としかわかりませんでした」
「古代史で播磨の影が薄いのは、きっと地元の歴史学者や考古学者がだらしないからね」
ヒメは姫路出身だけに手厳しい。
「それは言い過ぎじゃないかな? 大和中心史観にとらわれていて、大国主やその後継王のことなんて神話の作り話ぐらいにしか考えていないから、独自の郷土史の解明に関心がないだけだと思うよ」
言い過ぎなのは、むしろ、長老の方だ。さらに手厳しい。
「明治政府が、円墳の褶墓を前方後円墳に作り変えた、というのは何故かしら?」
ヒメはどんどん踏み込んでくる。
「それは『前方後円墳中心史観』とでもいうべき信仰があるからだと思うよ。天皇家の墓=前方後円墳で、全国に前方後円墳が広まったのは天皇家の支配圏の広がりを示す、と考える考え方は、今も根強いからね」
長老の世界に入ってきた。
「景行天皇の正妃で、ヤマトタケルの母の墓が円墳では示しがつかない、ということなのね」
「皇国史観に凝り固まった役人達はそう考えたと思うよ」
「戦後の考古学者達もその『前方後円墳中心史観』を引きずっているというのは、よくわからないわね」
「戦後の反皇国史観の考古学者達も、『邪馬台国畿内説』に見られるように、皇国史観の『大和中心史観』を引き継いでいるからね。僕は、『邪馬台国畿内史観・前方後円墳中心史観・三角縁神獣鏡史観』の三位一体史観からなる『大和中心史観』と言っているけどね」
「長老の考え方はどうなの?」
「前方後円墳で言えば、僕は播磨起源説なんだ」

資料:日向勤著『スサノオ・大国主の日国―霊の国の古代史』(梓書院)
参考ブログ:邪馬台国探偵団(http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/)
      霊の国:スサノオ・大国主命の研究
(http://blogs.yahoo.co.jp/hinafkinn/)
      霊(ひ)の国の古事記論(http://hinakoku.blog100.fc2.com/)
  帆人の古代史メモ(http://blog.livedoor.jp/hohito/)
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