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新装備、機動戦闘車について解説

2013-10-18 22:15:21 | 軍事ネタ

先日、陸自の新兵器機動戦闘車がとうとうお披露目されましたね。
いやー、何年も前から見守ってきただけに感慨深い。
2016年に部隊配備予定らしく、その通りに進行すれば正式名称は16式機動戦闘車となる。





機動戦闘車については3年前にも記事にしたけど、  10式戦車と機動戦闘車、戦車400輌までの削減について
改めてこれがどういう兵器かを説明したい。

105mmという旧式の74式戦車と同口径の砲を搭載することから、
装輪戦車とも言われるが、実はその任務は戦車とは全く異なる。
主任務としては、優れた機動性で迅速に展開し歩兵部隊に対して火力支援する兵器である。


もしも敵軍が日本に上陸した場合、橋頭堡を築かせてはならず、
これを速やかに撃破して海に追い落としてやらねばならない。
つまり水際での戦闘では反撃のスピードが鍵になるが、
戦車というのは数が限られている上に輸送には手間がかかり、
一番近くの駐屯地から向かってくるにしても多少の猶予を敵に与えるかもしれない。

しかしこの機動戦闘車なら、装輪で時速100kmで現場に駆けつけることができるので、
普通科部隊の歩兵たちと共に初手の阻止戦闘を行うことができるだろう。
また機動戦闘車は空輸能力もあるので、脅威度が高まった時には島嶼区への防衛にも迅速に向けることができる。

そしていざ戦闘となった時、機動戦闘車の火力は文字通り戦車並ということができ、
歩兵だけでは苦労する敵の装甲車や上陸用軽戦車などを易々と撃破する能力を持ち、
105mm砲は対歩兵戦であっても大きな威力を発揮するだろう。

これにより、敵軍上陸部隊は初動から機動戦闘車に対抗出来るだけの重装備を持ってこざるを得ず、
それは上陸作戦そのものに大きなリスクを伴わせることになる。


もちろん、装甲から言っても機動戦闘車は主力戦車の代わりになるものではなく、
戦車のように歩兵の強力な盾ともなれず、敵主力戦車と正面から対峙しても分が悪い。
しかしいわば機動戦闘車は味方の戦車が来るまでの"つなぎ"みたいな役割を担うということ。
初動での火力を提供するものである。

一部で戦車と比べて弱いという批判もあるが、そりゃどこにでも10式戦車がいればそれに越したことはない。
ただ現実はそういうわけにもいかないので、この機動性と火力重視の兵器が生まれたのだ。
歩兵と機動戦闘車がいち早く現場に駆けつけ、敵軍が態勢を安定させぬよう牽制している間に、
本格反撃の為の10式戦車や砲兵隊が到着すれば良い、ということだ。


また副次的だがこの種の兵器は海外派遣にも便利そうに思える。
昨今は自衛隊も海外での仕事が増えているが、そういった場所に戦車を送ると大げさだが、
装輪装甲車ならあまり物々しくならず、しかし現場の防護力を高めることができる。

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世界のベストセラー戦闘機、F-16

2013-04-18 21:31:44 | 軍事ネタ

AF seeks F-16 fleet upgrade, requests 19 more F-35As
http://www.airforcetimes.com/article/20130416/NEWS/304160020/AF-seeks-F-16-fleet-upgrade-requests-19-more-F-35As

上の記事は英語だけど、F-35とF-22の準備が完了するまで、
1018機のF-16をアップグレードして運用する予定だという。

1018機のF-16をアップグレードはすごい。
現有機の全てってことじゃないか。
さすがに金があるなあ。




F-16戦闘機はアメリカ空軍の主力の一端を担うマルチロール戦闘機で、
当初は大型機であるF-15に対しての小型軽量戦闘機として開発された。

1975年に制式採用されて以来、様々な戦場で実戦経験を積んでおり、
恐らく世界で最も実戦経験豊富な戦闘機。
なにせF-16は全世界に輸出されているベストセラー機でもあり、
これまでに4500機以上が輸出され、その実績と汎用性の高さから、
約40年前の設計であるのに未だに売れ続けている戦闘機なのだ。


F-16を語る上でよく言われるのが、
「大国の攻撃機、中小国の戦闘機」
といったような言葉。

軽量戦闘機としての航空戦は当然として、
近接航空支援や爆撃といった対地攻撃もこなせるという、
その汎用性がF-16の真価である。

つまり米空軍のようにF-15という高価で大型の戦闘機をたくさん保有してるなら、
空戦はF-15に任せ、F-16はその支援と攻撃機としての運用が重点となるし、
逆に中小国にとってF-16は主力戦闘機となる。

航空自衛隊もF-16を再設計したF-2戦闘機を約80機保有しており、
見た目は翼面積が大きいなど違う部分もあるがほぼ同じものだ。
空自もこのF-2は主に対地・対艦攻撃機としての運用に重点を置いている。


F-16は全世界的に輸出されている戦闘機なので、もちろん数々の活躍がある。
中でも最も印象深いのは、イスラエル空軍に於けるバビロン作戦だろう。

1981年、イラクに原子炉が設置されたことに危機感を募らせたイスラエルは、爆撃部隊でこれを奇襲することを決意。
その爆撃任務には当時新鋭機であったF-16を、そしてそれを護衛するF-15で編成することと決定。
この秘密部隊は最高レベルの機密性を保ったまま十分な訓練が施され、F-16x8機とF-15x6機がイラクへ向けて飛び立ち、
航続距離ギリギリの中でレーダー網を掻い潜り、遂には原子炉の爆撃と完全破壊に成功した。
全てが1tの自由落下爆弾であったにも関わらず、16発中14発が目標に命中し、
かくしてF-16は当時最新鋭でありながら、その攻撃能力と汎用性の高さを世界に示した。

当時イスラエルとイラクは交戦中にあらず、イスラエルは国際的な非難に晒されたが、
イスラエルは脅威を排除する為の防衛的攻撃、先制的自衛と主張した。


F-16は世界中で運用されており、ファンも多い。
米空軍では2020年以降からF-35に代替されやがては減勢していくものと思われるが、
世界的にはこれから先まだまだ長くその姿が見られることだろう。

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第二次世界大戦時の列強国の兵器生産数

2013-01-24 18:37:05 | 軍事ネタ

こんばんは、ゆっきぃです。
前回のゲーム記事のコメント欄にてブログ読者の方があるテーマで軍事記事を書いて欲しいというリクエストがあり、今日はそれについて。
ある2chスレまとめサイトで第二次世界大戦時の各列強国の軍事力ランキングみたいなのを表したカキコミがあり、
それについての個人的考察をとのこと。

こういったリクエストをコメントで頂けるのは素直に嬉しいので、
今後もどんどん消化していこうとおもいます!


旧日本軍って強かったの?
http://blog.livedoor.jp/nwknews/archives/4379273.html?p=2




まずその国の持つ国力・軍事力というのはあらゆる分野・要素が関係し、
それを数値で単純化して比較しようとすること自体あまり褒められたことではないが、
それでもあえて単純化して比較した場合・・・
上記カキコミの数値は単なるイメージとしても、あまり正確な根拠に基づいていないなという印象を受けた。
どう贔屓目に見てもアメリカとドイツ・日本が2倍程度しか差がないということは有り得ないのである。

それについて以下に兵器生産数から比較してみるが、
数値は資料によってバラつきがある点については留意していただきたい。


まず陸軍についてだが、一般的には参戦国の中で特にドイツとソ連が精強な陸軍で対峙したことが知られている。
ドイツもソ連も戦車大国であり、特に独ソ戦が始まった1941年から1945年にかけて競うように改良し合った為に、
このたった4年間で戦車技術というのは新兵器が登場しまくり飛躍的に進化した。
最も有名なのは1942年のレニングラード戦で登場したドイツのティーガー戦車で、
これは連邦軍の白いモビルスーツの如く大戦中は恐れられた存在だが、
強力なティーガーも大戦中に約1500輛が生産されたのみで、
戦局に影響が皆無とまでは言わないまでも数の上では全く主力足り得ない。
なおさらに強力なティーガーIIも500輛程度であり、ティーガーシリーズは合わせて約2000輛、
ドイツ軍の戦車総生産数は約37000輛ほどなのでティーガーの占める割合は十分の一にも満たない。

対するソ連はティーガーに対抗できるスターリン戦車(IS-1,IS-2)が正確な数値は不明だが大戦中に恐らく約3500輛ほどは生産されており、
またこの他にもティーガーを撃破できる攻撃力を持った戦車や重突撃砲なども併せて量産されている。
さらにソ連軍のT-34中戦車は火力・装甲・機動性のバランスが取れた優れた戦車で、
独ソ戦緒戦ではドイツ軍のどの戦車よりも性能が高く、後期に於いても改修により強力な威力を発揮した。
ソ連軍はこのT-34だけで6万輛近くもの量産に成功しており、工業力の差が戦力の差となって現れている。

独ソと比較するとアメリカとイギリスの戦車は地味な存在だが、それは戦車戦力が弱体ということにはならない。
イギリスは大戦緒戦では自国開発の戦車を主体に戦っていたが、
これは重装甲で恐れられた少数のマチルダ戦車を除けばパッとしたものではない。
しかしアメリカ参戦後はレンドリースによりアメリカ製のM4シャーマン中戦車の大量供与を受け、
これと自国製戦車で大戦後期を戦いきった。
M4シャーマンも走攻守のバランスが取れた中戦車で生産性に優れており、約5万輛近くが生産された。
M4シャーマンはスペックだけ見ればドイツのティーガーに敵うものではなかったが、
アメリカは絶対的な制空権と数的優位を以てドイツ装甲部隊に対抗した為、大きな問題とはならなかった。
またアメリカはM26パーシングというティーガーにも優る重戦車を開発しており、
これは海を渡って輸送する関係上、少数の投入にとどまったので戦局に影響はしていない。
つまるところアメリカは高コストのM26を運搬せずとも、M4シャーマンと航空優勢で十分と判断したのだ。

戦車・駆逐戦車の生産数
ドイツ37454輌
日本4524輌
イギリス22820輌
ソ連79733輌
アメリカ77247輌

主に陸で戦った国々を並べると、ドイツは約37000輛程度の戦車を生産したのに対し、
イギリスだけでなく、その上にそれぞれ2倍以上の生産数を誇ったアメリカ・ソ連とも戦ったので、
物量で押されまくることは自明の理であったというわけだ。
日本軍は陸戦は重視していなかったので戦車の生産数は少なくなっている。


戦車の生産数以上に絶望的な差となるのが航空機の生産数。

航空機の生産数
ドイツ117881機
日本79123機
イギリス131549機
ソ連158218機
アメリカ324750機

ドイツはイギリスにすら生産数で勝ってなく、性能で突出しているわけでもなかった。
ドイツが生み出し実用化した世界初のジェット戦闘機であるMe262でも1400機が生産された程度に過ぎず、
趨勢を変えるほどの影響力はなかった。

航空機関連で突出しているのはアメリカで、最高のレシプロ戦闘機とされるP-51マスタングを16000機以上生産し、
ドイツや日本では量産されなかったB-17やB-29のような超大型爆撃機も本格量産しており、
B-17が12731機、B-29が3970機生産されたとされる。
これらの大型爆撃機群がドイツと日本を空襲し生産能力の低減に一役買った。


そして恐らく1隻に用いられる資材量からして、
国力差が顕著に出るのが艦船の製造量で、
主に海で戦った日米を比較した場合、

日本の艦船生産数
正規空母9隻
護衛空母9隻
戦艦2隻
巡洋艦6隻
駆逐艦70隻
潜水艦132隻

アメリカの艦船生産数
正規空母22隻
護衛空母93隻
戦艦10隻
巡洋艦39隻
駆逐艦378隻
潜水艦213隻

上記はあくまでも大戦中に建造・就役した数であり、日本軍の場合は戦前に配備されたものを主力に戦っている。
さらにシーレーンを守る海防艦や貨物船などの生産数を考慮に入れると日米差はさらに著しいものとなる。


今回は主要兵器の生産数しか書かなかったが、この他にも弾薬や輸送トラック、銃砲の生産数も重要である。
またアメリカに限って言えば兵器の生産数が抜きん出ている他、日独が計画を断念した原爆の実戦投入にも成功しており、
GNP比で言えば1944年時点でアメリカは日本の18倍を誇ったとされ、
元スレのように単純化した数値で比較するのは難しいが、それだけの差があったということである。

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JBpressのミサイル飽和攻撃記事に対してと「報復的抑止」

2013-01-11 22:04:08 | 軍事ネタ

最近各所で話題になっていたJBpressの記事。

中国軍ミサイルの「第一波飽和攻撃」で日本は壊滅
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36856


上記事の趣旨をまとめると、

世間的には弾道ミサイルばかりが取り沙汰されているが、実質的な脅威はもっと安価な巡航ミサイルである。
中国軍が大量に保有する巡航ミサイルを数百発と大量に発射されてしまえば自衛隊のPAC3等の配備数では防衛が追いつかず、
その飽和攻撃により原発やその他重要施設に大打撃を食らってしまう。
それを抑止するにはこちらも巡航ミサイルなどを保有し「報復的抑止」を実施すべきである。


というもの。

この記事がアップされた日から各所で話題にされ賛否両論だが、
俺としてはその趣旨自体には同感とするところがありつつも、
しかしこの記者は巡航ミサイルの迎撃法について少し知らない部分があり、
そのせいで巡航ミサイルの脅威を必要以上に増幅しているところがある。


まず巡航ミサイルの特性は射程距離が長く安価で命中率も高いこと。
これについては記者自身も理解しており、確かに何百発も発射され飽和攻撃されると厳しい。
しかし巡航ミサイルの脅威に備えるのはイージス艦やPAC3だけではない。

巡航ミサイルはほとんど爆弾付き航空機のような特性を有しており、
曲がったり迂回したり高度を上下したり様々なコースを取れるので、
確かに自在にコースを設定できるこの兵器に対して、
少数のイージス艦やPAC3だけでは心もとない。




しかし巡航ミサイルへの警戒の主力はイージス艦ではなく、早期警戒機である。
早期警戒機とは大型レーダー付きの航空機で、AEW機、さらに管制機能等の処理能力が高いものはAWACSなどと呼ばれる。
これを高空に浮かべておくと半径数百kmという広範囲の飛行物体を探知でき、
接近する巡航ミサイルなどを捕捉すると、戦闘機部隊に通達し迎撃させるといった手段が普通である。

通常の巡航ミサイル自体は低速で、音速以下であるので旅客機と大差ない。(一部には超音速ミサイルもあるが)
また海面スレスレを飛行するなどである程度レーダーに対して被発見率を下げる手段を採られるとしても、
長距離を飛行するなら攻撃段階に入るまでは巡航高度を取っていると思われ、(高空を飛行したほうが空気抵抗が薄く燃料が節約できる。)
つまり陸地に達するよりも何百kmか沖合で容易に巡航ミサイルを捕捉、戦闘機で撃墜することはそう困難な技術ではない。

確かに何百発も一方的に撃たれてしまえば全弾撃墜といったことは難しくなってくるが、
しかし記事中に書かれている「巡航ミサイル200発も撃たれてしまえば"甘く見積もって"100~150発が着弾する」といったような比率は、
日本のように高度な防空体制を敷いている国に対してそこまで攻撃確度が高いものではないので現実的ではないと思われる。
なのでJBpressの記事は巡航ミサイルの脅威を増幅させているので全てが正しくはない。




しかしこの記事も全くの的外ればかりではなく、記者の言葉で言う「報復的抑止」は重要であると、俺自身も長年感じている。
現在の自衛隊には敵地攻撃能力がなく、つまり簡単に言うと中国にとっては、
「試しに日本にミサイル撃ってみようぜ! 防御されたらされたでいいじゃん? 万が一当たったらラッキーだしあっちからは反撃ない、撃ち放題!!」
といった様な状態で、しかし日本が巡航ミサイルを保有するなどして攻撃能力を持てば、
「日本にミサイル撃つと迎撃されるかもしれないどころか、こっちに逆にミサイル飛んでくるよ! リスキーだぜ!!」
となり、つまり攻撃意図自体を挫けるかもしれない、これが「報復的抑止」であろう。

つまり巡航ミサイルを保有するということ自体は敵地を爆撃できるようになり、とても攻撃的で好戦的な決断に思われるかもしれないが、
それ自体が抑止力として働いて相手国に戦争を起こす気をなくさせるというなら、最終的にはこれが一番平和的なのである。


巡航ミサイルの保有については過去にも防衛長官が要求していたり、
常に研究されていることなので決して可能性が低いことではない。
現在安倍政権は民主党政権による防衛大綱の見直しを発表しているが、
その内容に巡航ミサイルが盛り込まれる可能性も、
もしくは将来的には現実的に有り得るレベルだろう。

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現代の突撃砲、機動砲システム

2012-12-22 18:19:52 | 軍事ネタ

ドイツ軍のIII号突撃砲

第二次世界大戦時には突撃砲という兵器があった。
装甲化された自走砲で、歩兵支援用に大口径榴弾砲を搭載し、
陣地攻撃や野戦時において直接火力支援を行うもの。
だが大戦後期のドイツ軍では歩兵戦闘の支援ではなく、
対戦車砲を載せて駆逐戦車的な役割が多くなった。

こういった突撃砲や駆逐戦車が活躍できたのは、
固定砲塔故に同世代の戦車よりも高火力な大口径砲の搭載が容易であったからだが、
当然利便性という点では回転砲塔の戦車に圧倒的に劣る代物でもあった。

第二次世界大戦後にこのような突撃砲や駆逐戦車が廃れたのは、
戦車自体の火力が増大したので固定砲塔の駆逐戦車に頼らなくても高火力を発揮できるようになったのと、
歩兵携行対戦車ミサイルや歩兵戦闘車(IFV)といった新兵器の登場によるものだろう。

しかし昨今の戦闘事情では、再び現代の突撃砲ともいうべき兵器が登場している。


チェンタウロ戦闘偵察車ストライカーMGS

それは米軍のストライカーMGSやイタリア軍のチェンタウロ、フランス軍のAMX-10
そして我が国の新兵器である機動戦闘車などがそうだ。
これらの兵器は軽装甲だが戦車に準ずる105mm砲を搭載しており、
市街地など戦車にとっては入り組んだ地形でも柔軟に歩兵に火力支援が行えるようになっている。
戦車と装甲車の間の存在で、こういった兵器を現代では機動砲と呼ぶことがある。

従来の歩兵戦闘車(IFV)とこれらの機動砲はパッと見似ているが、大きな違いは兵員輸送スペースの有無である。
IFVは6人~10人程度、つまり1個分隊の輸送能力があり、基本は兵員輸送車(APC)なのである。
現代では昔と違って最前線と後方地域の境界が曖昧で、どこでも襲撃され交戦する可能性があるので、
APCそのものに交戦能力を持たせたものがIFVである。

この点で、機動砲は始めから直接火力支援のみを目的にしているので、通常は歩兵輸送能力を有しない。
しかし米軍のストライカーにしてもイタリア軍のチェンタウロにしても、タイプによってAPC型またはIFV型も存在している。

また通常はIFVは20mmか30mm程度の機関砲と対戦車ミサイルを搭載しており、
機動砲は逆に対戦車ミサイルを有せず105mmの主砲と副武装として機銃がついている。
105mmの榴弾威力は絶大で、これが常に歩兵とともにあれば十分な火力支援を行うことができる。
ただし武装についてはロシア軍のBMP-3は1個分隊の輸送能力を有しているIFVだが、
100mmの主砲に30mmの機関砲、そして対戦車ミサイルも搭載しているという重武装ぶりであり、
ロシア軍に於いては西側諸国で言う機動砲とIFVの境界が無いものとなっている。


こういった機動砲の基本コンセプトは前線で105mmの火力支援を直接歩兵に届けるというもの。
ともすればこれは第二次世界大戦時の突撃砲の再来であり、
対戦車ミサイルを有しないので駆逐戦車的な意味での有効性は落ちるが、
歩兵への直接火力支援という本来の突撃砲の思想と同様の兵器システムであるといえる。

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