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戦車と突撃砲と駆逐戦車と

2010-09-02 18:15:53 | 軍事ネタ



戦車 といえば。
旋回式砲塔に大きい主砲、分厚い装甲に無限軌道で機動する、走攻守を兼ね備えた陸上兵器。
ということは軍事に疎い人であっても、だいたい誰もが同様なイメージを抱いてるものだと思います。

しかし、戦車に似た特徴を持つ兵器は他にもあり、
ひっくるめて戦車と呼ばれがちな兵器も多数あります。




自走砲
広義には砲を搭載して自走する車両は全て自走砲ともいいますが、
狭義には大口径な榴弾砲を搭載して後方からの火力支援を行う車両を言います。
戦車などとの一番の違いは搭載する砲と照準方法。

基本的に戦車などは敵を直接照準に入れて射撃する直射砲を搭載するのに対し、
自走砲は観測員からの座標指示などによる間接照準を用いて射撃する曲射砲を搭載します。
この場合砲弾は弧を描いて山なりに飛び、射程距離が長くなる為、戦線の後方から火力支援することができます。

しかし遠方から山なりに飛ぶ為、直射砲に比べて発射から着弾までのタイムラグが長く、直接的に敵を照準することには向きません。
対歩兵部隊や軽車両などの対ソフトスキン目標に適した兵器で、戦車などの装甲化された移動目標への直撃を期待するものではなく、
あくまでも大口径榴弾の炸裂による面制圧兵器です。




駆逐戦車 とは、対戦車戦闘に特化した兵器。
戦車の車体を流用して高初速な対戦車砲を搭載し、一般的に同重量の戦車などに比べ、生産性や価格、そして火力に優れています。
砲塔が旋回しない固定砲塔タイプが多く、これは大口径な砲を搭載することにより固定砲塔とせざるを得ない場合と、
また旋回式砲塔よりも構造が単純で生産性に優れる利点があります。
固定砲塔の為に機動戦闘には向かず、主に待ち伏せ戦術を利用して敵戦車を撃破します。

しかしアメリカ軍やイギリス軍の対戦車自走砲などは旋回式砲塔を搭載し、
外見からはまるっきり戦車と区別がつかないものもあります。




突撃砲 とは、第二次世界大戦期にドイツ軍とソ連軍で運用された兵器。
戦車の車体を流用して大口径砲を搭載し、自走砲よりもより装甲化されて前線での戦闘に特化しています。
外見的にも特徴的にも駆逐戦車とよく似ており、一般的に同重量の戦車よりも火力に優れ安価だけど、
固定砲塔の為機動戦闘には向かない、主に待ち伏せ兵器。
駆逐戦車とは運用・開発目的の相違によって区別されます。

ドイツ軍のIII号突撃砲は当初は歩兵支援用に開発され、装甲化された車体と短砲身榴弾砲により、
歩兵と共に前進し敵陣地や塹壕などを破壊する、直接火力支援兵器でした。
前線で榴弾砲を機動させ、防護の為に装甲化し、直接照準で支援するという思想だったわけです。
なので搭乗員も戦車兵ではなく砲兵が運用しました。

しかし独ソ戦が始まり情勢が不利になり始め、戦車の数が不足するにつれ、III号突撃砲には駆逐戦車的な働きが求められました。
短砲身砲を長砲身化し初速と貫徹力を上げ、III号突撃砲は歩兵支援から対戦車戦闘も主任務となりました。
III号突撃砲はIII号戦車の車体を流用し、旋回式よりも単純な固定砲塔で生産性に優れ安価だったので、多数生産されました。
なので大戦後期においては駆逐戦車と区別する部分はほとんど無くなりました。

ドイツ軍のIII号突撃砲の活躍を受け、ソ連軍も同コンセプトでSU-122などの重突撃砲を配備しています。


スウェーデン陸軍のStrv.103、通称Sタンクアメリカ陸軍のM1128 ストライカーMGS

現代戦 においては、技術の発達による戦車の能力向上、対戦車ミサイルの普及などによって、上記の駆逐戦車や突撃砲という分野は廃れました。
しかし、スウェーデン陸軍が装備している主力戦車であるStrv.103 などは固定砲塔であり、
待ち伏せ戦術によって国土を防衛するという思想のもとに開発され、
外見も運用もまるで駆逐戦車そのものであるかのように見えます。

また、アメリカ陸軍が装備するM1128 ストライカーMGS は軽快な装輪装甲車でありながら105mm砲を装備し、
対戦車戦闘や歩兵支援などの直接火力支援任務に従事し、これは現代版の対戦車自走砲といえるのかもしれません。


軍事用語について

2010-08-07 19:48:50 | 軍事ネタ

軍事のことに詳しい人でなくても、誰でも知ってる有名な軍事用語というものはあります。
例えば形や性能など詳細は知らなくても、日本人ならたいがいの人は
ゼロ戦という戦闘機や、大和という戦艦の名前は知っています。
あとは最近ならイージス艦、F-22ラプター、テポドンなどの名称もニュースで報道されるので知ってる人は多いと思います。

このように、誰でも知っているあまりに有名な兵器の名称というのはあるものだけど、
ただこのようにあまりに一般的に広がっている兵器名称や軍事用語でも、
実は適切な使い方ではないということも時々あります。
今回はそんなお話。


バズーカ



バズーカとは、第二次世界大戦時の米軍に配備された歩兵携行用のM1/M18対戦車ロケット発射器のこと。(他にもM9/M20等派生あり。)
大量に生産されドイツ軍や日本軍相手に大きな効果を発揮し、また連合各国にも多数供与され有名となった。
つまりバズーカとは本来M1/M18に対する固有名称であり、活躍時期が第二次世界大戦時と古い兵器であるが、
今日にいたってもバズーカという名称は一般的に誰でも知っており、
もはや「肩に担ぐランチャー式のもの、無反動砲」 はなんでもバズーカと呼ばれるほど一般名詞化している。
ガンダムでのザク・バズーカとか。

とはいえ、軍事に詳しくない人に兵器のイメージを掴んでもらおうと思えばわかりやすい名称であり、そういうときに俺自身あえて誤用するときがある。
例えば旧ソ連のRPG-7という兵器を説明するとき、「バズーカみたいなもんだよ。」 といえば誰でもそれがどういう兵器かすぐにわかるというもの。


バルカン



バルカンとは、米軍に配備されている20mm口径ガトリング式のM61機関砲のこと。
主に航空機搭載用の機関砲として、または艦艇や車両に搭載して近接防空火器として運用されている。
この兵器も西側諸国に広く供与され有名となっている為、
大口径のガトリングガンは全てバルカンと呼ばれるほどに一般名詞化している。
ガンダムとかガンダムとか。
しかし本来は上記のバズーカと同じように、M61のみを指す固有名詞である。
故に、A-10攻撃機などに搭載されているGAU-8 30mmガトリング式機関砲を指してバルカンというのも間違いである。


上記2つは最も有名なものを挙げたが、同じように軍事関連の商標や固有名称が一般名詞化しているものは
ジープ、キャタピラ、アフターバーナー などがあるし、探せば他にもたくさんあるだろう。
しかしまぁ、キャタピラは正しくは無限軌道といえばいいものの、
アフターバーナーなどはアフターバーナー以外にどう言って良いものかもわからないし、
仮に推力発生装置 とか言っても通じは悪いだろうと思う。


あとは普通の人はあまりミサイルとロケットの用語の使い分けをしていない。
どちらも形状が似ており煙を噴きながら飛ぶところもそっくりであるが、
誘導装置の有無でミサイルかロケット弾かはわかりやすく区別される。
しかしロシア語ではミサイルとロケットの名称は区別されていなかったりもするので、
一概にもいえなかったりするが、少なくとも現代の日本語や英語の軍事用語においてはそう区別する。


他にもたくさんあるんだろうけど、分隊と小隊とか、戦術と戦略とか。
でも時間がないので今日はここまで!


PAK FAは2016年から

2010-06-23 16:51:17 | 軍事ネタ

ロシアの第5世代戦闘機、2016年に配備予定
http://arms-tass.su/?page=article&aid=85504&cid=24




ロシア軍の新型ステルス戦闘機、PAK FA が2016年からの配備予定のようです。
最初に50機以上の導入を目指すとのこと。
これが配備されれば、アメリカ軍以外のステルス戦闘機の初登場であり、
いよいよ時代はステルス機同士が航空優勢を争う時代へと突入していくのか。

しかし、F-22に似てるようでよく見ると全然違う形状は、なんとなくロシア的でかっこいいね。
どことなくSu-27の面影があるような。

2016年・・・西側各国はもうF-35の実戦配備が済んでいるだろうね。
それまでに空自のF-Xは決まってるのかなぁ。


陸自は必要か不要か

2010-05-24 15:46:05 | 軍事ネタ

当ブログの軍事カテゴリ、自衛隊の敵地攻撃能力の保有について の記事に最近ついたコメントにて。



記事自体が1ヶ月以上前のものだし、レス内容も大きくなりそうなので、
テーマも面白いし、今回はこれについて書いてみようと思います。


まず日本の防衛条件の前提として、第一が日本は島国であること。
国の周囲は海で守られており、他国と地上で接する国境線がない。
要するに敵国勢力から本土を防衛しようと思えば海と空を守れば良いわけで、
空自と海自で強力に防御して、敵に上陸されなければ陸自の出番はない。
だから陸自は不要でその分の予算を空自と海自に・・・
といった意見は実は根強くよくいわれていることです。

しかし、本当に陸自は不要なのか?と問われれば、
俺個人の意見としては絶対的に否であり、
陸自は必要な戦力であると断言します。
その根拠を以下に述べます。


まず陸自の存在理由として、第一義的には"抑止力" が挙げられます。
有事の際に陸自が実際的に敵勢力と交戦する状況があるかどうかは実は最重要ではなく、
陸自は存在するだけで、日本に上陸しようと企図する敵勢力にとっては大きな障害となっているのです。

例えば、日本に陸自ほどの陸上戦力が存在しない場合。
如何に強力な空自と海自で守られていようと、それさえ突破してしまえば、
小規模な兵力でも日本への上陸を成功さえすればあとは本土で破壊的に暴れまわることが可能となります。
しかし陸自が存在することによって、まず上陸部隊にとっては陸自を撃破できなければ目標を達成することは困難となり、
つまり陸自を撃破することが可能なだけの、大兵力や重火器を揚陸する必要性を敵に強要することができるわけです。

小規模な歩兵部隊だけを載せた船団はコンパクトであり、それだけ隠密性が高くコストもかからず、
もしも五月雨式にそれらの小部隊をいくつも送り込まれ続ければどこかしらは突破され上陸される可能性が高い。
しかし重火器や一定の兵力を持ち合わせた部隊は大船団にならざるを得ず、
またそれだけの大船団による上陸作戦をいくつも準備することは困難であり、
しかもその作戦行動は目立つものにならざるを得ないので迎撃もしやすい。

陸自が存在することによって、この"一定兵力の揚陸の必要性" を敵に強要することができ、
故に陸自が実際的に交戦するか否かではなく、存在するだけで敵の上陸作戦の障害となっており、
結果的に空自や海自と同様、敵の本土上陸を未然に防ぐことに一役買っているのです。


制空権や制海権は確かに重要で、日本の地勢的条件ならば第一に考慮されるべき案件ですが、
有事において日本の長大な海岸線を絶対的に全周防御することが可能かと言われれば非現実的であるといわざるをえず、
そもそもの抑止力として、そして最後の盾として、陸自は日本の防衛において必要不可欠な存在であるといえます。


アメリカ、イランのF-14

2010-04-21 21:55:45 | 軍事ネタ

「新世代」F14戦闘機を保有=国産レーダーや改良エンジン搭載-イラン軍幹部
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2010042100071




イランのF-14戦闘機が近代化改修を受けて現役なようです。
開発国のアメリカ海軍では2006年に全機が退役していますが、
イラン空軍では多くとも20機程度が現役と見られています。

イラン空軍はアメリカ以外で唯一F-14を運用している軍隊で、
俗にアメリカ海軍のF-14はドラ猫と呼ばれるのに対し、
イラン空軍のF-14はペルシャ猫と呼ばれます。



F-14トムキャット は1973年よりアメリカ海軍にて運用が開始された艦上戦闘機。
空母機動部隊に接近するソ連軍爆撃機や攻撃機を長距離から迎撃するという、
艦隊防空に特化した目的で誕生しました。

一番の特徴としてはAIM-54フェニックス 空対空ミサイルを搭載することが挙げられ、
射程距離が150-200km前後とされ、現在でも世界最長の空対空ミサイルとなります。

映画『トップガン』 でトム・クルーズが操縦し、退役した現在でも人気が高い戦闘機の一つ。



もう1つの大きな特徴としては可変翼機構を搭載し、
速度域によって自動制御で主翼が最適な角度に傾くというもの。
低速域では主翼が開き旋回性能と運動性能を高め、
加速時には主翼が後退し空気抵抗を減じる効果があります。

この可変翼により、長距離狙撃での艦隊防空に特化した性能を持ちつつも、
格闘能力もF-15イーグル などの戦闘機に引けをとらなかったといわれ、
その空戦能力はイラン・イラク戦争やシドラ湾事件などで実証されていきます。


しかしF-14は高価格である上に、用途が艦隊防空に特化されていました。
大型な機体による長い航続距離と大きな搭載能力により、対地攻撃能力が付加されることはありましたが、
コストパフォーマンスの面では同じ艦載機であるF/A-18ホーネット に遠く及ばなかったのです。

空母に載せられる機数には限りがあり、それだけに器用で多用途な機体が求められていました。
F/A-18は汎用性が高く、爆撃も攻撃も空戦もある程度できる多用途戦闘機で、かつF-14よりも低価格でした。

そしてイージス艦の配備により艦隊防空能力が上がったこと、
ソ連崩壊により米機動部隊に対する脅威が大きく減じたこと、
可変翼機構はレーダー反射面積を増大させ現代で重視されるステルス性能を大きく損なうことから、
とうとうF-14は2006年にアメリカ海軍での任務から完全に退きます。


ということで現在、イラン空軍が世界で唯一F-14を運用する軍隊となっています。
しかしアメリカとの関係悪化により部品調達が困難となり、どんどんと稼働機数を減らしている状況とされ、
現在では多くても20機前後と見積もられているので、完全退役もそう遠くなさそうな感じはあります。

そして核開発問題を巡ってアメリカとどんどん険悪になっていくイラン。
近々戦争が起こるとも危惧されていますが、もしもアメリカとイランが開戦した場合、
アメリカは初手で巡航ミサイル攻撃と、空母からF/A-18の改良型であるF/A-18Eスーパーホーネット による航空攻撃を開始するだろうし、
もしもそれをイラン空軍のF-14が迎撃することとなれば、因縁の艦載機同士であるF-14vsF/A-18が実現するかもしれません。

そしてそれが実現すれば、恐らく世界で最後のF-14の実戦の機会となるでしょう。