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ステルス機時代到来、F-22に見るドレッドノート

2011-02-23 21:02:06 | 軍事ネタ

こんばんは、ゆっきぃです。
今日は、昨今の各国のステルス戦闘機事情について。


F-22 RaptorF-15 Eagle

2005年、アメリカ空軍が史上初のステルス戦闘機F-22ラプターを配備したことにより、
世界中の空軍でステルス機時代が幕を上げた。
それまでの世界最強の戦闘機はというと、実戦経験豊富で空戦による被撃墜なし (とされているが異論もある。)
のアメリカ空軍のF-15イーグルだというのが通説であったが、
F-22は優れたステルス性能に加えF-15をも凌駕する運動性と機動性により、
模擬空戦では4機のF-15を同時に相手にできる程の圧倒的性能差を見せつけた。

ステルス性能に差があると、片方からはレーダーで捕捉できずに、
一方的に遠方からミサイルを放たれるという展開になる為、
まさにステルス性能が空戦における勝敗を大きく分けることが実証された。

このF-22の実績を受け、いくら速度や運動性能で優っていても、
ステルス性能に劣っていれば航空優勢を確保することは難しいと考えられ、
一斉に各国空軍はステルス戦闘機の開発に乗り出した。
現在ではロシア・中国・イラン・インド・韓国・日本などが独自でステルス戦闘機の開発に力を入れており、
その他イスラエルや欧州各国などもアメリカの新型ステルス戦闘機F-35共同開発計画に出資しており、
まさに世界中でステルス戦闘機時代の到来である。


現在のところ、実戦配備されているステルス戦闘機はアメリカのF-22ラプターのみである。
しかしロシアや中国などでは2015~2020年までに新型ステルス戦闘機を実戦配備するとされており、
このような情勢下では、各国空軍が戦闘機を評価する際にまず「ステルス機か、そうでないか」が前提に考慮されると思われる。

まるで現代版ドレッドノートのようである。


HMS Dreadnought

1906年の第一次世界大戦前夜、イギリス海軍は新鋭戦艦「ドレッドノート」を就役させた。
戦艦には多数の砲が搭載されているが、当時の戦艦は各砲塔の砲手が独自で仰角・距離を調節し発射する独立撃ちが主流であった。
しかしドレッドノートではこのシステムを一新し、艦橋から一元的に敵艦までの諸元を各砲塔に伝達し、
一斉に照準し撃つという一斉射撃の概念を取り入れ、遠距離砲戦における命中精度を飛躍的に向上させた。
ドレッドノート1隻でそれ以前の戦艦2隻を相手にできると言われるほどであり、
ドレッドノートの登場は自動的にその他全ての戦艦を一段階時代遅れにさせてしまった。

これにより各国海軍はドレッドノートに匹敵する新型戦艦の開発を急ぎ、
ドレッドノート級の性能を持つ戦艦を「ド級」、ド級以上を「超ド級」と称し、
逆にドレッドノート以前の戦艦は「前ド級」という風に、
ドレッドノートより前か後ろかが戦艦の評価基準の前提となった。
(日本語のスゴイとかを意味する「ド級」「弩級」という表現の語源もこのドレッドノートである。
尚、不良やろくでなしを意味するネットスラングの「ドキュン」「DQN」は一切関係ない。)



つまりは、現代のステルス戦闘機時代にも同じことが言えるのではないだろうか。
F-22が配備されたことにより、そのステルス性能による圧倒的戦力差を見せつけ、
一斉に各国空軍のステルス機開発を促進した。
F-22の圧倒的性能は、まさに従来の全ての戦闘機を一段階時代遅れにさせた。

これからは「ステルス機か、そうじゃないか」がまず性能評価の前提基準となるだろう。
まさに現代のドレッドノートである。
ラプターからとって「ラ級」とかいう言葉は生まれそうもないが。

戦わない軍隊

2011-02-14 15:52:13 | 軍事ネタ

ネタ切れだからって、あまり2chコピペブログみたいなことはしたくないのだけど。
2chの戦争・国防板の「じいちゃん達の戦争体験を語るスレ」より。

512 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2008/10/09(木) 00:15:39 ID:V/TpW/68
オレの爺ちゃんは南のほうで戦っていたらしい。
酷い体験したらしく戦争のことはあまり話してくれなかった。
そんな爺ちゃんがよく「強いという事は戦うことじゃないぞ如何に戦わずに誰かを守る事だぞ」
や「憎んだら楽になるが頭が悪くなるからな。」ってみたいな事を言ってたな。
今になると良く意味がわかる。
そんな爺ちゃんは左手の指が欠けていた。


上の書き込みを見て、これは旧軍時代だけじゃなく現代の精神にもつながることだなと思って。
厳しい実戦を経験したからこそ、このような考えに至ったのだろうか。
なんにせよ、一個人の男たるものは~という精神論だけの話ではない。

敗戦後、日本は軍隊を解体し、その保有を憲法で否定している。
しかし自衛権の否定はしておらず、防衛的戦力の保持は認められており、
その為の実力装置として自衛隊が存在している。
自衛隊は実質の国防軍だ。

自衛隊は実戦を経験していない。
日本は戦争行為を行わない平和国家だからだ。
実戦を経験しておらず、戦争行為も行わない軍隊は必要ないという論調もある。
しかしそうではない。

戦争行為は行わずに済んでいるだけで、平和の賜物。
1945年以来、何故66年間も平和を維持できたかというのは、
在日米軍もさることながら自衛隊の役割も大きい。
抑止力としての存在。


いくら日本が戦争を行わないといっても、
戦争が勃発するかしないかは自国だけで決める問題ではない。
中立と非武装を掲げても他国に侵略された国は数多ある。
明確な敵意を持つ相手に対して、良心だけで国を守ることができないのは歴史が証明している。

戦わない為に、銃が必要という事実。
一見矛盾しているようで、それこそが平和維持の要である。
日本を戦争に巻き込まない為に、抑止力としての強い自衛隊が必要で、
戦わずに守ってこれたからこそ今がある。
日本を戦争に巻き込まない為に、強力な兵器を整備している。


実戦も経験していない軍隊、ではない。
実戦を経験しないことに成功している軍隊、である。


偏るとバカになるし、あまり政治や思想的なことはブログに書くまいというポリシーはあったけど、
自衛隊が実戦を経験していないという部分は、日本人が誇って良い部分だと思うのです。
本日は実にバレンタインらしい更新だった。

陸自に戦車400輌は少ないのか?(2) ~ 議論の続き ~

2011-01-02 18:33:21 | 軍事ネタ

元旦早々!
2日連続で、今日も文字だけの長文軍事ネタ更新です。
とても読みづらいものになると思うし、
完全に個人に宛てた更新となるので、
興味ない人は読み飛ばしてください!
昨夜の軍事ネタカテゴリの記事、陸自に戦車400輌は少ないのか? についた質問コメントへの回答。


質問者さん、あけおめ、再度コメントありがとう。
踏み込んだ議論を期待していたとのことなので、それに応えようと思います。
前提として、質問者さんと俺とは自衛隊のドクトリンへの認識の相違を感じ、
また実際に戦争になってみない以上、何が正しい戦略かというのは証明されないので、
下記の返答は質問者さんの意見を否定するものではなく、
「ゆっきぃ的にはこう考えている」というつもりで読んで頂けると幸いです。

以下の枠線の中の文章が、質問者さんのコメント。
長いので省略してあります。
全文を読みたい方は陸自に戦車400輌は少ないのか? 記事のコメント欄へ。




中国・ロシアとの戦いでは長期戦を避けるべきという意見は全面的に同意で、
自衛隊の戦力は縦深に欠け、そもそも長期的に戦えるようには作られていない。
量より質を重視した軍隊であり、この部分に関しては議論を必要としないだろう。

しかし一方で、質問者さんは上陸した敵部隊の補給線を洋上で遮断して、
上陸部隊を孤立させ遅滞作戦を以て消耗を待つという風に見え、
数ヶ月以内に補給線を断つという消極的な戦略は短期決戦とは矛盾している。

もちろん日本の領土は敵から見れば離島であり、
海上戦力や航空戦力による連携で補給線を洋上遮断するというのは非常に有力な戦略であり、
また敵軍にとっても恐れる事態であることに疑いはない。
しかし政治的な問題として、日本は領土が侵犯された場合、
数ヶ月と待たずに即座に反撃し奪還しなければならない世論の圧力に晒されると思う。

またトンネルや道路を破壊して敵上陸部隊の内陸部への進出を限定するという戦略だが、
本土決戦を旨とする軍隊で、このような焦土作戦じみた防衛戦略が前提とされてるだろうか。
もちろん、敵部隊の進出阻止が不可能と判断されればそれも選択肢に入ってくるだろうが、
道路を破壊すれば友軍部隊の反撃ルートも遮断されることになるので、
あくまでも最終手段の一つ程度に留めておくべきだと思う。


本土の防衛においては"上陸阻止"が基本となるだろうが、
しかし自衛隊の重視する砲火力などの装備体系を見ると、
本土の陸上戦において「上陸させて叩く」という戦略が適応されていると考えてる。

つまり敵が上陸してきた場合、上陸地点に橋頭堡を築き内陸部へ進出してくる前に、
早期にMLRSなどの砲撃と空自の作戦機で上陸地点を叩き、
地上の機動兵力で打撃を加え上陸地点を制圧するというような、
いわば「上陸させて叩く」という戦略が有効に機能し得る体制にあると思う。
無論これは、空自の航空阻止作戦及び、陸自の沿岸での重MATや中距離多目的誘導弾などによる迎撃で、
敵上陸部隊を洋上で漸減させ上陸阻止を試みることは前提である。

そしてこの「上陸させて叩く」という防衛戦略を実行する場合、
もちろん早期段階で反撃し上陸地点を制圧しなければ敵部隊の内陸部進出を招くだろうし、
その早期段階での反撃を実現するには陸自の機動戦力が必要となる。
その機動戦力とはもちろん、戦車である。
歩兵部隊や装甲車では打撃力に欠け、また上陸したばかりの敵兵力はさほど重火器を持ち込んでいないと想定され、
その局面において、戦車の制圧力は陸自の保有する兵器の中で最も確実性があり、敵上陸部隊にとっても大きな脅威であると考えられる。




前回記事で「>また戦車は全て90式及び10式であるものと仮定する。」と記述したのは、
前回記事の返答は日本に必要な戦車数を算出するという趣旨だったので、
算出方法を単純に、かつ現実的な数字を出す為にそう仮定した。
なぜなら74式戦車と90式&10式では部隊の編成法が異なり、
74式戦車の編成法で算出すると車輌数は90式&10式の部隊よりももっと膨れ上がってしまう。

現実的に戦車の配備数は減勢しているので、それを考慮に入れ、
また残った74式戦車の部隊内容も戦車減勢と共に改編されていくだろうという予想もこみこみで、
全ての編成法を90式&10式と仮定したのであり、つまりあの文章は、
「全て90式及び10式の編成法で考えるものとする。」と読み変えてもらって良い。

現状の年間11~15輌ベースの調達数じゃ非効率極まりないのは確かで、
実際に90式戦車は2020年以降から退役が進行する可能性があり、
日本は旧式戦車を主力に本土防衛戦を行わなければならないという危惧は、
現状のままじゃ現実となってしまうだろう。

しかしゲリラ戦的な小規模戦闘において1~2世代前の兵器で戦力になるかという質問に対しては、
俺としては「戦力になる。」という見解も併せてここで述べておく。

何故なら74式戦車が戦うとすればこの日本本土での上陸阻止及び橋頭堡制圧、もしくはゲリラ戦じみた戦闘であり、
そのシチュエーションにおいては、敵にも十分な主力戦車があるとは考えにくい。
その場合の74式戦車の対戦相手は、敵軍の水陸両用戦車、軽戦車、装甲車、歩兵部隊となる。
そのような敵兵器に対しては74式戦車は機動戦力として、装甲・火力ともに十分に通用する戦力だと思われる。




質問者さんと俺との認識で共通しているのは、
「敵上陸地点に砲爆撃を加え橋頭堡構築を阻止する。」
という部分。
意見が相違しているのがその後の対応のこと。
質問者さんの言う、橋頭堡への砲爆撃及び補給線遮断、そして地雷や交通路破壊による遅滞作戦で、
敵部隊の継戦能力を締め上げていくというのは、前述したように完全には俺は賛同しかねる。

俺の意見としては、上陸された場合は、
橋頭堡への砲爆撃、補給線遮断、その後には機動戦力による反撃が有効と考え、
故に十分な戦車兵力は陸自に必要と考えてる。
その為には質問者さんの言うような道路網の破壊は、
友軍の戦車部隊の反撃経路が失われる意味で最終手段だ。

そして質問者さんの言うように、敵が物量だけを頼みに闇雲に上陸してくるような事態になれば、戦車は尚更有効だと思われる。
何故なら、主力戦車を揚陸させるには希少な大型の揚陸艦が必要で、
しかし闇雲に物量だけでの上陸作戦でくるならそこまでの重火器は日本には持ち込めない。
強襲揚陸艦などを動員するには、完全に制空権・制海権が確保されている必要があるものと思われ、
現状の中露の空海戦力で日米相手にそこまでの優勢を確保できるとは考えにくく、
つまり前述したように、敵上陸部隊の主力は水陸両用戦車・軽戦車・装甲車・歩兵部隊となる。
その場合にこちらに十分な戦車戦力が存在するアドバンテージは、計り知れないほど大きいものと思われる。


つまり質問者さんと俺との認識の決定的な違いは、遅滞戦術を重視するか、
早期反撃により橋頭堡制圧を重視するか、であると思われる。
この早期反撃の実現の為に十分な打撃力を有する機動兵力として戦車は必要であり、
また各普通科師団に現状通り、大隊規模の戦車部隊の配備が望ましいと考えてる。

大隊以下の規模にするなら、普通科師団に戦車を何輌まで配備するのか?
それが焦点となると思うが、いずれにせよ、400輌まで削減されれば諸兵科連合を組めなくなる部隊も出てくると思われ、
陸戦を行うにあたって望ましくない戦力状況になることは間違いない。

陸自に戦車400輌は少ないのか?

2011-01-01 18:48:43 | 軍事ネタ

以下は前回の軍事ネタカテゴリの記事、
10式戦車と機動戦闘車、戦車400輌までの削減について に寄せられたコメント。
このテーマに自分の考えを回答するには長文になると思うし、
面白いと思うので新記事としてこちらで回答。




まず適切な戦車の配備数ということだが、これは敵対勢力の規模に依るもので、
日本への脅威に対処できる戦力の維持が必要となる。
近年の中国やロシアの軍拡を見ると、その内容が特に海軍の揚陸戦力や空母の増強などに指向されてるのは明白であり、
これは日本にとって軍事的脅威となる。

その直接的な両仮想敵国が軍拡態勢にある以上、日本は軍縮をすべきではなく、
拡大をしなくとも少なくとも現状の定数は維持されるべき状況であると思われる。

その観点から望ましいと思われる戦車の配備数を考えてみる。
また戦車は全て90式及び10式であるものと仮定する。


まず日本で一番戦車が配備されているのが、北海道を防衛する北部方面隊。
北部方面隊には機甲師団である第7師団があり、その他にも第2師団と2個旅団、そして第1戦車群がある。
これらの戦車隊を合計すると、北海道だけで凡そ450輌もの戦車が配備されている。

さらに本土には富士教導団、第1教育団もあり、合計で凡そ130輌。
その他に普通科師団には必ず1個戦車大隊が組み込まれており、全国で合計8個戦車大隊。
これらの普通科師団に組み込まれている戦車総数を合計すると340輌。

以上の編成を全て総括すると、凡そ920輌が必要ということで、実際これが現状の配備数。
ここから南西重視にシフトして北部方面隊の第1戦車群を廃止したりするにしても、800輌は必要だろう。


現代の陸軍編成は"諸兵科連合"が原則である。
これは異なる兵科同士を組み合わせ、相互に弱点を補完し合う編成で、
ゆえに歩兵師団であっても戦車部隊が組み込まれているし、機甲師団であっても歩兵部隊はいる。
戦車が歩兵を守り、歩兵が戦車を守るのである。

自衛隊の戦車定数400輌という数字が実現すれば、
それぞれの普通科師団に戦車大隊を配することができなくなり、
現代軍事学の基礎的な原則である、諸兵科連合を否定することになるだろう。


また日本の地形上、陸戦が行われるのならゲリラ戦的なものになるから戦車は重要ではないという意見。
しかしアフガンやイラク、そしてチェチェンや中東のイスラエルが行っている戦争では、
市街戦やゲリラ戦においても戦車は強力であり、有効で必要なものであるという戦訓が認められている。
これらの現代戦争の実例を見て、実際にカナダ軍は予定されていた戦車部隊の廃止を取りやめた。
ゲリラ戦においても、戦車の圧倒的な制圧力と装甲は必要で、歩兵の強力な盾と矛となるのである。


また個人的に最も重要視しているのが、戦車の持つ"抑止力"である。
日本に戦車が大量にあることによって、侵攻する側はそれらを撃破するだけの重戦力の揚陸の必要性を強要される。
となると船団は大規模にならざるを得ず、秘匿性も望めなくなり、
一度の揚陸作戦にかけるリスクも多大なものとなり準備することも困難となる。
戦車があることによって、結果的に、日本への上陸を企図することを難しくするのである。
この抑止力については、以前の記事で詳しく書いたのでそちらを参照願いたい。
→ 陸自は必要か不要か


以上に記述した理由から、ゆっきぃ的には、「戦車400輌は少ない」と考える。
そしてお正月らしい更新ができて満足している。

10式戦車と機動戦闘車、戦車400輌までの削減について

2010-12-26 18:39:59 | 軍事ネタ

こんばんは、ゆっきぃです。
今日のテーマは、我が国が誇る陸上自衛隊の最新装備である、
10式戦車機動戦闘車について。


90式戦車10式戦車

10式戦車とは、老朽化した陸自の74式戦車を代替する新型戦車である。
2010年から調達が開始されたばかりで、現在のところ13輌分が取得されており、
また中期防整備計画の発表によると、2011年~2015年の間にさらに68輌を調達することが決定されている。

現在の主力戦車である90式戦車は50tという重量ゆえに、本土での架橋や高速道路での走行に問題がある為、
北海道での運用が主となっており、本土防衛には旧式の74式戦車が配備されている。
この点で10式戦車は90式戦車よりも軽量化し、重量を44tに押さえ本土での戦略機動性を高め、
同時に火力・装甲・機動性の全てが90式戦車よりも上回るか同等以上を目指した戦車である。
また統合的な戦術情報・指揮システムであるC4Iシステムを搭載することにより、
結果的に10式戦車の作戦能力は90式戦車を凌駕することと思われる。
外観上も90式戦車に比べ丸く小さくかわいくなった。

これから先は本土の74式戦車は全て退役し、北海道は90式戦車、
本土は10式戦車という配備態勢になっていくだろう。

尚、日本の戦車の寿命は概ね25年から30年前後と認識されており、これに従うなら、
2015年以降から90式戦車の順次退役が進行する可能性があり、
それも10式戦車で代替するかもしれないが、まだ未定である。


機動戦闘車のイメージ図M1128ストライカーMGS

機動戦闘車とは、現在陸自向けに開発中の装輪装甲車。
搭載予定の105mm砲は軽戦車や装甲車、歩兵陣地や建造物などを撃破する火力を有し、
加えて装輪方式により舗装された道路などでは時速100kmで機動できるものとし、
また戦車に比べ重量が軽いので輸送機による空輸も視野に入れている為に
侵攻を受けた際の即応展開能力に優れるが、
その分装甲は機関砲などに対する抗堪性を有する程度とされる。

これらの特徴により、歩兵の直接火力支援、または機甲部隊の偵察任務などの任務が想定されており、
第二次世界大戦時の突撃砲や対戦車自走砲の現代版といったイメージ。
同様の兵器としてはアメリカ軍のストライカーMGS、イタリア軍のチェンタウロ戦闘偵察車がある。


しかし機動戦闘車のような兵器には性能のバランスから、欠点もいくらか存在する。

105mm級の砲は前世代の戦車や軽戦車なら撃破できる可能性があるが、
第一線級の現代主力戦車に対しては明らかな力不足であり、
想定されている対戦車戦闘任務に充てるには危険が大きい。
あくまでも歩兵支援の為の陣地や装甲車への砲撃がメインといったところ。

また装輪式というのは、装軌式に比べ接地面積が小さい為に「踏ん張る」ことができず、
自分の砲撃時の車体の動揺を抑えるのに時間がかかり、
よってその場合には速射性能と命中精度に不安がある面で、
同級武装の装軌式装甲車よりも攻撃力が低下すると思われる。
もっとも、10式戦車の開発で得られた技術成果を導入することで、
ある程度車体の動揺を抑制できるとの発表もあり、実車の登場待ちといったところ。


もっとも重要なのが、財務省的には機動戦闘車を戦車と同種の兵器と認識していることだ。
つまり財務省は陸自の戦車の保有総数を一旦は600輌と定めたが、
これは90式戦車や10式戦車と機動戦闘車を合わせた数字ということになる。

機動戦闘車はあくまで装甲車であり、決して戦車ではなく、
火力・装甲・路外機動性の各性能を見ても、戦車の任務を代替することは到底できない。
もしも機動戦闘車を100輌生産すれば戦車は500輌しか保有できないことになり、
これでは陸上戦力の低下は明らかなので、この認識が改定されなければ、
せっかく開発された機動戦闘車は「いらない子」扱いとなるかもしれない。

しかも12月17日に発表された新しい防衛大綱では、さらに戦車を400輌まで削減するという。
この400輌というのが機動戦闘車も含まれた数字なのかどうかは記載されていないが、
もしも含んでの数字なら、尚更せっかく開発した機動戦闘車は不憫に思える。
10式戦車よりも機動戦闘車を優先する理由は思い当たらないので。


現在、陸自には341輌の90式戦車と、約550輌の74式戦車があり、戦車は合計900輌ほどである。
74式戦車は順次10式戦車に置換されるものとして、ここからどういった配備模様となっていくのか。