Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

SONY PS-LX550 について

2020-07-18 22:50:52 | レコードプレーヤー

 知人からアナログレコードプレーヤーの修理を頼まれた。SONY PS-LX550なのだが製品についての情報がほとんど見当たらない、、と思っていたら幸いに海外のサイトで有料でmanualをダウンロードできるところがあった。

 

「It's a Sony」我々の世代には懐かしい響きだ。このレードプレーヤーはベルトドライブ、リニアトラッキングというもので外観はTechnicsのSLシリーズみたいだが中身はB&OのBeogram 4000シリーズに近い。プラスチックの筐体でリニアトラッキングという組み合わせはCD前夜と思われる当時数社から発売されていたらしい。

     

ターンテーブルは見事な薄さで重量を計ってみると360gという超軽量。

 

 修理の内容はなぜかACコードと信号線が共に根元から切断してあるというもの。ご本人が切断したらしいが理由は定かでない。。とりあえず此処から

    

 これで通電すると、、幸いに火や煙は出なかった。一応ターンテーブル駆動用のモーターは回転するが異音がある。またリニアトラッキングのモーター音もするがアームは動かない。各々清掃と注油して

 

 リニアトラッキングのベルトは経年変化でほとんどがダメになっているのだが適当な小径のベルトがなかったのでOリングと交換した。軸には強いテンションはかけられないがまあ大丈夫だと思う。ターテーブル駆動モーターのゴムが硬化しているのが異音の原因らしいがここは締付けの調整でなんとか治った。

 実は付属のMMカートリッジの針がなく音出しできない。またレコードが無いときにスタートするとターンテーブルの中央付近に針が降りる。これは仕様なのか不明。

 SONYの製品一覧でも見つけることができなかった機種だが型番からの後継機はDD、レコード無しを検知するなどの説明があるのでひょっとするとこの時代の製品はその機能は無かったのかもしれない。リニアトラッキングアームの制御基板

 

 電源と信号のミューティングリレーがあるが結構単純化されていてB&Oとはかなり様子が異なる。B&Oで苦労したモーターもサーボはかけられていない。ベルトドライブの次の世代のDDとリニアトラッキングを組み合わせたレコードプレーヤーは国内数社から発売されていたらしいがほとんど一緒だったという情報もありひょっとするとこの製品もOEM供給されていた可能性もある。アナログ再生というと物量を投入した重く厳格なイメージだがレコードからCDに移行する時期のアナログプレーヤーに初めて接してみて長く続いたアナログ再生の時代にも当然技術進歩があってそれをアピールした製品が存在したこと、良い音で聴きたいという当時の音楽再生に対する思いなどが垣間見れた気がした。

 一応修理は完了したが針がないので試験運転ができない。薄いターンテーブルの実力は? ベルトドライブ、リニアトラッキングが再生音に反映されているのだろうか?それ以前にちゃんと動いてくれるのか?実際に音出ししないと安心できない。

 

 

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。

 

後日談1

 オーナーにお返ししようとしたら針を持参されていてまた持って帰って試聴した。

 プリメインアンプはYAMAHA CR1000 スピーカーはALTEC618銀箱にwestern electricのKS14703フルレンジスピーカーを入れたもの。モーターからの異音はなくストロボで回転数も確認した。ワウフラッターは測定できないが許容レベルだと思う。アームの動きもスムーズで問題ない、、と思ったら残念ながら右矢印(戻る方向)のスイッチが反応しない。分解すると密閉されたマイクロスイッチで交換は難しい。接点を回路で操作すると動作するのでスイッチが原因なのは確実、、と思っていたら気がついたら動作するようになっていた。ただしこれは一時的なものかもしれない。その後は正常だが最悪このスイッチが機能しなくてもほとんど支障はなさそうなので此処はスルーさせてもらうことにした。

 早速試聴してみる。再生音は一聴レンジが狭い、高音も低音も不足している、全体に薄い感じで情報量が少ない、音に生気がない。使いこなしにテクニックがあるのかもしれないしカートリッジを交換すればかなり変化はあるだろうが多分根本は変わらない。しかしレコードを乗せたらあとは蓋を閉めてボタンを押すだけ、リピート再生もできるし面倒なことを考えずに純粋に好きな音楽を楽しみたいという人にはぴったりだと思う。大衆オーディオという言葉があるか知らないが当時はこういった製品が溢れていた。アナログレコードが聴かれなくなって数十年眠っていたが久しぶりに日が当たる場所に出てきたわけでまたがんばって働いて欲しいと思う。

 

後日談2

 オーナーさんから連絡があって「音が小さくてボリューム一杯でなんとか(音が)出る」。今日対面してお話を聞くとやっぱりLINEに直接入力していた。アンプは数年前の購入品なので多分Phono入力は無い。プレーヤーを稼働させるにはフォノイコを入手しなくてはならずやっぱりアナログ再生は大変だ。

 

後日談3

 その後フォノイコを入手し無事音が出たとの連絡があった。よかったです。

 処分できないLPレコードを持っている人は結構多くなんとか再生できれば懐かしいジャケットと共に当時の思い出が蘇る。お小遣いをためてやっと買った1枚のLPレコードを繰り返し聴いた世代は濃密な音楽体験がある。一方で今の子供たちのようにサブスクが当たり前の世代はより多くの音楽ジャンルと接するチャンスがありその中から気に入ったものを探し出す事ができる。感性が豊かな頃に聴いた音楽は一生の嗜好を決めるかもしれない。