Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

Technics SL-10 について

2017-08-05 01:22:37 | レコードプレーヤー

 革新的な方式であるダイレクトドライブによるターンテーブルを発表していたTechnicsからまた画期的な製品が登場した。LPジャケットサイズのレコードプレーヤー「SL-10」で発売は1979年、価格はキリの良い100,000円。画期的だという理由は複数あってまず究極のコンパクトサイズの315mmx315mm、リニアトラッキングアームは蓋にある4個のボタンスイッチでコントロールされる。付属のカートリッジはMCタイプでプリプリアンプ(ヘッドアンプ)が内蔵されスイッチによりパスもできる。光学式のレコード検出機能で回転数が自動で切り替わる(手動も可)。そしてダイナミックバランスのアームとクウォーツロックダイレクトドライブ機能でプレーヤーの向きはどの角度でもOKで垂直でも再生可能。このタイプのプレーヤーは評判を呼んでシリーズ化されしばらく続いたしTechnics以外の他社でもあったように思う。SL-10はそれらの第一号機にもかかわらず完成度は非常に高い。
 

 かの五味康祐氏は最晩年の病室にこのプレーヤーを持ち込んでいたという話を聴いたことがあるが真偽は不明。その時のためにと思って以前に購入しておいたのだが(ウソ)久しぶりにスイッチを入れてみるもアームが動く気配はない。

 
 蓋を開けてターンテーブルの回転ボタンを押すと回転する。問題は蓋に組み込まれているアーム機能のよう。


 早速分解してみましょう。蓋は内側から多数のネジでカバーが留められている。これらのネジを外すとストレスなく外れるのでもし外しづらい時はネジの外し忘れを疑う。中央のレコード押さえやカートリッジもそのままでOKです。その前につっかえ棒を外しておく
 

 現れた基板と左下にアームの水平移動用のモーターが見えますがかけられているゴムベルトが滑っています。


 ここは100%ダメになっているらしい。そのほかが無事であることを願いながら代替え品がないか探しまくるが、、

 探したゴム輪はちょっと幅広なのでハサミで切って試適するも敢え無く滑ってダメ。しょうがないので思いっきり小さいピンクの輪ゴム
 
 これで蓋を閉めると一応動く。。しかし途中までしか移動しない。蓋を開けて眺めると
 
 スライドのレールにあってワイヤーをカバーしているパーツの位置が違っていた。これは非分解で対応できた。些細なことだが裏のネジは大きなプラスドライバーが必要で通常のでは舐める。今回は5回程度着脱した。
 またこのゴムベルトはどうやって調達するか悩ましい。入手できるベルトはいずれも大きいものばかり。

 ここまでの作業で正常運転されるようになった。startボタンを押すとレコードを感知してまずターンテーブルが回り出す(レコードが載っていないと回らないので故障と早とちりしないようにしたい)、しばらくして定速になるとアームが降りて演奏が始まる。途中でまたstartボタンを押し続けるとアームが挙がり側方(進行方向)に移動し指を離すと止まる。cueingボタンでアームは降りる。なお逆方向への移動はできない(これは後でマチガイと判明)、当然オートリターン付き。

 付属していたカートリッジはMCカートリッジの「EPS-310MC」だがこの個体には「EPC-P30」が付いている。これは同社のSL-QL15の付属カートリッジで単体で市販されなかったとの事。

   松任谷由実 紅雀 1978年
 
 松任谷性になって初めてのアルバム  本人が言うにはユーミン史上最も地味なアルバムだそうで
 一聴爽やかな高音 P30の針はまだ生きている様子 とても聴きやすくワウも感じない。SL-1200よりも滑らかに聞こえるがこれは直接比較ではないので自信がない。動作もおかしな挙動はなく垂直に立てた状態でも大丈夫。MX-1ではローエンドはわからない。

 
 「Technics SL-10」はMoMA(ニューヨーク近代美術館)で永久展示されているそうでこれはB&O Beogram 4002と同様。確かにそれにふさわしい内容だし当時の開発された方々の熱気が伝わるような製品で当時100,000円は決して高いとは思わない。数年後にはCDが現れてレコードは静かに引退していくがその最後を飾るに相応しいモニュメント的なプロダクトだと思います。B&O Beogram 4002との共通点も多いがこの2製品を並べてみて思うことはお国柄の違いなのか性格の違いなのか、、。片や所有する満足感、この品格に生活の質そのものを高めたいと思わせるような説得力、片やハイテクを駆使したおもちゃ箱的なびっくり、、。どちらも音楽鑑賞には何の不満も感じないがこの差は一体なんだろうか?皮肉なのは40年ほど経過した現在でもアナログレコードは生き残っているがこれらの方式のレコードプレーヤーは皆無だということ。今のご時世ではB&O Beogram 4002やTechnics SL-10のような製品は今後は出てこないのではないかと思います。大切にでもしっかり使ってあげたい。


 お読みいただきありがとうございました。


 追記1
 また大ウソを書いてしまいました。まずアームの移動ですがアームが挙がっている場合に「stopボタン」で右方向(戻す方向)に移動できます。アームが降りている場合は文字どおりstopとなって最初の位置に戻って静止する。もう一つ、「start」「stop」ボタン共に軽く押せばゆっくりと、強く押せば速く、と2段階に(ボタンに矢印表示が出て矢印1つがゆっくり、2つが速く)アームがそれぞれの方向に移動するという至れり尽くせりの内容だった。失礼しました。

 追記2
 以前「アストロプロダクツ」で購入していた「Oリングセット」の一番細くて大きなものをなお指で引っ張って(!)伸ばしたものをベルトに使ってみた。思いっきり力を加えても切れないし少ししか伸びない。
 
 直径は引っ張った後で18mmくらいで丁度よくフィットしました。これならホームセンターで売ってるOリングでも十分イケそう。

 追記3
 拙ブログを読んでくださった「Iさん」からベルト提供の申し出がありました!

 「ウレタンオレンジベルト」だそうで熱接着して使うのだが瞬間接着剤でもOK!だそうです。このベルトで修理しておられる記事も見たことがあります。ポイントはいかに正確に接着できるかにかかっているわけで今度チャレンジしてみます。ありがとうございます。

 追記4
 毎日聴いています。動作は安定していて不思議と針のホコリも気にならない。全体がリジット(と思われる)なので脚部のインシュレーターが大活躍する。製品コンセプトから大げさな防振設備は避けたいが今はテーブルに載せているので何かするたびにスピーカーのコーン紙が揺れる。
 レコードを載せて蓋を閉めるのだがこの蓋が重厚で(決して動きが鈍いわけではない)また最後にロックする時は「カチッ」というまでさらに押し込む感じになる。レコードの溝はよく見えない(老眼は否定しないがアクリルには傷は少ないと思う)のでアームを盤の途中まで動かしたい時にはちょっと苦労する。この反省(?)からか廉価版の「SL-7」ではフタの前面がアクリルになって盤がよく見えるようになり高級版の「SL-15」では(数字は価格を表していておもろいネイミング)曲選択がプログラミングできるようになった。そうすると未来のCDプレーヤーみたいでボタン操作=デシタル=夢の未来、、みたいな図式だったのか〜(!)などと思ってしまう。アナログレコードを機械に挿入してあとは外部から操作して音を取り出すという感覚はアナログらしさという(誠に不確かだが)フィーリングからちょっと外れるような気がする。その点ではB&O Beogram 4002はそうは感じない。何が違うのかと考えるがやはり回っているレコードとの距離感のように思う。「Beogram 4002のダストカバー」と「SL-10の蓋」は全く違う役割を持つ。両者の年代は少し異なるので同じ土俵に上げるのも如何なものかとは思いますが半世紀近く時が経って「アナログプレーヤー」というくくりで見た場合です。