Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

Optimus について

2019-06-14 19:00:18 | キャンプ

Optimus社はスウェーデンの燃焼器具専門メーカー。その歴史は古く創設は120年前の1899年。

 いまなお続く老舗ブランドで多くのロングセラーを有する。かつてポータブルストーブの燃料はガソリン、灯油が主だったが近年はガス器具の発達が目覚ましい。実際に使ってみるとその便利さは格別で取り扱いの容易さや火力など通常使用では何の不満もない。しかし高所や寒冷地などでは気化に支障があるらしくまた現地での調達の容易さなどから液体燃料器具の出番は残されているらしい。学生時代はまだガス製品は少なくほとんどがホワイトガソリン又は灯油燃料だったし器具も大きく重いものだった。オーストリア製の「ホエーブス625,725」は当時一番使われていたように思うが面白いことに懐かしく思っている人が多いためか製造中止から四半世紀経過した現在でも結構な値段で取引されている。単純な仕組みゆえ古(いにしえ)の器具でも適切なメンテナンスと部品の供給で生きながらえる事が多くまた製造年に伴うわずかな違いを重要視したビンテージ市場も存在する。液体燃料のストーブは予熱やポンピングなどの儀式が必要で独特の匂いが漂う。野営の目的が趣味に限られる現代においてはこれらも大きな魅力となっている。

 子供が独立した現在ではファミリーキャンプに出かける事は無くなったがそのかわりに最近流行りのソロキャンプに魅せられる。キャンプの魅力は多々あるが、特に焚き火や火器については大人の火遊びと言った様相で料理とともにその中心的な存在。必然的に道具にも目が行ってしまう。子供たちと出かけた時はコールマンのツインバーナーだったが今では非常時に備えてたまに点火試験する程度。この間古いOptimusのストーブを入手したので歴史や使い方を学習しながらメンテナンスしようと思います。

 

 Optimus SVEA 123R(スベア 123R)

 Optimusの象徴のように言われるSVEA 123Rだが実際には1955年にスウェーデンの他社で開発されたものを1969年にOptimus社が権利を買い取ったもの。初めてのポータブルストーブとしてまた環境への負荷の問題から焚き火ができ難くなった事もあって当時のバックパッカーに愛用された。現在ではより軽量な、ホワイトガソリン以外の燃料も使用できるストーブに取って代わられたが半世紀経過した現在でも海外に移して生産されている。加圧ポンプは無く(オプションであり)プレヒートのみで点火する。SVEA123Rの前身は他社で製造されていたSVEA123で外観の違いで識別される。(「SVEA」とはスウェーデン製という意味らしい)

 

 


 現行のカタログデータ   

    ●収納サイズ/ 100 X 130mm
    ●重量/ 550g
    ●出力/ 1400W(1300Kcal)
    ●燃焼時間/ 120ミリリットルの燃料で最高2時間
    ●使用燃料/ホワイトガソリン
    ●付属品/取扱説明書

 新品の価格は12,000円〜といったところでガソリンストーブとしては最安値かと思うし中古市場でも球数は豊富。新旧比較の記事も見受けられるが構造は殆ど変わってなくてわずかに材質に変更があったらしい。アルミの蓋はクッカーだが実際は燃焼後の五徳に被さるのでガソリン臭が抜けず、これで湯を沸かすのは気がひける。それよりも被せる事で柔な風防を変形から守る意味合いが強い。バルブにはSVEA123では組み込まれていなかった針による燃料噴出孔の掃除機能がある。火力の調節ツマミには必要なレンチが3個組み込まれていて収納時にはクッカーの柄とともに風防の穴に収まる。穴はもう一つ空いているのだがこれはSVEA123時代には必要だった燃料噴出孔の掃除器具を収納していた名残かもしれない。

 

 メラニンスポンジと真鍮ブラシとクリームクレンザー使ってキッチンで掃除した。あまり綺麗にし過ぎると使い難くなるのでこれくらいでヤメておいた(嘘です)。可愛らしさと頼もしさが同居している。いろんなドラマが詰まっているのだろうなぁ。火の鳥のロビタに見えてきた。。

 

 Optimus No8(R)

 この小型ストーブもOptimusを代表するものだったが現在は製造されていない。最初に製造されたのは1940年代後半と言われるので第2次世界対戦後ということになる。初期型のNr.8の特徴はケースがアルミ製、パテントナンバーが無い事で識別できる。1950年代のセカンドモデルでは鉄ケース、REG.Noが記入されるようになる。

 

 これはセカンドモデルでNo8Rと比べるとケースが角いが1950年代終わりには一般的な丸みを持つものになる。また文字が打ち出されているエンボス加工は丸ケースの初期まで続いた。1960年代にRADIUS社を吸収合併して同社の特許だった内臓針によるノズルの清掃機構が加わったがこの時代の製品には清掃用の専用器具が付属していた。SVEA123Rと同じくプレヒートのみで点火するがオプションの加圧ポンプは共用。類似の製品も多く日本にも存在した。

 この個体は好事家から譲ってもらったのだが状態が良いのでなかなか使えず観賞用になってしまっている。。

 

 Optimus 111B

 箱ストーブの代表格「Optimus Hicker+(ハイカープラス)」の先祖はOptimus 111で写真で見ると8Rとあまり変わらないように見えるが実際はかなり大きい。

 

 このシリーズは多くのバリエーションがあるが発売順にみると
  111   灯油
  111B ホワイトガソリン
  111T ホワイトガソリン、灯油、アルコール
  111C ホワイトガソリン、ガソリン、軽油、灯油、アルコール
  111Hiker ホワイトガソリン、ガソリン、軽油、灯油、アルコール
  Hiker+ ホワイトガソリン、ガソリン、軽油、灯油、アルコール

 となっていて次第にマルチユースな設計になっていて燃料の入手しにくい地域でも稼働させる工夫かと思う。開発は第2次世界大戦開戦前後の1940年頃とされる。webの情報では大型のため燃焼カロリーも高く火力の調節が効くので煮炊きができるとある。SVEA123Rや8Rでは全力でお湯を沸かすのがせいぜいで火力の調整もしずらく大勢の食事の準備には全く不向き。

 Optimus Hicker+はまだ新品で入手できるが製造されているかは不明で在庫限りかもしれない。

  

 111Bはホワイトガソリン専用。燃焼時の咆哮は結構喧しいが頼もしく感じる。

 

 

 

 Optimus 22B

 Optimus 22Bは111Bを2連にしたもの。ホワイトガソリン仕様

  

 大型の燃料タンクで加圧ポンプ付き。コールマンのツインバーナーのような2ヶ所のバーナーのカロリー差は無い。燃料噴出孔の掃除機能付き。かなり大型に見えるがコールマンよりは小さい。コールマンは風除けやオプションのテーブルなどが用意されていてゴージャスだったがこれは素朴な雰囲気。しかしケースを開けてバーナーをタンクごと引き出すギミックはなかなか雰囲気がある。点火試験だけで実際の稼働は未だだが使い易いかも知れない。楽しみだ。

 

 

 Alladin M-1942 GIストーブ

 Optimus社ではない番外篇。

   

 Alladinといえば灯油ストーブやトースターで(!)人気だがこちらのストーブは第2次世界大戦中のUS GIストーブで40年以上前に大学の先輩よりから頂いた。ずっと不調で分解整備したことは数知れず。状態はとにかく炎が安定しない、火だるまになる、というもの。現在でもパッキン類は入手可能なので購入、交換してみるがやはり芳しくない。。

 

 加圧ポンプ付き、バルブとレバーがありレバーを操作することでニードルが上下して燃料噴射口を掃除し燃料をストップする。これらは機能していたが燃料の気化がうまくいかないように見えた。ガソリン仕様ではないのかも知れないと思い灯油に交換してもやはり不調は続く。プレヒートが不足しているのかも、、と思って長時間不調のまま燃焼させてみてもダメ。これには困った。

 入手して40年、、その間何度も諦めて手放そうと思っていたのだが今回ようやくうまくいった。原因は「プレヒート不足」というなんともお粗末な理由だった。他のストーブの厳冬期の記述で「プレヒート2回は必要」というのがあったため念入りに行ってみたら、、だった。

 火力は大したことないがステンレス製、五徳の開閉は瞬時に、ちょっとくらい熱くてもケースに入れて素早い撤収が可能。落下傘部隊で使われたらしいが精度、質感は高い。レバーのツマミと専用レンチが欠損しているのが残念だが専用レンチは外れ易いので欠損している場合が多いとの事。レバーのツマミは以前オークションで自作品を出品している方が居てびっくりした事がある。購入しておけばよかった。。

 

 

 

 

 

 お読みいただきありがとうございました。