WE100AからWE100Fのパワードスピーカーは電話業務用らしいのですが電話の音をスピーカーで拡声する必要があったのはどのような場面なのか。鉄道の駅舎に設置されて前の駅から列車が「そちらに向かった」という電話連絡が拡声されて伝えられた、という説明を聞いたことがあるのですが真偽は不明です。ご存知の方はぜひ教えてください。
100A 100B 100C
100A,100B,100Cは回路図はありますので存在したのは確実だと思いますが、A〜Cの違いは、いつの時代か、何台製造されたのかなど不明です。
100D
100Dの回路図をそれ以前のものと比較すると、コンデンサー容量が僅かに変化したのと、ヒーター電圧が僅かに下がった程度でほとんど変化は無い。初段の真空管は77になっている。
100Eより一世代古く私は100Dより古いのは見たことはありません。
チェックするとかなり問題がありそう。
16μF+13μF/200Vの電解コンデンサーは上に減圧弁があったみたいで吹き出している。
この電解コンデンサーはナットで止めるタイプでWE91Bなどと一緒です。シャーシからは浮いている必要があるためかシャーシとの間に紙製のスペーサーが入っている。
この表示が欲しかったので(回路図と同じ)分解して中身を取り替えることにしました。
WE91Aレプリカを作るときに苦労したところだったのでちょっと工夫してみる。内部端子はアルミ製なのでそのままではハンダ付けできないので横穴をあけてリード線を結びつけるという荒技を試みる。
整流管はやっぱりご臨終のようです。電界コンデンサーが原因か、カップリングコンデンサーがお漏らしして過電流が流れて出力管を道連れに逝ったのか。。
部品をリストアップ、注文してしばし待ちます。
ピンボケすみません。例のごとく届いたチューブラー電解コンデンサーを入れて組み立てて完成。 22μF+22μFです。もっと大きい方がいいとは思いますが。カップリングコンデンサーは同時に注文したオレンジドロップ。何十年ぶりに購入。
ケースに仕込んで各々のコンデンサー周りを配線し直し。カップリングコンデンサーの固定だけで4本のネジが使われている(取り付け金具を留めてるネジを含んで)。この厳重さが信頼性や当時は多分気にしなかったであろう音質にもいい影響を与えていると思う。
パネルを外すと両切りされるスイッチをショートして各電圧測定と音出し。うまくいきました、、が今度はボリュームがおかしい。立派な部品ですがスムースに回らないし、うまく音量調整できない。
外してメーカーを確認すると「ELECTRAD」Newyorkの知らない会社。ネジ止めで分解可能。
掃除してうまくいきました。電源コードはシャーシからの出口の傷んでいる所をカットしています。コードの抜け防止はシャーシに空いている穴に紐で留めてあります。またコードと紐は糸で結んでいる。できるだけ再現した。
電気部分の修復が完了しました。整流管も交換しています。
キャビネットも合板の剥がれなどがみられましたので接着剤を入れ込んでクランプで締め付けて補修。リアパネルもサビ落とししてからデカールをマスキングして軽く塗装。
組み立てて完了、、のはずでしたがうまくいきません。両切りの後ろスイッチが不良になっていました。。しょうがないのでパスして
今度はうまくいきました。音質は、、ちょっと驚きです。これはイケる。4台の100シリーズ中ピカイチです。これは単純にスピーカーの状態が良いだけかもしれない。(これもけっこう補修してあるが)jensenスピーカーのコーン紙は脆く劣化しているのが多い。せっかくの小口径(5inch)フィールドスピーカーなので他のももう少しなんとかしてあげたくなりました。「古い方が音が良い」などとは軽々に言いたくないが物量と手間が投入されているのは事実。やはり音にも現れる(と思います)。
100E
100Eは100Fより一世代古いものだが比較的目にすることがあります。キャビネットの形状には大きな変化はありませんが回路はそれ以前のものまた100Fとも少し異なっています。100Fとの最大の違いはやはりスピーカーがフィールド型だということで、この製品の最大の魅力となっています。また電源スイッチもスタンバイ機能がありとっさの稼働にも支障が出ないように配慮されている。真空管もST管でやはり時代を感じます。
100E その1
裏のパネルを外すと電源が切れる(両切り)構造。このスイッチもシャーシから絶縁されている。
真空管 25Z5 43 CK108(6C6)
jensenフィールドスピーカー エッジがぼろぼろだったので修理しています。たしか他のスピーカーからエッジだけ移植した。またスピーカーはシャーシにはリジットに固定されず、キャビネットのフロントパネルにしっかりと押し付けられるような凝った固定方法。
電源スイッチはトグルスイッチを回転軸でコントロールしている、off,standby,operation とてもよくできています。
出力トランスはスピーカーの背中
入力トランス、チョーク、コンデンサーはしっかりした(?)WE製。また内部ハーネスもシアターアンプを彷彿させるような。コンパクトなパワードスピーカーだがやはり魅力がある。真空管は筐体の高さの制約からまた放熱の関係からシャーシに沈み込ませていて浅野 勇先生のアンプを思い出します。
部品点数も100Fと比較して多く凝った内容。
メインテナンスは以前行ったわけですがあまり覚えていない。シャーシ内が汚れているのは、、
221Cチョークコイルからピッチが溢れていたため。しかたないので外して掃除してまた組み立てる。また配線は単線だが被覆がほどけてるので(しょうがないので)スリーブを被せて配線し直す。
黄色のスミチューブ2本はフィールドコイルに行きます。各部動作チェックするとカップリングコンはダメのよう
はずして絶縁試験するとやはり漏れがあります。
分解してみるとペーパーコンのようです。
コンデンサーにはPCBが含まれてることがあるので(特に1970年台のもの)良い子はマネしないでください。適当なフィルムコンを入れ込んで完成。
ところがすんなりとはいきませんでした。最初耐熱パテで埋め込んだのですが絶縁は弱いようで、しばらくアタフタした。。
カプリングコンデンサーが漏れていると43のグリッドはカソードに対してプラスとなり超過電流が流れます。チョークトランスも加熱してピッチが流れ出したのではないかと思っています。
どうにかできました。結構楽しいものです。Western Electricのアンプリペア入門にはぴったりかと。カップリングコンデンサーを交換した直後は少しトゲトゲした感じはあったのですがすぐに落ち着いてきました。
100E その2
内容はほとんど同じ100Eです。「その1」と異なるのは電源のコンデンサーが変更されていることくらい。各部の電圧を測定すると「その1」よりは若干高いので「その1」はまだ問題を抱えているのかもしれない。(実は「その2」はスクリーングリッドへの抵抗が断線していたことが後で判明)カップリングコンデンサーはやはりリークありですので交換しておきます。
スピーカーのコーン紙特にエッジはかなりひび割れあり。「その1」は修復不能でエッジ部分を切り取った経緯があります。(フィックスドエッジからフリーエッジになった)今回はコーン紙用接着、調整、修復材で補修した。
また直近まで正常だった25Z5が昇天しました。急に電圧がとれなくなった。早速注文すると新品でも数百円で入手できます。
「その2」修復終わりました。
100F
100Fは製造された数が多いらしく一番新しいこともあってよく目にします。入力トランスは100シリーズ専用に開発されたWE282A、出力トランスはKSナンバーではない社外品。使用真空管は25Z6GTで整流、初段は6SL7GT、出力段は25L6GTの3球。トランスレスなのでヒーターは抵抗と直列に接続される。25Z6GTは全波整流管だがトランス巻線がないので当然半波整流。プレートはパラに直結かと思われるが100Fだけは各々に30Ωの抵抗が入る。2つのプレートの片方に電流が集中しないための工夫らしい。ヒーター抵抗とともにメッシュの筒型抵抗セットが8ピンソケットに入る。断線した時の対応かと思います。電源スイッチは両切りのもので100Eまでのスタンバイ機能は省略された。また電源はAC105〜125V以外でもDCで稼働する。当然極性は存在する。初段の6SL7GTはパラ接続だがグリッド間に15kΩが入っている。何のため?ゲインのコントロール?発振予防?わかりません。。トランスレスだがシャーシには0.1μFで落ちているのでうっかり触っても感電しない。それで100Eまであったもう一つのセンサースイッチが廃止されたのかもしれません。(ホントか?)ところで電源は相変わらずAC,DC兼用だがACでは20〜65㎐と対応幅が広がっている。20Hzとはいったい、、??どういった環境で使われたのだろうか。一番最初に書いた疑問がまた頭をもたげる。
この個体は外装レストアしてあります。とてもきれいだが残念ながら貼り付けてあったはずのデカールは無くなっている。木製キャビネットには足はなく床に直置きを推薦していることから低音増強を狙ったものと思われます。
入力コードの先端には外れ防止のフックが設けられている
出力トランスはスピーカーから離れて別に設置されている。
スピーカーはjensen製 5inch スタンダードシリーズの 「アルニコ5」
至る所に「KS」ナンバーの部品
電源スイッチは回転式両切り
唯一のカップリングコンデンサはマイカコン
ボリュームはオーマイト製
ヒーターと整流管プレートにつながる発熱ニクロム線はGTプラグ付のメッシュの筒に収められている。
10年ほど前にメンテしたままだがあまり支障は出ていない様子。電解コンも生きている。当時は整流管は交換した記憶があります。Western Electric社の製品なのにらしいのは唯一
入力トランスだけというもの。
消耗部品は何処でも入手できそうな汎用品がほとんど。製品群の中では一番手を抜いたものというイメージだが安っぽさは感じられない。卓上でモニター(?)する分には十分な音量。明瞭度も高く特に不満は無い。温かくなるので冬は手をかざして暖房代りにもなるし。趣味性の高いギアとしてこれは魅力的だと思います。
WE100シリーズはいずれもトランスレスですがアイソレーションを兼ねて117Vに昇圧するトランスを入れた方が良い、というか必ず入れるべきです。100Vと117Vでは音質がかなり違います。電圧が高くなった以外でもノイズが減るのかもしれません。当時と今ではACラインのノイズ量が異なると思われます。歪率計でみるとちょっとびっくりする。
お読みいただきありがとうございました。
後日談
WE100Dの音が良かったのはスピーカーの状態が良かったことが大きいと思う。使われているのはジェンセンの5inchフィールドスピーカー。コーン紙がボロボロになったのを捨てずに保存しておいたのがあります。ボイスコイルとダンパーは無事。いつか活用しようと大切に(ホントです)とっておいた。
背中にトランスを背負っている。ボロボロのコーン紙を切り取っておいた。このジャンクに健全スピーカーのコーンを移植しようというバチあたりなプロジェクトを決行。まずドナーだが海外オークションで5inchのそれらしきものを購入。ところが、、
なんと来たのはちょっと大きい。。気をとりなおしてコーンを切り取ってみる。
ボイスコイルも同寸法のようだがDCRはちょっと異なります。同じものを3個購入しているので将来活用することになるかもしれない。フィックスドエッジが1山〜2山しか使えないがフレームに固定するところの外の山部分にアイロンをかけて平らにする。
試適してまずボイスコイルと固定。
周囲のガスケットも分解、修正して移植。実はこれが一番時間がかかりました。
で完成です。接着剤が固まる間にボイスコイルがギャップで擦れないことを確認しておきます。
さてどうなるか。。
WE100E、「その2」の方が「その1」に比べて歪っぽいので「その2のスピーカー」と交換してみました。
青いラベルが取り外した方。ラベルは異なるがスタンプや形状は全く同じものに見えます。組み込んでみて音出しするが、、やはり歪っぽい。。またスタンバイスイッチまでが少々接触不良ぎみ。期待していただけに(少し)へこみます。泣きっ面にハチだ!
もう一台ジャンクのWE100Eがあるのでスイッチの移植を試みます。
ところがスイッチをはずしてチェックすると同じ不具合があります。このトグルスイッチはベーク板の積層をカシメを貫通させて固定しています。カシメをドリルで揉んで外して分解してみます。
部品数は多くスプリングのテンションが掛かっているのでどう組み立てるかしばし考えました。接点を研磨して工夫しながら再度組み立ててみる。まず腰下を組み立てて
上からパーツを重ねていきます。トグル軸をなんとか抜いてトグルスティックをパーツを押し込むように入れて横から軸を再度入れます。
あとはカシメ部分を適当なビス、ナットで組み立てて完了。
うまくいきました。このスイッチは両端に端子が出ておりスティックを倒した方がONになる。スタンバイ状態だとパイロットランプも少し暗くなるという芸の細かさ。よくできています。(なおスイッチの分解修理はお勧めしません。保安部品の無い時代のセットです。決行する時は十分に注意してください)
各部チェックして終わりですが肝心の音は当然のことながらダメです。どこが原因か。。
入力から正弦波を入れてみると前段の波形がおかしい。。すぐに歪みます。調べてみるとスクリーングリッドに至る抵抗が断線している。ついでに「その2」を調べるとさらにプレート抵抗もかなり高抵抗になっている。(いずれも本来100KΩ)コンデンサーの絶縁が不良で過電流が流れたかと思いましたがWEのカッコよろしいペーパーコンデンサは無事みたいです。また分圧している抵抗値が違うのに変えられていたり、コンデンサへの接続が(故意か間違いか)違っている。すべて回路図通りに戻しました。
これで各段の電圧は正常値となりました。
WE100E「その1」、「その2」ともに正常動作しているようです。歪がとれて大きな音が出るようになりました。コーンの移植スピーカーも快調でもう片方のエッジを移植したものより良好かもしれない。ですがもうしばらくはこの組み合わせで(ステレオで)いこうかと思っています。
80年位経過した製品ですのでコンデンサ以外でも抵抗などの劣化は避けられない。抵抗値も大幅に変化していたりで音は出ていても正常動作かどうかは詳しく調べないと判らないこともあります。やはり使い続けるのは根気が要ります。