金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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白銀の翼(四面楚歌)133

2012-04-29 08:53:42 | Weblog
 西楚軍の準備が昼過ぎに整った。
その報告に現れたのは李布将軍。
「全将兵の準備が終わりました。いつでも出陣が出来ます」
 包囲する反項羽連合軍はこちらの動きに気付いていないのか、
楚歌の大合唱が今も続いていた。
空気を震動させ、地面を谷間を、木々を打ち振るわせる四面楚歌。
 項羽は腰を上げた。
寄り添う虞姫も同様に腰を上げた。
天幕から出ると、互いに目と目を見交わしただけ。
二人に無用な言葉はいらない。
外に控える互いの側周りの者達の方へ足を向けた。
 項羽の側周りを纏めているのは宋文。
彼が項羽の愛馬、騅の手綱を持って控えていた。
 虞姫の側周りの女兵士部隊を纏めているのは朱鈴。
彼女も同じように虞姫の乗馬の手綱を持って控えていた。
 二人は愛馬に跨ると、再び目と目を見交わした。
ただ無言で頷いたただけ。
申し合わせてはいないが、同時に互いに背を向けた。
そして馬を進めた。
側周りの者達を率いて、持ち場に向かう。
 朱鈴が虞姫の隣に馬を寄せた。
「交わす言葉もなしで宜しいのですか」と聞く。
「宜しいも何も、・・・。
良いのです。
星を占い、前々から別離は分かっていました」
 虞姫の生家は地方の豪農であると同時に、知られた方術家でもあった。
その出自から、仙術、占術にも通じていた。
「これからどうなります」と朱鈴。
「私の事は占えないけど、あの人のことなら何度も占いました。
全て分かっていたことです。
その時が来ただけのこと。
何をいまさら悲しむことがありますか」
 朱鈴は、唇を噛み締める虞姫から目を逸らした。
戦場を駆け回る女兵士ではあるが、女だけに同じ女の気持はよく分かる。
思わず泣きたくなるような衝動に駆られた。
 虞姫が諭すように優しく言う。
「今は泣く時ではありませんよ。
今は、なるだけ多くの将兵を故国に生きて還すことに専念しましょう。
力を貸してね朱鈴」
「はい。
命に替えましても」
 虞姫は朱鈴を振り向く。
「全てが終わったなら、思い切り泣きましょう。
その時は、私に付き合ってくれるわね」
「はい」
「だから貴女も生き延びるのよ」
 虞姫は一度も愛しい夫を振り返らない。
それは項羽も同じ。
愛しい王妃を振り返らない。
前方だけを睨むように見詰めていた。
 後方の蹄の音が聞えなくなると、項羽は宋文に問うた。
「一人者だけを募ったのだな」
「はい。数にして二千騎ほどになりました」
「多くはないか。
木の股から生まれた分けでないだろうに」
「大方は嘘をついているのでしょう」
 説明してないにも関わらず、
空気を読んで、覚悟して項羽の采配に従うらしい。
 持ち場にその二千余騎が待ち受けていた。
項羽が現れると大歓声が上がった。
それが契機となって他の持ち場にも歓声が広がって行く。
もう今さら隠密行動もない。
項羽の合図で触れ太鼓が打たれた。
待っていたように全ての太鼓、銅鑼が鳴らされた。
全軍出撃の乱れ打ち。
鬨の声が何度も何度も繰り返され、地を揺り動かした。
四面楚歌を圧倒する力強さ。
あらゆる持ち場から包囲陣に向けて矢が放たれた。
まるで矢の雨。
次々と放たれた。
 項羽は死を覚悟した部下達を見回した。
馬上で両手を大きく広げた。
「全ては楚の為に。
命は惜しむな。
己が名を、楚の名を、中華に、いや、天に知らしめよ。
参る」
 槍を構え直すや、合図もしないのに、
主人の意を汲み取った愛馬、騅が前脚を高々と持ち上げて嘶いた。
そして駆け出した。
「遅れるな」と慌てる宋文。
 二千余騎が一斉に動いた。
 騎馬隊の出撃口の前に布陣しているのは劉邦軍。
本営は高台にあって攻め難いが、項羽は躊躇わない。
矢雨の掩護下、正面の馬止めを迂回して、
並べられた盾を蹴散らし、陣所に突入した。
 劉邦の漢軍は戦慣れしているものの、寄せ集めで一体感が緩い。
対して項羽の西楚軍は郷土色、武の気風が濃い者達ばかり。
 先頭の項羽が槍を振るい、鬼のように突き刺し、穂先で斬り払うものだから、
敵将兵は無理して進撃を押し留めようとはしない。
自分の命を守るので精一杯。
そこに二千余騎が雪崩れ込んで行く。
 項羽は修羅場にも関わらず、遠目にだが高台に劉邦の姿を見つけた。
悠然とこちらを見下ろしているではないか。
その高台から援軍が下りて来る気配はない。
下は見殺しにして、高台に籠もるつもりらしい。
 劉邦と目が合った。
思わず槍を高々と上げて挑発した。
劉邦は笑顔で応じるが、無理が見られた。
複雑な心境らしい。
 劉邦の周りには主立った重臣達が雁首を揃えていた。
彼等にも動きは見られない。
主人の代わりに複雑な顔をしていた。
軍師の陳平の姿もあった。
彼一人が敵愾心剥き出しの顔をしていた。
が、張良の姿が見られない。
いつも劉邦と二人一組で行動しているのに、・・・。
また何事か企んでいるのだろう。




フランス大統領選・第一回投票で社会党、オランド候補が勝利し、
決選投票に進出することになりました。
これを契機にヨーロッパの一角で風が吹き始めました。
経済の成長戦略を語るようになったのです。
緊縮財政だけでは、「税収も減る一方」と、ようやく気付いたらしいのです。
 緊縮財政と成長戦略の同時進行こそが常道なのですが、
最近の政治家には、この常識が欠けています。
減らせば、より減るだけ。
片方が見えると、もう片方が見えなくなるようなのです。
 悪い事に、どの方向に踏み出すべきか、それを判断するのが政治家なのに、
彼等には想像力と洞察力、決断力がありません。皆無です。
「だったら民間に頼れば良いものを」と普通は思うのですが、
彼等は慎重の上に慎重です。
「屋上屋を架す」の喩え通りに、幾つもの会議を発足させるだけなのです。
発足させた会議数で仕事をした気になっているのかも知れません。
 泥鰌サンは増税には熱心ですが、
成長戦略に熱を入れていないのは明らかです。
関心が無いのか、或いはキャパシティーの問題なのでしょうか。
困ったことです。
 「災い転じて福となす」という言葉があります。
・・・。
昨年、大震災と原発事故がありました。
それの復興復旧の為に多額の税金、募金、寄付金が投入されています。
どうしてこれを契機として成長に繋げないのでしょう。
どう見ても地方任せの感が拭えません。
縦割り行政の弊害もあるでしょうが、それを打ち破るのが政治の力。
なのですが、動く全く気配が感じられません。
最初から厭戦気分にしか、・・・。
なんなのでしょう。
どうなっているのでしょう。
やっぱり増税以外は興味無しですか。
 そうそう、東電を解体するのも経済成長の契機にはなるでしょう。
送電網は一社の必要性がありますが、
発電に関しては幾つかの会社に分離して売却しても問題はないでしょう。
発電送電を分離処理すれば、他社の新規参入も容易になります。
分離を経済成長に繋げるのです。
 東電を延命させても、膨大で見積もりすらつかない賠償金、処理費用は、
どうなるにせよ全額公金投入なんですから。
延命させる意味がありません。
株主、銀行等の貸し手には責任を取ってもらいましょう。
 ついでに原発廃炉処理もビジネスチャンスです。
東電の原発廃炉で技術を向上させれば、海外の原発廃炉にも転用出来ます。
なにしろ海外には無数の原発があります。
原発を建造するのではなく、廃炉で商売をしましょうよ。


 GW。
こんな連休には気怠い歌ですね。
昔フランスに、「ミッシェル・ポルナレフ」という人がいました。
男です。
なんだか最高の気怠い気分にさせてくれるのです。
「Love You Because」
「Gloria」
なかでも、「Holidays」が好きです。
良いですよ。




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