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金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

昨日今日明日あさって。(大乱)287

2022-09-25 11:41:56 | Weblog
 クランクリンの後続はない。
他は、・・・何も引っ掛からない。
昨夜の邪龍の影響で、行動を控えているのかも知れない。
 暇なので俺は仲間達を鑑定した。
マジックバッグの中身までは分からないが、スキルは見られる。
やはりだ。
シンシア、ルース、シビルの大人組に探知が生えていた。
三人共、元々が魔法使いなので、取得が容易だったのだろう。
 あっ、ボニーも生えた。
探知を取得した。
これは、・・・邪龍の鱗に残る魔力のお陰だろう。
彼女の探知の真似事に残滓魔力が反応したので、
真似事が真似事では終わらず、スキルに昇華した、そう理解した。
 俺は探知に注力した。
鱗の破片を探した。
ああ、当初の半分になっていた。
消えたのは彼女達のマジックバッグの中か。

 皆の新たなスキル取得のどさくさに紛れて、
俺の偽装ステータスも上昇させておこう。
少しだけなら問題ないだろう。

「名前、ダンタルニャン佐藤。
種別、人間。
年齢、十一才。
性別、雄。
住所、足利国尾張地方戸倉村生まれ、国都在住、美濃地方木曽。
職業、子爵、木曽の領主、冒険者、幼年学校生徒。
ランク、C。
HP、115。
MP、75。
スキル、弓士☆☆、探知☆、鑑定☆、光魔法、身体強化☆」

 んん、これで活動の幅が広がる。
と思っていたら、シンシアのスキルが増えていた。
それも鑑定が。
理由はたぶん、水草の下にあった血液だろう。
大方、血液を回収しながら鑑定の真似事をしたのではなかろうか。
それが功を奏した。
探求心の為せる技。
んっ、good job!

 シンシア達はスキル取得に気付いていない様で、
鱗を探しながら相方の面倒を見ていた。
その相方達だが、こちらも実に熱心だ。
微小な魔力を枯れさせない様に注意を払いながら、
時にはポーションを飲みつ、探知の真似事で懸命に鱗を探した。
けなげだ、実に。
幸運続きでスキルを大量に取得した俺に、
彼女達の爪の垢を煎じて飲ませたい。
 大人達のサポートが花を咲かせた。
女児組が自力で鱗を探し当てた。
そして時間差はあったが、漏れなくスキルを取得した。
流石に鑑定まではないが、魔法使いとしての第一歩を踏み出したのだ。
邪龍様々だ。
人目がなければ邪龍様に五体投地で感謝したい。

 あっ、接近して来る濃い魔力。
魔波は、慣れ親しんだ物だ。
アリスが遥か上空から降下して来た。
『何してるの。
人が大勢、蟻の様に群れなしているわね』
『昨夜のドラゴンが噂になってさ、それで、
街の者達が何か落していないか、総出で探し回っているのさ』
『それでアンタ達もなの』
『当たり』
 俺はその辺りの事情を説明した。
そしてスキルの取得も。
するとアリスに盛大に呆れられた。
『邪龍の残滓魔力が反応して、良い方に転んだ、そう理解しなさい。
下手すると汚染されたかもよ』
 えっ、考えていなかった。
それを脳筋妖精に見透かされた。
『次が有るならだけど、次はダン一人で探すのね。
アンタなら、たぶん、神龍の加護で切り抜けられる筈よ』

 反省しきりの俺にアリスが提案した。
『まあ、私とハッピーの後始末が不十分だったのね。
そこは、反省ね。
ちゃちゃっと片付けるから、アンタ達はここを引き上げなさい』
 アリスが邪龍の残留物を探して浄化させると言う。
なので俺は邪魔だと。
それで俺は気付いた。
『ハッビーは』
 ハッピーの魔波がない。
上空にもいない。
『ダンジョンで穴掘りよ』
 邪龍を収容するフロアを造っているのだろう。
『アリスはさぼり』
『人聞きが悪いわね。
これから一仕事よ。
アンタから預かったエビスを仲間達に配るのよ』
 彼女に妖精九人に宛てたエビスを託した。
それをこれから手渡しに行くのだと言う。
序に取説もすると。

 俺は引き上げる事にした。
丁度、頃合いだった。
「そろそろ時間だよ」
 午後も間近。
屋敷に戻って風呂に入り、着替えて王宮に向かわねばならない。
予定を熟す、パーティのリーダーとして当然のこと。
皆も反論せずに集まって来た。
人目があるが、俺は気にせずに光魔法を起動した。
入浴と洗濯のライトクリーン。
何時もの事なので皆は感謝はするが、質問はしない。
そういうお約束。

 俺はまず、シンシア、ルース、シビルの三人に言った。
「ステータスを確認して」
 魔法使い三人は無言で頷いた。
起動したステータスは当人にしか見えないが、
起動した事自体は魔力の漏れで認識できる。
その魔力の漏れは二流三流の証で、恥ずかしいこと。
そこは如何ともし難い。
俺は三人からの漏れを感じ取った。
 
 三人は表情を崩した。
歓喜。
国軍時代からの長い付き合いなので、ステータスは隠さない。
互いに見せ合う。
そして肩を叩いて喜び合う。
シンシアが三人を代表した。
「子爵様、ありがとう」三人揃って頭を下げた。
 擽ったい。
アリスの言によれば、害になる可能性もあったのだが、そこは忘れよう。
都合の悪い事は忘れて前に進む、それが人生なんだから。
「僕は何もしていない。
皆の努力が実っただけだよ」

 話に付いて行けない残り五人も、それと察したらしい。
喜びの輪に加わった。
それを俺は大人の様に見守った。
これからが大事なのだ。
暫くすると皆の視線が俺に向けられた。
理由は分る。
俺は魔法使い三人に指示した。
「魔法の初心者にステータスの遣り方を教えてやって」
 途端に三人が笑顔になった。
仲間五人に視線を転じた。
代表してシンシアがステータス開示の方法を懇切丁寧に説明した。
戸惑いながらも表情を崩す五人。

昨日今日明日あさって。(大乱)286

2022-09-18 10:34:21 | Weblog
 湿地帯の手前で降車した。
馭者や警護の者達はここまで。
ここから先は冒険者としての活動になる。
パーティとして行動せねばならない。
俺は号令を掛けた。
「行くよ、隊列組んで」
 今日は俺が先頭に立った。
探知と鑑定を重ね掛けした。
幸いここらは棚ぼた狙いの者達は少ない。
見掛けても湿地帯に踏み込まず、目視で辺りを探し回っていた。
それで見つかるとは思わないのだが、水辺を好むクランクリンや、
フロッグレイドの上陸を警戒を考えると、それも正しいのかも知れない。

 俺は昨夜、邪龍がのたうち回った現場を探し当てた。
酷く荒れていた。
粘度をこねくり回した感じで、うねうねと地肌が露わになった箇所が多い。
濡れずに歩くのは困難だ。
下手すれば足を取られて沈む可能性、無きにしも非ず。
足下に目を配って探すしかない。

 アリスとハッピーが後始末した筈だが、細かい物が残っていた。
破壊した鱗の破片だ。
破片と言っても大小様々。
その価値は知らないが、それらを水の中や、泥地の中に見つけた。
けど、それを告げる訳には行かない。
ステータスを偽装しているので、今更だ。
それに、破片も手柄も欲しくない。
「はい、全員集合」
 俺は皆を呼び集めた。
探す方法を伝えた。
「ここには鑑定や探知を使える者がいない。
そこでだ、皆で探知の真似事をして探してみようと思う。
スキルに育ってなくても、みんな魔力は持っている筈だから、
探知の真似事は可能だと思う」
 シンシアが同意してくれた。
「面白そうね」
 ルースも応じた。
「いけるかもね」

 二人の後押しは心強い。
俺の考えは間違ってなさそう。
「方法は単純だ。
水の中や、泥地の中に微量の魔力を通してくれ。
もし、本物のドラゴンなら魔力の残滓が、何らかの反応して来ると思う」
 ルースが悲しそうに言う。
「私は火魔法だから駄目かな」
「火魔法を起動しても、発動しないで、
魔力そのものを下に落とし込んだらどうかな。
例えば、石を投げ込んでできた波紋をイメージするとかして」
「なるほど、そういう考え方か。
良いわね、やってみるわ」
「皆に任せて、僕はクランクリンやフロッグレイドを警戒してる。
あっ、忘れてた。
何か見つけても騒がないこと。
他の連中に知られると、この一帯が荒らされる。
だから、直ぐに各人が所持してるマジックバッグに収納すること」

 二人一組になり、適当に散開した。
シンシアはキャロルと、ルースはモニカと。シビルはマーリンと、
家庭教師と教え子の関係で組になった。
アーリンは守役のボニーとだ。
俺はボッチ・・・。
ぼちぼちと歩いて、警戒し易い位置に付いた。
 背中を向けて、身体強化した。
更に耳に注力した。 
シンシアの声が聞こえた。
自ら探知に挑みながら、キャロルを指導していた。
「そうそう、その魔力を波紋にして、横方向に広げるの」
 ルースの声も拾えた。
モニカに助言していた。
「横に広げるのはそれで良いわ。
次はそれをそのまま、下へも浸透させるの」
 シビルはマーリンを教え導いていた。
「いいわいいわ、それよ。
それを下にジワジワと落とし込むの。
何かに触れたら手で触れるイメージよ」
 教え方が上手い。
三人とも国軍で学んだ経験を活かしていた。

 俺はシェリルとボニーの組に耳を傾けた。
二人は似た者同士、筋肉組。
魔法のスキルはなく、武技を得手としていた。
だから、心配した。
ところがボニーが意外な言葉。
「お嬢様、身体強化を応用します。
全身に巡らす魔力を足下に集中し、そこから波紋を生み出すのです」
「ボニー、貴女できたの」
「当然です。
面白いですよ。
最初は触れた物を認識し、覚えます。
・・・。
私は今、土を感じています。
粘土質ですね。
次は、これは水ですね」
「負けてられないわね。
波紋を作って、それで触れた物を認識するのね」
「はい、まず当たり前の物を当たり前に認識します。
探すのはそれからですね」

 彼女達が交わす言葉や魔力の動きからすると、完全に理解したようだ。
失敗する姿が見えない。
直ぐにも探し物に行き当たる。
何しろ、鱗の破片は浅い所に落ちていた。
それも見つけてくれと言わんばかりに。
 もしかすると、探知の真似事はスキルに昇華するのだろうか。
・・・。
有り得るか、それも全員が。
これを切っ掛けに、自信を付けた彼女達が、
更なるスキルに挑む未来が見えて来た。
 俺は迂闊だったのだろうか。
迂闊だった、そう認めよう。
でも、まあ良いか。
パーティの戦力アップは間違いない。

 シェリルの声が聞こえた。
「あっ、弾かれた感じ」
「お嬢様もですか。
実は私もです。
当たりかも知れません」
「騒がずに拾うのね」
「そうです。
お嬢様のマジックバックに入れて下さい」
 鑑定で様子を観察した。
物は鱗の破片だった。
邪龍の魔力の残滓が二人の捜索に反発したのだろう。

 シビルの声が声が聞こえた。
「マーリン、その水草の下に注意して」
「はい、えっ、弾かれました」
「私が水草をどけるわ」
「赤い塊ですね。
腐った水ですか」
 鑑定した。
水草の下に邪龍の血が塊になって残っていた。
「水ではないわね。
魔力に反発するから拾いましょう。
マジックバックのポーション瓶に入れ替えましょう。
そうねえ、マーリン貴女、シンシアをそっと呼んで来て。
水魔法の出番よ、手を借りましょう」

 何事も無く終わると思っていた。
ところが、探知の端にクランクリンが姿を現した。
六匹。
草陰からこちらを窺っていた。
人出が多いので、警戒の為に出張って来たのかも知れない。
 俺は人前で派手な事はしたくない。
シャイなので、そっと終わらせたい。
闇魔法を起動した。
探知で六匹をロックオン。
闇の飲み込むダークホール。
オーバースペックだが、偶には使わないとね。
発動。
一瞬で六匹が声も上げず、探知から姿を消した。

昨日今日明日あさって。(大乱)285

2022-09-11 10:25:56 | Weblog
 俺は喜んでいる二人に声を掛けた。
『その前に自分のステータスの確認。
新しい称号が付いてる。
邪龍の討伐者なんだそうだ』 
 単純な二人はステータスを喜んだ。
『邪龍の討伐者か、凄いわね』
『パー、みんなに自慢する』
 俺は水を差した。
『他にも邪龍はいる筈だ。
それに称号を見られたら確実に狙われる。
仲間の敵討ちだと、違うかい』
『平気平気、返り討ちよ』
『ピー、ひーひー言わしちゃる』
 釘を刺した。
『次も三人で討伐できるとは限らないだろう。
もしかして、強い奴に出遭うかも知れない』
 二人は顔を見合わせた。
『ステータスを偽装するわ』
『プー、偽装偽装』

 俺はもう一つ注意した。
『部位や魔卵に邪龍の残滓があるのも拙い。
どこでどう目に付くか分からない。
だからクリーンを徹底する、これも良いね』
『ダンジョンに居残っている妖精達を動員するわ』
『ペー、ダンジョンスライムも総動員するっぺ』
 二人は自信があるようだ。
丸投げしよう。
あっ、大事な点を忘れていた。
『ドラゴンを解体できる広い場所があるのかい。
解体した物を並べる場所も。
広さだけじゃなく高さも必要だよ』
『ダンジョンスライムに頼めば大丈夫よ。
引き籠っていても、錬金や召喚でランクは上がっているの。
ちゃちゃっと用意してくれるわ』
『ポー、任せる任せる』

 次の日は、って今日じゃん。
気が付いたら日付を跨いでいた。
今日は学校が休みなので、このところ恒例の予定が組まれていた。
午前中に薬草採取し、午後は王宮訪問、イヴ様のお相手。
忙しいが、午後は指名依頼なので、見返りが大きい。
俺は二人を見送ると急いで帰還した。
そして時間一杯まで睡眠を取った。

 予定が前倒しされた。
メイドのドリスとジューンがノックより先に部屋に駆け込んで来た。
「ダン様、今朝はお忙しいそうです」
「そうですよダン様、さあ起きて起きて」
 掛布団を引き剥がされた。
二人の後に執事見習い兼従者のスチュワートが現れ、
既に開けられているドアをノックした。
「入ります」
 俺は事情が分からない。
「何が起きてるの、コントなの」
 ドリスが手短に言う。
「お仲間の皆さんがお揃いなのです」
 仲間には大人の女性陣もいる。
その女性陣は朝は手間取る筈なのに、もう来ているとは・・・。
スチュワートが口を開いた。
「昨夜の騒ぎをご存知ですか」
「ここからは見られなかったけど、想像は付いてる」
「私共にも見えませんでした。
でも吼える声は聞こえました。
街中の噂では、あれはドラゴンだそうです。
そのドラゴンが何かと戦っていたそうです」

 忘れていた。
ドラゴンを巨椋湖方向へ誘導し、人目を避けたつもりでいた。
でもあの怒号は、・・・消せなかった。
にしても、えっ、街中の噂、・・・なに。
「街中の噂って」
「あれはまるで雷の怒りでした。
それも何発も何発も。
聞き慣れぬ怒号に私共は屋敷から飛び出しました。
起きていた者達全員です。
顔見知りの冒険者が申すには、あれはドラゴンだと」
 ドリスが言う。
「それで皆様が申されるには、最後のは悲鳴。
あれはドラゴンの悲鳴か、もしくは相手方の悲鳴。
ドラゴンが何と戦ったのかは知れないが、死骸が残されているのではと」
 ジューンも目を輝かせて言う。
「死骸が喰われていても、何がしかの部位は残されている。
それを拾いに行くと皆様、そう申されています」
 想像を超えた事態が発生していた。

 メイド二人の手を借りて朝の支度を済ませ、
冒険者の恰好で階下の食堂に入った。
仲間達が顔を揃えていた。
女児のキャロル、マーリン、モニカ。
先輩のシェリル京極に、その守役のボニー。
キャロル達の家庭教師、シンシア、ルース、シビル。
みんな屈託のない顔で朝飯を食っていた。
最初の頃は朝食を遠慮していたのだが、この頃は遠慮がない。
厨房に注文を付ける厚顔振り。
俺に真っ先に気付いたシェリル。
「ねえダン、屋敷の家来達は出さないの」
「えっ、意味が分からないんだけど」
「寝ぼけているの」
「いやいや、本当に」
「うちの屋敷からは二十騎を出したわ」
 朝なので頭の回りが緩やかだが、何となく想像が付いた。
「もしかして、・・・何かの死骸の回収かな」
「そうよ、うちだけじゃないわ。
右隣もそう、左隣もそう。
結構な数の騎馬が南門に向かっているわ。
死骸じゃなくても良いの。
せめて鱗は拾って帰りたいわね」

 子爵邸を箱馬車で出た。
先頭は京極家の馬車。
シェリルとボニー、それに相乗りのシンシア、ルース、シビルの五名。
当然、今日は京極家からの警護の騎兵が増えていた。
通常は二騎なのだが、混乱を予想して六騎。
 続けて子爵家の箱馬車。
俺にキャロル、マーリン、モニカ、そして従者のスチュワート。
警護の騎兵はウィリアム小隊長の提案で、こちらも同数にした。

 驚いた。
南門への大通りが混雑していた。
様々な恰好の人間が南を目指していた。
明らかな冒険者から、貴族の家来、商人やスラムの者までも。
どうやら皆の考えは同じらしい。
ハイエナだ。
 何時もの倍の時間を掛けて外に出た。
真っ先に目に付いたのは、街道を離れて行く人の数。
馬車の者は降車、騎馬の者は下馬して使用人らしき者に預け、
それぞれが思い思いの方向へ足を向けた。
まるでそこに目指す何かがある、そう確信した足取り。
下にのみ視線を向けて、ゆっくり進む。

 国都郊外の厩舎や宿営地からも人が駆り出されていた。
彼等は都雀より有利な位置にいた筈なのに、
効率の悪い箇所を探していた。
たぶんだが、頭上の戦いに恐れおののき、
肝心の場面を見落としていたのだろう。
まあ、それは理解する。
窓から離れて我が身の安全を最優先するのは当然だ。
命あっての物種だから。

 先頭の馬車が止まり、シェリルとシンシアが下りて来た。
「ねえダン、思っていた以上に混雑しているわ。
これは困ったわ、どうしよう」
 俺は周辺を見回した。
確かにこの辺りは競争率が高い。
皆そう信じての行動なのだろう。
当事者であった俺はここに何かが落ちているとは思わない。
激戦区は巨椋湖の近くの湿地帯であった筈だ。
俺はその湿地帯を指差した。
「あの辺りは人が少ない。
あそこにしよう」

昨日今日明日あさって。(大乱)284

2022-09-04 10:21:41 | Weblog
 ドラゴンが顎を大きく上げ、空に向かって何度も激しく咆哮した。
吼えている様にも聞こえるが、実態は泣き叫ぶに近い。
そのせいで喉元が、がら空きになった。
チャンス、好機到来。
 俺は方向を修正した。
狙うは喉元。
重力スキルを全開にした。
ついでに風魔法を重ね掛け。
突撃。
構える槍は光魔法が施された逸品、当然ダンジョン産、神話級。

 ドラゴンの視線が俺を捉えた。
これまでとは違い、感情を露わにした目色。
俺の読み違いだろうか、増悪にしか見えない。
まあ、そうかも知れない。
ドラゴンが口を大きく開けた。
 外の空気と一緒に魔素等を取り込む吸気。
それらを体内に貯蔵していた物等と共に錬金して変換。
仕上げた物を排出する、排気、ブレス。
俺はそう理解していた。
しかし、目の前のドラゴンの行為はそうではなかった。
前段階の吸気をしていない。
となると、悪足掻きなのか、最後の意地なのか。
体力の限りを尽くしてのブレス・・・、来るか。

 俺は止まらない。
ここまで来たら俺が早いか、ドラゴンが早いか。
たぶん、体感的には俺が早い。
行け行け、GoGo。
 あっ、読み違えた。
ドラゴンが倒れる様に前のめりとなり、大きく傾いて来た。
これはっ。
視線で俺を捉えたま口を大きく開けて、
俺そのものを捕えようとするではないか。
拙い、逃れられない。

 これからの方向転換では遅い。
下手に回避行動を取れば、態勢を崩し、反撃を喰う。

 咄嗟に俺は重ね掛けしていた風魔法を変更した。
速度から攻撃魔法に切り替えた。
風槍・ウィンドスピア。
イメージは捕鯨用の銛。
当たった瞬間に先端が回転し、抉りながら深く突き刺さる。
 俺の場合の魔力表示はMPではなくEP。
俺特有のもの。
この世界の者達とはちょっと違うらしい。
詳しくは脳内モニターも説明してはくれない。

 間近に迫る大きく開けられた口。
口内の手入れが良いのか、立派な牙と歯並み。
最奥に喉チンコが見えた。
正に真っ赤なチンコ。
 風槍が間に合った。
喉チンコを貫いた。
血肉が舞う。
のみならず、回転しないがら真っ直ぐに飛んで行き、
喉奥の壁に突き刺さった。
食道口の肉壁を喰い散らすかの様に破壊し、破裂した。
ここまでが限界だったようだ。

 ドラゴンも体内の痛みは我慢できないらしい。
明らかな悲鳴を上げ、口を閉じようとした。
俺は光体で身体を覆った。
これでドラゴンの体内でも生存できるはず。
口が閉じられる寸前、口内に突入した。
直後、口が閉じられた。
 暗い。
幸い夜目が利く。
先行した風槍が破壊した箇所を目指した。
大きな穴から大量の血が噴き出していた。
俺の辞書に躊躇いはない、欠陥品だ。

 当たった瞬間、手応えを手の平で感じ取った。
槍に施された光魔法が発動したのだ。
文字通り光を発し、厚い肉壁を切り裂いて行く。
この槍は穂先自体の鋭さに光魔法が重ね掛けされた逸品。
ドラゴンをただの肉として処理を進めた。
 ドラゴンは外からの攻撃には耐性がある。
鱗と厚い外皮が鎧を超える防御効果を発揮するからだ。
だが、内は弱い。
それは他の魔物とも共通したもの。

 気付いたら暗闇から月明かりの元に出ていた。
貫通していた。
アリスの声が聞こえた。
『ダン、邪魔よ、突入の邪魔よ、どいて』
 咄嗟に横に飛んだ。
傍をアリスがエビスで駆け抜けた。
外皮の穴に突入した。
『プー、パッフォーン』
 クラクショクかっての。
ハッピーもエビスで突入した。

 俺は上空に移動した。
鑑定でドラゴンの様子を見た。
俺の決死の突入は即死には至らなかった様だが、
確実にHPMPは減少していた。
そこへアリスとハッピーが追撃。
死に馬に鞭打つ行為。
ドラゴンの体内を破壊しながら縦横無尽に移動し、暴れている模様。
これでは堪らない。
ドラゴンは湿地で無様に泣き喚きながら七転八倒。
手足は当然、尻尾までもばたつかせた。
 ついにHPMPがゼロになった。
凍り付いたかの様に微動だにしない。
それでも魔力の残滓はあるようだ。
身体全体を保全しているが見て取れた。

 アリスとハッピーが体内から脱出して来た。
同時に、久しぶりに脳内モニターに文字が走った。
「ランクが上がりました」

「名前、ダンタルニャン佐藤。
種別、人間。
年齢、十一才。
性別、雄。
住所、足利国尾張地方戸倉村生まれ、国都在住、美濃地方木曽。
職業、子爵、木曽の領主、冒険者、幼年学校生徒、アリスの名付け親、
ハッピーの名付け親、山城ダンジョンのマスター、
木曽ダンジョンのマスター。
ランク、S。
HP、555。
EP、555。
スキル、弓士☆☆☆☆。
ユニークスキル、ダンジョンマスター☆☆☆☆☆、虚空☆☆☆☆、
魔女魔法☆☆☆☆、無双☆☆☆☆☆(ダンジョン内限定)、演技☆☆。
加護、神龍の加護。
称号、邪龍の討伐者」
「光学迷彩☆☆☆☆☆、探知☆☆☆☆☆、鑑定☆☆☆☆☆、
水魔法☆☆☆☆、火魔法☆☆☆☆、光魔法☆☆☆☆、
土魔法☆☆☆☆、風魔法☆☆☆☆、闇魔法☆☆☆☆、
錬金魔法☆☆☆☆、身体強化☆☆☆☆、透視☆☆☆☆、
契約魔法☆☆☆☆、時空☆☆☆、重力☆☆☆、氷魔法☆☆☆、
雷魔法☆☆☆」

 ついにランクがSに到達した。
そして光学迷彩と探知、鑑定が上限に達した。
でも他言はできない。
これでは化け物だ。
慰めに仲間のアリストハッピーも鑑定した。

「名前、アリス。
種別、ダンタルニャンの眷属妖精。
年齢、19才。
性別、女。
住所、山城ダンジョン。
職業、エビスゼロの所有者。
ランク、A。
HP、222。
MP、222。
スキル、妖精魔法☆☆☆☆☆。
ユニークスキル、異種言語理解☆☆☆☆☆、収納庫☆☆☆☆☆、
変身☆☆☆、光体☆☆☆。
称号、邪龍の討伐者」

「名前、ハッピー。
種別、ダンタルニャンの眷属スライム。
年齢、2才。
性別、女。
住所、山城ダンジョン。
職業、エビス一号の所有者。
ランク、A。
HP、222。
MP、222。
スキル、ダンジョンスライム魔法☆☆☆☆☆。
ユニークスキル、異種言語理解☆☆☆☆☆、収納庫☆☆☆☆☆、
変身☆☆☆、飛行☆☆☆。
称号、邪龍の討伐者」

 二人の活躍が大きい。
後で説明してあげよう。
その前にドラゴンの始末だ。
とっ、見ると、二人が始末を終えていた。
妖精魔法でドラゴンの身体を清め、ハッピーが収納していた。
『ダンジョンに運ぶわよ』
『ぺー、みんなが喜ぶっぺよ』
『驚くの間違いでしょう』
『ポー、ぽっぽー』

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