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金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

白銀の翼(劉家の人々)195

2012-12-29 20:37:08 | Weblog
 翌早朝、マリリンは関羽に起こされた。
「朝食の前に一汗かこう」と言うのだ。
 ヒイラギが欠伸混じりで笑う。
「えらいのに気に入られちまったな」
 関羽は用意の良いことに棍を二本持って来ていた。
その熱心な様子を見ては断れる分けがない。
 窓を開けて外を見た。
朝日は昇ってないが、東の空はすでに白んで来ていた。
朝稽古には相応しい刻限に違いない。
 マリリンは関羽に問うた。
「関羽殿は、いつまで此処に逗留されるのですか」
「当分の間だよ。次の仕事の当てもないしな。
納得がいくまで棍を交えられる。
勿論、当主殿の許しは得てある」
 館の使用人達が朝の用意をする為に起き始めた。
棍を持つ二人を見て怪訝な顔で擦れ違う。
 二人は昨日の仕合の場所に足を運んだ。
ここ以外を思いつかなかったのだ。
 関羽の気合いが朝の冷気を吹き飛ばした。
マリリンはげんなり。
「えらい元気だな」とヒイラギも呆れた。
 関羽はマリリンの都合など一切お構いなし。
一気に打ち掛かって来た。
 棍と棍で打ち合う音が早朝の明け切らぬ空に響き渡った。
館の二階の劉桂英に届かぬ分けがない。
安眠を破られ、ハッと目覚めた。
 続き部屋で寝ていた夫の醇包も起き出して来た。
「関羽殿か」
 二人して窓を開けて下を覗いた。
まだ薄暗いので、しかとは見えないが、
庭先の広い場所でそれらしい影が二つ動いていた。
 桂英が呆れた。
「熱心なのは分かるけど、朝早過ぎない」
「マリリン殿の技を見せられ、我慢出来なかったのだろう」
「確かに関羽殿相手に見事な棍の工夫だったけど、それほどのことなの」
 醇包が目を大きく見開いた。
「それはもう。
相手が関羽殿だったから、防戦一方に見えたかも知れない。
しかしだ、相手が関羽殿でなければ、すぐさま反撃して打ち据えてた筈だ」
「それほどに」
「ああ、最初は関羽殿の力攻めに圧倒されてたが、次第に慣れてきた。
その結果として余裕を持って棍を弾き飛ばし、足払いをした」
「そういうことだったの。
関羽殿はマリリン殿に何を求めているの」
「技。自分の技が未熟なのに気付いたのだろう」
「あれだけの力があれば技なんて要らないのじゃない」
「力を突き詰めるという考え方もあるが、昨日のように技で返されてはな。
その辺に気付いたのだろう。
まだ若いのに驕らぬとは、良い心がけじゃ」
 桂英が悪戯っぽい目で夫を見た。
「どっちを気に入ったの」
「さあて、どっちも、だな。
技に優れた佳い男と、力そのものの武威な男。
ところで、朱郁の例の調べはどうなってる」
 頂角を指導者と仰ぐ太平道とマリリンの関係の有無を朱郁が密かに調べていた。
「この邑にいる太平道の隠れ信者を見つけ、こちら側に取り込んだそうよ。
それによると、彼等にとってマリリン殿は邪魔な存在のようね。
『神樹の使わした者』という噂が気に入らないみたい。
布教の邪魔になる、と考えているのじゃないの」
「なるほど、そう考えているのか。分かった。
となるとマリリン殿には安心して良いんだな」
「一点を除いてはね」
「あれか、マリリン殿の体内に潜むモノ」
「そうよ。ずっと鳴りを潜めているけどね」
 その日のうちにマリリンは桂英に呼ばれ、
「仕事として姫五人にも棍を教えてね」と丁寧に頼まれた。
姫五人を相手にとは、・・・。
仕事の話は自分から切り出した事なので、断りようがなく、受けざるを得なかった。
かくして朝稽古に五人の姫が加わる事になった。




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白銀の翼(劉家の人々)194

2012-12-23 09:57:32 | Weblog
 関羽が勢いのまま、左肩から体当たりして来た。
マリリンが、毬子としての女の身体であったなら、祖父が教えてくれた判官流の体術で、
相手の勢いを利用して投げ飛ばしたであろう。
しかし今、身体は男。
その身体の耐性を知る絶好の機会であった。
逃せる分けがない。
歯を食いしばり、関羽の体当たりを受け止めた。
 激しい衝撃が全身に走った。
目の前で火花が散り、相撲用語の、「ぶちかまし」という単語が頭の中を転げ回った。
二歩、三歩と押されるが、それでも耐えた。
男の意地。
必死で関羽と組み合う。
力勝負とばかり、腰を落として全身の力を注ぐ。
 関羽が右に投げを打とうとしてきた。
マリリンはそれに堪え、逆に左に投げ返そうとした。
しかし関羽はビクともしない。
 マリリンの呼吸が、関羽の呼吸が、それぞれに荒くなった。
先に力尽きたのはマリリンであった。
両腕に限界がきたのだ。
それを関羽に見抜かれた。
 一閃。
地から引き抜かれたかのような感覚。
気付くと、いとも簡単に宙に飛ばされていた。
 背中から落ちてゆくが、幸い身体が受け身を覚えていた。
頭を守りながら地を転がる。
衝撃を最小限に抑え、素早く立ち上がって関羽を睨む。
 嬉しそうな関羽の顔。
獲物にとどめを刺そうと足を踏み出した。
「そこまで、そこまで」と声。
 醇包が両手を広げ、割って入って来た。
「殺し合いじゃない。これまでで良かろう」と。
マリリンと関羽の双方に、「異議を許さぬ」とばかりの鋭い視線を飛ばした。
 マリリンは込み上げてくるモノを抑えきれなかった。
場を顧みずに笑ってしまう。
それも大声で。
しかも腹を抱えて。
 ヒイラギの叱責が飛ぶ。
「気持ちは分かるが、場所柄をわきまえろ」
 歴史の彼方に飛ばされて伝説の関羽と戦えるとは。
おまけに男の意地を張ったばかりに、思いっきり投げ飛ばされてしまった。
これが笑わずにいられようか。
 遅れて、心の奥底から問い掛けがきた。
「自分は何をやっているんだろう」と。
目頭が熱くなる。
声を上げて泣きはしないが、幾筋かの涙を頬を伝うのが分かった。
無様な泣き笑い。
 ヒイラギは何も言わない。
 醇包が心配げにマリリンに問う。
「如何した、大丈夫か」
「身体が思った以上に動くのが嬉しいのです」と誤魔化した。
 安堵する醇包。
「そうか、良かったな」と信じて疑わぬ顔。
 マリリンは忸怩たる思いに駆られた。
それでも本意は話せない。
「皆様のお陰です」
 関羽が歩み寄って来た。
マリリンに軽く頭を下げ、柔らかな表情で言う。
「楽しかった。また仕合いたいな」
「私も。ここに居られる間は棍を合わせたいですね」
「約束だ。ところで当たり所は大丈夫か」
 体当たりを喰らった箇所が痛い。
骨は折れていないようだが、明日になれば、もっと痛みが増すだろう。
 その箇所を関羽に掌で軽く打たれた。
ピリッと電撃のような痛みが走った。
こういうのを、「虚を突かれた」と言うのだろう。
が、そこは男の痩せ我慢。無表情を貫き通す。
 だが関羽には見抜かれてしまった。
彼は悪戯っぽい仕草で顔を背け、素知らぬ顔。
 マリリンは関羽に、「お前は子供か」と怒鳴りたいが、その言葉をグッと飲み込んだ。
にも関わらず、醇包にも気付かれてしまった。
「しばらくはノンビリする事だな」と老いた笑顔で囁かれた。
 マリリンは劉桂英の前に片膝つき、言上した。
「皆様のお陰で身体はこの様に元気になりました。有り難う御座います。
つきましては、お願いがあります。
お世話になるばかりでは心苦しいので、何か仕事をさせて頂けませんか」
 思いもしない話だったのだろう。
桂英は首を傾げた。
「良い仕合だったわよ。
貴男が元気になって私も、みんなも嬉しいわ。
仕事の話は少し考えさせてね。
急なことで今は思いつかないの」




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白銀の翼(劉家の人々)193

2012-12-19 21:26:48 | Weblog
 マリリンはジッと関羽を見据えた。
関羽は左足を半歩前に出し、半身になって棍を構えていた。
その表情からは何も読み取れない。
 ヒイラギが笑う。
「相手が関羽とはいえ、円熟期の関羽ではないぞ。今はただの若造だ」
 確かに。
それに、教えを乞うた手前、先に攻めるのが常道だろう。
マリリンは覚悟を決めて一気に動いた。
摺り足気味に、継ぎ足を入れて低く跳ぶ。
間合いは遠間だったが、ものともしない。
棍を構えた姿勢のまま、身体ごと相手に当たって行く。
 ところが関羽には斜め後方へ跳んで躱された。
だけではない。
素早い反転からの逆襲を喰らう。
棍で脇腹を狙われた。
 マリリンは棍を縦にして受け止めるが、関羽の動きが止まない。
矢継ぎ早な連続攻撃。
巧みに棍を回転させて、右から、左から、嵐のように襲い来る。
マリリンは、そのことごとくを受け止めるが後手、後手にまわり反撃の機を失う。
 体躯と腕力に物を言わせた振り下ろしが一番強烈だった。
棍を打ち砕かれるところであった。
 棍と棍で打ち合う音が辺り一帯に響き渡った。
マリリンが劣勢に見えるのか、女子供達の悲鳴も上がった。
 傍目にはマリリンが防戦一方に見えるに違いない。
しかしマリリンには余裕があった。
ヒイラギの言った通り、関羽はただの若造でしかなかった。
力任せの攻めに頼りすぎていた。
並の者が相手ならそれで良いのかも知れないが、
マリリンは小さな頃から剣道で鍛えられていた。
加えて、負けはしたが辻斬りとも真剣を交えた。
風神の剣の助けを借りたが、バンパイアの相手もした。
数こそ少ないが、修羅場の経験では負けていない筈だ。
 関羽の腕力には圧倒されるが、その棍の速さに慣れるのに時間はかからない。
攻撃を受け流せるようになってきた。
次第に関羽の顔が赤みを帯びてくる。
息も荒くなる。
表情にも焦りの色。
気合いを入れてマリリンに棍を振り下ろす。
 マリリンは関羽の棍の動きが鈍った瞬間を逃さない。
相手の棍を受け流しながら身体を寄せた。
そして、己の棍を巧みに回転させて関羽の棍を弾き飛ばした。
唖然とする関羽。
そこを狙い、容赦のない足払い。
 もんどり打って倒れる関羽。
顔色が憤怒に染まった。
これで角では生えれば、まさに赤鬼。
素早く起き上がるや、近くに転がる棍を拾い上げもせず、素手でマリリンに突進して来た。
組み付くつもりらしい。
我を忘れている感がなきにしもあらず。
 マリリンは己の棍を後方に投げ捨て、素手で関羽を待ち受けた。




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白銀の翼(劉家の人々)192

2012-12-16 09:34:42 | Weblog
 朝の忙しなさが一段落したところで、
赤劉家の主立った者達が館本邸の庭先に現れた。
劉桂英と醇包は当然ながら、孫娘の麗華を含む方術修行中の姫五人、
館敷地内に居住する分家や家臣の手空きの者達も招かれていた。
 既に朱郁の設営により、広い空き地のような一角に陣幕が張り巡らされていた。
その内側に主立った者達の座席が用意されていたが、それだけでは足りなかった。
招いた分けではないが、女子供が詰めかけたのだ。
 朱郁が桂英の前に片膝ついて、問う。
「小煩い奴等を如何いたしますか。
なんなら追い払いますが」と女子供達を横目で見た。
 桂英は女子供達の目当てがマリリンにあると承知していた。
「神樹の使わした者」との評判もだが、それ以上に姿形、振る舞いが興味の的なのだ。
この田舎とは無縁の整った容貌は、女かと見紛ってしまう。
そして会話すれば穏やか。人当たりが良い。
髪を伸ばして女装させれば後宮にも入れるだろう。
今日は、そんな彼の武芸が見られる機会。
逃せる分けがない。
「邪魔にならぬなら許しましょう」
「それでは端の方に敷物を用意させます」
 すぐさま朱郁は自家の家臣を呼び寄せ、指示を下した。
 離れようとした朱郁に醇包が問う。
「お前はこの仕合をどう見る」
「どうと聞かれましても。
まず私は関羽殿の力量を知りません。
あの身体から判断するに、かなりの腕力だとは思いますが」
「そうだな。確かに腕力がありそうだ。
あの体躯で真上から太刀を振り下ろされたら、と思うだけで怖い。
・・・。
マリリン殿は如何見る。
このところ散歩に動き回る様子を観察したが、足運び、目配りに付け入る隙がなかった」
「私も観察した事がありまして、そう感じました。
それに昨夜ですが、この庭先で棍を振り回しておられました。
その時の様子から察するに、記憶は無くしても、身体が棍を覚えているのでは、と」
「関羽殿に、洛陽の武を教えてくれと挑んだ時も唐突だったな。
あれも身体が、本能が覚えていると理解すれば、納得がゆく。
強い奴と見れば突っかけたくなる。
見かけによらず無鉄砲な性格なのかも知れないな」
 桂英は二人の会話を聞きながら、自分の頭の中にある関羽とマリリンに肉付けをした。
まだ青年ながら、並外れた体躯を活かす為に顎髭、頬髭で威圧感を増している関羽。
これに力量が備わっていれば怖いものなしだろう。
 長身ながら柔らかそうな体躯のマリリン。
じっさい裸体を見たが、肉付きは鍛えた筋肉質ではなかった。
だからといって侮れない。
見かけだけの筋肉もあれば、柔らかくても実戦向きの肉付きもある。
必要とする時だけ、必要とする箇所が筋肉として最大の力を発揮するのだ。
マリリンの身体が棍を覚えているとすれば、その可能性が高い。
 それもだが、マリリンの体内に潜むモノの正体が今もって気に掛かる。
マリリンを拾ってきた麗華の証言もあった。
現れたのは、あの夜だけだったが、マリリンに宿っているのは確かだろう。
害意も悪意も感じ取れなかった。
だからといって聖なるモノでもなかった。
とにかく、桂英達の方術から発せられる気の質とは異種だが、強烈なモノであった。
それが今日、この仕合を切っ掛けにして再び現れないだろうか。
気懸かりだし、一方では待ち望む気持ちもあり、相反する感情で揺れ動いていた。
 陣幕内が静まるのを待っていたかのように、マリリンと関羽が現れた。
朱家の家臣の先導で、マリリンは右手から。関羽は左手から。 
それぞれが好みの太さ、長さの棍を片手に陣幕内の中央に歩み寄った。
 マリリンに黄色い声援が飛ぶ。
女子供という者は正直過ぎて場の雰囲気を壊してしまう。
これが決闘であれば、それらの者達を叩き出すのだが、今回は大目に見ることにした。
 マリリンは、黄色い声援など届いていないかのような、
静まった湖面を思わせる表情をしていた。
いつもの人当たりの良さはどこへやら。
獲物を狙う鋭い目で関羽を見据えていた。
長身ではあるが、関羽に比べると貧弱と表現しても良いような体躯である。
森の中で大きな熊に出会ってしまった少年に見えてしまう。
猟師でも関羽を一目見ただけで脱兎の如く逃げ出すだろう。
なのにマリリンは全く気後れしていない。
その依って立つ自信はどこから湧くのか。
 桂英は心の中で首を傾げた。
「マリリンの本質はどこにあるのか」と。
 対する関羽は泰然自若としていた。
戦いそのものに飽いているのか、相手を見下しているのか。
熱が全く感じ取れない。
 醇包が立ち上がって両者の間に入った。
「防具は」と双方に問う。
 二人とも防具をしていない。
「私は動きが鈍るので不要です」とマリリン。
「私も」と関羽。
 苦笑いしながら醇包が通告した。
「それなら頭への攻撃は禁止する。いいな」
 両者は桂英に一礼し、互いに一礼を交わすと左右に飛んだ。
子鹿のような軽やかさのマリリン。
重さを感じさせない大きな熊の関羽。
双方が棍を構えた。




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白銀の翼(劉家の人々)191

2012-12-12 20:36:20 | Weblog
 マリリンと関羽の立ち会いは明日の朝と決まった。
立会人は劉桂英と醇包の二人。
互いの武器は棍。
場所は館本邸の庭先。
 マリリンは軽い気持ちで自分の武技が関羽に通じるかどうか、
試したかっただけなのだが何故か、居合わせた者達が盛り上がってしまった。
醇包にいたっては、「どちらが勝っても遺恨は残さないこと」とまで言う始末。
 棍で立ち会うだけで、命の遣り取りをする分けではない。
単に棍による会話だ。
とはいうものの、心の片隅に、「関羽に勝ちたい」という気持ちがあるのも事実。
「平成に生まれて関羽と立ち会えるのは僥倖。それを活かさなくてどうする」
と自分に活を入れた。
 マリリンは夜のうちに棍に慣れようと、醇包より棍を借り受け、館本邸の庭先に出た。
夜稽古には打ってつけの植樹のない広々とした場所を見つけた。
月明かりを背に、その中央に立った。
 祖父より習い覚えたのは剣道だけではない。
榊家に伝わる判官流には棒術もあり、それもそれなりに教授されていた。
棍術と棒術に大きな違いはない。
日本では棒術。
中国では棍術。
合わせると棍棒の術。
 記憶を頼りに棍を扱う。
まずは借りた棍の感触に慣れることが肝要と、出鱈目気味に前後左右に振り回した。
棍の手触り、重さ、長さ、バランスを感じ取るのに、たいして時間は要さない。
 棍に慣れたので次は棒術で習い覚えた形稽古を始めた。
ボクシングで言うところのシャドーボクシングだ。
一人、あるいは複数の敵を想定し、正しい動作で戦いを演じる。
仮想敵と戦いながら技術の所作、趣旨を理解確認する。
 幾つもの演武の形を知っている分けではない。
剣道が主で、棒術等は補助的に教えられたにすぎないので、
キチンとマスターしているのは三つだけ。
 教えてくれた祖父が、
「形を沢山覚えれば良いという分けではない。
大切なのは形の意味を理解し、血肉とすることだ」
と言い、主要な三つの形のみを伝授してくれた。
その三つの形稽古を丁寧に繰り返した。
記憶を頼りに、身体に深く染み込ませようと。
 一つ一つの動作にも意味がある。
ゆっくり動く箇所。
普通に動く箇所。
目にも留まらぬ速さで動く箇所。緩急も要諦の一つ。
そして動きの中に含みもある。隠し技だ。
隠したままで演じる事はないのだが、知っていて困る事はない。
加えて、呼吸。吸う箇所、吐く箇所。
さらに足運び。
 それでも一つの形を済ませるのに三分から五分ほどは掛かる。
 軽く汗ばんだところで形稽古を切り上げようとした。
その時、自分を見ている視線に気付いた。
殺気も悪気も感じ取れない。
そちらをゆっくりと振り向いた。
 月明かりに朱郁が身を晒していた。
彼女は劉麗華の守り役なので顔を見知っていたが、親しく話した事はない。
「どうしたのですか」とマリリンは声をかけた。
 朱郁が二歩、三歩と前に出て来た。
「当主様に呼ばれた帰りです」
「もしかすると、明日の朝のことですか」
「ええ、場所の設営を任されました」
 マリリンは足下を見た。
「ここにするの」
「ええ、ここなら広さが充分ですからね」
「見物人も入れるのかな」
「いいえ、立ち入り禁止にします。煩いのは駄目だそうです」
「それは良かった。気が散らずにすむ」
 朱郁が疑問を口にした。
「今のは棍の練武とは分かるのですが、珍しい動きですよね。
どこの国の武芸なのですか」
 拙いところを見られてしまった。
「明日に備えて身体を練っているだけです」と答えるしかなかった。
これで誤魔化せるだろうか。
 朱郁が不審顔で、「そうでしたか」と。
深く追求せずに、軽く会釈して立ち去った。




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白銀の翼(劉家の人々)190

2012-12-09 10:05:21 | Weblog
 マリリンは自分の耳を疑った。
確かに、「洛陽から来た関羽」と聞こえた。
三国志に詳しいマリリンは関羽が若い頃、洛陽に出仕していた事は知っていた。
驚きを隠しつ、目の前の関羽とやらをジッと見定めた。
熊の如き体躯に、立派な顎髭、頬髭。
洛陽出仕と体躯、容貌から判断するに、あの関羽に違いない。
 この劉家の夕食は当主夫妻と、姫と呼ばれる五人の娘達が顔を揃えるのだが、
マリリンが起き上がれるようになってからは、何故か、マリリンも加えられるようになった。
その分けは隣席となった醇包の顔色から、
「食事の席に同性が欲しかっただけなのだろう」と察した。
実際そのようで、関羽が加わり、醇包はますます機嫌が良いように見受けられた。
 その醇包の勧めで関羽が洛陽の朝廷の様子を話した。
それによると、
通常、皇帝を頂点とする帝政は、
貴族、豪族等の集合体である官僚組織が皇帝の決裁を仰いで全土を統治するのだが、
現在の朝廷では、皇帝と官僚組織の間に宦官達が介在し、
皇帝の権威を利用した宦官集団が帝政を牛耳っているのだそうだ。
 当初、去勢されて宦官となった者は、皇帝の私的な使用人として、
皇帝の身の回りの世話や、後宮を取り仕切るのが本来の仕事であったのだが、
それが何時の間にか皇帝の代理人的な立場を得てしまい、
表舞台の政治に深く関与するようになっていた。
これ全て宦官の企みではない。
 本来の官僚組織の地位低下は、官僚組織自身が作ったもの。
大臣とかの重職に登用された者達が、公職にあるにも関わらず公務を蔑ろにし、
自分や血族の利益ばかりを図る行為が横行するようになり、
治世の根幹に揺らぎが生じたのだ。
さらに著しい者は帝位を窺い、簒奪も企てた。
 実際、前漢は簒奪により滅亡した。
簒奪までは行かなくても、次代の皇帝擁立に力を行使しようとする者も多く、
官僚組織は皇帝にとっては諸刃の剣でもあった。
秦帝国の崩壊が皇位継承にあったのは周知の事実。
始皇帝の跡目を、長子が処刑されずに、すんなり帝位を継いでいれば、
秦の滅亡はなかったのかも知れない。
 そこで自然、皇帝は去勢された宦官達を利用するようになった。
彼等は去勢された事により子供を作れぬ身になったので、
皇帝の後ろ盾なくば生きてゆけず、
皇帝に忠誠を尽くして、身を粉にして働く以外に生きる道はなかった。
「そこに皇帝が付け込んだ」と言えるし、「そこに宦官達が付け込んだ」とも言え、
どちらが先に付け込んだのかは分からないが、両者の利害が合致したのは確か。
勿論、宦官達も人間であるので欲に染まり、賄賂を取り蓄財に励む者もいるのだが、
それでも皇帝にとっては宦官達の悪は、旧来の官僚組織の悪に比べると遙かに小さく、許せる範囲でもあった。
 このところ洛陽では貴族、豪族等が宦官から権力を奪い返そうと必死になり、
あらゆるところに働きかけていた。
しかし宦官達は子を成せないまでも、縁者や養子等を官僚組織に在籍させており、
彼等の抵抗で官僚組織自体が紛糾する始末。
宦官の中には表舞台に登場し、武官、文官として名を連ねる者達もいた。
将軍として兵を率いる者も。
とても一筋縄では行かない。
余波は末端で働く関羽達の現場にも下りてきた。
賄賂に裏切り、密告、弾劾、罷免、・・・。
関羽は、それらの事に嫌気が差して職を辞したのだ。
 興味深く聞いていた姫の一人、麗華が問う。
「朝廷の先行きはどうなると思います」
「いずれ血を流さなくては収まらないでしょう」
「それはいつ頃と」
「継承問題が切っ掛けになるのでは、と思っています」
「その時、貴男は」
「その頃には、・・・」と関羽は言い淀む。
 桂英が割って入った。
「まだ先の話よ。
それより関羽殿、暫くはこの館で骨休めなさい。
そしてみんなに洛陽の話をもっと聞かせて下さい」
 関羽が大きな身体で畏まった。
「はい、喜んで承ります」
 マリリンは自分の言葉を疑った。
知らず知らずのうちに関羽に、
「洛陽の武を教えて頂けませんか」と口走っていた。
 関羽だけでなく、みんなの視線がマリリンに集中した。
食事どころではなくなった。
 桂英のいる前での語り掛けを控えているヒイラギも驚いた。
「何を考えているんだ」
 男の身体になってからというもの、何かと調子が狂う事が多かった。
今の発言もそれなのだろうか。
如何なる考えに基づくものなのか、当の本人にも分からない。
「毬子からマリリンという別人格になった」と理解するしかない。
女の身体の時も活発だとは思っていたが、今や無鉄砲の域に達しようとしていた。
あの伝説の関羽に武で挑むとは。
 ヒイラギが、「考えてから喋れ」と怒鳴る。
 一旦、口にしたからには反故には出来ない。
関羽の視線をグッと受け止めた。
 関羽がマリリンの視線を外し、桂英の方を見た。
「どうします。マリリン殿は病み上がりと聞いていましたが」
 桂英が醇包と顔を見合わせた。
それだけで意思疎通が図れたようで、醇包がマリリンに問う。
「得物は」
「私の背丈ほどの棍があれば間に合います」
 醇包が関羽に問う。
「如何かな」
「それでは私も棍で」
 ヒイラギの機嫌が直っていた。
「何時の間にか身体に合わせて、根性も男になっていたんだな。
関羽と知って挑むとは上出来だ。
負けそうになったらいつでも代わってやるぞ」
 ヒイラギも目の前の関羽に興味を持ったらしい。
関羽の羽は項羽の羽と同じ。
関羽の親が、項羽のような将軍に育つようにと願って名付けたのかも知れない。
背丈も、無敵な伝説も殆ど同じ。
だからと言ってヒイラギに勝負を譲るつもりはない。




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白銀の翼(劉家の人々)189

2012-12-05 21:18:04 | Weblog
 マリリンの回復は周囲が思っていたよりも早かった。
三日も経つと起き上がることが出来るようになり、
五日目には館内を歩き回れるようにもなった。
 そんなマリリンの為に醇包が衣服を用意してくれた。
呆れた事に、男の身体に生まれ変わったマリリンに、
女物かと見紛うような色鮮やかな物ばかりを揃えてくれた。
ことに花柄の衣服が多かった。
「この地方ではこれが流行りなんだよ」と醇包。
その言いように疑問は何一つ浮かばなかった。
文字通り、裸一貫の身の上。何も着る物を持っていない。
断る理由もないので喜んで着用した。
マリリンは身体こそ男だが、元々は女。
花柄に拒否反応が出る分けがない。
みんなには訝しい目で見られたが、いっこうに気にしなかった。
ヒイラギにも、
「郷に入っては郷に従え、と言うではないか。好意は喜んで受けな」
と釘を刺されていた。
 六日目からは隣の赤劉城に足を伸ばした。
当然ながら一人での気ままな散歩が許される分けもなく、
侍女、宋純が付き添うことで外歩きが実現した。
 初めて足を踏み入れた赤劉城の城構えには驚かされた。
本城は城郭の中央にこぢんまりと鎮座していたのだ。
「これで防御の役に立つのか」と疑問に思っていたら、
宋純が、「無位無冠ですから、派手には出来ないのですよ」と説明してくれた。
 敷地の大半は商家、民家が軒を連ね、大いに賑わっていた。
その繁盛ぶりからすると、城の大小は問題ではないのかも知れない。
 マリリンの事は直ぐに知れ渡った。
神樹の根元で素っ裸で寝ていた男としてではなく、「神樹の使わした者」として。
それから何日かは、マリリンが赤劉城に姿を現す度に大勢が野次馬として、
行くところ行くところに付きまとう始末。
 五日もすると数が減ったので、マリリンは陶洪、陶涼の兄妹を外出に伴うことにした。
「たまには外の空気でも吸ってみようか」と。
 二人は小さいながら館の使用人なので、自由に外に出られない境遇にあった。
誘いを喜ぶかと思いきや、兄妹は渋った。
「私が足手纏いになります」と陶涼。
「使用人なので勝手が利かない」というのもあるが、
それよりも目が見えないので遠慮したのだ。
 そのくらいで諦めるマリリンではなかった。
強引に陶涼の手を引いた。
陶洪の、「マリリン様、やめてください」と叫ぶ声や、
陶涼の、「足手纏いになるだけです」との泣き出さんばかりの声は無視した。
付き添いの侍女の宋純はオロオロするばかり。
 マリリンが陶涼を館の外に連れ出すと、陶洪も宋純も付いて来ざるを得なかった。
足の重そうな三人に、わざと明るく言う。
「咎めがあれば私が引き受けるわ。
だから今日は楽しくやりましょう」と。
 こうして四人で赤劉城に入った。
マリリンは陶涼の手を優しく引いて案内した。
陶涼からも、進むに従い興味が湧いたようで、
それまでのオドオド感が消えてゆくのが分かった。
時には店内に入り、商いの声を聞かせもした。
兄の陶洪も観念したのか、子供心に戻ったのか、どうとも言えないが、
その足取りは軽くなっていた。
宋純にいたっては母親のような目で兄妹を見守っていた。
 色々な店を周り、みんなが疲れた頃だった。
小間物屋を出たところで鋭い視線を浴びた。
物見高い野次馬達とは明らかに違っていた。
視線を向けなくても、目の端で相手を捉えた。
 熊の如き大きさの男であった。
その体躯はこの城一番ではなかろうか。
顎髭と頬髭の立派さが目を引いた。
熊男はやがて関心を失ったのか、先を急いでいるのか、視界から消えた。
 その熊男に引き合わされた。
館に戻っての夕食の席であった。
劉桂英が、
「洛陽から来た関羽殿だ」と、みんなに紹介した。




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白銀の翼(劉家の人々)188

2012-12-02 09:26:51 | Weblog
 長江を無数の船が行き来していた。
上る船。下る船、最短距離の対岸から対岸に向かって漕ぐ船。
様々な荷船、渡船、漁船等で賑わっていた。
それらに混じって丸太船や筏が濁流に抗している姿は健気に見えた。
 衝突、沈没を回避する為の怒号が飛び交う様子を、
荷船の舳先で青年は好ましそうな笑いで見ていた。
熊かと見間違えそうな大柄な体躯の持ち主で、なによりも立派な顎髭、頬髭。
青年だというのに顔の造作に威厳があった。
堂に入った帯剣姿から、流れ者とかの類ではなく、歴とした武人と分かる
 青年の名は関羽。
河東郡の生まれで、帝都、洛陽にて司隷校尉の配下であったが、
朝廷内の権力争いに嫌気が差し、職を辞して旅をしていた。
 そんな青年に船頭が寄って来た。
「あれが長江の神樹ですよ」と指さして教えてくれた。
 左前方の山陰から、それがクッキリと姿を見せた。
信じられぬ高さの巨木だ。
巨大過ぎて、我が目を疑い、思わず問うた。
「いつからあるんだ」
「さあ・・・、千年二千年でしょうかね」
 船が河を下るにつれ、それの全容がより詳細に見えてきた。
それは、まるで巨大な緑の茸を思わせた。
「あの枝葉の厚さですから、雨も雪も通らぬそうです」と船頭。
 話し好きな船頭で神樹について色々と語ってくれた。
この徐州を訪れる事自体が初めての関羽はただ感心するばかり。
 船は神樹を過ぎると、長江に流れ込む支流へと舳先を向けた。
支流と言っても広くて水量も豊富。
 船頭は水夫達に指示をしながら、関羽に言う。
「この先に船着き場があります」
 関羽は飽きずに神樹を見上げたまま。
「いよいよ到着か」
 同じ司隷校尉の配下であった同僚の伝手で、この船に乗船させてもらっていた。
もちろんそれ相応の謝礼を払っていたので、扱いは荷扱いではなく、
客として遇されていた。
 やがて前方に整備された船着き場が見えて来た。
すでに先客があり、何艘かが着岸していたが、
船頭は構うことなく、船と船の隙間に上手に割り込むように横付けさせた。
 船問屋や倉庫が河岸に所狭しと建ち並び、
その更に奥向こうには高い城壁の一部も垣間見えた。
どうやらそれが赤劉城なのだろう。
 荷揚げ人足達がドカドカと荷船に乗り込んで来た。
関羽は、邪魔にならぬように船頭に別れの挨拶をし、足早に下船した。
 河岸にも活気があった。
商う者ばかりでなく、土地の者や旅の者達もいて、色々な土地の訛りが聞こえた。
 この赤劉邑は無位無冠の劉家が治めているので、立場上、正規軍は持たない。
代わりに劉家の私兵部隊が編成され、軽武装で立哨、巡回を欠かすことなく行っていた。
当然、この河岸から赤劉城に続く街道にも関所があり、立哨の番人がいた。
彼等は誰彼と無く止める事はしないようで、
小綺麗な身形の関羽は、「盗賊の類ではない」と判断されたのだろう。
すんなりと通された。
 河岸から城郭へは街道がほぼ一直線に走っていた。
昼日中とはいえ人出が多い。
その人波を押しのけるかのように馬車や荷車が、忙しなく行き交っていた。
それだけで赤劉邑の繁栄ぶりが手に取るように分かった。
 また街道の両側の農地も良く手入れされていた。
これなら今秋も豊穣間違いないだろう。
そこで立ち働く農民達の表情も自然、柔いで見えた。
 関羽は、ここまで行き届いた領地経営に感心してしまった。
「無位無冠だからこそ、働く者達の心が分かるのか」と。
 城郭は東西南北に四つの門があり、
日の出とともに開門し、日の入りとともに閉門する。
軍事都市というよりは商人都市の色彩が濃く、
四つの門に武装した門衛が立哨しているのだが、出入りには比較的寛容であった。
 河岸からだと街道は南門に通じていた。
この南門も出入りが激しい。
関羽はここでも足を止められることはなかった。
 城郭に入ると、「単純化された街造りである」と分かった。
籠城戦用に備えた複雑に入り込んだ街ではなく、
誰も迷わないように道路が碁盤の目のように張り巡らされていた。
 表通りに道具屋、小間物屋等が軒を連ねていた。
その一つから派手な衣装を着た若者が出て来た。
田舎では滅多に見られぬ花柄模様。
第一印象は、「女物を着ているのでは」であった。
鼻筋がスッと通った顔の造作は女そのものなのだが、着こなしは男。
若者は女児の手を優しく引いていた。
どうやら女児は目が見えぬ様子。
そんな二人の後ろに女児に似た顔の少年が付いていた。
兄妹に違いない。
さらに後ろには丸っこい体付きの婦人が従っていた。
仕草から侍女ではなかろうか。
 関羽の目を引いただけではなかった。
行き交う者達も若者の一行に目を留めた。
関羽は、「どんな連中なんだろう」と心を残しながら先を急いだ。
 城郭のど真ん中に低層の城が築かれていた。
それが赤劉城の本体であった。
威容を誇ることも、異彩を放つこともない普通の城構え。
 表門の門衛の一人が関羽を睨み据えた。
ここよりは領民だとて、簡単には入れてくれないのだろう。
 関羽は手荷物から細長い木箱を取り出し、門衛に差し出した。
「洛陽の韓寿様からです」
 赤劉邑当主の劉桂英の娘、 芽衣が洛陽の拝領屋敷を守っていた。
その芽衣には三人の子がいた。
二男、一女で、邑にいる劉麗華が長女。
あとの二人は男子なので、夫の姓を名乗っていた。
後々の家督相続を巡る争いを起こさぬように、
男子に生まれた者達は一も二もなく夫の姓を名乗るのが長年の習わしであった。
 劉芽衣の夫は、洛陽では知られた武門、韓家の三男、韓秀。
芽衣と韓秀の長男が韓寿で、次男が韓厳と名付けられていた。
その二人の男子も洛陽にいて、その一人、韓寿が関羽の友人であった。
その関係から、関羽は旅の途中で赤劉邑に立ち寄る事になったのだ。




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