何かあるとは思っていた。
しかし、まさか実力行使に出るとは。
普通であれば城中での乱暴狼藉は言語道断。
発見されしだい当事者は拘束され、裁かれる。
ところが女官長やスグルの言動をみた限り、
人目を憚っている様子が全く感じ取れないのだ。
逆に、法に則っているとしか思えない。
背後に、それ相応の力を有している者が控えているのだろうか。
白を黒と認定できる者が。
対応に迷っていると、背後で風が巻いた。
慌てて振り返った。
キャロルが後方から来る敵に敢然と立ち向かった。
猛ダッシュで、一人目が踏み出した足に組み付いた。
地下室でスグルに組み付いた時の再現だ。
あの時はスグルが困惑顔で動きを止めたように見えた。
今回も相手は困惑顔。
足を止めてキャロルを捕まえようと両手を伸ばした。
相手の挙動がおかしい。
下半身が微動だにしない。
まるで固まったかのよう。
女児だからと手加減している分けではなく、本当に止められているように見えた。
まさか・・・。
信じられぬ光景が展開された。
キャロルが。
相手の両手を難なく払い除け、股間を思い切り蹴り上げたのだ。
くぐもる音。
短い悲鳴。
人の心配どころではなかった。
俺は背後から右肩を掴まれた。
鷲掴み。
俺は素速く身体を反転させ、その勢いで相手の体勢を崩した。
相手の動きが、よく見えた。
隙だらけの首筋に裏拳を飛ばした。
極めは、こちらも股間に蹴り一発。
続けて二人目、三人目。
軽くあしらい、いずれにも極めは股間への蹴り。
四人目を求めて見回した。
二本足で立っていたのはキャロル一人。
そのキャロルが俺を見て、得意気に指四本を立てた。
彼女に息の乱れはない。
色を見るに、意気軒昂。
新たな敵が現れれば躊躇なく襲いかかるだろう。
俺は物足りなく思った。
敵があまりに弱すぎた。
力を遣い尽くす前に倒してしまった。
俺は力を持て余していた。
持て余しているというのに、困った事に新たな力が涌いてくる。
沸々と、湧き上がる温泉のよう。
どうしてくれよう。
見回すと七人が股間を押さえ、呻き声を上げ、のたうち回っていた。
スグルはと見れば、彼は表情を一変させていた。
家来達の惨憺たる有様に怒りを覚えたのだろう。
拳を握り締め、視線を俺に向けて来た。
殺意の籠もった目。
どうしてくれよう、とばかり。
女官長は彼の陰に隠れているので表情が分からない。
そこへ新たな集団が現れた。
建物の陰から衛兵、およそ二十数人。
上番か下番かは知らぬが、交替の時刻なのだろう。
甲冑姿で整然と行進して来た。
彼等がこちらの状況に気付いた。
先頭の衛兵が隊長らしい。
きびきびと指示を下した。
「全体とまれ。
一番隊、ただちに横隊つくれ。
二番隊は待機」
こちらに向けて十人が横隊となるや、次の指示で槍を構えた。
それを見たスグルが凍り付いた。
彼は実に分かり易い。
表情から混乱しているのが手に取るように分かった。
これは偶然の遭遇らしい。
衛兵の行動を止めようとするが、慌てているので声にならない。
命令が下された。
「槍で押し包み、捕らえよ」
事情を説明する暇は与えられなかった。
槍の穂先が俺とキャロルに向けられた。
抵抗すれば問答無用で槍が繰り出される。
さっきまでの喧嘩沙汰とは明らかに違う。
俺は覚悟した。
捕まるつもりは更々ない。
売られた喧嘩なので喜んで買う。
一度でも逃げると、逃げ癖が身に付く。
とにかく、まず買う。
勝ってから考える。
負け前提なんぞは論外。
のたうち回っている奴のサーベルに手を伸ばし、白刃を抜いた。
軽く振ってみた。
手頃な重さでバランスが良い。
俺を真似てキャロルもサーベルを手にした。
長いので持て余すかと思ったが、違った。
駆けて来る衛兵をチラ見しながら、サーベルを巫山戯るように大きく振り回した。
俺は思わず聞いた。
「人の斬り方が分かるのか」
「知らやね。
・・・。
カルメン、真似る」標準語も真似る気になったらしい。
俺達がサーベルを手にしたのを見て、
横一線になって駆けて来る衛兵達が残虐な色を浮かべた。
槍の穂先も上向いた。
相手が女児を含む姉妹と分かっても、手加減せぬつもりらしい。
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普通であれば城中での乱暴狼藉は言語道断。
発見されしだい当事者は拘束され、裁かれる。
ところが女官長やスグルの言動をみた限り、
人目を憚っている様子が全く感じ取れないのだ。
逆に、法に則っているとしか思えない。
背後に、それ相応の力を有している者が控えているのだろうか。
白を黒と認定できる者が。
対応に迷っていると、背後で風が巻いた。
慌てて振り返った。
キャロルが後方から来る敵に敢然と立ち向かった。
猛ダッシュで、一人目が踏み出した足に組み付いた。
地下室でスグルに組み付いた時の再現だ。
あの時はスグルが困惑顔で動きを止めたように見えた。
今回も相手は困惑顔。
足を止めてキャロルを捕まえようと両手を伸ばした。
相手の挙動がおかしい。
下半身が微動だにしない。
まるで固まったかのよう。
女児だからと手加減している分けではなく、本当に止められているように見えた。
まさか・・・。
信じられぬ光景が展開された。
キャロルが。
相手の両手を難なく払い除け、股間を思い切り蹴り上げたのだ。
くぐもる音。
短い悲鳴。
人の心配どころではなかった。
俺は背後から右肩を掴まれた。
鷲掴み。
俺は素速く身体を反転させ、その勢いで相手の体勢を崩した。
相手の動きが、よく見えた。
隙だらけの首筋に裏拳を飛ばした。
極めは、こちらも股間に蹴り一発。
続けて二人目、三人目。
軽くあしらい、いずれにも極めは股間への蹴り。
四人目を求めて見回した。
二本足で立っていたのはキャロル一人。
そのキャロルが俺を見て、得意気に指四本を立てた。
彼女に息の乱れはない。
色を見るに、意気軒昂。
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俺は物足りなく思った。
敵があまりに弱すぎた。
力を遣い尽くす前に倒してしまった。
俺は力を持て余していた。
持て余しているというのに、困った事に新たな力が涌いてくる。
沸々と、湧き上がる温泉のよう。
どうしてくれよう。
見回すと七人が股間を押さえ、呻き声を上げ、のたうち回っていた。
スグルはと見れば、彼は表情を一変させていた。
家来達の惨憺たる有様に怒りを覚えたのだろう。
拳を握り締め、視線を俺に向けて来た。
殺意の籠もった目。
どうしてくれよう、とばかり。
女官長は彼の陰に隠れているので表情が分からない。
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建物の陰から衛兵、およそ二十数人。
上番か下番かは知らぬが、交替の時刻なのだろう。
甲冑姿で整然と行進して来た。
彼等がこちらの状況に気付いた。
先頭の衛兵が隊長らしい。
きびきびと指示を下した。
「全体とまれ。
一番隊、ただちに横隊つくれ。
二番隊は待機」
こちらに向けて十人が横隊となるや、次の指示で槍を構えた。
それを見たスグルが凍り付いた。
彼は実に分かり易い。
表情から混乱しているのが手に取るように分かった。
これは偶然の遭遇らしい。
衛兵の行動を止めようとするが、慌てているので声にならない。
命令が下された。
「槍で押し包み、捕らえよ」
事情を説明する暇は与えられなかった。
槍の穂先が俺とキャロルに向けられた。
抵抗すれば問答無用で槍が繰り出される。
さっきまでの喧嘩沙汰とは明らかに違う。
俺は覚悟した。
捕まるつもりは更々ない。
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一度でも逃げると、逃げ癖が身に付く。
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のたうち回っている奴のサーベルに手を伸ばし、白刃を抜いた。
軽く振ってみた。
手頃な重さでバランスが良い。
俺を真似てキャロルもサーベルを手にした。
長いので持て余すかと思ったが、違った。
駆けて来る衛兵をチラ見しながら、サーベルを巫山戯るように大きく振り回した。
俺は思わず聞いた。
「人の斬り方が分かるのか」
「知らやね。
・・・。
カルメン、真似る」標準語も真似る気になったらしい。
俺達がサーベルを手にしたのを見て、
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