呆れ顔の李儒をよそに、董卓がマリリンに問う。
「お主の事情は韓秀殿から聞いている。
この先、どうする。
よかったらワシの家臣にならないか。
ワシの家臣で不足なら国軍の士官に推挙しても構わん」
韓秀は子息二人の行く末の為、董卓に取り入ろうと必死であった。
そんなところから関心を引くため、マリリンの事情まで明け透けに話したに違いない。
その様が目に浮かぶ。
「今のところは赤劉家の居候で満足です」
マリリンの返答に、傍近くにいた許褚と華雄が顔を綻ばせた。
董卓は、「欲がないな」と笑顔を見せ、
「許褚と華雄はどうする」と二人を振り向いた。
許褚が生真面目な顔で即答した。
「俺も暫く居候を続ける」
一方の華雄は困ったような表情を浮かべた。
マリリンに強引に弟子入りした手前、勝手な行動は出来ない。
しかし董卓からの仕官話しは実に魅力的。捨て難い。
そこでマリリンが華雄に助け船。
「華雄、貴男は子持ちでしょう。
私には何の遠慮もいらないのよ
娘の雪梅の幸せを一番に考えなさい」
マリリンの中のヒイラギが怒った。
「華雄を手放すつもりか。
董卓の下に置けば、いずれ討ち死にの運命だぞ」
それは私も分かっているわ。
でもね、稼ぎのない親を持つ雪梅が不憫でならないのよ。
「その雪梅が孤児になるんだ」
そこが問題なのよね。
どうしたものかしら。
華雄がマリリンを見た。
「師匠、俺も居候を続けていいかな」
「後悔しない」
「たぶん、しないと思う」
董卓はお手上げの表情を浮かべた。
「しようがないか」
もう一人の居候、呂布は郭夷と先行していて、今は姿が見えない。
その呂布のことを董卓に問う。
「呂布に仕官話しはしなかったのですか」
董卓はまたもや、お手上げの表情を浮かべた。
「あれには、にべも無く断られたよ。
何やら個人的事情で、それどころでは無いらしい」
「れいの人探しですか」
「聞いたのか」
「詳しくは話してくれません。
遠慮深いのか、私達が頼りないのか」
「迷惑をかけたくないのだろう。色々複雑だから。
それに顔を覚えているのは呂布一人。
知らぬ我らでは何の力にもなれない」
と、異な臭い。
これは・・・。
これまでの草木の焼ける臭いとは明らかに違う。
風に乗り、それが飛んで来た。
肉の焼ける臭い。
人か、馬か、獣か、それは確とはしない。
進むに従い風が熱さも伴って来た。
マリリンは慌てて、首に巻いていた布を鼻まで引き上げた。
みんなも同様に鼻を布で覆う。
少し進むと先行していた呂布と郭夷を見つけた。
二人は高台で前方を凝視していた。
マリリン達が近付いても振り返らない。
そこに馬を並べると熱気が押し寄せて来た。
広大な原野が見回せた。
手前はほとんどが焼け野原。
まだ燻っているところもあるが、大方焼き尽くしていた。
火災自体はまだ収まってはいない。
西の原野が炎に包まれていた。
手前の焼け野原は何進大将軍が布陣していた場所。
注意深く見ると何が焼けているのかが判明してきた。
線のように連なっているのは馬止めに並べた盾。
小さな塊は荷馬車。
より小さな塊、それは連弩。
天幕は焼け落ちてしまったようで姿も形もない。
そして、目を逸らしたくなるが人、人、人、それから馬。
動いている物は、現場の熱さを物ともせずに舞い降りる鴉の群だけ。
焼け焦げた人馬に黒山のように群がっていた。
あまりの惨状に誰も口を利かない。
視界の隅に微かに動く気配を捉えた。
左方。
延焼を免れた一帯があり、その丈の高い草むらの陰。
何やら潜んでいる気配。
ただ、殺気だけは感じ取れない。
マリリンは何も言わず、そちらに馬を進めた。
呂布達が同行しようとするが、それを断り、ただ一騎で向かった。
草むらの手前で馬を止め、草陰に向かって呼び掛けた。
「私達は官軍よ。大将は董卓将軍。さあ、出て来なさい」
予想していた通りだった。
武器を持たぬ兵士達が、ぞろぞろと出て来た。
六人。
それぞれが心配気にマリリンと董卓達に視線を走らせた。
服装から判断すると、正規の官軍ではないらしい。
「貴男達は大将軍の軍勢に加わっていたのね」
一人が怖ず怖ずと答えた。
「私共は洛陽の者です。
兵力が不足しているというので志願したのです」
「逃げ遅れたのね。もう大丈夫よ。
董卓将軍の手勢がもうじき到着するわ」
その言葉に六人が安堵の表情を浮かべた。
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「お主の事情は韓秀殿から聞いている。
この先、どうする。
よかったらワシの家臣にならないか。
ワシの家臣で不足なら国軍の士官に推挙しても構わん」
韓秀は子息二人の行く末の為、董卓に取り入ろうと必死であった。
そんなところから関心を引くため、マリリンの事情まで明け透けに話したに違いない。
その様が目に浮かぶ。
「今のところは赤劉家の居候で満足です」
マリリンの返答に、傍近くにいた許褚と華雄が顔を綻ばせた。
董卓は、「欲がないな」と笑顔を見せ、
「許褚と華雄はどうする」と二人を振り向いた。
許褚が生真面目な顔で即答した。
「俺も暫く居候を続ける」
一方の華雄は困ったような表情を浮かべた。
マリリンに強引に弟子入りした手前、勝手な行動は出来ない。
しかし董卓からの仕官話しは実に魅力的。捨て難い。
そこでマリリンが華雄に助け船。
「華雄、貴男は子持ちでしょう。
私には何の遠慮もいらないのよ
娘の雪梅の幸せを一番に考えなさい」
マリリンの中のヒイラギが怒った。
「華雄を手放すつもりか。
董卓の下に置けば、いずれ討ち死にの運命だぞ」
それは私も分かっているわ。
でもね、稼ぎのない親を持つ雪梅が不憫でならないのよ。
「その雪梅が孤児になるんだ」
そこが問題なのよね。
どうしたものかしら。
華雄がマリリンを見た。
「師匠、俺も居候を続けていいかな」
「後悔しない」
「たぶん、しないと思う」
董卓はお手上げの表情を浮かべた。
「しようがないか」
もう一人の居候、呂布は郭夷と先行していて、今は姿が見えない。
その呂布のことを董卓に問う。
「呂布に仕官話しはしなかったのですか」
董卓はまたもや、お手上げの表情を浮かべた。
「あれには、にべも無く断られたよ。
何やら個人的事情で、それどころでは無いらしい」
「れいの人探しですか」
「聞いたのか」
「詳しくは話してくれません。
遠慮深いのか、私達が頼りないのか」
「迷惑をかけたくないのだろう。色々複雑だから。
それに顔を覚えているのは呂布一人。
知らぬ我らでは何の力にもなれない」
と、異な臭い。
これは・・・。
これまでの草木の焼ける臭いとは明らかに違う。
風に乗り、それが飛んで来た。
肉の焼ける臭い。
人か、馬か、獣か、それは確とはしない。
進むに従い風が熱さも伴って来た。
マリリンは慌てて、首に巻いていた布を鼻まで引き上げた。
みんなも同様に鼻を布で覆う。
少し進むと先行していた呂布と郭夷を見つけた。
二人は高台で前方を凝視していた。
マリリン達が近付いても振り返らない。
そこに馬を並べると熱気が押し寄せて来た。
広大な原野が見回せた。
手前はほとんどが焼け野原。
まだ燻っているところもあるが、大方焼き尽くしていた。
火災自体はまだ収まってはいない。
西の原野が炎に包まれていた。
手前の焼け野原は何進大将軍が布陣していた場所。
注意深く見ると何が焼けているのかが判明してきた。
線のように連なっているのは馬止めに並べた盾。
小さな塊は荷馬車。
より小さな塊、それは連弩。
天幕は焼け落ちてしまったようで姿も形もない。
そして、目を逸らしたくなるが人、人、人、それから馬。
動いている物は、現場の熱さを物ともせずに舞い降りる鴉の群だけ。
焼け焦げた人馬に黒山のように群がっていた。
あまりの惨状に誰も口を利かない。
視界の隅に微かに動く気配を捉えた。
左方。
延焼を免れた一帯があり、その丈の高い草むらの陰。
何やら潜んでいる気配。
ただ、殺気だけは感じ取れない。
マリリンは何も言わず、そちらに馬を進めた。
呂布達が同行しようとするが、それを断り、ただ一騎で向かった。
草むらの手前で馬を止め、草陰に向かって呼び掛けた。
「私達は官軍よ。大将は董卓将軍。さあ、出て来なさい」
予想していた通りだった。
武器を持たぬ兵士達が、ぞろぞろと出て来た。
六人。
それぞれが心配気にマリリンと董卓達に視線を走らせた。
服装から判断すると、正規の官軍ではないらしい。
「貴男達は大将軍の軍勢に加わっていたのね」
一人が怖ず怖ずと答えた。
「私共は洛陽の者です。
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