その日は直ぐにやって来た。
俺が午後の実技授業が終え、疲れた身体で寮に戻ると、
いつもは姿のないアリスやハッピーがベッドで寝転がっていた。
『いつまで待たせるの。
待ち草臥れちゃった』
『ピー、遅い遅い』
二人共やる気満々。
俺はそんな態度に呆れた。
『闇市の開始は夕刻だよ』
『分かってるわよ。
でも待ちきれないの』
俺は汗まみれの自分に光魔法をかけた。
入浴と洗濯のライトクリーン。
心身の疲労を取り除くライトリフレッシュ。
それから真新しい衣服に着替え、
一番上には夏用の丈の短い橙色のローブを羽織った。
『僕は昼食は済ませたけど、二人はどうする』
『プー、途中でなんか買ってよ』
『暑いから冷たいジュースね』
俺は帰宅する生徒達に紛れて学校の正門を出た。
そのまま東区画へ向かう。
アリスとハッピーの二人は当然ながら子猫姿で、
学校側が設置した結界や巡回する警備員の目を避け、
難無く敷地から脱出。
先回りをして、屋台が見える所で俺を待ち構えていた。
『ペー、屋台屋台』
屋台で焼き鳥とジュースを買い、近くの公園に寄り道。
二人に焼き鳥とジュースを渡し、俺はこれからの手順を再検討した。
公爵邸は偵察済み、既に3D化。
当主や使用人、警備体勢も把握済み。
ただ、闇市が開かれる本日は大きく変化する筈だ。
特に警備体制。
デミアン・ファミリーが動員されるだろう。
ただの暴力装置なら問題はない。
蹴散らすだけ。
危惧するのは、ただ一つ。
探知や鑑定、あるいは攻撃が得意な魔法使い。
今回はアリスだけでなく、ハッピーがいる。
侵入する際に発見されると面倒だ。
それに貴族街なので、近隣の屋敷にいるかも知れない。
はたと気付いた。
俺のステータス偽装は・・・。
これまではランクが低い奴が相手だったので、一度も見破られていない。
王宮でさえそうだった。
それに偽装に触れられれば、脳内モニターが教えてくれる。
でも、でもね・・・。
悪戯心が擽られた。
そうだ。
もう一つ偽装しよう。
悪党ステータス。
「名前、ブラック。
種別、人間。
年齢、三十才。
性別、雄。
住所、足利国山城地方国都住人。
職業、悪党。
ランク、B。
HP、150。
MP、150。
スキル、全属性魔法」
自分で言うのも何だが、
このランクのステータスを鑑定できる奴がいるのか・・・。
ましてや偽装と見破れる奴は・・・。
まあ、いいか。
念の為、用心用心。
そんな俺の自己満足にアリスが気付いた。
ジュースから口を離した。
『悪い顔をしているわね。
何を企んでいるの』
俺は素直に分けを話した。
するとアリスが乗って来た。
『面白そう、私も私も』
「名前、レッド。
種別、ブラックの仲間。
年齢、一才。
住所、足利国山城地方住人。
職業、悪党。
ランク、B。
HP、150。
MP、150。
スキル、全属性魔法」
偽装を施してやると満足そうに笑みを浮かべるアリス。
『悪党か、良い響きね。
でもどうしてランクBなのよ』
『なんとなく』
隣のハッピーが焼き鳥を飲み込み、俺とアリスを見比べた。
『パー、面白い事なら、僕も僕も』
「名前、ブルー。
種別、ブラックの仲間。
年齢、一才。
住所、足利国山城地方住人。
職業、悪党。
ランク、B。
HP、150。
MP、150。
スキル、全属性魔法」
『ピー、悪党悪党、みんなと一緒』心から喜んでくれた。
『ねえダン。
私達には覆面はないの』
『プー、覆面覆面』
『子猫用の覆面かい』
『そうよ』
『ペー、覆面覆面』
面倒臭い。
でも断ると、余計に面倒臭そう。
自分のと同じで錬金で作ることにした。
材料はミカワサイで、色違いにして、
目鼻口の三か所に小さな穴を開けた。
夏場の猫には必須の、汗対策の風魔法の術式を施した。
アリスには赤の覆面。
ハッピーには青の覆面。
それを渡すと二人は覆面を被り、嬉しそうに跳ね回る。
『これはこれで良いわね』
『ポー、これでお仕事、がんばる』
夕刻には早いが行くことにした。
みんなで悪党ファッション、悪党ステータス、そして光学迷彩。
上空へ、探知に引っかからぬ高さまで転移。
そこから目的地上空へと更に転移。
下をズームアップで確認した。
最上位の貴族だけあって公爵邸は広い。
無駄に広い。
使わないのか、放置してるのか、手入れされていない箇所まである。
奥まった所にある池と、それを囲む雑木林だ。
人の丈より伸びた雑草がぼうぼう。
偵察時同様、本日も人影はなし。
俺達は偵察時にはなかったテント村を見付けた。
表の庭園に軒先を並べ、大勢が独楽鼠のように動き回っていた。
どうやら、ここが闇市の一般品の売り場なのだろう。
だとすると俺達が目指すオークション会場は・・・。
ジッと人の動きを観察した。
俺が午後の実技授業が終え、疲れた身体で寮に戻ると、
いつもは姿のないアリスやハッピーがベッドで寝転がっていた。
『いつまで待たせるの。
待ち草臥れちゃった』
『ピー、遅い遅い』
二人共やる気満々。
俺はそんな態度に呆れた。
『闇市の開始は夕刻だよ』
『分かってるわよ。
でも待ちきれないの』
俺は汗まみれの自分に光魔法をかけた。
入浴と洗濯のライトクリーン。
心身の疲労を取り除くライトリフレッシュ。
それから真新しい衣服に着替え、
一番上には夏用の丈の短い橙色のローブを羽織った。
『僕は昼食は済ませたけど、二人はどうする』
『プー、途中でなんか買ってよ』
『暑いから冷たいジュースね』
俺は帰宅する生徒達に紛れて学校の正門を出た。
そのまま東区画へ向かう。
アリスとハッピーの二人は当然ながら子猫姿で、
学校側が設置した結界や巡回する警備員の目を避け、
難無く敷地から脱出。
先回りをして、屋台が見える所で俺を待ち構えていた。
『ペー、屋台屋台』
屋台で焼き鳥とジュースを買い、近くの公園に寄り道。
二人に焼き鳥とジュースを渡し、俺はこれからの手順を再検討した。
公爵邸は偵察済み、既に3D化。
当主や使用人、警備体勢も把握済み。
ただ、闇市が開かれる本日は大きく変化する筈だ。
特に警備体制。
デミアン・ファミリーが動員されるだろう。
ただの暴力装置なら問題はない。
蹴散らすだけ。
危惧するのは、ただ一つ。
探知や鑑定、あるいは攻撃が得意な魔法使い。
今回はアリスだけでなく、ハッピーがいる。
侵入する際に発見されると面倒だ。
それに貴族街なので、近隣の屋敷にいるかも知れない。
はたと気付いた。
俺のステータス偽装は・・・。
これまではランクが低い奴が相手だったので、一度も見破られていない。
王宮でさえそうだった。
それに偽装に触れられれば、脳内モニターが教えてくれる。
でも、でもね・・・。
悪戯心が擽られた。
そうだ。
もう一つ偽装しよう。
悪党ステータス。
「名前、ブラック。
種別、人間。
年齢、三十才。
性別、雄。
住所、足利国山城地方国都住人。
職業、悪党。
ランク、B。
HP、150。
MP、150。
スキル、全属性魔法」
自分で言うのも何だが、
このランクのステータスを鑑定できる奴がいるのか・・・。
ましてや偽装と見破れる奴は・・・。
まあ、いいか。
念の為、用心用心。
そんな俺の自己満足にアリスが気付いた。
ジュースから口を離した。
『悪い顔をしているわね。
何を企んでいるの』
俺は素直に分けを話した。
するとアリスが乗って来た。
『面白そう、私も私も』
「名前、レッド。
種別、ブラックの仲間。
年齢、一才。
住所、足利国山城地方住人。
職業、悪党。
ランク、B。
HP、150。
MP、150。
スキル、全属性魔法」
偽装を施してやると満足そうに笑みを浮かべるアリス。
『悪党か、良い響きね。
でもどうしてランクBなのよ』
『なんとなく』
隣のハッピーが焼き鳥を飲み込み、俺とアリスを見比べた。
『パー、面白い事なら、僕も僕も』
「名前、ブルー。
種別、ブラックの仲間。
年齢、一才。
住所、足利国山城地方住人。
職業、悪党。
ランク、B。
HP、150。
MP、150。
スキル、全属性魔法」
『ピー、悪党悪党、みんなと一緒』心から喜んでくれた。
『ねえダン。
私達には覆面はないの』
『プー、覆面覆面』
『子猫用の覆面かい』
『そうよ』
『ペー、覆面覆面』
面倒臭い。
でも断ると、余計に面倒臭そう。
自分のと同じで錬金で作ることにした。
材料はミカワサイで、色違いにして、
目鼻口の三か所に小さな穴を開けた。
夏場の猫には必須の、汗対策の風魔法の術式を施した。
アリスには赤の覆面。
ハッピーには青の覆面。
それを渡すと二人は覆面を被り、嬉しそうに跳ね回る。
『これはこれで良いわね』
『ポー、これでお仕事、がんばる』
夕刻には早いが行くことにした。
みんなで悪党ファッション、悪党ステータス、そして光学迷彩。
上空へ、探知に引っかからぬ高さまで転移。
そこから目的地上空へと更に転移。
下をズームアップで確認した。
最上位の貴族だけあって公爵邸は広い。
無駄に広い。
使わないのか、放置してるのか、手入れされていない箇所まである。
奥まった所にある池と、それを囲む雑木林だ。
人の丈より伸びた雑草がぼうぼう。
偵察時同様、本日も人影はなし。
俺達は偵察時にはなかったテント村を見付けた。
表の庭園に軒先を並べ、大勢が独楽鼠のように動き回っていた。
どうやら、ここが闇市の一般品の売り場なのだろう。
だとすると俺達が目指すオークション会場は・・・。
ジッと人の動きを観察した。