麗華が念を押した。
「光に包まれるまでは女の子だったのね」
「そうよ」
姫の一人、紅花が溜め息をついた。
「綺麗な男の子だとは思っていたけど、女の子だったんだ。
信じられないけど、でも何だか、妙に納得がゆくわ」
麗華が問いを続けた。
「光の中に入るまでは女の子だった。
けれど、神樹の下に現れた時は男の身体になっていた。
つまり、光は入って来たモノをバラバラにして運び、光の外に出すときには元に戻す。
そうよね。
そして運の悪いことに、マリリンの場合は元に戻すのに失敗した。
それでいいのよね」
「そうよ、違いないわ」
桂華は更に続けた。
「失敗でなければ、何らかの目的で男の子の身体にした。
そういう考え方も出来るわね。一体、包んだ光って何なの」
「私如きが知るわけないでしょう。
敢えて言えば、人智を超えた存在。そんなモノでしょう」
麗華が間を置いて頷き、言う。
「分かった。
つまりマリリンは神隠しに遭った。
それは、ただの偶然か、何らかの目的があるのか」
「んー・・・、そうよね」
「そこが問題なのよ。
偶然は置いといて、目的があるとしたら、それは何か
光からは何も聞いてないんでしょう」
「何の接触もなかった。それは確かよ」
麗華の眉間に皺が刻まれた。
林杏が疑問を口にした。
「マリリン殿は海の向こうの国に生まれたのに、私達と同じ言葉を喋るのはどうして。
中華の人々が住んでいるの。
そんな話し、聞いた事がないんだけど」
痛い所を突かれた。
「私の国では全く別の言葉で喋るわ。
私が、みんなと同じ言葉で喋るのは、ヒイラギのお陰よ。
彼はこの国の生まれなの」
深緑が素っ頓狂な声を上げた。
「ヒイラギはこの国の怨霊なの」
マリリンはヒイラギが項羽である事は知っていた。
本人は認めないが、ヒイラギの記憶がそれを物語っていた。
しかし、この姫達にヒイラギの身元を明かすのは躊躇われた。
なにしろ姫達は、項羽の宿敵であった劉家の血筋なのだ。
マリリンは、「そうよ。昔の武人だそうよ」と曖昧にした。
林杏が意外な名を口にした。
「ねえ、徐福を知ってる」
秦時代に始皇帝の命令で、不老不死の霊薬を探す為、
東海にあるという蓬莱山を目指して船出した人物の名前であった。
実在した人物らしいが、船出後の消息は不明で、
蓬莱山に辿り着いたかどうかさえ分かっていない。
日本各地に徐福伝説が残っていたが、マリリンが乗れる話しではない。
下手に頷けば、話しがややこしくなるだけ。
「知らない。どういう人なの」
「知らないのならいいのよ。
ところでヒイラギは何時の時代の武人なのか分かる」
少しは事実も入れて話す必要があるだろう。
「楚漢戦争の頃の武人だそうよ」
「名前は」
「それは明かしてくれない。
死んでしまった者の名前なんか、忘れてしまった、だそうよ」
林杏は首を捻った。
「となると、どっち側の武人なのかしら。それは分かってるの」
「西楚よ。
虞姫に仕えていたみたいね。
彼の記憶には沢山の虞姫が住んでいるの」
姫達の目が一斉に輝いた。
新たな手掛かりもあるが、それよりも虞姫に興味を抱いたらしい。
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「光に包まれるまでは女の子だったのね」
「そうよ」
姫の一人、紅花が溜め息をついた。
「綺麗な男の子だとは思っていたけど、女の子だったんだ。
信じられないけど、でも何だか、妙に納得がゆくわ」
麗華が問いを続けた。
「光の中に入るまでは女の子だった。
けれど、神樹の下に現れた時は男の身体になっていた。
つまり、光は入って来たモノをバラバラにして運び、光の外に出すときには元に戻す。
そうよね。
そして運の悪いことに、マリリンの場合は元に戻すのに失敗した。
それでいいのよね」
「そうよ、違いないわ」
桂華は更に続けた。
「失敗でなければ、何らかの目的で男の子の身体にした。
そういう考え方も出来るわね。一体、包んだ光って何なの」
「私如きが知るわけないでしょう。
敢えて言えば、人智を超えた存在。そんなモノでしょう」
麗華が間を置いて頷き、言う。
「分かった。
つまりマリリンは神隠しに遭った。
それは、ただの偶然か、何らかの目的があるのか」
「んー・・・、そうよね」
「そこが問題なのよ。
偶然は置いといて、目的があるとしたら、それは何か
光からは何も聞いてないんでしょう」
「何の接触もなかった。それは確かよ」
麗華の眉間に皺が刻まれた。
林杏が疑問を口にした。
「マリリン殿は海の向こうの国に生まれたのに、私達と同じ言葉を喋るのはどうして。
中華の人々が住んでいるの。
そんな話し、聞いた事がないんだけど」
痛い所を突かれた。
「私の国では全く別の言葉で喋るわ。
私が、みんなと同じ言葉で喋るのは、ヒイラギのお陰よ。
彼はこの国の生まれなの」
深緑が素っ頓狂な声を上げた。
「ヒイラギはこの国の怨霊なの」
マリリンはヒイラギが項羽である事は知っていた。
本人は認めないが、ヒイラギの記憶がそれを物語っていた。
しかし、この姫達にヒイラギの身元を明かすのは躊躇われた。
なにしろ姫達は、項羽の宿敵であった劉家の血筋なのだ。
マリリンは、「そうよ。昔の武人だそうよ」と曖昧にした。
林杏が意外な名を口にした。
「ねえ、徐福を知ってる」
秦時代に始皇帝の命令で、不老不死の霊薬を探す為、
東海にあるという蓬莱山を目指して船出した人物の名前であった。
実在した人物らしいが、船出後の消息は不明で、
蓬莱山に辿り着いたかどうかさえ分かっていない。
日本各地に徐福伝説が残っていたが、マリリンが乗れる話しではない。
下手に頷けば、話しがややこしくなるだけ。
「知らない。どういう人なの」
「知らないのならいいのよ。
ところでヒイラギは何時の時代の武人なのか分かる」
少しは事実も入れて話す必要があるだろう。
「楚漢戦争の頃の武人だそうよ」
「名前は」
「それは明かしてくれない。
死んでしまった者の名前なんか、忘れてしまった、だそうよ」
林杏は首を捻った。
「となると、どっち側の武人なのかしら。それは分かってるの」
「西楚よ。
虞姫に仕えていたみたいね。
彼の記憶には沢山の虞姫が住んでいるの」
姫達の目が一斉に輝いた。
新たな手掛かりもあるが、それよりも虞姫に興味を抱いたらしい。
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