金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

白銀の翼(四面楚歌)107

2012-01-29 10:07:33 | Weblog
 篠沢警部が少数の信頼する捜査員のみを密かに集めた。
他聞を憚ることから場所は渋谷にある民間の貸し会議室。
そこに集まったのは篠沢の、「子飼い刑事」と呼ばれる者ばかり。
テーブルを挟んで左右に八人が居並んだ。
 篠沢は彼等を見回して口を開いた。
「極秘なのでメモは一切禁止だ」
 そして加藤と池辺に視線を送り、「みんなに説明してくれ」と促した。
 古株の加藤が立ち上がった。
「五日前の深夜、バンパイアの容疑者と思われる少年を張り込んでいたら、
辻斬り犯の最有力容疑者である田原龍一に接触を受けた」と説明を始めた。
 何の為に内密に呼び集められたのか不審に思っていた者達が、
加藤の説明が始まると同時に表情を引き締めた。
食い入るように加藤の表情を読み、耳を傾けた。
まるで容疑者を前にしているかのようだ。
 説明が進むにつれて、みんなの顔が複雑な表情になってゆく。
所轄署にさえ疑われてないのに、部外者である者に筒抜けだったとは。
加えてバンパイア対策のアドバイスを受けるとは。
おまけに、「上層部が捜査本部に降ろしていない情報がある」ときた。
 加藤の説明が終わっても誰も何の質問もしない。
みんな無言で篠沢の方を向いて、その口が開かれるのを待つ。
 篠沢は期待に応えた。
「私が集めた情報は地方の一次情報だ。
加工もされてないが、精査もされてない。
それでも全遺体の情報を集めた。
承知とは思うが、入手経路は聞くな」と、みんなを見回した。
 今回の情報入手には手を焼いた。
上層部に内密で事を運ば無ければならなかったからだ。
その上、相手があまり交流のない地方警察。
事件によっては協力依頼とか、合同捜査とかがあるが、
人事の交流がキャリア以外は皆無に近いので、取り付く伝手は正に皆無。
 いつもだと警視庁曙橋分室資料班を利用するのだが、
「このケースはヤバイ」と踏み、断念をした。
勿論、管理官にも漏らしていない。
上昇志向の強い奴には目にも耳にも毒でしかない。
 目を付けたのは死体検案書。
調べてみたら解剖全てが地方の幾つかの有名大学病院で行なわれていた。
となれば病院経路を辿るだけ。
幸いにして都内勤務の医師には仕事柄、接触が多く、
貸し借りしている間柄の者達もいた。
金銭の貸し借りではない。
情報ないしは微罪のもみ消しであった。
それが今回役に立つとは。
 弱みを握っている医師達の経歴を調べると、最適の人物が複数いた。
解剖した各大学病院の系列の医師達であった。
思わず、「世の中は広いようで狭い」と実感した。
そんな彼等に貸し借りを帳消しする条件で、
系列の大学病院から死体検案書を秘密裏に入手するように依頼した。
なかば脅迫に近かったが、飴と鞭の要領で、管理している裏金も掴ませた。
おさおさ怠りない工作だが、許されるだろう。
私事ではなく、公共の為の捜査なのだから。
 飴と鞭の効果か、直ちに必要な死体検案書が手許に集まった。
警察庁直々の箝口令であったが、末端の医師にまでは行き届かなかったらしい。
篠沢にとっては喜ばしい事であった。
 次ぎに彼が目を付けたのは貸し借りの関係ではなく、
腕が良くて好奇心旺盛かつ反権力な医学者であった。
面識があったので、「極秘でお願いします」と協力を要請した。
予想通り医学者には、「忙しい」と断わられたが、篠沢は退かない。
「例のバンパイア絡みで妙な死体が幾つも見つかっているのですが、
きちんとした報告が上がってこないのです。
解剖した医者達には難しい案件なのかもしれません」と餌を撒いた。
 読み通りにバンパイアに食い付いてきた。
「極秘なら仮眠用のマンションがいいだろう。君も知っていたよな。
私は先に戻ってる、急いでくれ」
 マンションを訪れて入手した死体検案書の束を渡した。
篠沢の素人目では分からなかったが、医学者の目に映ったものは違ったらしい。
束を捲る手を時々止めながら、首を捻って先に進めた。
「殺されかたが酷いな」と次第に目が険しくなってゆく。
全てに目を通すと、次はデスクのパソコンを開いた。
踊るような指運びで何やら検索し、スクロール。
唸りつつ別の検索に移った。
検索もスクロールも手早い。
顔色が赤味を帯び始めた。
何やら興奮している模様。
「そういう事か」と篠沢を振り返った。
「分かりましたか」
「死体を確認しないと100%ではないが、ある程度の予想はつく」
「それで」
「共通点は歯だ。
それも八重歯。
一見すると八重歯だが、よくよく見てみると、まるで小さな牙だな。
所謂、都市伝説の吸血鬼だよ。知ってるか」
 思い掛けない名詞が出たものだ。
医学者によると吸血鬼の牙は、
テレビや映画で見るような強烈な印象の大きく長い牙ではなく、
ちょいと大きめの八重歯で充分なのだそうだ。
というのは、吸血鬼の牙は肉を裂くのではなく、
血を吸う為の微細な穴を開ける為の物。
八重歯の先が鋭ければ実用に値するとか。
医学者が、
「八重歯の構造を精査すれば100%判断出来る。
血を吸う穴と麻酔液を送る穴が開いてる筈だ。
蚊に近いんだよ。
やらせてくれないか」と。
 篠沢に許可する権限はない。
「これは警察庁が箝口令を敷いた案件です。
私には何とも答えられません」
医学者は、「そうか」と残念そうに言いながら、宙を見詰め、
そして再び篠沢に、「遺体はどこに保存してあるんだ」と尋ねた。
「いずれも大学病院にて保存されています。
冷凍保存でしょう。希有な遺体ですからね」
「分かった、知り合いが在籍する病院があるから、裏口から訪問してみよう」
「結果を教えていただけますか」
「それは構わないが、引き替えに何を」
「先生が人を殺しても目を瞑りましょうかね」
 医学者が腹を抱えて笑う。
「君からジョークを聞かされるとはね」
 篠沢は表情を改めて問う。
「ところで吸血鬼というのは本当にいるんですか」
 医学者は反っくり返って答えた。
「吸血鬼と言えば巷では存在が噂されても、
都市伝説とも言われて疑問符付きだった。
常識的な意見は物語の世界の住人だとね。
ところがね、世界は広い。
アフリカの奥地とか南アメリカの僻地など色んな未開発地域で、
それらしい八重歯を持つ遺体が発見されている。
発見された遺体の保存状態が悪いので、しかとは断定出来てないがね。
それでも我等の同業者達はそれを吸血鬼と仮定している。
そこに今回のバンパイア騒動だ。
大勢が見守る中で蘇った。
だったら吸血鬼がいたって良いじゃないか、違うかね」




寒い夜。ナイフで胸を刺された男が日本橋の麒麟像の前で死んでいた。
「麒麟の翼」
東野圭吾サンの加賀恭一郎シリーズが映画化されました。
昨日が初日でした。
 東野圭吾サンの小説は昔から読んでいます。
好きなのは、
「分身」「パラレルワールド・ラブストーリー」
「天空の蜂」「放課後」・・・。
どうやら私は初期の作品が好きなようです。

民主党は素人の集まりと言われていましたが、
今回の議事録問題でそれを証明してしまいました。
東日本大震災対策本部や原子力災害対策本部という、
「昨年の首相直轄の対策会議で議事録を執る人間がいなかった」と言うのです。
何をか言わんや、否・・・何も言いません。
あぁぁぁ。
この体たらく。
まるで小学校のクラス崩壊です。
授業中でも教師を無視して、
無駄話に興ずる者あり、離席して勝手に歩き回る者あり、脱走する者あり、
・・・、持ち込んだお茶菓子を食う者まで。
やっぱり、「おこちゃま政党」だったのですね。

国民新党の亀チャンが石原慎太郎や平沼等と組み、
大阪や愛知の地域政党をも巻き込んで新党を立ち上げようとしています。
それに対して、
民主党の前原クンが、
「イメージだけ、ブームだけの新党では駄目だ」と申しております。
たしかに前原クンの言うとおりです。
私達国民は民主党でそれを思い知りました。

簡易ブログ「ツイッター」のツイッター社が、
現地の法律に違反いているとして現地政府などから削除要請があった場合、
その国での閲覧を不可とすると発表しましたが、
それに対し、「検閲を認める行為」と反発が拡がっています。
 思うのですが、法律とは絶対なものでしょうか。
正義なのでしょうか。
私は法律は交差点の信号と同じものだと思っています。
「安全」「ちょと心配」「危険」。
大勢が混乱せずに、快適かどうかは知らないが、便利に生活できる道具だと。
・・・。
時として法律を越えなければならぬ正義が、良心があると思うのですが。
 ツイッター社はツイッターが武器となった中東民主化、
「アラブの春」を忘れ、
現地政府と妥協してでも営業拡大に走るようです。
まあ、営利企業ですからね。仕方ないのか。
 解釈間違ってますか私、・・・。

白銀の翼(四面楚歌)106

2012-01-26 21:58:54 | Weblog
 毬子は夜中に目が覚めた。
このところの熱帯夜のせいではない。
ヒイラギが気になるのだ。
彼は毬子に見られたくないのか、深夜に活動していた。
 モデムの薄明かりに、
小さな縫いぐるみ「耳長のピンク猫」が浮かび上がった。
生意気に机の上を歩いているではないか。
たどたどしい足取りだが、二本足でちゃんと動いていた。
そして、机から落ちた。
 落ちても直ぐに立ち上がり、机の上に戻ろうとジャンプした。
両足が浮き上がるが、
ほんのちょっとだけのジャンプ、10センチ程で終わった。
それでも何度か繰り返した。ちょいジャンプ。
生憎、机の上にまでジャンプさせる事は出来ないらしい。
それでも進歩していることに変わりはない。
 サクラによると、
「迷子の怨霊でしかないヒイラギが、触手を会得するとは驚き」だそうだ。
 見込んだ上で教えたと思っていたら、遊び半分だったらしい。
 触手を会得したお蔭でヒイラギは、毬子の目や耳は用無しとなった。
これまでは目や耳の届かないところは気配だけで読み取るようにしていた。
それが会得した触手は思った以上に使いでがあった。
手としての動きだけでなく、同時に目や耳等の五感の働きもするとか。
 そんな様子を見たサクラが、
「本当に変な怨霊だね。神や精霊に近い種類の触手だわ。
レベル的には、かなり落ちるけどね。
でも、もともと変なのかも知れないわね。
生きた人間に取り憑くわけでなし。
邪魔にならぬように居候し、今では仲良く同調しているからね」と笑った。
 確かにヒイラギは毬子にとっても変な怨霊だ。
なかでも学校の授業には熱心だった。
毬子の目や耳を通して見聞きしているだけだったが、理解が早かった。
本来、聡い人物の怨霊なのかもしれない。
 ただ、テストの最中に鼻で笑う性格でもあった。
採点されて戻されたプリントを見て、その理由を知った。
解答の間違えた箇所を笑ったのだ。
「どうして教えてくれなかったの」と質すと、
「テストは一人で戦うものだ。間違ったくらいでは死なない」と返された。
「でも私達は友達でしょう」
「それとこれとは違う。甘やかすだけの奴は友達とは呼ばない」
 正論だけに二の句を継げなかった。
「でもさあ、アンタ、生きていた頃も頭は良かったの。
それとも死んだショックで頭が良くなったの」
「そんな風に考えるのか。まったく毬子は暇だよな。
自慢じゃないが、物覚えは良かった。
しかし、その頃に習い覚えたのは兵法だ。
如何にして敵軍を攻め滅ぼすか。
武人の家柄だったからな」
「それじゃあ、今習ってるような教科は初めてなのね」
「そうだ。異国の生まれ育ちだから、この国の言葉も初めてだ。
でも、慣れればどってことはない」
 思い出した。ヒイラギが毬子に居候したのは中国であったとか。
だがそれ以上は聞かなかった。
何時、どこで、どのようにして乗り移ったのかは。
 ヒイラギも毬子の気持を読んだのか、自分から中国の話しはしない。
おそらく榊一家の巻き込まれた事故を目撃していたに違いない。
彼からは毬子を気遣って避けている気配がするのだ。
 毬子は目を閉じた。
こういう場合は忘れて眠るのが一番良い。
細く長く吐いて、同じく細く長く吸う。
羊を数えるよりも、丹田を整える呼吸法が得意なのだ。

 縫いぐるみの「耳長のピンク猫」が毬子の方を振り向いた。
彼女の寝姿を注意深く観察した。
どうやら寝ているらしい。
 ヒイラギは毬子の邪魔をせぬように、触手に軸足を移していたので、
彼女が起きていた事に気付かなかった。
 サクラが触手に居るヒイラギに言う。
「あの娘は起きていたよ」
「やっぱり。毬子から妙に悲しいような気配がしたんだ。
夢でも見ているのかもと思ったが、違ったか」
「家族が巻き込まれた事故の事を思い出したみたいだね」
「・・・。
どうして、こんな夜中に」
「さあ、どうしてなんだか。
思春期だからかね。
・・・。
でも何時かは話すんだよね」
「ああ、何時かは。
あの娘が大人になって、覚悟をもって聞いてきたら・・・、
嫌でも話さなければならないだろう」




泥鰌サンは消費税増税に力を入れているが、
その一部でも東北の復興に割いてくれないものだろうか。
このままじゃ復興遅れで東北が雪に埋れて凍え死んじゃうよ。

東北を
置き去りにする
与野党の
国会論議は
増税増税
開けても暮れても
増税増税

白銀の翼(四面楚歌)105

2012-01-22 10:08:08 | Weblog
 田原の言い方が気になった。
上層部が担当の捜査本部に情報を降ろしていないと言うのだ。
部外者なら、「まさか」と一笑に付すだろう。
だが現実は違う。
やってはいけない事だが、実際は往々にしてあり、それで悩まされる事も多い。
所謂、政治的判断というものだ。
 思わず加藤は下手に出た。
「教えてくれないか」と。
 田原は辻斬り犯人として最有力の容疑者だが、それはそれ、これはこれ。
実際、自分の肉親とか知人が斬られたわけでなし。
目を瞑ることにした。それも両目を。
「いいだろう」と田原、
「バンパイアの上京ルートで発見された殺害遺体をどう思う」と聞き返した。
「バンパイアに運悪く遭遇し殺された。
あるいは、バンパイアに感心を持ち、捕獲しようとして逆襲された。
そういう判断をしている。それで間違いはないだろう」
「身元は」
「全員が前歴なし。奇麗なものだ。
知ってるなら教えてくれ。一体何者なんだ」
 加藤は何も無い手の内を晒した。
「相手が全部知った上で聞いている」と判断したのだ。
 田原が友達でも見るかのような視線を加藤に送った。
「彼等の死体検案書は見たのか」
「殺害された場所は地方でウチの管轄外だ。
書類に関しては、要請は出来ても命令は出来ない。
それでも少しは協力してくれた。
検案書を簡単に要約した物をFAXし、それぞれの指紋も添えてくれた」
「雲の上には詳細な書類が届いている。
そして捜査本部にはスカスカの書類が下された」
「何の為に。
それでは捜査が難航するだけだろう」
「深い部分を現場の捜査員は知る必要が無しと判断したみたいだな」
「何かあるのか、知られてはならぬ拙いことが」
「答えを知りたければ全ての検案書を手に入れることだな。
そして彼等の共通点を探す」
「教えてくれないのか」
 田原が悪戯っぽい目をした。
「自分達の目で見て確認した方がいいだろう。
俺達が渡すと、偽物でもという疑問が湧く。
だから君達の警部殿に相談すれば良い。
そういうのを入手するのが得意の警部殿だと聞いたが」
 加藤は呆れたように池辺と顔を見合わせた。
「よく調べているな。
わかった、そうする。
しかし、下に秘匿しなければならぬような事なのか」
「其方のお偉いさんの考える事は俺達のような部外者には理解できない。
素人考えだが、現場に情報公開した方が、
現場としても動き易いと思うのだがな」
「上の連中は暇だから余計な事を考えるのさ。
ここをこれこれこうした方が捜査の効率が上がるとな。
的外れが多い。百害あって一利無しっていうやつだな。
ところで検案書を書いた医師や、現場となった地方の警察の口は。
かなりの数になると思うが」
 田原がオーバーアクション気味に両手を開いた。
「驚いた事に警察庁直々に厳重な箝口令が敷かれた」
 池辺が目を見開いた。
「そりゃあ、驚きだ」
 警察庁が絡めば毬谷家に筒抜けとなる。
本当に驚くしかない。
そういう現実の前に加藤も苦笑い。
 歴史には埋もれているが、戦後の焼け跡で毬谷家は一族郎党の生存の為、
米軍のエージェントとして活動していた事実があった。
その繋がりが今の警察庁にまで保持されているのだろう。
それもかなり上の方に。
 それに毬谷家は表向きは地方の酪農家だが、
財政的には裕福で、株や債券を一族郎党名義で分散して所有していて、
その影響力は侮れない。
警察庁、警視庁OBや財務省のOBを支配下企業に積極的に受け入れ、
防御にも怠りがない。
 加藤も池辺も、自分達の無力さを思い知った。
辻斬りの最有力容疑者の方が情報に精通しているとは。
情け無い。





ちょっとだけ雪が降りました。
道路には積もりません。傘にも積もりません。手の平にも。
極めて短時間で消えて無くなりました。
そういえば放射能は、・・・。
 昔は雨が降ると、「中国の核実験の放射能混じりの雨が降る」と聞きました。
どこに核の実験場があるのか知りませんが、
「ゴビ砂漠からの黄砂にも混じっている」とも聞きました。
 雨や雪が降る度に上空に滞留する放射能を一掃し、
大気圏が奇麗になるのですね。
(その分、地表が汚染されるけど)
たぶん。
 今、心配なのは酸性雨ならぬ放射能雨雪ですかね。
森が林が、人心が枯れませんように。

雨雪が
頭頂濡らして
枯らし行く




今話題のブログに、「スコップ団」というのがあるけど、これなんなの。
・・・、私の知ってる「スコップ団」とは違うでしょう。
宮城県女川町の神田瑞希サンが、震災後に、
中三で描いたのが本物の「スコップ団」でしょう。
それぞれが破れた衣服を身に纏い、スコップを背負い、
手を繋いで瓦礫の山を見詰める後ろ姿の五人のチビッコ達。
それが実にノスタルジアなタッチで描かれています。
 詳しくはNPO「みちのく復興の会」。
神田サンのは「生きる」という絵葉書になって、
復興支援のために通販されています。

白銀の翼(四面楚歌)104

2012-01-19 22:12:08 | Weblog
 加藤と池辺は興味に負けたのか、後部座席を真剣な眼差しで振り返った。
そうと知って田原の顔が緩む。
「前の戦いから得られた事は、普通の銃や刀では太刀打ち出来ないという事だ。
治癒力が異常に早いそうだからな」
 加藤が首を捻った。
「それでも前回はバンパイアの封じ込めに成功したのだろう。
それは何故だ。何らかの手段を講じたのと違うのか」
「一つは非科学的だが、選りすぐりの術者達がいた。
日中韓三国の呪術師、方術師、調伏僧にエクソシスト。
テレビで見掛けるエセ超能力者とは違い、彼等の力は本物だったそうだ」
「何を指して本物と断定するのかな」と池辺。
「俺は実際に見た事はないが、生き残った血縁のエクソシストの話しでは、
調伏僧が細い棒一本で大木の幹を刺し貫くと、
それを見ていた方術師は負けずとばかりに拳で岩を砕いたとか。
・・・。
丹田に気を溜め、呪文を唱えながら、念に転じて術とするのだそうだ」
「なんともはや、・・・」
「しかし、術者達は重要な脇役で主役は別にいた。
例の『風神の剣』とその遣い手だ」と田原は池辺を挑むような目で見て、
「あの剣に触れて何か感じなかったのか」と続けた。
「そこまで深くは触れていない。証拠品だったからな」
「あの剣には魔を封じるという謂われがある。
実際は剣に怨霊の類が取り憑いていて、遣い手を選ぶのだそうだ。
同調する人間が持つと、魔を封じる機能を発揮するが、
どうという事のない人間が持つと、怨霊も出現せず、ただの剣で終わる。
バンパイアとの戦いでは、『風神の剣』で斬られた刀傷は、
治癒に明らかに時間がかかったそうだ。
それでバンパイアは多くの血を失った」
「嘘のような話しだな」と池辺。
 それでも田原に気を悪くした様子はない。
「そうだ。俺達凡人には理解出来ない話しだ」
 加藤が後部座席の白鞘を指差す。
「それで『風神の剣』を持って来たわけか」
 田原は首を横に振った。
「これは違う。
『風神の剣』を扱える者はいないと思ったから、別の剣を持って来た。
『鬼斬り』と呼ばれる有名な、鬼をも斬るという剣だ」
 池辺が頷いた。
「聞いた事がある。源氏の頭領の証の剣ではなかったかな。
ただし、自称する数が多くてどれが本物かは分からないそうだが」
「刀に煩い榊家の者達が選んだんだ。
どの『鬼斬り』よりも本物に近い」
「わざわざ俺達に持って来てくれたのか」
 田原は池辺を挑戦的な目で見た。
「アンタが捜査本部一番の遣い手だそうだからな」
 加藤が感心した。
「そんな細かい事まで調べたんだ」
「俺達に出来るのはここまでだ。
出来れば術者はそちらで見繕ってくれないか。
いないより、いた方が役に立つぞ」
「取り敢えずは上に話しするが、・・・無理だろうな。
・・・。
ところで、どこまで知っているんだ」
 おそらく毬谷家が警察庁上層部から聞き込んでいるのだろう。
そんな加藤の気持を読んだのか、田原の目が緩む。
「捜査本部でも知らない事を」
「んっ」と加藤と池辺が口を合わせた。
 田原は二人の顔を交互に見た。
「警部殿は無論、管理官さえ知らされてない情報がある。
雲の上の方々が、どういう分けか下には知らしめないと決めたのだそうだ」




泥鰌サンが消費税増税を進展させたいが為に与野党協議を申し入れていますが、
それって昔の言葉で、「談合」と言うのじゃないですか。
ねっ、そうでしょう。
 しかし、増税した分をどうするのか、その明細が明らかになっていません。
どう使うのでしょう。
それに、消費税を10%にすると全ての問題が解決するのでしょうか。
しないでしょうね。
10%は20%への一里塚、そうでしょう。
 問題は、欧米の通貨が揺らいでいる時に、
日本だけが先行して財政再建への道筋をつけていいのでしょうか。
今でさえ円高で苦しんでいます。
ここで増税すれば、日本の財政が好転するという事から、
行き場を失っている資金が安心して円に殺到するのじゃないですか。
そう、超円高相場の到来です。
 ユーロ安で儲けているのがドイツ企業です。
ドイツ通貨であったマルクなら、マルク高で苦しむ筈なんですが、
今は弱いユーロの一員。
ユーロ安を活かして自動車、精密機械等を輸出し、日本の顧客を奪っています。
 超円高で苦境に立つ製造業は全ての工場を海外に移転するに違いありません。
国内が空洞化し、
失業した大半の国民は生活保護を受けるしかなくなるでしょう。
そして、その先に待つのは超円安。
いずれにしても茨の道です。
あっ、でもいいか、生活保護を受けるから。

白銀の翼(四面楚歌)103

2012-01-15 10:05:29 | Weblog
 田原が手真似で、「後部座席に座らせろ」と要求した。
 池辺は加藤に尋ねた。
「どうします」
 加藤は微妙な苦笑い。
「ここで断ると騒ぎ出しそうな顔をしている。
それに面白そうじゃないか。入れろ」
 疑問に思いながらも後部ドアのロックを外した。
 田原が、「すまないな」と笑顔で乗り込んで来た。
手には細長い棒状の袋。竹刀袋に違いない。
 思わず池辺は、「こんな時間まで稽古をしていたのか」と聞いた。
「違うよ」と田原。
 その竹刀袋を運転席の池辺に手渡した。
 掴んだ感触は竹刀ではないが、木刀にしては重い。
「まさか」と思いながら中の物を掴みだした。
白鞘。
やはり、・・・。
「刃引きを持って歩く趣味はないよな」
「ないなぁ」と澄まし顔の田原。
 街灯の明かりが運転席の足下にまで差し込んでいた。
ハンドルの上で白鞘の鯉口を切った。
軽く拳二つほど抜いた。
思わず、「うっ」と唸ってしまう。
明かりに照り映える刃紋に見惚れた。
何度か真剣を扱った覚えはあるが、ここまで美しいのは初めてだ。
 言葉を無くした池辺に代わって加藤が問う。
「これは」
「差入れ」
 意味するところが分からず加藤も押し黙った。
 田原が続けた。
「バンパイアを相手にするのに銃だけじゃ心許ない。
ましてや麻酔銃なんてのが当るのかどうか。
相手は身体能力が獣並みだからな。
象なら当るかもしれないが、バンパイアには無理があるだろう」
 警察内部で秘密になっているし、それを踏まえても行動してきた。
その甲斐あってか、出入りのマスコミは当然として、
この辺りに目を光らせている所轄にさえ露見してはいない。
なのに目の前の田原が、・・・。
 加藤も池辺も顔に色を出さぬように努力した。
「どうして、お前が知っている」と問い詰めたいのだが、
それでは認めたも同然。
 辛うじて、
「バンパイアが東京に入ったという情報は聞いていない」と加藤が否定した。
 池辺は刀を田原に返した。
 田原は仕様がなさそうに受け取るも、空いた隣席に置いた。
持って帰るつもりはなさそうだ。
「戦後、バンパイアを封じた戦いにはウチの一族の者も加わっていたそうだ。
一人は何年か前まで生きていたので、
子供の頃には、その話しを何度も聞かされた。
まるで子守歌代わりだった」
 そういう話しなら二人も乗れる。
「どういう戦い方だったんだ」と加藤。
「簡単に言えば、毬谷家から剣術に長けた榊家の剣士達が呼び寄せられ、
これに日中韓の方術師、呪術師、エクソシストや調伏僧達が加わり、
バンパイアに白兵戦で挑んだそうだ。
勿論米軍も。
邪魔にならぬように狙撃兵で遠巻きに包囲しただけだそうだがね」




最近は八重歯ガールが流行っているとか。
例えば板野知美、杉崎美香。
昔なら石野真子。
憧れて矯正する人もいるそうです。
手っ取り早いのは、「付け八重歯」・・・。
女性は昔から、「付け○○○」が好きでした。
古いところでは、薄い胸にアンパンを入れ、ブラジャーを膨らませました。
これなどは、「付け乳房」とでも言うのでしょうか。
「マスカラ」などは言うに及ばず、女性は色んな物を身に付けました。
化粧感覚ですかね。
 そんな女性達が究極の「付け物」をする日も近いようです。
必ずや股間を膨らませて街中を闊歩する筈です。
「付けお○ん○ん」てね。

河童達が最上川の河川敷で遊んでいると、旅人二人が通りがかりました。
様子から師匠と弟子の関係と分かりました。
二人は歩きながら何やら詠んでいるようです。
 河童の一匹が呼び止めて尋ねました。
「何してるの」
 答えたのは師匠。
「みちのくを
曾良と二人で
ヒッチハイク」

白銀の翼(四面楚歌)102

2012-01-12 22:08:38 | Weblog
 こうも簡単に住み家が分かるとは思わなかった。
金髪少年が大掛かりに配備した人員の苦労を嘲笑うかのように、
ノンビリと表通りに面したマンションに姿を消したのだ。
その無警戒振りには、「本当にバンパイアなのか」と疑ってしまった。
 マンションは外資関係者に人気の富裕層向けの低層集合住宅ではないか。
セキュリティーの厳しさが売りで部外者の付け入る隙がない。
実際、外壁や敷地内歩道には防犯カメラが存在を主張している。
 篠沢警部の遣り方は相変わらずシンプルだった。
今回の捜査は極秘と言っても間違いではない。
なのでマンションには表からは入らない。
マンションを管理している会社のサーバーを密かに訪問させた。
勿論、警視庁曙橋分室資料班にだ。
彼等は裏データの保守管理が主任務だが、
場合に寄っては新規データの取り寄せをも行なう。
 篠沢は彼等に予断を持って欲しくないので、
「分かる範囲で結構だが、全居住者のデータが欲しい」と依頼した。
 彼等にはそれだけで充分だった。
管理会社のサーバーから必要な情報を全て漏れなく抜き出した。
そして読みやすく編纂した物を裏ファイルにアップした。
 バンパイア騒動以後に新規入居した者はいない。
しかし気になる契約があった。
法人が、一社だがバンパイア騒動以後に契約しているのだ。
書類上は未入居となっているが、すでに電気ガス水道等の手続きは完了し、
「使用可」と記載されていた。
 その法人を裏ファイルで検索するが、
幽霊法人のブラックリストには名を連ねてはいない。
一般のネットに繫がるパソコンでも検索をした。
似たような名前の法人は無数にあるだが、肝心の法人は見つからない。
 このマンションを所有する会社も、管理する会社も、
一般に知られた会社である。
上場こそしてないが、所謂、信用のある会社。
テレビでCMも流していた。
そんな会社が契約にあたって基礎的な調査を怠るわけがない。
なにしろ、「プライバシーを守るセキュリティー」が売りなのだ。
内部に膿を抱えては、まさに「獅子身中の虫」。
培った信用が一瞬で崩壊してしまう。
 ネットでも見つからぬ法人と契約するからには、それなりの理由がある筈だ。
考えられるのは権力による圧力。
それとも暴力による圧力。
あるいは金力による圧力。
いずれかは分からないが、何かがあることは明白だ。
理由なくして胡散臭い法人と契約を結ぶ筈がない。
 幸い住所と電話番号が判明していた。
今も存在しているのかどうかは不明だが、
確認の為に捜査員を走らせることにした。

 加藤と池辺の刑事コンビは覆面パトカーに乗り、
マンションの表玄関を離れた所から監視していた。
金髪少年の出入りが確認されてから二日目の夜だ。
 真夜中に運転席のウィンドウをコンコンとノックする音。
何時現れたのか、長身の男が車道に立って、こちらを覗いていた。
ようく見ると、大分は牟礼寺の住職だった田原龍一ではないか。
相も変わらぬ坊主頭。
剃り上げられた頭が街灯を反射した。
 意外な男の出現に加藤と池辺は顔を見合わせた。
顔見知りではあるが、
そもそもは「辻斬りの犯人」と捜査本部で確信している人物。
証拠がないので追い込めないだけなのだ。




久し振りにテレビドラマを見ました。
「ストロベリーナイト」。
原作が誉田哲也さんなので、ちょっとだけチラ見しました。
 誉田さんの本は昨年初めて読みました。
「武士道シックスティーン」「武士道セブンティーン」。
読みやすい文体で、素人の意見ですが、「なかなかのモノ」でした。
私の嗜好が変わったのか、最近はこの手のホッとする物語が好きです。
 さて、「ストロベリーナイト」ですが、
最初から見てないのでドラマ内容は何とも言えませんが、
主役の竹内結子は離婚しても佳い女優ですね。
ほんとに、・・・。

 この寒い季節に寒い話題が、・・・。
広島刑務所からの脱走です。
周辺のみなさんは震え上がっていることでしょう。
なにしろ相手は懲役23年の凶悪犯。
この寒空の下、凍死したのか、それとも個人宅を乗っ取っているのか。
・・・。
 責任者の所長は警察への通報が遅れた上に、会見にも姿を見せませんでした。
理由は、「陣頭指揮を執っている」そうで、・・・。
結局のところ、所長は会見から逃げちゃったのですね。

逃げる逃げる
脱獄犯と
責任者



(一月十三日)
脱獄犯が捕まって良かったですね。

白銀の翼(四面楚歌)101

2012-01-08 08:27:59 | Weblog
 神宮前で金髪少年を発見しても篠沢は慎重だった。
覆面パトカー、バイク、自転車を適度に交代させるリレー方式で尾行させた。
さらには遠巻きするように予備人員も配備し、抜かりはなかった。
 警察側の意気込みを知らぬ相手はノンビリしたもの。
神宮外苑を抜けて信濃町、四ッ谷、市ヶ谷方向へ軽い足取りで歩き続けた。
時折、足を止めて店構えとか店頭のサンプルを繁々と観察するが、
店に立ち寄ることはなかった。
そのまま早稲田鶴巻町の交差点まで歩いて行く。
真っ直ぐ進めば高速の出口。
金髪少年は迷わない。
横断歩道を渡り右折した。
江戸川橋へと進む。
高速下で左折。
護国寺方向へと爪先を転じた。
 尾行を後方支援している覆面パトカーの助手席の刑事がぼやいた。
「子供にしては足腰が鍛えられているな」
「だからバイパイアなんだろう」と運転席の相棒。
「信じるのか」
「篠沢サンを信じてるだけだ。
あの人の読みは外れた事がないからな」
「まあ、確かに。
あの人には長いこと仕えているが、読みなのか勘なのか、
よくは分からないが、本筋を外れた事がないよな。
お蔭で難しい案件が回ってくる。
喜んでいいんだろうか、・・・部下としては難しいな」
「部下としては大変だよな、休む暇がない。
・・・。
あの人、仕事が出来るから出世はしないって噂だ」
「あの噂か。
だろうな。
現場から仕事が出来る警部を外しちゃ拙いだろう。
雲の上の連中は員数合せでいいけど、下はまともでなくちゃな。
市民や犯罪者と直接向き合うんだから」
「上の連中は馬鹿が知れぬように梯子を外されてるからな」
「その為の雲の上だろう、降りてこないように。違ったのか」
 馬鹿話をしていると、金髪少年は護国寺前で踵を返した。
躊躇いも何もなかった。
事前の予定であるかのように踵を返した。
表通りを真っ直ぐに引き返して来た。
 その時に尾行していたのはバイク。
篠沢警部の声が無線機から流れた。
「バイクはそのまま直進。
後方支援の覆面パトカーは歩道寄りに停車。
近くに自転車はいるか」
「はい。輸送車に二台、江戸川橋付近にて待機しております」
「その場に車内にて待機し、相手が通過しだい、尾行を再開しろ」
「諒解しました」
 バイクの警官が問う。
「私は直進した後、どうしますか」
「ヘルメットと上着を予備の物と替え、頃合いを見て引き返せ。
暫くは後方支援だ」
「バイク、諒解です」

 マイクをデスクに置いた篠沢警部に居合わせた刑事が問う。
「奴の行動をどう思います。
ただの散歩ですか。それにしては遠距離だけど」
「地理を覚える為に出歩いているのじゃないかな」
「と言う事は、奴は東京に居着くという事ですよね」
「そういう事になるかな」
「・・・。
警部は奴がバンパイアと信じているんでしょう」
「そうだ。
が、一度、本物がどうかを試す。
全てはそれを見てからだ」
「どう試すんですか」
「時期が来たら腕の立つ者を募って職質を行なう。
勿論、最悪の場合に備えて万全の対策を講じる。
その為に象用の麻酔銃も頼んである」
 無線から警部を呼ぶ声。
「奴がコンビニに入りました」
 篠沢は急いでマイクを取った。
「尾行している者は離れた所で待機。
念の為、裏口があるのなら、そちらにも人員を回すように」
 こちらの人海戦術を知らぬ金髪少年は、
アイスクリームを片手にノンビリした顔で店から出て来たそうだ。
 金髪少年が同じ道を引き返すと判断した篠沢警部は、
神宮前の発見現場を中心にして五百メートル圏内に人員を配備する事にした。
「その辺りに住み家がある」と推測したのだ。
 ありったけの車輌を掻き集め、表通りから裏通りにまで、隈無く配備した。
もっとも土地の住民に怪しまれ所轄に通報されては、
色んな意味で騒ぎとなるので、適正な間隔での配備は無理だった。
少しは穴を開けざるを得なかった。
それは配達や営業を装った自転車で補うつもりでいた。




テレビを点けっぱなしにしてブログを書いていたら、
NHKで岐阜県産の苺「濃姫」を話題にしていました。
そう、あの坊主頭の男優が司会をしている日曜朝の農業番組です。
 斉藤道三の娘にして織田信長の正室であった姫の名を、苺の名にするとは。
実在はしたが、信長と道三の会談以後は消息不明の人。
子を成すこともなく、死亡年次も墓の場所も記録になく、
ひっそりと歴史に埋もれた姫。
この苺もフルーツの歴史に埋もれるのでしょうか。
いやいや、埋れませんように。
フルーツ界で燦然と輝き、系統を残しますように。
 そういえば最近、苺を食べてないな。
・・・。
近所のケーキ屋で苺ショートでも買って、・・・。
マロンもあるか。
きんつば、・・・。

白銀の翼(四面楚歌)100

2012-01-05 21:47:27 | Weblog
 「辻斬り」捜査本部の実質的な指揮をとっている篠沢警部の手許に、
加藤刑事と池辺刑事のコンビから報告が上がってきた。
例の喧嘩騒ぎで奇妙な飛翔を見せたという金髪の外人少年の事だ。
コンビは喧嘩のもう一方の主役であった榊毬子を事情聴取したものの、
彼女からは決め手となる証言は一切得られなかったとか。
「助けてもらった人物を売るつもりはなさそうです。男らしい少女です」と。
しかし、彼女の微妙な表情から確信を持ったのだそうだ。
「喧嘩に飛び入りした金髪の外人少年に違いない」と。
しっかりしてるようでいても所詮は人生経験の浅い少女。
玄人たる刑事の目を誤魔化せるわけがない。
 篠沢は現場付近に点在する街頭の防犯カメラの映像を全て回収させ、
捜査員総出で映像を検めさせた。
人海戦術で三日かかった。
結果、探していた金髪の外人少年が映っているのが幾つか見つかった。
古いのは事件の六日前。
新しいのは本日より数えて四日前。
服装や所持品の少なさから、近辺に住んでいるものと思われた。
 そこで篠沢は捜査員を辺り一帯に投入する事にした。
「これは所轄には内緒で行なう。
事が事だから、外部にはけっして漏らすな」と。
 篠沢は喧嘩の一件書類と実地検分から、
金髪の外人少年の飛び膝蹴りの、その異常なまでの飛翔距離を、
「人間業に非ず。バンパイアに違いない」と確信を抱いていた。
 『メイド・イン・ウサ』跡地を管理していた毬谷家に、
戦後の日本に上陸したバンパイアの姿格好を問い合わせたのだが、
返事は素っ気なかった。
「申し訳ないが、書類としては何も残されていない。
石棺に封じた者達も一人として存命していない。
協力したいのは山々だが、何の役にも立たない。まことに申し訳ない」と。
 額面通りに信じたわけではないが、無理押しも出来ない。
なにしろ毬谷家は警察庁上層部に何らかのパイプがあるらしい。
この場面で無闇に波風を立てるのは好ましくない。
渋々と引き下がる事にした。
 ただ、当時の状況からバンパイアの正体が外人に他ならない事は明白だった。
篠沢は良い刑事が最後に頼るのは、「長年現場で鍛えた勘である」と知っていた。
今回はその勘が疼いた。
「金髪少年がバンパイアである可能性が高い。
だからといって発見しても職質はするな。接近もするな。
遠く離れながら、難しいかもしれないが、住み家を確かめるんだ。
そして身元を洗う。
慎重の上にも慎重にな」と捜査員に念を押した。
 危惧する事があった。
それは大分から東京までの間に見つかった殺害された遺体。
その数、十六体。
被害者の人種は様々。日本人らしき者も含め、白人から黒人まで揃っていた。
犯行は明らかにバンパイアの手によるものと思われた。
首を折られた者。
喉を噛み砕かれた者。
引き裂かれた上、心臓を掴み出された者もあった。
殺すのに武器や道具は一切使用されていない。
全てがゴリラ並みの膂力で行なわれた事は確か。
となれば心当たりはバンパイアしかない。
 それに、それらの遺体の身元が分からない。
身元を辿れる類の物を何一つ所持していなかったからだ。
バンパイアが持ち去った形跡はなく、
明らかに本人達が身元を隠そうとしていた節が見られた。
死に顔と指紋を国内のみでなく、インターポールにも送付し協力を依頼したが、
朗報は一つとして戻ってこなかった。
日本に国籍があるとして、どこに居住していたのか。
外国籍だとしても、何処の国から来たのか。
入国時には指紋が登録されるのだが、記録には一人も記載されておらず、
遺体は全てが無国籍者として保管されることになった。
 そして何よりも懸念するのは、
「彼等が偶発的に殺されたのではなく、
バンパイアを追跡して返り討ちに遭ったのではないか」ということ。
だとすれば、彼等は何者なのか。
 それにオールマン家の問題もある。
先々代の当主が戦後の日本にバンパイアを帯同し、
来日した人物である事は毬谷家でも認めていた。
今回、「『メイド・イン・ウサ』跡地の掘り返しを、
現当主のアンネ・オールマンの来日に間に合わせる為、
圧力をかけて一日遅らせた」とかいう噂は、
篠沢があらゆる情報源に当った結果、事実だと判明した。
 そこで来日中のアンネ・オールマンに面会を求めたが、即座に断られた。
ならばと監視をつけたのだが、何度か見失った。
こちらの手落ちというよりは、意識して尾行を撒いた形跡があった。
警察に知られたくない人物に会う為だったのだろう。
 バンパイアも脅威だが、その周辺に見え隠れする連中も胡散臭い者達ばかり。
何が行なわれるのだろう。
それとも何かが行なわれたのだろうか。
 張り込みを開始した翌日には金髪少年が発見された。
「全くの無警戒振り」という報告が上がった。
 しかし、篠沢は慎重を期した。
尾行に気付かれては全てが無に帰す。
「けっして接近するな。
遠くから尾行して、出来れば住み家を確認しろ。
だが、危ないと感じたら直ちに引き返せ。
今日無理なら明日がある。分かったな」




泥鰌サンは口を開けば消費税増税、消費税増税、・・・。
「ネバー、ネバー、ネバー、ネバーギブアップ」とか。
その前に無駄遣いの穴を塞がないと。
穴が開いたままでは増税しても効果は無いでしょう。
増収分がドボドボと流れ出るだけ。

穴あきの
財布に金を
入れる泥鰌

白銀の翼(四面楚歌)99

2012-01-01 08:42:49 | Weblog
 夏休み初日。
自宅で二度寝していた毬子のスマホが鳴った。
陽気なピアノが奏でるボサノバ。
その他大勢の友人に使用している曲だ。
 憎々しげに思いながらも起き上がってスマホを取り上げた。
名前が出ていた。
池辺康平。
久し振りではないか。
刑事仕事の合間に些事で連絡してくる人間ではない。
となると、この時間帯は公用、・・・。
身に覚えがあるのは、・・・。
心当たりは一つだけ。
神宮外苑から原宿に向かう途中で買った喧嘩。
ただ、康平の捜査本部とは関連していない筈なのだが。
 取り敢えず、「はい」と電話に出た。
「マリちゃんか、俺だよ、わかる」
「わかるわよ。
オレオレ詐欺でないのは確かね、康平君」
「よかったら駅前に来てくれないか。
お婆様にの耳には入れたくない話しがあるんだ」
 声の調子からすると余り良い話しではないらしい。
どうやら懸念が的中か、・・・。
 巣鴨駅前は人混みでごった返していたが、長身の康平は見つけやすい。
ボッと突っ立っているのだ。
一人ではなかった。
陰のように同僚の刑事がいた。
名前は、・・・たしか加藤だったと思うが。
 二人は毬子を駅前の交番ではなく商店街の喫茶店に誘った。
「この店なら煩いから話しがし易い」と。
 たしかに賑わっていた。
大半は地蔵参りの老婦人達だ。
それぞれが隣席の会話に負けまいと喋っていた。
その煩いこと。
これなら盗み聞きされる心配はない。
 席に着いた二人はコーヒーを注文し、
毬子の為にはコーヒーとケーキを頼んだ。
「最近、野上君達とは遊び歩いているのかい」と康平。
「百合子がどうかしたの」
「あっ、尋ね方が悪かったみたいだね。
野上君に関心があるわけじゃないんだよ。
他にもいただろう。仲の良い男の子達」
「それは何人かいるけど、それがどうかしたの」
 会話の進展先が読めない。
毬子は相手の目をキッと見遣った。
少女の視線を気弱そうに受け止める康平。
本来の彼らしくない。
何やら、「心ここに在らず」としか。
仕事に熱が入ってない。
それで思い出した。
 康平のガールフレンドが拙い立場にいるのだ。
バンパイア絡みで、
『メイド・イン・ウサ』跡地掘り返しの端緒となったブログが、
ガールフレンドの公式サイトであったからだ。
 本名は柴田和代。
職業は漫画家でペンネームは「寺脇サツキ」。
伝奇物を得意とする人気作家で、そのジャンルでは広い支持を集めていた。
 彼女のブログはファン向けに発信したものであったが、
『メイド・イン・ウサ』跡地の奇妙さが話題となり、
地元自治体も「観光の目玉になるのでは」と目を付け、
ついには掘り返される事態となった。
 かくしてバンパイアが蘇り大騒動に。
その責任が、正しいかどうかは知らないが、最も問われたのが彼女であった。
入院するまでに精神的に追い詰められ、連載漫画を休止しているそうだ。
 毬子も康平の紹介で彼女に会ったことが二、三回あった。
体型も性格も大らか、かつ聡い。
ピンク色への偏愛にはついて行けないが、人柄が一目で好きになった。
 毬子は遠慮気味に尋ねた。
「和代さんは大丈夫なの。
見舞いに行きたいけど、事が事だから、どう見舞えば良いのか分からないのよ」
 康平は首を横に振った。
「ありがとう。
でも今は誰とも会いたくないそうだ。
調子が良くなったら連絡する。それまで待ってくれ」
 コーヒーが運ばれてきた。
毬子の前にはケーキも。
 同僚の加藤は一言も喋らず、質問は康平に任せていた。
相棒の心情を見抜き、仕事に没頭させるつもりなのかも知れない。
我関せずとばかりにコーヒーに砂糖をぶち込み、クリームを注ぐ。
まるで砂糖ミルクコーヒー。
 康平はコーヒーでなく、持って来た鞄を取り上げた。
膝の上に乗せ、ガサガサと手探りして封筒を取りだした。
中から抜き出したのは一枚の写真。
路上を歩く毬子と百合子、そして田村と川口。
「覚えあるかい」
 ようやく本題に入ってきた。
「分かるけど写りが悪いわね」
「街頭の監視カメラだから画質まで文句をつけない」
 さらに二枚取りだしてテーブルの上に並べた。
少女二人に少年二人が付き従っている写真ばかり。
「どうかな」
「肝心のはないの」
 喧嘩現場の写真の事だ。
「生憎と、・・・近くには設置されてなかった」
「どうして所轄ではなくて康平君達が取り扱うの」
「成り行きで」
「ふーん、喋れないわけね。
・・・。
街頭カメラまで調べたんだから、私達の事情も知っているんでしょうね」
 康平の目に力が戻り始めた。
「事情はどうあれ、明らかに過剰防衛だ。
三人は退院したが、一人は長期入院が必要なほどの重傷だからな」
「良い勉強になったんじゃない。
馬鹿は身体で躾けるしかないのよ。
かえって感謝してもらいたいわ」
 黙ってコーヒーを飲んでいた加藤が吹き出した。
「すまん、すまん」とテーブルのナプキンに手を伸ばした。
 康平がもう一枚を取りだした。
写りは悪いが、あの金髪の外人少年ではないか。
「これは」
 即座に、「誰なの」と聞き返す毬子。
 康平が疑わしげに見返してきた。
「惚けるなよ、助けてもらったんだろう」
 余計なお世話ではあったが、助けに入ってくれた少年だ。
それを警察に売るわけがない。
もっとも名前も住まいも何も知らない。
顔を覚えているだけで、何も売る物がないのだが。
「そうだったの、咄嗟のことで顔まで覚えてないのよ」
 睨むように見詰める康平。
 毬子は目の前の相手で手一杯、もう一人居ることを忘れていた。
加藤が同席していたのだ。
彼は気配を消して毬子を観察していた。
慌てて彼に視線を投げると、彼は気まずそうに視線を外した。
 サクラが割り込んできた。
「古狸よね」
「読まれたかしら」
「たぶん。確信は持った筈よ、この少年で当たりってね」
 ヒイラギが慰める。
「彼奴は警察に捕まるようなドジは踏まないだろう」
「警察に同情するわ」とサクラ。





 明けましてオメデトウ。


新年早々の地震でした。
その時間帯は丁度パチンコ屋にいました。
地震コレ幸いと、
激しい揺れでパチンコ台が誤作動してくれる事を願いましたが、
虚しくも願いは叶わず負けてしました。
パチンコで稼いで亡父の借金返済をしようと思っているのですが、
前途は多難なようです。
 負けて向かうのは漫画コーナーです。
最近のパチンコ屋は漫画が充実しているのです。
明らかに古本屋から集めたような物ばかりですが、
暇潰しには最適です。
ただ一つ残念なのは全巻が揃ってないことです。
 今日は面白い物を見つけました。
「エースをねらえ」です。
分厚い奴です。
豪華愛蔵版ですかね。
それが全四冊揃ってました。
 全部読むのは時間的に無理でしたが、二巻までは読みました。
ただのスポ根、ラブコメと読まず嫌いでしたが、
読んだ途端に目から鱗がポロポロと落ちてきました。
六枚、十枚、十五枚と。
私の中身は魚だったんですね。
それは置いといて、
昔の少女達はこんな面白い漫画を読んでたんですね。
突き詰めれば、「人と人の縁(えにし)」。
改めて、「少女漫画も侮れない」と反省しました。

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