接近して来る奴らの遣り取りから、匈奴の者達と分かった。
遊牧の民である。
同時に狩猟の民でもある。
水や草を求めて長距離を移動し、家族や家畜を守る為に害獣を駆逐する。
時には遊牧地を巡って他の家族と争うのも厭わない。
ゆえに幼子の頃から戦に長けていた。
足跡を読むのは日常のこと。
追うのには慣れていた。
たとえ慣れぬ薄暗い森の中でも、呂布の足跡だけは見逃さぬだろう。
確実に接近して来る。
呂布は運を天に任せるしかなかった。
今さら移動は出来ない。
ちょっとでも動けば、あるいは物音を立てれば、連中に気付かれぬ分けがない。
気配を露わにしただけで、たちまちの内に矢が射られ、槍が投じられる。
望むのは、後続の追っ手七騎がここに合流すること。
敵の人数が増えても、素人同然の者達がドヤドヤガサゴソと物音を立ててくれれば、
呂布にとっては大いな助けになる。
が、それらしい動きはない。
七騎は森の入り口で躊躇しているのかも知れない。
直ぐ手前の藪に槍が差し込まれる物音。
呂布は知らず知らずの内に身を固くした。
丁度その時だった。
いきなり悲鳴のような怒鳴り声が届いた。
方向からすると森の入り口付近だ。
多数の蹄の音。嘶き。
太刀と太刀が当たる金属音も。
追っ手六人の動きが止まった。
それも一瞬だけ。
言葉も交わさず六人が一斉に踵を返した。
飛ぶようにして引き返した。
表の騒ぎを呂布と結びつけたのだろう。
呂布も素早く藪から抜け出した。
六人の後ろ姿を目で追う。
表で何が出来したのかは知らないが、騒々しさが一段と増した。
何やら争いが起こっているらしい。
不意に呂布は思い出した。
昨夜の、田澪の使いの男の顔と言葉。
いやに、「明日にでも長安を離れてくれ」と力説していた。
その言葉に押されて否応なく出立した分けだが・・・。
どうやら囮に利用されたらしい。
刺客を誘い出す為に・・・。
田澪の家来も呂布を見張っていたのだ。
そうとしか考えられない。
怒り半分の心持ちで駆けた。
騒ぎが起きている表に向かった。
枝を叩き折り、藪を踏み潰す勢いで先行する六人を追う。
六人の最後尾の男が足を止めた。
呂布の立てる物音に気付いた様子。
何事かとばかりに振り返った。
呂布と視線がぶつかった。
途端に破顔。
先を行く五人を呼び止める事はしない。
一人で槍を構えて呂布を待つ。
駆けながら腰の太刀を抜くのも面倒なこと。
それに相手はただの一人。
呂布は素手で向かって行く。
男から目を離さず、勢いのまま突進。
技も理屈も、何もない。ただ度胸のみ。
だからといって相手に油断はない。
一瞬たりとも目を離さない。
肩に無駄な力が入っている分けでもない。
家畜を扱うかのような慣れた表情。
呂布が間合いに入るや、片足を踏み出しながら槍を真っ直ぐに突き出した。
腹部を狙った。
並みの相手なら、それで済んだであろう。
ところが相手は呂布。
身体のキレが違う。
人としての感性からして違う。
身体を微かに捻って穂先スレスレに、擦れ違うように躱し、勢いのまま相手に当たった。
当たった勢いで弾き飛ばし、起き上がろうとする相手の胸元を片足で踏みつけ、
もう片足で、その喉元を踵で踏み潰した。
相手の両目が大きく飛び出し、四肢が激しく跳ね上がった。
落ちた槍を拾い上げ、止めを刺す。
呂布は表に向かおうと顔を上げた。
前方の五人が足を止め、申し合わせたかのように振り返った。
ようやく状況に気付いたらしい。
憎々しげに、こちらを睨み付け、三人が弓を番えた。
二人が槍を手に、こちらに向かって来た。
飛来する矢より早く呂布は傍の木陰に身を隠した。
立て続けに矢が射られ、幹に次々と食い込む。
木陰の左右に迂回した敵二人が槍で挑み懸かって来た。
呂布は、「左の敵の方が早い」と見極めた。
躊躇無なく、そちらへ大きく一歩踏み出した。
呂布目がけて突き出された槍を、奪った槍で交差させるようにして受け退け、
そのままの一連動作で敵の胸を刺し貫いた。
一息入れる暇はない。
残った右の敵が槍を繰り出して来た。
呂布は身体を反転させながら、
手持ちの槍をも反転させて石突き部分で敵の槍を受け弾き、
さらに槍を反転させ、穂先で敵の顎を下から、かち上げた。
鋭い切れ味。
顔の下半分が斬れ、顎から鼻までも裂いた。
血飛沫が飛散して呂布にまでかかった。
にも関わらず敵の攻撃は止まらない。
残った弓三人は仲間の討ち死にには動揺しない。
続けざまに矢を射て来た。
呂布は地に伏せながら再び木陰に隠れた。
立て続けに幹に矢が食い込む。
遊牧の民である。
同時に狩猟の民でもある。
水や草を求めて長距離を移動し、家族や家畜を守る為に害獣を駆逐する。
時には遊牧地を巡って他の家族と争うのも厭わない。
ゆえに幼子の頃から戦に長けていた。
足跡を読むのは日常のこと。
追うのには慣れていた。
たとえ慣れぬ薄暗い森の中でも、呂布の足跡だけは見逃さぬだろう。
確実に接近して来る。
呂布は運を天に任せるしかなかった。
今さら移動は出来ない。
ちょっとでも動けば、あるいは物音を立てれば、連中に気付かれぬ分けがない。
気配を露わにしただけで、たちまちの内に矢が射られ、槍が投じられる。
望むのは、後続の追っ手七騎がここに合流すること。
敵の人数が増えても、素人同然の者達がドヤドヤガサゴソと物音を立ててくれれば、
呂布にとっては大いな助けになる。
が、それらしい動きはない。
七騎は森の入り口で躊躇しているのかも知れない。
直ぐ手前の藪に槍が差し込まれる物音。
呂布は知らず知らずの内に身を固くした。
丁度その時だった。
いきなり悲鳴のような怒鳴り声が届いた。
方向からすると森の入り口付近だ。
多数の蹄の音。嘶き。
太刀と太刀が当たる金属音も。
追っ手六人の動きが止まった。
それも一瞬だけ。
言葉も交わさず六人が一斉に踵を返した。
飛ぶようにして引き返した。
表の騒ぎを呂布と結びつけたのだろう。
呂布も素早く藪から抜け出した。
六人の後ろ姿を目で追う。
表で何が出来したのかは知らないが、騒々しさが一段と増した。
何やら争いが起こっているらしい。
不意に呂布は思い出した。
昨夜の、田澪の使いの男の顔と言葉。
いやに、「明日にでも長安を離れてくれ」と力説していた。
その言葉に押されて否応なく出立した分けだが・・・。
どうやら囮に利用されたらしい。
刺客を誘い出す為に・・・。
田澪の家来も呂布を見張っていたのだ。
そうとしか考えられない。
怒り半分の心持ちで駆けた。
騒ぎが起きている表に向かった。
枝を叩き折り、藪を踏み潰す勢いで先行する六人を追う。
六人の最後尾の男が足を止めた。
呂布の立てる物音に気付いた様子。
何事かとばかりに振り返った。
呂布と視線がぶつかった。
途端に破顔。
先を行く五人を呼び止める事はしない。
一人で槍を構えて呂布を待つ。
駆けながら腰の太刀を抜くのも面倒なこと。
それに相手はただの一人。
呂布は素手で向かって行く。
男から目を離さず、勢いのまま突進。
技も理屈も、何もない。ただ度胸のみ。
だからといって相手に油断はない。
一瞬たりとも目を離さない。
肩に無駄な力が入っている分けでもない。
家畜を扱うかのような慣れた表情。
呂布が間合いに入るや、片足を踏み出しながら槍を真っ直ぐに突き出した。
腹部を狙った。
並みの相手なら、それで済んだであろう。
ところが相手は呂布。
身体のキレが違う。
人としての感性からして違う。
身体を微かに捻って穂先スレスレに、擦れ違うように躱し、勢いのまま相手に当たった。
当たった勢いで弾き飛ばし、起き上がろうとする相手の胸元を片足で踏みつけ、
もう片足で、その喉元を踵で踏み潰した。
相手の両目が大きく飛び出し、四肢が激しく跳ね上がった。
落ちた槍を拾い上げ、止めを刺す。
呂布は表に向かおうと顔を上げた。
前方の五人が足を止め、申し合わせたかのように振り返った。
ようやく状況に気付いたらしい。
憎々しげに、こちらを睨み付け、三人が弓を番えた。
二人が槍を手に、こちらに向かって来た。
飛来する矢より早く呂布は傍の木陰に身を隠した。
立て続けに矢が射られ、幹に次々と食い込む。
木陰の左右に迂回した敵二人が槍で挑み懸かって来た。
呂布は、「左の敵の方が早い」と見極めた。
躊躇無なく、そちらへ大きく一歩踏み出した。
呂布目がけて突き出された槍を、奪った槍で交差させるようにして受け退け、
そのままの一連動作で敵の胸を刺し貫いた。
一息入れる暇はない。
残った右の敵が槍を繰り出して来た。
呂布は身体を反転させながら、
手持ちの槍をも反転させて石突き部分で敵の槍を受け弾き、
さらに槍を反転させ、穂先で敵の顎を下から、かち上げた。
鋭い切れ味。
顔の下半分が斬れ、顎から鼻までも裂いた。
血飛沫が飛散して呂布にまでかかった。
にも関わらず敵の攻撃は止まらない。
残った弓三人は仲間の討ち死にには動揺しない。
続けざまに矢を射て来た。
呂布は地に伏せながら再び木陰に隠れた。
立て続けに幹に矢が食い込む。