アリスはそれが何であるのかが分かった。
覚悟はしていたが最悪の事態。
ドラゴンの口内が赤くなるより先に行動した。
エビスを駆ってジャングルの内を縫うように逃げた。
最悪ではあるが、今がチャンス。
ドラゴンがアリスを追跡しているのは、
エビスの魔波を把握しているからに違いない。
でもブレスで場が大きく乱れる。
となれば、一時的に魔波も有耶無耶になるはず。
それにアリスは期待した。
姿を視認されぬように地表スレスレで飛ばした。
太い木々を、大きな獣を、的確に避けて行く。
アリスがいた辺りで空気を揺るがす激しい衝撃。
ブレスヘルフレイムの先端が地表に到達したのだ。
その破裂音だ。
それで終わりではない。
そこから真っ赤な炎が波紋のように、一円に押し広がって行く。
まるで炎の津波。
長い舌で絡め取るように、ありとあらゆる物を襲い、平等に焼き尽くす。
アリスは背に熱さを、死を感じながらも諦めない。
今見るのは前方のみ。
エビスと一体となり、必死で逃走した。
直線なら、もっと早く逃げられるのだが、それは贅沢と言うもの。
今はこれしかない。
完璧に足跡を消し、ドラゴンと綺麗に別れる。
アリスは必死ながらも背後の熱を気配察知で確認していた。
それで熱さが薄れたのを感じ取った。
ブレスヘルフレイムの範囲を脱したのだ。
即座に次の行動に移った。
豊かな枝葉の蔭にエビスを止めた。
カーゴドアを開けて外に出ると、エビスをオフして収納した。
ついでに変身。
白猫姿となり、枝に腰を下ろした。
収納したエビスの魔波をドラゴンに捉えられる筈がない。
取り敢えず一安心。
自分の魔波を意識して自制しながら、枝葉の蔭からドラゴンを見上げた。
ドラゴンはジャングルを見下ろして満足した。
広い更地が出来上がった。
全てを焼き尽くして一面、灰が積もっていた。
ドラゴンは追っていた奴の魔波を探した。
捉えられない。
逃がしはない。
あのブレスの速度から逃れられる分けがない。
思わず勝ち鬨を上げた。
口を大きく開けて、今の喜びを発した。
それは怒号に似て非なるもの。
空気を震わせ、辺りを圧した。
二度三度と上げて気が済むと、ゆっくりと地上に降り立った。
積もった灰から足の裏に熱が伝わって来た。
人だと重度の火傷をするだろうが、ドラゴンは熱さを感じるだけ。
無造作に周囲を見回し、ブレスヘルフレイムが及ぼす範囲を確認した。
ジャングルの一部が突如として更地になった。
鬱蒼とした密林に棲まう物達はドラゴンの事情は知らないが、
更地にしたのはドラゴンだと認識。
自分達の平穏を脅かす敵だとも認識した。
普段は敵対し、割拠している住民達が、
その怒りの矛先をドラゴンに振り向けた。
一頭が激しく咆えた。
それに他の種も次々に連動した。
会話は成立しなくても、立ち所に雰囲気が醸成された。
ドラゴンは周囲から発される殺意に応えた。
背中の大きな翼を軽く動かし、
ドラゴンブレスと連携させて暴風を発生させ、
更地につり積もった灰を全て、周辺に撒き散らした。
それはそれは幻想的な光景。
密林に雪が降るかのように大量の白い灰が降り注いだ。
密林の木々が揺れ動いた。
怒りの表明、甲高い咆哮が上がった。
同時に一頭が駆け出す足音。
それが端緒となった。
他も遅れじと続いた。
重なる咆哮と足音。
真っ先に飛び出して来たのはミカワゴリラ。
6メートル近い体長。
全身が筋肉の塊。
ゴリラの群から追い出されたが、
それでも剛力を活かしてソロで生き延びている個体。
それが、まっしぐらに突進して行く。
ドラゴンにすればブレスファイアを一発浴びせれば済む話し。
でも、やらない。
やれば自分より小さな奴から逃げるようなもので誇りが傷付く。
それに他の獣が多数、ここを目指している。
其奴等に自分の力を見せ付けたい。
後脚を踏ん張り、前脚を構えて迎えた。
ガツンとぶつかる衝撃音。
ミカワゴリラが肩から当たって来た。
ドラゴンは前脚で受け止めた。
思いもかけない圧力。
見誤ったかなと反省しながら、じっくり相手を見定めた。
ドラゴンの計算違いは獣達の習性。
一対一を想定していたが、獣達はそれを無視した。
立ち止まらない。
駆け付けた勢いのまま、突っ込んで来た。
目の前のミカワゴリラを越える個体はいないが、
何れもそれに近い個体ばかり。
言わば腕自慢ばかり。
其奴等がてんでに四方から挑んで来た。
ドラゴンは焦った。
このままでは拙い。
小さな奴等だが、数の圧力で潰される。
組んでいたミカワゴリラを頭突きで突き放し、
太くて長い尻尾を振り回した。
身体を捻りながら左から来る獣達を尻尾で一掃し、
右から来る物達にはブレスブリザードを浴びせた。
尻尾で一掃された獣達が後方に飛ばされ、後続の物達を巻き込む。
ブレスブリザードを浴びた物達は一瞬で氷り付け。
それを見た獣達は脚を止めた。
前に出るか、下がるか迷う。
ドラゴンが雄叫びを上げた。
勝利の宣言ではない。
挑発だ。
不完全燃焼なので更なる勇者の挑戦を求めた。
応えるかのように正面の密林の木々が不自然に揺れ動いた。
バキッ、メリメリッ、ズルズルッ、これまた不自然な音が響いた。
途端、獣達が硬直した。
種は違うが、意を通じさせるかのように顔を見合わせた。
正面の一頭が道を譲るかのように左に下がった。
慌てて他の獣達も同様な行動をした。
左右に別れた。
正面から来る物を憚っていた。
それが現れるのに時間はかからなかった。
スルリと密林から這いだして来た。
ミカワオロチ。
10メートル超の太くて長い蛇がとぐろを巻き、鎌首をもたげた。
真っ赤な舌をチロチロと見せ、ドラゴンを見据えた。
覚悟はしていたが最悪の事態。
ドラゴンの口内が赤くなるより先に行動した。
エビスを駆ってジャングルの内を縫うように逃げた。
最悪ではあるが、今がチャンス。
ドラゴンがアリスを追跡しているのは、
エビスの魔波を把握しているからに違いない。
でもブレスで場が大きく乱れる。
となれば、一時的に魔波も有耶無耶になるはず。
それにアリスは期待した。
姿を視認されぬように地表スレスレで飛ばした。
太い木々を、大きな獣を、的確に避けて行く。
アリスがいた辺りで空気を揺るがす激しい衝撃。
ブレスヘルフレイムの先端が地表に到達したのだ。
その破裂音だ。
それで終わりではない。
そこから真っ赤な炎が波紋のように、一円に押し広がって行く。
まるで炎の津波。
長い舌で絡め取るように、ありとあらゆる物を襲い、平等に焼き尽くす。
アリスは背に熱さを、死を感じながらも諦めない。
今見るのは前方のみ。
エビスと一体となり、必死で逃走した。
直線なら、もっと早く逃げられるのだが、それは贅沢と言うもの。
今はこれしかない。
完璧に足跡を消し、ドラゴンと綺麗に別れる。
アリスは必死ながらも背後の熱を気配察知で確認していた。
それで熱さが薄れたのを感じ取った。
ブレスヘルフレイムの範囲を脱したのだ。
即座に次の行動に移った。
豊かな枝葉の蔭にエビスを止めた。
カーゴドアを開けて外に出ると、エビスをオフして収納した。
ついでに変身。
白猫姿となり、枝に腰を下ろした。
収納したエビスの魔波をドラゴンに捉えられる筈がない。
取り敢えず一安心。
自分の魔波を意識して自制しながら、枝葉の蔭からドラゴンを見上げた。
ドラゴンはジャングルを見下ろして満足した。
広い更地が出来上がった。
全てを焼き尽くして一面、灰が積もっていた。
ドラゴンは追っていた奴の魔波を探した。
捉えられない。
逃がしはない。
あのブレスの速度から逃れられる分けがない。
思わず勝ち鬨を上げた。
口を大きく開けて、今の喜びを発した。
それは怒号に似て非なるもの。
空気を震わせ、辺りを圧した。
二度三度と上げて気が済むと、ゆっくりと地上に降り立った。
積もった灰から足の裏に熱が伝わって来た。
人だと重度の火傷をするだろうが、ドラゴンは熱さを感じるだけ。
無造作に周囲を見回し、ブレスヘルフレイムが及ぼす範囲を確認した。
ジャングルの一部が突如として更地になった。
鬱蒼とした密林に棲まう物達はドラゴンの事情は知らないが、
更地にしたのはドラゴンだと認識。
自分達の平穏を脅かす敵だとも認識した。
普段は敵対し、割拠している住民達が、
その怒りの矛先をドラゴンに振り向けた。
一頭が激しく咆えた。
それに他の種も次々に連動した。
会話は成立しなくても、立ち所に雰囲気が醸成された。
ドラゴンは周囲から発される殺意に応えた。
背中の大きな翼を軽く動かし、
ドラゴンブレスと連携させて暴風を発生させ、
更地につり積もった灰を全て、周辺に撒き散らした。
それはそれは幻想的な光景。
密林に雪が降るかのように大量の白い灰が降り注いだ。
密林の木々が揺れ動いた。
怒りの表明、甲高い咆哮が上がった。
同時に一頭が駆け出す足音。
それが端緒となった。
他も遅れじと続いた。
重なる咆哮と足音。
真っ先に飛び出して来たのはミカワゴリラ。
6メートル近い体長。
全身が筋肉の塊。
ゴリラの群から追い出されたが、
それでも剛力を活かしてソロで生き延びている個体。
それが、まっしぐらに突進して行く。
ドラゴンにすればブレスファイアを一発浴びせれば済む話し。
でも、やらない。
やれば自分より小さな奴から逃げるようなもので誇りが傷付く。
それに他の獣が多数、ここを目指している。
其奴等に自分の力を見せ付けたい。
後脚を踏ん張り、前脚を構えて迎えた。
ガツンとぶつかる衝撃音。
ミカワゴリラが肩から当たって来た。
ドラゴンは前脚で受け止めた。
思いもかけない圧力。
見誤ったかなと反省しながら、じっくり相手を見定めた。
ドラゴンの計算違いは獣達の習性。
一対一を想定していたが、獣達はそれを無視した。
立ち止まらない。
駆け付けた勢いのまま、突っ込んで来た。
目の前のミカワゴリラを越える個体はいないが、
何れもそれに近い個体ばかり。
言わば腕自慢ばかり。
其奴等がてんでに四方から挑んで来た。
ドラゴンは焦った。
このままでは拙い。
小さな奴等だが、数の圧力で潰される。
組んでいたミカワゴリラを頭突きで突き放し、
太くて長い尻尾を振り回した。
身体を捻りながら左から来る獣達を尻尾で一掃し、
右から来る物達にはブレスブリザードを浴びせた。
尻尾で一掃された獣達が後方に飛ばされ、後続の物達を巻き込む。
ブレスブリザードを浴びた物達は一瞬で氷り付け。
それを見た獣達は脚を止めた。
前に出るか、下がるか迷う。
ドラゴンが雄叫びを上げた。
勝利の宣言ではない。
挑発だ。
不完全燃焼なので更なる勇者の挑戦を求めた。
応えるかのように正面の密林の木々が不自然に揺れ動いた。
バキッ、メリメリッ、ズルズルッ、これまた不自然な音が響いた。
途端、獣達が硬直した。
種は違うが、意を通じさせるかのように顔を見合わせた。
正面の一頭が道を譲るかのように左に下がった。
慌てて他の獣達も同様な行動をした。
左右に別れた。
正面から来る物を憚っていた。
それが現れるのに時間はかからなかった。
スルリと密林から這いだして来た。
ミカワオロチ。
10メートル超の太くて長い蛇がとぐろを巻き、鎌首をもたげた。
真っ赤な舌をチロチロと見せ、ドラゴンを見据えた。