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金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

白銀の翼(動乱)472

2015-08-30 07:41:54 | Weblog
 趙雲は劉備を徳拓に預けることにした。
旅芸人一座時代からの一人で、みんなの信頼が厚い老人である。
年の頃は、はっきりしないが見るからに枯れていた。
その徳爺さんは色街の入り口の裏手に小さな家を構えていた。
老人だからといって、けっして遊んでいる分けではない。
色街が寝静まった頃に起き出して、街中の塵拾いをしていた。
趙雲はそれが塵拾いではなく、見回りであると見抜いていた。
徳爺さんは見掛けこそ古老然としているが、目配りに気配りに怠りがない。
余裕からなのか、遊び心も人一倍。
一度、その現場に遭遇した事があった。
 徳爺さんが不審な動きの男を目敏く見つけた。
店々の閉じられた表戸を見、何やら思案、物色しながら歩いて来る。
徳爺さんは声を上げるでなく、素早く物陰に潜んだ。
そして其奴が通り過ぎると物陰から音もなく出て、其奴の背後にそっと忍び寄り、
「どなた様で」と落ち着いた声音で問い掛けた。
其奴の驚きと言ったら、この世のものではなかった。
なにしろ明け方近い人気のない色街の中通り。
其奴は通行人がいないと確信して色街に足を踏み入れたに違いなかった。
そこに突如として背後からの声。
それも首筋に息が掛かる距離。
驚かない奴はいないだろう。
其奴はビクッとし、声もなく金縛り。
しばらく身動き出来なかった。
徳爺さんが肩に手をかけると、ようやく、其奴はヘナヘナと路上に崩れた。
 趙雲が劉備を伴って訪れると、徳爺さんは幸い在宅であった。
劉備を盧植の弟子と紹介すると、「同門の者が来てくれたのか」と喜んでくれた。
熱い茶と茶菓子で持て成す徳爺さんの目には一点の曇りもなかった。
趙雲を孫のような目で見ていた。
そういう目で見られると隠して置けない。
打ち明ける気になった。
昔から何かに付け可愛がってくれた徳爺さんの期待を裏切った分けだが、
昨夜の一件を正直に話した。
ところが徳爺さんは怒りも軽蔑もしない。
「若い者には、ありがちなこと。
酒の上の失敗と認めているのなら、二度と同じ轍は踏まぬことじゃな」
 そして劉備を快く引き受けてくれた。
 劉備を徳爺さんの家に隠して、それで安心している分けではない。
なにしろ趙雲も当事者の一人。
誰かが怒鳴り込んで来はせぬかと一人、気を揉んでいた。
 二日後に呼び出しが来た。
「趙雲、客人だよ。
栄静様と藍天威様が相手しているから早く行きな」
 荒い言葉遣いの下女が客間方向を指し示した。
「相手側は何人」尋ねた。
「三人。
一人は若い女で、二人は大きな男」
 趙雲は覚悟を決めた。
謝って謝り倒そう。
劉備には関わらせず、自分一人で引き受けよう。
あとは野となれ山となれ。
 客間に飛び込んだ。
栄静と藍天威が顔を見合わせて深刻な顔をしていた。
栄静は元は旅芸人一座の座長であった。
藍天威はその夫で、栄静より五歳年下。
趙雲にとって二人は養父母である。
 怖々と客達の方を振り向いた。
すると、見知らぬ顔が三つ並んでいた。
この町の者ではない。
心当たりもない。
大柄な若い女を真ん中にして、左に大柄な男、右には老人。
繁々と三人の顔を見比べた。
どこも似ていない。
三人は家族ではなさそうだ。
 その三人も趙雲を見返した。
それぞれに違う表情を表した。
若い女は単純な喜び。
老人は驚愕。
大柄な男は安堵感。
 栄静が言う。
「趙雲、こちらに」隣の椅子に腰掛けるように促した。
 趙雲が腰掛けるのを待ち、三人を紹介した。
「豫州から来られた方々です。
娘さんが趙愛珍殿。
趙雪牧場の娘さんだそうです。
左右の二人はその後見人。
右のご老人は左文元殿。
左が紀霊殿」




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白銀の翼(動乱)471

2015-08-26 21:27:27 | Weblog
 趙雲は誰に見咎められることもなく自室に戻った。
色々と悩ましい問題も抱えているが、疲労感が押し寄せたせいで、
何に囚われることもなく倒れるように寝込む。
 熟睡が破られた。
大きな声。
「起きなさい、趙雲。お客様ですよ」
 薄目を開けて声の主を見た。
下女が入り口で仁王立ちしていた。
年下のくせして趙雲を呼び捨て。
娘は遊女として稼ぐ為にこの色街に来たのだが、
言葉遣いが荒いので接客ではなく下女仕事に回された。
それが不満のようで何かに付けて趙雲に当たる。
その物怖じしない性格は意外にも女達の受けが良い。
 趙雲は来客に心当たりはない。
何の約束もしていない。
「誰・・・」
 下女が答えた。
「初めて見る顔よ。
たしか・・・、名前は劉備だったかしら」
 劉備に声掛けず、黙って抜け出して来た。
怒っているだろうか。
「どんな顔をしていた」
「どんな・・・。
目は二つ、鼻は一つ、口も一つ」機嫌の悪そうな口振り。
「分かった、分かった」怒る気にもなれない。
「直ぐに行くと伝えてくれ」下女を下がらせた。
 劉備と口論になるにしても、この家では人目がある。
手早く身支度をし、玄関から飛び出した、
ようやく時刻に気付いた。
朝陽が昇ったばかり。
早朝ではないか。
人を訪ねる時刻ではない。
それに、ここは色街。
特に朝は遅い。
どうりで下女の機嫌が悪い分けだ。
 表には、にこやかな顔の劉備がいた。
両手を差し出して趙雲を迎えた。
「よう、兄弟」声も明るい。
 兄弟になった覚えはない。
どういう意味なのか。
怪訝に思うが表情に出さぬように努めた。
「こんなに朝早く、どうした。旅に出るのか」
 昨夜の事には触れぬようにした。
「しばらく身を潜めたい。どこぞに心当たりはないか」
 昨夜の一件なのか、それとも別件なのか、聞く気にもなれない。
「劉備殿は他所の人間。とっとと逃げれば良かろう」
「そう言うな、同門だろう、兄弟」人懐こい目。
 趙雲は暫し考えた。
「町外れに無人の農家がある。
古びているが、外から見た限りは、しっかりしている。
問題はここ三年ほど無人だったことだ」
「構わん、構わん、案内してくれ」
 早朝でも人の往来はある。
そこを劉備を連れて町外れへと向かう。
 後ろから劉備が言う。
「一声掛けてくれてもよかっただろう」背中から斬りつけるような言葉。
 趙雲は振り返らない。
「他所様の家は寝難いから、自分の家に戻っただけだ。
他意ははない。悪く思わないでくれ」
「ならいいが。
あの後、どうなったと思う」
「酔っぱらいの後始末に興味はない」言い切った。
 一拍置いてから劉備が言う。
「いきなり悲鳴が上がった。
酔いから覚めた女が正気に戻ったらしい。
それから、てんやわんや。
俺は一目散に逃げたよ。
誰かは履き物を残して逃げたようだが、俺は履き物だけは履いたね」
 履き物を残して逃げた趙雲に皮肉。
 案内した農家は町外れに、ぽつんと立っていた。
手前の道から屋根まで雑草が生い茂っていた。
「これでは住むのは無理だな」
 すると劉備が冷静に言う。
「生活する分けじゃない。一時、隠れるだけだ」
 趙雲は劉備を見た。
「余所者なんだから、とっとと逃げれば良いだろう。
それとも、何かこの町に拘る理由でもあるのか」
 劉備が趙雲を見返した。
「同じ学舎で席を並べてなくても師匠は同じ。同門だろう」
 趙雲は溜め息。
「分かった、分かった。
・・・。
何が分かったか分からんが、とにかく家に来い。何とかしよう」
 途端に劉備が満面に笑みを浮かべた。




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白銀の翼(動乱)470

2015-08-23 08:10:17 | Weblog
 あまりの寝苦しさに趙雲は目覚めた。
頭がずきずきする。
酒臭い。
生臭い。
化粧臭い。
横になったまま、辺りを見回した。
見知らぬ部屋。
左右から人の寝息、歯軋りが聞こえて来た。
趙雲はゆっくり上半身を起こした。
部屋の隅では太い蝋燭が灯されていた。
炎が微かに揺らめいた。
部屋の真ん中には大きな卓が幾つか並べられ、その上に酒、食い物が置かれていた。
飲み食い散らかされ、乱雑になっていた。
その周りに大勢の男女が半裸、全裸で転がっていた。
こちらも乱雑であった。
 趙雲は自分も全裸であるのに気付いた。
左右の女達も全裸。
寝息すやすや。
完全に気を許しているようだ。
それぞれを見て思い出した。
二人とも顔馴染みの町娘。
 思い出した。
同門という男の巧みな言葉に誘われて酒の相手をした。
一軒で済む筈が、二軒、三軒と。
その男の巧みな言葉は自分だけでなく、居合わせた男達、女達をも巻き込んだ。
何軒廻ったのか思い出せないが、みんなで雪崩れ込んだのは・・・。
ここは・・・、一体どこだろう。
 趙雲は立ち上がり、周りを見回した。
同門という男を捜した。
蝋燭の薄明かりを頼りに、その男を探した。
 師匠は幽州涿郡の人、盧植。
彼は学識だけでなく、文武双方に深く通じ、多くの人に慕われていた。
高名は帝都のみならず遠方の益州、涼州にまで鳴り響いていた。
幽州涿郡にある盧植の学舎には、弟子入りする者が絶えないという。
 どういう分けか、趙雲の養父母が盧植と親しかった。
旅芸人時代からの交友であるらしい。
趙雲が知り合った経緯を聞いても、詳しくは教えてくれない。
口を濁すだけ。
盧植は帝都に招聘される度に、その行き帰り、この色街に逗留した。
彼は酒に溺れるでもなく、女を侍らせる分けでもなかった。
酒一杯で養父母と深夜まで親しく語り合っていた。
そんな彼を色街の女達は陰で、「お堅い先生」と呼んでいた。
盧植は逗留している間、暇を見ては少年時代の趙雲を猫可愛がりした。
そのついでに、問答をし、古今の知識を授けてくれた。
 同門という男は、本人によるとだが、盧植の学舎で学んでいるとか。
豪語するだけに、確かに言葉の端々に知識が窺えた。
彼は大柄な青年で、趙雲より二つか三つは年上と見えた。
憎めぬ人懐っこい顔。
名は劉備。
盧植と同じ幽州涿郡の生まれ。
彼は、「俺様は王朝と同じ劉姓でも、実は貧農様である」と変な自慢をした。
その劉備は全裸で寝転がっていた。
半裸の女に腕枕をし、深い眠りについていた。
 趙雲はただならぬ事態と察知した。
嫁ぐ前の娘達だけでなく、家庭のある男や女も見えた。
この場の始末の付け方が分からない。
酔っぱらいの遊びで済むのか、金の支払いで済むのか。
笑って済ませられのが一番良いのだが、そうはならないだろう。
ややこしい事態になりそうな予感がした。
「無闇に争わぬ。時には逃げる勇気も必要だ」という盧植の言葉が脳裏に閃いた。
 みんなを起こさぬように気遣いながら、衣服を探して身に着けた。
足音を忍ばせ、そっと動いた。
懐から巾着袋を取り出し、真ん中の卓に有り金全てを置いた。
これで済むかどうかは分からないが、巻き込まれては堪らない。
自分も含めてだが、悪いのは酒の勢いに流された者達。
 廊下に出た。
外廊下。
斜め前の満月が嘲笑っているかのように見えた。
部屋は離れであった。
広い庭の真ん中に建てられ、外廊下で母屋と繋がれていた。
母屋は三階建て。
この町でこれほどの屋敷に住む者は十人といない。
その誰かの屋敷に招かれたのか、あるいは強引に雪崩れ込んだのか。
もしかしたら、部屋で寝転がっている一人が、この屋敷の主人かも知れない。
その一人に心当たり・・・。
十人のうちに身持ちを崩した男がいた。
彼は妻子を流行病で早くに亡くしてからというもの、家業には見向きもせず、
酒、博打、女に興じていた。
蔵を空っぽにする勢いで遊び狂っていた。
にも関わらず家業は傾かなかった。
古くからの使用人達が主人に代わって家業を守っていたからだ。
彼等は主人の気が済むまで遊ばせるつもりでいた。
 母屋は寝静まっているようで、人の気配がしない。
この様子では玄関も門も閉じられているだろう。
人を騒がせる気も、人に見つけられる気もないので、裸足で庭に降り立った。
小石に躓かぬように、怪我をせぬように慎重に庭の奥に足を進めた。
塀に歩み寄り、高さを調べた。
無理すれば越えられる高さ。
 少し離れた位置から助走し、跳躍した。
塀を蹴って駆け上がる要領で、塀の上に片手を伸ばした。
届いた。
もう一方の手も伸ばした。
両手で塀に掴まった
後は力尽く。
強引に身体を持ち上げた。力技。
肘を乗せ、上半身を乗せた。
腕力の限界。
外の道路に転がり落ちた。
地表をも二、三回転するが、幸い怪我はない。
痛みはあるが歩けた。
骨に異常はなさそう。
 夜道の向こうに灯りが見えた。
養父母の営む色街。
今も遊び客が残っている様子。
嬌声が聞こえた。
 色街に戻るのだが、その足が重い。
戻るに戻りがたい。
将来を決められぬ趙雲を見かねたのか、養母に、
「官位官職を買うわよ。だから文官として洛陽に赴く覚悟を決めなさい」
と三日前に言い渡された。
色街の者達は声にこそ出さないが、趙雲の残留を望んでいた。
しかし養父母は亡き父との約束があった。
「なんとしても趙雲を文官にする」と意気込んでいた。




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白銀の翼(動乱)469

2015-08-19 21:17:39 | Weblog
 趙雪の言葉に左文元と紀霊は顔を見合わせた。
互いに苦笑い。
もっともな指摘なので反論はしない。
 賞金稼ぎのうちの年嵩の男が口を開いた。
「向こうの連中、特に男共には注意が必要だな。
商売柄、表面上は笑顔で客の相手をしているが、腹の据わった連中ばかりだ。
そんな連中相手に、人攫い二人は送れないな。
会う以前に門前払いだろう」
 すると別の一人が顔色を変えて言う。
「そうそう、例の噂もあるしな」
「あれか」もう一人。
 思わず左文元は紀霊に詰問した。
「隠し事があるのか」
「嫌な噂なんだ」紀霊が左文元の視線を受け止めて、
「趙雲というのが、何とも良い男なんだ。
色街の女達だけでなく、町中の若い娘が趙雲様、趙雲様。
寝ても覚めても趙雲様、趙雲様。
それで町の若い連中に嫉妬されたんだろう。
ある夜、趙雲が町外れで刺された。
幸い一命は取り止めたが、騒ぎはそれで終わらなかった。
趙雲を襲ったと思われる連中が一人残らず、姿を消したんだ。
表向きは趙雲側の報復を恐れて逃げたと言われてるが、
町の者は誰もそうは信じていない。
逃げるのを目撃した者が一人もいないんだ。
若い連中は親にも友人にも何も告げずに姿を消した。
・・・。
俺も逃げたという噂は信じていない。
趙雲側が報復で殺して、遠くに捨てたとしか思えない」言い切った。
 左文元も一つの噂を思い出した。
旅芸人に関する噂だ。
男も女も芸を披露するだけでなく、
興行先の有力者の求めに応じて身体も売ると一般的に知られていた。
その裏で、ごく一部であるが、腕の立つ者は殺しも請け負うと密かに噂されていた。
趙雲が養われている色街の者達は元が旅芸人。
噂のような腕の立つ者がいても不思議ではない。
 紀霊達が聞き込んだ噂を元にして慎重に人選が行われた。
無用な争いや関係悪化を避ける為、
信頼に足る者が相手側との話し合いに赴く必要があった。
 趙雪の娘、趙愛珍が農場の代表を買って出た。
「長旅は初めてだけど、趙雲を連れ戻すのは同じ母乳で育った私の役目でしょう」
 農場を離れられない母の足下を見て、強引に趙愛珍が押し切った。
後見役として左文元。
道案内は紀霊。
これに旅慣れた下女が二人、牧童が二人。
先方への手土産を乗せた荷馬車が一両、馭者一人。
一行の旅の荷物を積んだ荷馬車が一両、馭者一人。
趙愛珍と下女二人を乗せる幌馬車一両、馭者一人。
少数の一行だが、荷馬車が目を惹いて賊を呼ぶかも知れない。
そこで警護役の人員も必要なのだが、
紀霊以外の賞金稼ぎは一族の開拓地に戻るという。
 彼等は干魃続きの山東から逃れ、この豫州に移住して来た。
袁家の領地ではなく、ここから馬で十日ほどの他家の領地であった。
有り金叩いて買い上げた土地は、思いの外、収穫が上がらなかった。
それを補う為に彼等は賞金稼ぎとか傭兵で一族の暮らしを支えていた。
新年を迎える一族に今年の稼ぎを届ける必要がある。
一年近い探索の旅で溜まりに溜まった垢を流す必要もある。
人情から無理強いは出来ない。
 左文元は隠居したものの左家への影響力は残していた。
そっさく豫州の左家屋敷に自ら赴いて、軽装の騎兵十騎を借り受けた。
 一行が趙雲の元に旅立った。




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白銀の翼(動乱)468

2015-08-16 07:58:14 | Weblog
 傍目にだが、賞金稼ぎ五人組の表情が妙に明るく見えた。
それを遠目に左文元が指摘した。
趙雪、趙愛珍の母子も同意した。
吉報かも知れない。
 下女達が五人を一つの大きな卓に案内し、軽い食事と飲み物で持て成した。
持て成される間も五人の様子は変わらない。
下女達に軽口を飛ばし、仲間内で笑い合う。
 落ち着いたところで趙雪は報告を受けることにした。
中高年の使用人三人を呼び、趙愛珍と左文元をも同道して、大きな卓に向かう。
趙雪や趙愛珍の母子二人では地方の地名にも疎いので、
世情に通じた使用人三人に報告の中身を吟味させるのだろう。
 賞金稼ぎという稼業から荒っぽい者共と思っていたが、どうやら違った。
趙雪に気付くや卓から立ち上がって出迎えた。
挨拶もそこそこに紀霊が報告を始めた。
前年よりの懸案であったという事項、一つ一つを潰して行く。
かつての目撃例とか、立ち寄り先であった。
 報告を聞いていると、趙志丹と趙雲の正体が完全に秘匿されていると分かった。
趙雪が左文元に事前に言っていたように、
「この農場を立ち上げる時に力になってくれた恩人で遠縁の趙志丹」
として話しが進められていた。
娘にさえも明かしていないそうだ。
 あらかたの報告を終えた紀霊が、みんなを見回した。
「最後になりましたが、趙雲という同姓同名の男子を一人見つけました。
男子といっても二十歳前後です。
年頃は合います。
けれど傍に趙志丹はいません」
「どこで」趙雪が身を乗り出した。
「偶然ですが、途中休憩に立ち寄った冀州の宿場町で見つけました。
室という水運の町です」
 黄河水系にあり、水運で栄えていた。
かつては水運だけだったが、十年ほど前よりは色街でも知られるようになった。
そこの色街で趙雲は養われているという。
 左文元は趙雪と顔を見合わせた。
彼女の表情は複雑な色をしていた。
どうやら読みは同じらしい。
おそらく五人は色街が目当てで立ち寄ったのだろう。
とかく男はそういう生き物。
ここは色街での休憩を蔑むより、趙雲という男子に遭遇したことを喜ぶべきだろう。
間を置かずに、「養われているとは」趙愛珍が尋ねた。
「それが妙な具合なのです。
色街の生まれという分けでも、孤児という分けでもないのです。
色街の差配をしている夫婦を兄、姉と呼び、脳天気に暮らしているのです」
 紀霊は勘が働いた。
それとなく色街の女に尋ねた。
それで色街の差配をしている夫婦が、
元は旅芸人の一座を率いていた座長夫婦と分かった。
その夫婦率いる一座が旅の途中で趙雲親子に遭遇したのだそうだ。
今から十年ほど前の出来事だという。
親子は旅の行商人で荷馬車暮らしであった。
遭遇した際、趙雲は親が病に倒れて難儀していた。
見かねた夫婦は一座を止め、親子の面倒をみた。
しかし手厚い看病の甲斐もなく、親は息を引き取った。
それからが早かった。
遺体を埋葬すると孤児になった趙雲を一座に加えることに決した。
どういう話し合いが一座の上の方で持たれたのか分からないが、
一座は手近の町に腰を据える事にもなった。
水運の町、室である。
手元不如意のしがない旅芸人一座の筈が、これまた、どう算段したのか知らないが、
町外れの土地を買い上げて色街の最初の一軒を立ち上げた。
すると、あれよあれよと言う間に、色街が拡張して行った。
旅芸人として培われた愛嬌の良さと、客あしらいが男達を引き付けたのだ。
人手不足は家族親戚を呼び寄せるだけでは足りず、州内外からも広く募った。
話してくれた女も家族として呼び寄せられた一人だと。
かくして今がある、と女が自慢げに言う。
浮き草稼業の旅芸人暮らしより、今の生活が気に入っている、とも言う。
 紀霊は立ち入った事を聞いて怪しまれるより、そこまでで済ませる事にした。
亡くなった親の名前は分からないが、探している親子の可能性が高いと判断。
最終判断を雇用主に委ねるべく戻って来た。
 左文元は紀霊を正視して問う。
「どう感じた」
「まず間違いない」頷いた。
 左文元は趙雪を振り向いた。
「それじゃ、ワシが迎えに行こう」
「一人で」
 紀霊が口を差し挟む。
「俺が案内しよう。
その方が早いだろう」
「本物だったら、どうやって引き取るつもり」趙雪が顔を曇らせた。
「向こうの家族になってるかも知れないわね」趙愛珍が危惧した。
「誠意を持って話すしかなかろう。
なんとしても、この農場に連れ帰る」左文元は言い切った。
 趙雪が左文元と紀霊を交互に見比べた。
溜め息混じりに言う。
「困ったわね。
貴方達二人だと、とても迎えの人間には見えないわ。
どちらと言えば、人攫いかしら」本気で心配した。
 その言葉に、みんなが一斉に爆笑した。
紀霊の仲間などは卓を叩き、腹を抱えて大笑い。




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白銀の翼(動乱)467

2015-08-09 08:10:11 | Weblog
 左文元に焦りはない。
肝心の趙雲が生まれてより二十年近い年月が流れていた。
消息を絶ってよりも十年近い年月が過ぎていた。
今さら慌てることではない。
趙雪の営む農場に腰をどんと据え、賞金稼ぎの者達が戻るのを持つことにした。
 農場は領地の外れなのだが、近くに人里、街道があるせいか、
思ったよりも人の出入りが激しい。
親しい者達や、馴染みの行商人達が足繁く立ち寄っていた。
そんな彼等より世間の情報が、もたらされた。
何と言っても驚いたのは劉焉、劉表の離反。
「二人が朝廷に楯突いて都を引き払った」と。
それに伴い様々な噂が聞こえて来た。
なかでも、
「劉焉劉表の刺客が帝を襲い、深手を負わせた」という噂には真実味があった。
 数日置いて左家より衝撃的な知らせが届けられた。
「都より早馬です。
帝が退位され、代わって劉弁様が即位されました」
何皇后の皇子、劉弁。
齢、十才の新帝の誕生である。
同時に何皇后が太后に呼ばれる身分になった。
ところがであった。
代替わりで前の太后は隠居するのが通例なのだが、何故か董太后の身分はそのまま。
二人の太后。
何やら怪しげな動き。
 さらに数日置いて、
「新帝の後見人は董太后と何太后の二人と決まりました」と。
 新帝が成人してない場合は、冠礼が済むまでは同じ劉姓の大人が後見人となり、
三公九卿の席に加わり公務を行うのが通例であった。
もちろん新帝も朝議には臨席するが、発言は許されていない。
朝議を後の為に聞き置くだけ。
それがここでも覆された。
「反目している」と噂されていた両人が二人太后として新帝を後見するという。
当然ながら太后の政治ではないかと危惧される。
が、反対は言いづらいだろう。
なにしろ何太后の兄は大将軍として軍権を掌握していた。
一方の董太后が贔屓している董卓将軍は実戦に慣れた者。
そんな二人の将軍が二人太后の後ろ盾とあれば誰も逆らえない。
 驚きは続いた。
都からの三度目の早馬が、もたらした。
「先の帝が崩御されました」と。
 僅か数日で王朝が様変わりした。
実に慌ただしい。
 冷静になれば左文元でも分かった。
真相は帝の崩御が先であろう。
崩御によって生じる混乱を最小限に抑えるため、帝位の代替わりを先にした。
平時であれば、こんな小細工は行わない。
三公九卿が人の道を説き、許さない。
劉焉劉表より放たれた刺客の噂があった。
その刺客によって帝が暗殺されたに違いない。
それは公的には認めがたいので、かくなる仕儀と相成った。
二人太后というものも、その線上で考えれば分かる。
夫を殺された何太后が息子を殺された董太后と手を携えた、ということだ。
両者の思惑が仇、劉焉劉表の討伐であるのは火を見るよりも明らか。
問題は討伐を大喪の前にするのか、その後にするのか。
その辺りが難しい。
今回は暗殺を公表していない。
となれば、先帝の大喪を行ってから喪に服し、その後に討伐を行うのが筋だ。
 さらに急報は続いた。
朝廷より各州の刺史に、
「劉焉、劉表に同調する領主が出るかもしれぬ。
ことに劉姓の領主の動向には目を配るように」と急使が立てられた。
 朝廷の政策に従い州を治めるのが刺史の役目である。
刺史は州の最高権力者で、州内の公領の行政権が与えられていた。
私領に対しては何の権限もないが、跋扈する盗賊に対処する際には、
公領私領の別なく行動することが認められていた。
その延長線上で州の官吏は公然と私領に出入り出来た。
朝廷の意向は、
「盗賊対策を理由に州全体を監察し、不穏分子を摘発せよ」ということだろう。
 下手すると王朝が割れる。
洛陽以外の地方は病んでいた。
朝廷が長年の宦官と官吏、外戚の対立で混乱した為、
多くの地方官吏が目が届かぬのをいいことに搾取に走った。
その結果として農民、小作人、奴隷が逃散し、農村が次々に潰れた。
流浪の民は盗賊になるか一揆反乱に加わるしか選択肢がなかった。
各地で盗賊団の群が跋扈し一揆反乱が多発した。
人心だけでなく土地も疲弊すると疫病を呼び込む。
疫病は場所を選ばない。
治安の良い所でも流行った。
これらの混乱に乗じて北よりは騎馬民族が襲来を繰り返した。
対処するには多大な軍費を必要とし、さらなる重税を課すしかなかった。
混乱が混乱に輪をかけ、中華の大地は混迷の度を深めた。
地方には不平不満が満ち溢れ、人心が法から離れた。
とても朝廷の正義道義では通用しない。
一揆の言い分が、反乱の言い分が人々の支持を集めた。
朝廷が対処を誤れば劉焉劉表側を利することになる。
 左文元は胸を撫で下ろした。
元々が朝臣ではない。
朝臣の袁家に仕える単なる武人の家に生まれ落ちただけ。
王朝には義理もなければ人情もない。
王朝の行く末より大切なのは主家の行く末。
たとえ王朝が滅びようと、主家だけは、その滅びに付き合わせてはならない。
幸いと言うべきか、今は袁術の葬儀を終え、袁家は喪に服す期間にある。
左家に、「喪につき、静観すべし」と書き送った。
 ようようのこと、賞金稼ぎの者共が戻って来た。
日焼けした騎乗の五人組。
下女達が駆け寄り彼等の埃を払い、足を拭く。
よく見ると五人は似た顔をしていた。
違うのは年齢のみ。
大雑把に四十から二十と見えた。
どうやら血縁で繋がっているらしい。
 趙雪が左文元に説明した。
「山東から流れて来た者達よ。同族だそうよ」と言い、
大柄な男を指し示し、「紀霊よ」と三十近い男の名を教えた。
 紀霊が一族の長であるそうだ。




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白銀の翼(動乱)466

2015-08-05 21:23:38 | Weblog
 趙雪から聞かされた兄の意見というものは、
紛れもなく兄の口から出たものに違いない。
兄は立派な武人であるが、猪武者ではなく計算高さも併せ持つ。
その器量は部隊を統率にするに相応しい。
そこを見込まれて袁燕に産んだ子の養育を委ねられたのだろう。
一門としては困ったことだが、弟としては誇らしい。
左文元は一人納得した。
 二人の仮の名が分かった。
仮の姿も分かった。
ところが十年ほど前より消息不明だとか。
あまりにも月日が経っていた。
だからといって引き下がるつもりはない。
幸いにも隠居の身。
何にも束縛されない。
誰に憚ることもない。
好き勝手に自由に動き回れる。
忠誠心ではなく、三人の正室の為にも二人を探し出そうと思った。
結果はどうあれ、二人の消息を知るのは自分にとっても大切なこと。
 あらためて趙雪を見遣った。
「賞金稼ぎの者共とは」
 彼等の多くは流浪である。
村や奉公先が潰れて次の職に有り付けぬ者達は、傭兵か盗賊になるしかなかった。
その中のごくごく一部、腕に覚えのある者達が公的私的を問わず、
賞金をかけられた者を追跡し、その首を狩ることに血道を上げていた。
仕事柄、彼等に定住の地はない。
恨みも買っているので安楽の地もない。
常に賞金首を求めて西へ東へ、旅から旅の旅がらす。
「山東より流れて来た五人組で、三年前より遣っています。
仕事の進め方が巧く、手掛かりを確実に一つ一つ調べ、潰しています。
金を払う価値はあるかと」
「手間賃稼ぎという分けではないのだな」
「はい。
年が暮れる前に戻って来て、今年の分を詳しく報告してくれます。
その言葉に嘘偽りはないと思います」
「そうか。
すると今年も残り僅か、もうすぐ戻ってくるな」
「はい。
彼等の報告を聞いてから、どうされるか決めたらどうでしょう」
 趙雪の言葉に従い、賞金稼ぎの者共を持つことにした。
何の手掛かりもないままに探し回るより、彼等を待ち、
何らかの手掛かりを得てから動いた方が利口というものだろう。
手掛かりがあればだか。
 領内の左家の屋敷に戻るのも面倒なので農場で世話になることにした。
小綺麗な一室を貸してくれた。
趙雪が一人娘を伴って挨拶に現れた。
「趙愛珍と申します」日焼けした顔で拱手をした。
 趙雲より二十日ほど早く生まれたそうだ。
母も大きいが娘はそれ以上。
頭一つ抜けていた。
頑丈そうな体軀で女にして置くには惜しい。
 左文元の考えていることを察したのか、趙雪が得意そうに言う。
「私の乳を飲んで趙雲も大きくなりました。
この農場を去ったのは二才の頃ですが、娘と同じくらい大きく育ちました」
「こう言ってはなんだが、母御に似てなければ良い」
 冷たいようだが、病弱の生母に似て息子も病弱では何の役にも立たない。
立場が立場なので、戦場にては騎乗して駆けなければならない。
屋敷では幾人かの女を相手にし、子をなさねばならない。
そういう生まれなのだ。




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白銀の翼(動乱)465

2015-08-02 07:58:34 | Weblog
 左文元は笑みが溢れるのを隠さない。
「話が早くて結構、結構」
 趙雪の視線が厳しくなった。
「嘘一つ許さぬ」と言わんばかり。
 左文元も嘘をつくつもりはない。
隠すことも一切ない。
袁術の戦死から始めた。
北から鮮卑が洛陽に迫ったというのに、迎撃の国軍が心許ない。
そこで洛陽や近郊から貴族豪族諸侯を中心とする軍が掻き集められた。
庶民より募った民兵あり、在郷兵あり。
それでも五万にも満たない寄せ集めの軍勢。
それらが何進大将軍の麾下に入り、鮮卑に立ち向かうべく進発した。
そして瞬く間に瓦解した。
夜討ち、それも焼き討ちに遭った。
その際に袁術が戦死した。
 領主が戦死しても袁家に混乱は生じなかった。
幸いだったのは主家に三人の正室がいたこと。
当代は当然として、先代、先々代も存命であった。
彼女達が手を携え、動揺する家臣達を引き締め、家政を切り盛りした。
 その三人に左文元が呼び出された。
家を取り巻く状況を説明された。
「跡取りは居ても後見するに相応しい人物が払拭している」と嘆く三人。
そこで不意に、袁燕お嬢様の名前が出された。
病弱の令嬢は、あろうことか懐妊し、我が命と引き替えに密かに出産した。
その子は生まれるや直ぐに亡くなった。
袁燕も体調の悪化が長引き、ついに二年後に亡くなった。
同時期に姿を消した兄、左志丹。
「おそらく死んだ乳児は替え玉。
左志丹の気性からすると理由もなく出奔する筈がない。
乳児を袁燕に託されたに違いない」と三人の新旧の正室は読み解いた。
そこで左文元に密命が下された。
「ただちに探索の旅に出て、二人を連れ戻すように」と。
 左文元は趙雪を見詰めた。
「死んだ乳児が替え玉であれば、生まれた乳児は密かに乳母の手元で育てられはず。
その乳母とはお主であろう。違うか」
 趙雪は目を逸らさない。
「賀璃茉様は何と」
「憎かった二人が亡くなった今では何とも詮無きこと、子に罪はない、と。
その言葉は高夢春様と姜雀様も聞いておられる」
 趙雪が表情を綻ばせた。
「その子を探し出して、どうしようと」
「人物次第だが、遠縁の者として禄を与えると。
秀でた人物であれば後見の役も。
悪い話しではなかろう」
 趙雪は素早く椅子から立ち上がり、床に両膝をついて拱手をした。
「ここまでの失礼をお詫びします」
「堅苦しい。頼むから席に戻ってくれ」
 その言葉に趙雪が微笑む。
「お兄様のような言い様ですね」椅子に腰掛け直した。
「やはり兄を知っていたか」
「乳母ですから当然です。
お子が歩けるようになるまでは、私共夫婦と一緒に暮らしていました」
「その子と兄を連れ戻したい」焦り気味に言う。
 趙雪の表情が陰る。
「それが十年ほど前から連絡がないのです」
 左志丹は趙志丹と名を変えた。
お子は趙雲。
お子に仮の名をつけたので、それに左志丹も合わせたのだ。
趙志丹は趙雲が歩けるようになると旅商人に身を窶して領地から出た。
荷馬車が住まいの旅暮らし。
手元の資金が豊富だったので、商売に苦はなかったはず。
趙志丹は二人が生きている証に、年に一度か二度、
仲間の信用の置ける旅商人を使い、趙雪の元に進物を届けてきた。
多くは換金が容易な塩であった。
その仲間の旅商人が、
「趙志丹は商売が巧い。
子煩悩を脇に置いて、もう少し商売っ気があれば、何処かに店を構えられる」
と趙志丹を評した。
その進物が十年ほど前に途絶えた。
何かあったに違いない。
「相談しようにも、お嬢様が亡くなって、身の回りの世話をしていた方々は散り散り。
弟の貴方様にも相談しようかと、何度か足を運んだこともあります。
でも趙雲様を表沙汰にしていいものかどうか・・・。
悩んだ末に、自分達の力で探すことにして、人を雇いました。
追跡に慣れた賞金稼ぎの者共です。
荒っぽいけど腕は確かです。
趙雲様の名は出しておりません。
其奴等に趙志丹親子として今も探させております。
趙志丹様の仲間であった旅商人達を追わせ、
手掛かりになりそうな事柄を聞き出すように申しつけております。
「となると大層な金がかかっているであろう」
「この農場自体が趙雲様の物。
何れお戻りになる趙雲様の為にと、生前に袁燕お嬢様より資金が下されました。
趙志丹様の意見で、その一分を取り崩して、この農場を切り開きました。
お陰で農場からの収益も上がり、お金には苦労しません。
正直に言いますと、家臣の方々よりも上かと」申し訳なさそうな表情。
「この農場の造りが堅固なのも兄の意見か」
「はい。
襲ってくるのは賊だけだ。
出撃する必要はない。
ここは街道が近いから守り固めていれば人目を引き、何れ領主に届き、
賊討伐の兵が送られて来る」




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