趙雪から聞かされた兄の意見というものは、
紛れもなく兄の口から出たものに違いない。
兄は立派な武人であるが、猪武者ではなく計算高さも併せ持つ。
その器量は部隊を統率にするに相応しい。
そこを見込まれて袁燕に産んだ子の養育を委ねられたのだろう。
一門としては困ったことだが、弟としては誇らしい。
左文元は一人納得した。
二人の仮の名が分かった。
仮の姿も分かった。
ところが十年ほど前より消息不明だとか。
あまりにも月日が経っていた。
だからといって引き下がるつもりはない。
幸いにも隠居の身。
何にも束縛されない。
誰に憚ることもない。
好き勝手に自由に動き回れる。
忠誠心ではなく、三人の正室の為にも二人を探し出そうと思った。
結果はどうあれ、二人の消息を知るのは自分にとっても大切なこと。
あらためて趙雪を見遣った。
「賞金稼ぎの者共とは」
彼等の多くは流浪である。
村や奉公先が潰れて次の職に有り付けぬ者達は、傭兵か盗賊になるしかなかった。
その中のごくごく一部、腕に覚えのある者達が公的私的を問わず、
賞金をかけられた者を追跡し、その首を狩ることに血道を上げていた。
仕事柄、彼等に定住の地はない。
恨みも買っているので安楽の地もない。
常に賞金首を求めて西へ東へ、旅から旅の旅がらす。
「山東より流れて来た五人組で、三年前より遣っています。
仕事の進め方が巧く、手掛かりを確実に一つ一つ調べ、潰しています。
金を払う価値はあるかと」
「手間賃稼ぎという分けではないのだな」
「はい。
年が暮れる前に戻って来て、今年の分を詳しく報告してくれます。
その言葉に嘘偽りはないと思います」
「そうか。
すると今年も残り僅か、もうすぐ戻ってくるな」
「はい。
彼等の報告を聞いてから、どうされるか決めたらどうでしょう」
趙雪の言葉に従い、賞金稼ぎの者共を持つことにした。
何の手掛かりもないままに探し回るより、彼等を待ち、
何らかの手掛かりを得てから動いた方が利口というものだろう。
手掛かりがあればだか。
領内の左家の屋敷に戻るのも面倒なので農場で世話になることにした。
小綺麗な一室を貸してくれた。
趙雪が一人娘を伴って挨拶に現れた。
「趙愛珍と申します」日焼けした顔で拱手をした。
趙雲より二十日ほど早く生まれたそうだ。
母も大きいが娘はそれ以上。
頭一つ抜けていた。
頑丈そうな体軀で女にして置くには惜しい。
左文元の考えていることを察したのか、趙雪が得意そうに言う。
「私の乳を飲んで趙雲も大きくなりました。
この農場を去ったのは二才の頃ですが、娘と同じくらい大きく育ちました」
「こう言ってはなんだが、母御に似てなければ良い」
冷たいようだが、病弱の生母に似て息子も病弱では何の役にも立たない。
立場が立場なので、戦場にては騎乗して駆けなければならない。
屋敷では幾人かの女を相手にし、子をなさねばならない。
そういう生まれなのだ。
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触れる必要はありません。
ただの飾りです。
紛れもなく兄の口から出たものに違いない。
兄は立派な武人であるが、猪武者ではなく計算高さも併せ持つ。
その器量は部隊を統率にするに相応しい。
そこを見込まれて袁燕に産んだ子の養育を委ねられたのだろう。
一門としては困ったことだが、弟としては誇らしい。
左文元は一人納得した。
二人の仮の名が分かった。
仮の姿も分かった。
ところが十年ほど前より消息不明だとか。
あまりにも月日が経っていた。
だからといって引き下がるつもりはない。
幸いにも隠居の身。
何にも束縛されない。
誰に憚ることもない。
好き勝手に自由に動き回れる。
忠誠心ではなく、三人の正室の為にも二人を探し出そうと思った。
結果はどうあれ、二人の消息を知るのは自分にとっても大切なこと。
あらためて趙雪を見遣った。
「賞金稼ぎの者共とは」
彼等の多くは流浪である。
村や奉公先が潰れて次の職に有り付けぬ者達は、傭兵か盗賊になるしかなかった。
その中のごくごく一部、腕に覚えのある者達が公的私的を問わず、
賞金をかけられた者を追跡し、その首を狩ることに血道を上げていた。
仕事柄、彼等に定住の地はない。
恨みも買っているので安楽の地もない。
常に賞金首を求めて西へ東へ、旅から旅の旅がらす。
「山東より流れて来た五人組で、三年前より遣っています。
仕事の進め方が巧く、手掛かりを確実に一つ一つ調べ、潰しています。
金を払う価値はあるかと」
「手間賃稼ぎという分けではないのだな」
「はい。
年が暮れる前に戻って来て、今年の分を詳しく報告してくれます。
その言葉に嘘偽りはないと思います」
「そうか。
すると今年も残り僅か、もうすぐ戻ってくるな」
「はい。
彼等の報告を聞いてから、どうされるか決めたらどうでしょう」
趙雪の言葉に従い、賞金稼ぎの者共を持つことにした。
何の手掛かりもないままに探し回るより、彼等を待ち、
何らかの手掛かりを得てから動いた方が利口というものだろう。
手掛かりがあればだか。
領内の左家の屋敷に戻るのも面倒なので農場で世話になることにした。
小綺麗な一室を貸してくれた。
趙雪が一人娘を伴って挨拶に現れた。
「趙愛珍と申します」日焼けした顔で拱手をした。
趙雲より二十日ほど早く生まれたそうだ。
母も大きいが娘はそれ以上。
頭一つ抜けていた。
頑丈そうな体軀で女にして置くには惜しい。
左文元の考えていることを察したのか、趙雪が得意そうに言う。
「私の乳を飲んで趙雲も大きくなりました。
この農場を去ったのは二才の頃ですが、娘と同じくらい大きく育ちました」
「こう言ってはなんだが、母御に似てなければ良い」
冷たいようだが、病弱の生母に似て息子も病弱では何の役にも立たない。
立場が立場なので、戦場にては騎乗して駆けなければならない。
屋敷では幾人かの女を相手にし、子をなさねばならない。
そういう生まれなのだ。
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