ワイバーンがこちらに気付いた。
獲物と認識した様で、こちらにコースを変更して来た。
喜び勇んで速度を上げて来た。
アリスは仲間の提案を受諾した。
面白い、それだけで充分だ。
エビス飛行隊はワイバーンに相対する形、一列縦隊となった。
先頭はアリス、他は適当に。
と、アリスの直ぐ後ろになった機体から順に姿を消して行く。
転移だ。
ワイバーンに覚られる事無く戦場から離脱した。
仲間の離脱を確認したアリスは作戦行動を開始した。
妖精魔法をぶちかました。
ウィンドボール攻撃。
それはワイバーンの風魔法で相殺された。
相殺されたと同時に怒りも買ったようだ。
殺意メラメラ。
アリスは逃げる様に反転した。
ワイバーンが追って来た。
アリスは右に大きく旋回した。
再びウィンドボール攻撃。
またもや相殺された。
怒り増幅で追って来るワイバーン
アリスは確信した。
釣り上げた、と。
アリスは本来のコースに戻った。
そして速度を緩めた。
ここからが肝心なのだ。
手が届くようで届かない様に距離を調節しつつ、逃げた。
否、誘導した。
目的地が見えてきた。
ジイラール教団が構える修行道場。
小さな盆地の中央にあり、巨大で高い外壁に囲われていた。
丘の上の一番大きな建物が道場で、
それを囲む建物群は関連の宗教施設と宿泊施設だ。
知らぬ人は開拓村か中継地と思うだろうが、
ここは世情名高い暗殺教団の拠点であった。
アリスはワイバーンの怒りに火を注ぐ事にした。
急反転し、火槍・ファイアスピアの一撃。
これまでの攻撃はただのお遊び。
今度は手傷を負わせるのが目的。
ワイバーンは風魔法で相殺しようとするが、簡単に貫通を許す。
頬を抉る傷。
狙い通り。
アリスはほくそ笑んだ。
ワイバーンはそれでも怯まない。
猪突猛進の勢いで追って来た。
アリスにはワイバーンの頭が沸騰しているかの様に見えた。
アリスはワイバーンを引き連れて一直線に修行道場を目指した。
そして手前にて急降下。
屋根全体に向けて風槍・ウィンドスピアを連射した。
これがランクAの本気。
次々に穴を開けた。
計九つの穴。
その一つにアリスは飛び込んだ。
考えも無しにワイバーンも追随した。
その大きな身体で穴を通り抜けられる訳がない。
急降下の勢いと、自重でもって屋根自体を壊した。
ワイバーン自身の悲鳴と崩壊する屋根の轟音。
砕かれた屋根の瓦礫とワイバーンの体重が階下天井に圧し掛かった。
頑丈に建てられた五階建てが揺れ震えた。
いち早く脱出したアリスの機体は無傷。
速度を維持しながら、大きく反転して上空へ上がった。
そこへ先に転移し、高々度で待機していた仲間達が合流して来た。
『アリス、上手いじゃん』
『ワイバーンの新しい活用法ね』
『でも本当、えぐいよね』
口々に褒めそやす。
アリスは得意満面。
『でしょう、でしょう、褒めて、もっともっと褒めて』
これを提案した妖精が呟く。
『これがアリスの活用法なのね』
眼下で道場が二つに割れた。
左右に雪崩る。
居合わせた教団の者達も巻き込まれた筈だが、
その悲鳴は轟音に掻き消されて全く聞こえない。
崩れ落ちる瓦礫が粉塵を発生させた。
一帯を霧状に覆う。
茶色い霧が惨状を隠した。
周囲の建物から人々が姿を現した。
まるで餌に群がる蟻。
粉塵を吸わぬ様に周囲を取り囲む。
アリス達は連中を鑑定した。
何れも教団の職員ばかり。
教義や布教に関わる司教や司祭は少なく事務系や職人系が多い。
おそらく司教や司祭は道場に居たのであろう。
『アリス、大物がいないわね」』
確かに教皇や大司教がいない。
彼らまで都合よく道場に居合わせたとは思えない。
アリスは思い出した。
イマン・ホーンの肩書は、巫だった。
対になるのは覡。
巫覡。
女が巫で男が覡。
『巫と覡を探してちょうだい』
と、粉塵の中に魔波が出現した。
考えられるは一つしかない。
それが一方に向けて強烈な雄叫び。
風魔法混じりなので、その威力で一角の粉塵を吹き飛ばした。
ワイバーンが生き残っていた。
瓦礫の真っ只中で仁王立ち。
粉塵が気に食わぬのだろう。
周囲に向けて数回雄叫び。
それでもって全ての粉塵を掻き消した。
慌てたのは周囲の者達。
形相を変えて逃げて行く。
その様、散る雲蚊の如し。
建物に戻る者、外壁の方へ走る者、人それぞれ。
暫しすると、驚いた事に再び現場に駆け戻って来る者達がいた。
彼等彼女等は斧を持っていた。
斧を肩に担ぎ、ワイバーンを目指していた。
アリスは鑑定した。
職業、ジイラール教団職員、
その中の役職は女は巫、男は覡。
これが暗殺教団の暗殺者達なのだろう。
暗殺者達は一瞬たりとも怯まない。
足を緩める事なくワイバーンに挑む。
一人が正面から跳んだ。
身体強化済みのようで、ワイバーンの顔の高さ。
一撃を入れようとするが、風魔法で相殺され、弾き返された。
が、それは牽制であった。
その隙にもう一人が尻尾の先に一撃を入れた。
喰い込む。
「ギャーオー」
ワイバーンが正直に悲鳴した。
三人目が傷付いた箇所に二撃目を加えた。
それで断ち切った。
尻尾の先が宙に舞う。
「ヴギャー、ギギャー」
ワイバーンが喚きながら忙しなく四つ足や翼を動かす。
痛みに耐え切れぬらしい。
だが、飛ぶ気配はない。
ここまでの一連の騒ぎで消耗しているのだろう。
獲物と認識した様で、こちらにコースを変更して来た。
喜び勇んで速度を上げて来た。
アリスは仲間の提案を受諾した。
面白い、それだけで充分だ。
エビス飛行隊はワイバーンに相対する形、一列縦隊となった。
先頭はアリス、他は適当に。
と、アリスの直ぐ後ろになった機体から順に姿を消して行く。
転移だ。
ワイバーンに覚られる事無く戦場から離脱した。
仲間の離脱を確認したアリスは作戦行動を開始した。
妖精魔法をぶちかました。
ウィンドボール攻撃。
それはワイバーンの風魔法で相殺された。
相殺されたと同時に怒りも買ったようだ。
殺意メラメラ。
アリスは逃げる様に反転した。
ワイバーンが追って来た。
アリスは右に大きく旋回した。
再びウィンドボール攻撃。
またもや相殺された。
怒り増幅で追って来るワイバーン
アリスは確信した。
釣り上げた、と。
アリスは本来のコースに戻った。
そして速度を緩めた。
ここからが肝心なのだ。
手が届くようで届かない様に距離を調節しつつ、逃げた。
否、誘導した。
目的地が見えてきた。
ジイラール教団が構える修行道場。
小さな盆地の中央にあり、巨大で高い外壁に囲われていた。
丘の上の一番大きな建物が道場で、
それを囲む建物群は関連の宗教施設と宿泊施設だ。
知らぬ人は開拓村か中継地と思うだろうが、
ここは世情名高い暗殺教団の拠点であった。
アリスはワイバーンの怒りに火を注ぐ事にした。
急反転し、火槍・ファイアスピアの一撃。
これまでの攻撃はただのお遊び。
今度は手傷を負わせるのが目的。
ワイバーンは風魔法で相殺しようとするが、簡単に貫通を許す。
頬を抉る傷。
狙い通り。
アリスはほくそ笑んだ。
ワイバーンはそれでも怯まない。
猪突猛進の勢いで追って来た。
アリスにはワイバーンの頭が沸騰しているかの様に見えた。
アリスはワイバーンを引き連れて一直線に修行道場を目指した。
そして手前にて急降下。
屋根全体に向けて風槍・ウィンドスピアを連射した。
これがランクAの本気。
次々に穴を開けた。
計九つの穴。
その一つにアリスは飛び込んだ。
考えも無しにワイバーンも追随した。
その大きな身体で穴を通り抜けられる訳がない。
急降下の勢いと、自重でもって屋根自体を壊した。
ワイバーン自身の悲鳴と崩壊する屋根の轟音。
砕かれた屋根の瓦礫とワイバーンの体重が階下天井に圧し掛かった。
頑丈に建てられた五階建てが揺れ震えた。
いち早く脱出したアリスの機体は無傷。
速度を維持しながら、大きく反転して上空へ上がった。
そこへ先に転移し、高々度で待機していた仲間達が合流して来た。
『アリス、上手いじゃん』
『ワイバーンの新しい活用法ね』
『でも本当、えぐいよね』
口々に褒めそやす。
アリスは得意満面。
『でしょう、でしょう、褒めて、もっともっと褒めて』
これを提案した妖精が呟く。
『これがアリスの活用法なのね』
眼下で道場が二つに割れた。
左右に雪崩る。
居合わせた教団の者達も巻き込まれた筈だが、
その悲鳴は轟音に掻き消されて全く聞こえない。
崩れ落ちる瓦礫が粉塵を発生させた。
一帯を霧状に覆う。
茶色い霧が惨状を隠した。
周囲の建物から人々が姿を現した。
まるで餌に群がる蟻。
粉塵を吸わぬ様に周囲を取り囲む。
アリス達は連中を鑑定した。
何れも教団の職員ばかり。
教義や布教に関わる司教や司祭は少なく事務系や職人系が多い。
おそらく司教や司祭は道場に居たのであろう。
『アリス、大物がいないわね」』
確かに教皇や大司教がいない。
彼らまで都合よく道場に居合わせたとは思えない。
アリスは思い出した。
イマン・ホーンの肩書は、巫だった。
対になるのは覡。
巫覡。
女が巫で男が覡。
『巫と覡を探してちょうだい』
と、粉塵の中に魔波が出現した。
考えられるは一つしかない。
それが一方に向けて強烈な雄叫び。
風魔法混じりなので、その威力で一角の粉塵を吹き飛ばした。
ワイバーンが生き残っていた。
瓦礫の真っ只中で仁王立ち。
粉塵が気に食わぬのだろう。
周囲に向けて数回雄叫び。
それでもって全ての粉塵を掻き消した。
慌てたのは周囲の者達。
形相を変えて逃げて行く。
その様、散る雲蚊の如し。
建物に戻る者、外壁の方へ走る者、人それぞれ。
暫しすると、驚いた事に再び現場に駆け戻って来る者達がいた。
彼等彼女等は斧を持っていた。
斧を肩に担ぎ、ワイバーンを目指していた。
アリスは鑑定した。
職業、ジイラール教団職員、
その中の役職は女は巫、男は覡。
これが暗殺教団の暗殺者達なのだろう。
暗殺者達は一瞬たりとも怯まない。
足を緩める事なくワイバーンに挑む。
一人が正面から跳んだ。
身体強化済みのようで、ワイバーンの顔の高さ。
一撃を入れようとするが、風魔法で相殺され、弾き返された。
が、それは牽制であった。
その隙にもう一人が尻尾の先に一撃を入れた。
喰い込む。
「ギャーオー」
ワイバーンが正直に悲鳴した。
三人目が傷付いた箇所に二撃目を加えた。
それで断ち切った。
尻尾の先が宙に舞う。
「ヴギャー、ギギャー」
ワイバーンが喚きながら忙しなく四つ足や翼を動かす。
痛みに耐え切れぬらしい。
だが、飛ぶ気配はない。
ここまでの一連の騒ぎで消耗しているのだろう。