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金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

白銀の翼(四面楚歌)124

2012-03-29 20:51:24 | Weblog
 二本足で突進して来る熊の目が笑っていた。
ルドルフの細身の身体を見下しているらしい。
「それで受け止められるのか」と。
 ルドルフにも意地があった。
左肩を前に出して半身となり、睨み据えて待ち構えた。
そこに、「ドドーン」と熊のぶちかまし。
 熊が左肩から体当たりを喰らわして来た。
左と左の勝負。
ルドルフは押されるも耐えた。
そして素早く反撃。
右拳を熊の脇腹に突き入れた。
深々と入る感触。
何本かの骨を砕いた筈だ。
 熊も反撃。
脇腹を痛めながらも右前脚の爪で、ルドルフの背中を引っ掻いた。
その鋭さは凶器そのもの。
 あまりの痛みにルドルフは悲鳴を漏らし、熊から身体を離した。
大きく後方へ跳び退り、体勢を整えた。
背中から血が噴き出る嫌な感触。
尻までもが濡れてきた。
 弾痕の穴なら小さい上に細いので治癒の力で弾を弾きだし、
傷口も僅かの時間で塞いでしまう。
ところが刃物や動物の鋭い牙や爪の傷跡だと、
皮膚が大きく切り裂かれるわけで、
治癒に手間がかかってしまう。
しかも状況によっては大量に血を失うことにも。
 獣化すれば治癒の力も倍加するが、あいにく今は吸血鬼との戦いで、
獣化するに必要なエネルギーを失っていた。
満杯までの充填には今暫くの時間を要した。
悪い事に、血を大量に失えば、それだけ時間のロスも出る。
 熊は脇腹の何本かの骨を失ったが、
出血が止まらないルドルフの方が圧倒的に不利だ。
それは相手方も承知のようで、包囲している猿達が陽気に笑う。
 熊の姿勢が良くなってきた。
どうやら奴も治癒の力を備えているらしい。
これまで戦ってきた連中とは勝手が違った。
厄介な相手を敵に回したものだ。
 ルドルフは戦いを一時中断することにした。
このまま戦いを続ければ敗北は必死。
なんとしても、それだけは避けなければならない。
逃げるのではない。態勢を整えるのだ。
 決断すると早い。
素早く踵を返し、後ろも見ずに駆けた。
追ってくる気配。
それでも熊には追い付かれないと思っていた。
ところが予想せぬ事態に。
猿達が併走を始めたのだ。
右に四匹、左に四匹。
木の上だけが得意の猿と思っていたら違った。
悠々とした走力。
様子に余裕すらも感じられた。
 猿達は時折、前方を塞いで邪魔をした。
熊の為に遅れを生じさせようと図ったのかも知れない。
その度にルドルフは猿達を避けて、コースを変えざるを得なかった。
 出血が弱まった。
ようやく治癒の力が効いてきたらしい。

「殺気が溢れているな」とヒイラギ。
 結界の入り口から悲鳴のように溢れ出てくるのだ。
毬子の傍を通り過ぎる者達は誰一人として気付かない。
汗を拭いながら緩い坂道を下って行く。
あるいは上って行く。
「伯父さんが来たよ」とサクラ。
 思いもかけないことだ。
振り返ると、交通量が多いにも関わらず、覆面パトカーが歩道に沿って停車し、
後部座席から伯父が下りてきた。
亡き母の兄、毬谷紘一。
 ボディガードのように左右を固めるのは秘書の榊英二と、
牟礼寺の住職だった田原龍一。
二人とも武芸で鍛えた身体をサマースーツで隠しているが、
その身ごなし、眼光の鋭さまでは隠しようがない。
「伯父様」と毬子が驚けば、
「こんなところで何してる」と伯父は怪訝な顔。
「私は気晴らしに散歩。伯父様は」
「警視庁に挨拶に立ち寄った。
今はその帰りだ。
反対車線を走っていたら、お前が見えたからUターンをしてもらった」
「あの覆面パトカーはどうしたの」
 伯父は口の端を歪めた。
「東京に滞在している間は運転手付きで貸してくれるそうだ。
好意は嬉しいが、まるで見張られてるみたいでな」
 田原龍一が不審顔で辺りを見回した。
「妙な気配がする」




消費税増税のお話です。
民主党はワイワイガヤガヤと党内手続きをしておりましたが、
ついに、「年度末に間に合わせよう」として、
例の、「口だけ番長」の誉れ高い前原サンが、
「一任を取り付けた」として議論を打ち切りました。
さながら昔の自民党の党内手続きのようです。
 まあ、それは置いといて、大事なのは増税分を払う側の痛みです。
困るのは大企業に納入する業者です。
現在でも多数の業者が、相手方に消費税分を請求できずに、
しようがなく自分達で被っています。
正面切って請求すると、
「中国から輸入するか」とか、
「他に安いところを探すか」と暗に脅されるからです。
これでは怖くて請求が出来ません。
 納入業者苛めの実体は、つい先頃、「ザ・ダイソー」でも発覚しました。
支払うべき代金の、2~5%の「歩引き」を下請け業者に要請し、
業者178社に飲ませたのです。
減額総額は2億7900万円。
まあ、似たような話は昔からあります。
大企業の収益源の一つが納入品の強圧的な値切りであり、
人件費の削減なのは常識です。
 今回の増税が決まれば納入業者は大変です。
今でも苛められているのに、さらに上乗せです。
大丈夫でしょうか。
日本を今日まで支えてきた下町の中小企業。
下町ロケットを飛ばす体力を削るのでしょうか。




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白銀の翼(四面楚歌)123

2012-03-25 09:36:47 | Weblog
 ルドルフは今日は朝から探索者が現れないので不審に思った。
用心に用心を重ねて森の中を移動したのだが、
その途中、一度として遭遇しなかったのだ。
遠くに気配すらも感じ取れなかった。
どうしたのだろう。
諦めたのか。
それとも他の手を考えたのだろうか。
 それでもルドルフは警戒だけは怠らない。
慎重に歩を進めた。
 この異世界の森に住む生き物は以外と種類が多い。
小さな蝶や蜻蛉、栗鼠や雀、兎に梟、蛇、大きいのでは熊も見かけた。
もっとも彼等はルドルフに気付くと威嚇一つせずに迂回行動をとった。
自分達とは別の世界の種と本能的に分かるのだろう。
 ルドルフは、
この異世界からの脱出方法を考えたのだが、良い案が思い浮かばない。
長い事生きてきて初めての事態に大いに戸惑う。
経験が無いから対処法が講じられない。
それに腕時計の針を信じれば、明日は約束の三日目。
クララやアンネと落ち合わねばならない。
解決策は、・・・。
 頭上でガサゴソと音がした。
見上げると木々の枝に猿の群れ。
十四、五匹はいるだろうか。
木の実を毟り取り、忙しなげに喰っていた。
その群れのボス格と目が合うが、これまた威嚇をしてこない。
完全にそっぽを向かれた。
 突然、藪から子鹿が顔を出した。
どうやら群れからはぐれたらしい。
ルドルフに怯えながら、左右を見、地面に残った臭跡を嗅ぐ。
 その様子にルドルフは空腹を覚えた。
ここに迷い込んでから何も食べていない。
無意識に子鹿に食指が動いた。
次の瞬間には身体が跳んでいた。
理性よりも野生というか、反射神経なのかも知れない。
 子鹿の前に着地すると顎を蹴り上げ、意識朦朧とするところを狙い、
首根っこを両手で掴み、藪から引っこ抜いた。
 とどめを刺そうとした寸前、周辺の空気が一変した。
ルドルフを無視していた動物達が騒ぎ始めたのだ。
それぞれが断末魔のような悲鳴を上げ、身を震わせた。
 ルドルフは自分の失敗に気付いた。
が、遅かった。
上空の四方に探索者の気配が忽然と現れた。
まるで予期していたかのような素早さ。
滑るような飛行で襲来するではないか。
 探索者の個性が違うのか、毛色が違うのか、気配に大小強弱があった。
単純に数にすると九つ。
それらが上空に到ると忽然と気配を消した。
 代わって頭上で木の実を食っていた猿達の様子が変わった。
唸り声を上げて次々と飛び降りて来た。
全部で八匹。
歯を剥き出しにしてルドルフを威嚇しながら、用意周到に包囲した。
八つの個体の気配は猿そのものとは違っていた。
探索者の気配に似ていた。
どうやら乗り移り。
 ルドルフは子鹿を手放し、八匹の猿を観察した。
一番大きいので百五十センチ前後。
一番小さいので百センチ足らず。
特徴は足に比べ、異様に手が長い事だ。
 しかし、探索者の数は九つだったはず。
もう一つは、・・・。
 直ぐに分かった。
荒々しい気配が急接近して来るのだ。
木々を蹴倒さんばかりの勢いで、それが現れた。
それが後ろ足で立ち上がった。
ゆうにニメートルを超える熊。
激しく咆えて威嚇し、短い後ろ足でバランス良く歩く。
まるで二足歩行の熊ではないか。
これが九つ目の探索者だ。
 どうやら八匹の猿は逃がさぬように包囲するのが役目のようで、
近付いてはこない。
代わって熊が内側に入って来た。
間合いと判断したのか、そこで足を止めた。
荒々しい気配を消してルドルフを見遣った。
形は野生の熊だが、立ち姿勢は冷徹な武人。
侮れない。
 気付いたら、「ドドーン」と胸に激しい衝撃を受けた。
ルドルフは油断していた分けでは無いが、
間境を一気に跳んで来た熊の体当たりに弾き飛ばされてしまった。
少年のままの体重では熊の圧力には抗せない。
五メートルほど後方に背中から落ちた。
 それでも素早く立ち上がって身構えた。
胸と背中に痛みが走るが構ってはいられない。
熊が駆け寄って来るからだ。
力には力で応じようと腰を落とした。
熊を受け止めるつもりでいた。




今朝のYouTubeは「BUMP OF CHICKEN」。
ブログに煮詰まったときには、「天体観測」を聞いています。
良いですよね。ボーカルは当然ですが、詩もリズムも。
古い細胞が剥がれ落ちて、新しい自分になったような気分に、・・・。
 他には、
「オンリーロンリーグローリー」
「ハルジオン」
「真っ赤な空を見ただろう」
「ホリディ」
「乗車権」
・・・。
彼等には佳い曲が、考えさせられる曲が多いですよね。
 それに、
「ポンデライオン(ダンデライオン)」のFlashとか、
「グングニル」Flash、
「車輪の詩 手書きPV」は秀逸の仕上がりです。
 最近は、「レム」を聞き込んでいます。
身につまされる詩です。
才能って怖いですよね。
汚れちまった自分を自覚させられます。




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白銀の翼(四面楚歌)122

2012-03-22 20:57:28 | Weblog
 半蔵門に近付くにしたがい警備の警官が多くなった。
バンパイアの皇居侵入を阻止しようというのだろう。
 毬子は慎重に気配を探りながら歩いた。
結界を自力で見つけようとしたのだ。
だがなかなか探し当てられない。
気付いた時には半蔵門を過ぎ、下り坂に差し掛かろうとしていた。
ヒイラギに弱音を吐いた。
「私には見つけられそうにないわ。
アンタはどうなの」
「それらしいのを見つけた。
左手、皇居側を向いてみな」
 深い堀を挟んで皇居が見えた。
「皇居の中にあるの」
「いや、堀の上」
 毬子は立ち止まった。
ヒイラギの言葉を素直に受け入れ、宙を見据えた。
目で見るのではない。
気配を読むのだ。
 腹式呼吸で丹田に気を集め、心を静めた。
こういうところで祖父の剣の教えが役に立つとは。
無心となり、全身で感応した。
微かに異な気配。
気の流れを読み解いた。
堀の上、この道路と同じ高さに何かがあった。
サクラ言うところの、「空間の窪地」なのであろうか。
そこで気が入り乱れているのだ。
まるで色の違う気の絡み合い。
 サクラが言う。
「あそこに結界の入り口があるの。
普段はああじゃないんだけど、誰かが力尽くで押し入ったみたいで、
空間に歪みが生じてしまったわ」
「でも、あそこまで人は跳べないわ」
「確かにそうよね。だとするし、・・・」
 思いつくのは一つ。
「バンパイアかしら」
「うん、・・・。
バンパイアだとしたら、ただのバンパイアではないわね。
バンパイアの類に気を読み解く能力なんてない筈だもの」
 毬子は疑問を口にした。
「バンパイアって、そもそも何者なの」
「大雑把には吸血鬼から狼男、天狗、鬼の類よ。
獣に近い血筋よね。
それが気を読み解くとなると、精霊の類という事になるわ。
そうそう毬子、アンタも大雑把には精霊の類よ」
 大雑把な推測を聞かされ、毬子は言葉を失う。
精霊の類にされてしまうとは。
 ヒイラギが鼻で笑う。
「生身のマリが精霊だって。それじゃ大雑把過ぎるだろう」
 サクラは反論しない。
クスクスと笑うだけ。
本気なのか、冗談なのか。
だが我慢しきれずに口を開いた。
「精霊とは言ってないわ。
精霊の類よ、間違えないで。
生身のマリと、霊であるヒイラギの二人でワンセット。
意味が分かるでしょう。
アンタ達はイレギュラーな存在なのよ」




民主党の消費税増税論議が妙な方向に進んでいます。
ワザとなのか、本気なのか。
本気だとしたら国民を馬鹿にしてるでしょう。
 付則18条の景気弾力条項とか、
付則28条の2016年度に再増税法案提出とか、
・・・。
これって国民の意識とは大きく乖離しています。
 国民が望むのは、「破れちまった財布をどうにかしろ」です。
たとえ増税しても、入れる財布が破れたままでは増税の効果がありません。
 今必要なのは一般会計、特別会計の徹底的な洗い直しです。
優先順位をつけるのです。
待ったなしの財税赤字なのだから、優先順位の低いものは削るべきです。
 ついでに高給官僚を解雇する必要があります。
解雇が無理なら福島の原発に出向させましょう。
彼等に確たる国家観はありません。
あるのは所属する省の省益であり、部局の局益です。
天下り。天下っては丸投げ、渡り、・・・。
百害あって一利なし。
 高級官僚はいりません。
低給で働く公務員だけで充分です。
読み書き、足し算引き算が出来れば充分です。
専門知識が必要なら民間に委託すれば良いんです。
 話しが少し逸れました。
とにかく必要なのは歳出の洗い直しと組み換え、それに伴う削減です。
並行して歳入を増やす必要があります。
増税のみで国家が運営出来るとしたら大間違いです。
規制を緩和し、新たな成長産業にシフトしなければ、日本に未来はありません。




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白銀の翼(四面楚歌)121

2012-03-18 09:20:25 | Weblog
 森に身を潜めたルドルフは巧みに気配を消した。
その森の上に探索者が辿り着いた。
ここまでと同様にジグザグな飛行で、下方の気配を探り続けていた。
何者なのか気になるが、木漏れ日差す隙間から覗こうものなら、
直ちに見つかってしまうだろう。
今は用心が一番。
なにしろ相手の正体が分からない。
誘惑に狩られても無視を続けた。
 取り敢えずは難を避けた。
探索者が森の上を過ぎて行き、遠方へ去ったのを確かめ、身動ぎをした。
ホッと一息。
まだ体力は完全に回復していない。
 身を寄せた大樹に登る事にした。
太い枝を選び、手を掛け足を掛け、慎重に上を目指した。
やがて他の木々を見下ろす位置にまで登った。
やけに日差しが眩しい。
下は見渡す限りの森。
上は青い空。
この高さからでも遠景に高層ビルが全く見えない。
それに空気があまりに新鮮過ぎる。
これではまるで生まれ立てではないか。
 ルドルフは、「ここは異世界」と思い当たった。
自分や吸血鬼が存在するように、現実は不可思議に塗れていた。
全てが全て説明出来る事柄ばかりではない。
未だ解明出来ぬ事柄が一杯溢れていた。
並みの者達はそれを見て、見ぬ振りをして生きてゆく。
 どうすれば此所から抜け出られるのか。
クララやアンネと約束があった。
「不測の事態に巻き込まれたら、
あの場所で三日に一度、昼間の二時に落ち合いましょう」と。
腕時計は午前十一時を過ぎていた。
 昨夜の合流はならなかったので、次は明後日だ。
それに間に合わせなければならない。
見知らぬ東洋の地で、異世界に迷い込むとは、・・・。
 アンネから、「携帯を持ってみない」と聞かれた事があった。
「管理されてるみたいで嫌だ」と断ったのだが、今ではそれが悔やまれた。
これでは連絡の取りようがない。
 しかしアンネには感心させられた。
ドイツ貴族の血を引きながらも、
ユダヤ財閥であるオールマン家の頂点に上り詰めた。
たとえオールマンの直系といえど、苦難の連続ではなかったろうか。
数多の妨害やサボタージュがあった筈だ。
それを女手一つで乗り切るとは。
もしかして、マンション前で車を爆発炎上させたように、
オールマン家でも荒療治を行なったのか。
無いとは言えない。
あの気性だから。

 サクラが現れた。
今では話しかけられる前に気配で読み取れた。
「ねえサクラ、昨日の侵入者はどうなったの」
 サクラは嬉しそうに答えた。
「全く見つからないそうよ。
老いた精霊では無理かもね」
「精霊も老いるの」
「そうよ。
千年、二千年単位だけど、ある程度の年輪を重ねると消滅するのよ。
中には千年も持たないのがいるけどね」
「ヒイラギはどうなの」
「こいつは難しいのよ。
怨霊でも生霊でも無いからね。
でもアンタが先に死ぬから心配はいらないわ」
 黙っていたヒイラギが高々と笑う。
「はっはっは、・・・。
マリ、お前は一体何を心配しているんだ」
「私より先に死なれると困るなと思って」
「おいおい、お前が先に死んだら俺はどうなるんだ」
「さあ」と毬子は首を捻るしかなかった。
 サクラも同様。
「お前のような霊を見るのは初めてだから、何とも言えないね」
 毬子は話題を変えた。
「ねえサクラ、結界の入り口を見てみたいわ」
「俺も」とヒイラギも同調した。
 サクラは呆れた。
「物好きね。
近くまでは行けるけど中には入れないわよ」
 そういう事から毬子は出かける事になった。
行き先は結界入り口があるという皇居の辺り。
生憎サクラは電車に乗った事がないので最寄りの駅が分からなかった。
なので遠回りして東京駅で降りる事にした。
 ここも驚く程に巡邏の警官が多い。
バンパイア騒ぎが原因だ。
警視庁の全警官が動員されたとか。
駅のロータリーには明らかに機動隊と分かる車輌が駐車し、
盾を持った隊員が警備にあたっていた。
 駅正面から大手町に出たところでサクラが笑う。
「ゴメンゴメン、こちらじゃ正反対だわね」
 だとすると半蔵門辺りなのだろう。
「いいわよ、散歩がてら歩くから」
 夏の暑い日差しの下、オフィス街は人、人で溢れていた。
ビジネスマンも多いが、一般人も負けずに目に付いた。
この街に食事や買い物をする為の施設が充実しているせいだろう。
みんながみんな、
バンパイアの危険性より仕事や享楽を優先しているとしか思えない。
 目の前の皇居を右に迂回した。
こちら回りが日陰が多いと判断したのだ。
 竹橋から北の丸、代官町へと歩いた。
 この暑い中を走っている者達がいた。
近くの大学か、ないしは消防署の者達だろう。
気勢を上げて集団で駆けて行く。
この者達もバンパイア騒ぎはどこ吹く風。
 ヒイラギが呆れた。
「あれだけニュースで騒いでいるのに、この街の連中は馬鹿ばかりか」
 サクラが擁護した。
「あらゆる艱難辛苦を乗り越える国民性なのよ」
「分けの分からん事を」とヒイラギが嘲笑う。
 毬子は二人の会話を無視した。
この二人はいつもこうなのだ。
何かにつけて口論をする。
だが決して仲違いはしない。
まるで姉弟のよう。
 汗を拭き拭き坂道を登ると、少し下った先の左手に公園が見えた。
千鳥ヶ淵公園だ。
その公園に沿って左折すると半蔵門が近い。




日曜の朝は四時前に起きて小説ブログを書いています。
前の晩に頭で捏ねくり回して、早起きして文章に纏めるのです。
 いつもだと無音なのですが、
今朝は何故かビリーバンバンが聞きたくなりました。
勿論YouTubeで。
当然ながら一曲目は「また君に恋してる」。
良いですね。
最高です。
 YouTubeにはビリーバンバンの曲が割とアップされてました。
思わず聞き惚れてしまいました。
「さよならをするために」
「れんげ草」
「琥珀色の日々」
「今は、このまま」
 昔のフォークは良いですね。
詩とメロディーの相乗効果か、私の心に、私に無いものが響き渡ります。
こういう情感のある人になりたかった。







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白銀の翼(四面楚歌)120

2012-03-15 22:23:00 | Weblog
 通称、「辻斬り捜査本部」が「バンパイア対策本部」に名称変更をした。
管理官を含めて指揮系統は変わらない。
ただ大幅に人員が拡充された。
スワットからも長距離狙撃班が合流した。
当然ながら装備品は大口径の狙撃銃。
 大人数となった彼等を収容出来る施設は限られていた。
選ばれたのは、お台場の体育館。
本来は民間企業の施設であったが、業績不振で売りに出ていたのだ。
それを警視庁が一時借り上げる事にした。
 上座の雛壇にお偉方が雁首を揃えていた。
飾りのような連中で、会議に無理してまで参加する必要はないのだが、
今日はお目当てがあり、他の予定を振り替えて集まった。
 体育館フロアには大勢の捜査員がパイプ椅子に腰掛けていた。
およそ五百人ほど。
管内各署より急遽選抜された者達ばかり。
 司会進行はいつものように篠沢警部であった。
無表情で指揮系統を説明し、役職にある者を次々と紹介した。
そして本日最大のイベントに取りかかった。
お偉方もこれを目当てに足を運んで来たのだ。
 フロア各所に大型液晶ディスプレイが設置してある。
それが一斉に映像を映し出した。
公式発表していない昨夜のバンパイア絡みの一部始終であった。
音声こそ不明瞭だが、リアルな迫力で並み居る者達を圧倒した。
一切カットしていない。
ドキュメンタリーとして映画祭に出品すれば、
あらゆる国で賞を獲得するに違いない。。
 暴力団担当が長い強者の刑事も、残虐凄惨な現場に慣れた刑事も、
みんながみんな、ここに呼ばれた事を後悔した。
「これは警察の仕事じゃない」と。
辞退する自由があれば大半がそうしただろう。
 長時間にも関わらず誰一人として席を立たない。
 やがて映像が終わった。
「疲れたろう、少し休憩をいれよう。
十五分の休憩だ。
誰も逃げないように」と篠沢。
 最後にジョークを飛ばしたが、誰も笑わない。
いずれもが無言で喫煙所か自販機のある場所へと向かう。
 子飼いの刑事が篠沢の傍に寄って来た。
「あれを見たあとじゃ、誰も笑えませんよ」
「そうらしいな。みんな顔色が悪かった」
「映像より本物はもっと怖いですけどね」
「お前も逃げたいか」
「出来れば」
 十五分後に液晶ディスプレイに映されたのは金髪の少年。
バンパイアに変貌する前は、あどけない容貌をしていた。
 篠沢が全員を見回した。
「我々が探すのは、この少年だ。
諸君を信用してない分けではないが、
手配写真が流出して、都民に騒がれても困る。
だから手配写真は出せない。
頭に叩き込んで置くように」
 次ぎに映し出されたのは山手線内側の地図。
「我々が奴をバンパイアかどうか確認している間に、奴が散歩していたのは、
この区域全体だ。
ここ山手線内側以外に土地勘はない。
匿っていた連中に再び合流するとなれば、この区域のどこかだ。
合流するにしても、普通の方法ではない筈だ。
今回のような非常事態に備えて、予め何らかの方法が決めてあると思われる。
私は、スパイが仲間と接触する際の約束事が適用されると推測した。
例えば、三日後の何時何分にどこどこ、・・・。
それが駄目だったら次は二日後の何時何分にどこどこ、・・・。
あるいは毎日何時何分にどこどこ、・・・。
とにかくだ、我々はその一瞬に賭ける。
奴を捕獲する。
手傷を負わせてでも捕獲する」
 一人がおずおずと質問した。
「銃撃するわけですよね」
「そうだ。
我々に支給されている拳銃では役に立たない。
捜査員は発見したら連絡するだけで良い。
後は長距離狙撃班が担う」
 その言葉で一般捜査員の間の空気が和らいだ。
重責が課されずにホッとしたらしい。




NHKニュースで「ワンピース」の話題をやってました。
主人公は海賊ルフィ。
ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を巡る物語。
 私は思うのです。
期待を裏切って欲しいと。
例えば大秘宝が、女子の着るワンピースであって欲しいとか。
たんなる、一片のピースであり、全てを集めないと願いは叶わないとか。
・・・。





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白銀の翼(四面楚歌)119

2012-03-11 09:46:12 | Weblog
 ルドルフは小鳥の囀りで目覚めた。
顔を軽く持ち上げて周囲を窺った。
右手方向に薄明かりが差していた。
どうやら朝日の昇る時刻らしい。
 自分の片手を持ち上げた。
獣化が解け、少年の手に戻っていた。
 ここは草地のようで、感触が背中には心地好い。
ただ残念なのは背中が朝露で濡れていること。
 昨夜は、・・・。
獣化している間の記憶は、薄らぼんやりとしか思い出せない。
人ではなくなるし、記憶に留めたいとも思わない。
なにしろ獣化は本来の自分ではないのだから。
 覚えているのは吸血鬼の最後の一人を殺して、闇雲に駆け回ったこと。
そして、どこをどう走ったかまでは分からないが、気付くと罠に落ちていた。
前方に見えた高台に跳んだ筈なのに、着地した瞬間、地盤が崩れ、
深かい穴に落下してしまったのだ。
まるで獣を捕らえる狩猟用に掘った穴ではないか。
しかし落下の途中で認識を改めた。
「狩猟用にしては深すぎる。これでは奈落の底ではないか」と。
なにしろ永遠と思えるくらいに落下を続けたのだ。
 時間の経過は分からないが、背中に激しい衝撃が走った。
どうやらここが穴の底であるらしい。
こういう痛みを、「死ぬような痛み」と表現するのかも知れない。
人であれ、獣であれ、普通の生き物であれば確実に死んでいただろう。
 必死の思いで両足で立った。
足下を見回すと、そこは穴ではなかった。
広い草地に落ちてしまったらしい。
いつもだと夜目が効くのだが、激しい痛みで遠くまでは見通せない。
全身にギシギシと軋みが走ったが休んではいられない。
新手の敵に備えて移動を開始した。
走れないので、必死で歩いた。
かなり歩いたところで限界に達してしまった。
膝から崩れ、横倒しとなった。
同時に疲れも出たのか、気も失った。
・・・。
 仰向けのまま、周囲の気配を探った。
包囲はされてない。
自分に危害を加えそうな奴もいない。
ゆっくりと身体の具合を確かめながら起き上がった。
節々が痛い。
筋肉痛もする。
それでも何とか歩けた。
これも自らに備わった治癒の力なのであろう。
永遠と思える高さから落ちてコレでは、自分を神と勘違いしそうだ。
 ここは起伏に富んだ草地であった。
登っては下り、下っては登る。
自分に驚いて鳥が飛び立ち、小さな獣が逃げて行く。
 やがて森に到った。
鬱蒼としていた。
化物でも棲んでいそうな雰囲気だ。
 ルドルフは違和感を覚えた。
ここには都会の汚れた空気がない。
人の声がしない。
車の騒音もしない。
そして、高層建築物が全く見えない。
 都会の公園にしては広すぎる。
改めて空気を嗅ぐ。
人の、人工物の臭いが一切混じっていない。
 ルドルフは踵を返し、近い丘に足を運んだ。
じっくりと周囲を見回した。
鳥獣の気配はするが、人の気配が全くしない。
ここは、・・・。
考え倦ね、その場に腰を落とした。
 感応した。
朝日が登るのに合せ、何かが迫って来るのだ。
それも遠い上空から。
飛行機は一機も飛んでいない。
すると、・・・。
 ルドルフは考えるよりも動くのが早い。
危険を予期し、森へ駆け込んだ。
大きな樹木の陰に身を潜め、気配を断つ。
それは長く繰り返された吸血鬼等との戦いで習い覚えたもの。
暴れもするが、時として必要なら恥も外聞もなく身を潜めもした。
それが役立った。
 上空の何者かは、こちらに一直線には向かってこない。
ジグザグな動きで下方の気配を探りながら飛んでいた。
 人なれば、おそらくは術者。
彼等の高位にある者のごく一部ではあるが、
幽体離脱でもって生霊を浮遊させる技を駆使出来る者がいた。




震災から1年を迎えますが、今もって34万人余が避難生活をしています。
山積みされた瓦礫は推定2250万トン余。
迷惑な原発事故も、
政府の収束宣言はありましたが、実質的には収束はしていません。
見込みもつきません。
 非常時にも関わらず復興関連の予算は成立が大幅に遅れました。
これは与党の当事者能力のなさと、野党の何でも政局化にあります。
どこの国の震災と思っているのでしょう。
政治が形骸化しています。
 一刻も早い震災復興の指揮を執る復興庁の発足が望まれましたが、
これも大幅に遅れました。
おまけに本気でないのか、現地の人員は少なめです。
ついでに縦割り行政を残したままなので、
現地では書類仕事が増え、余計煩雑になりました。
被災者の気持は置き去りです。
 現地で復興関連工事を受注できるのは、
書類仕事に慣れた人材を揃えるゼネコンか、
その協力企業が大半ではないでしょうか。
なにしろ現地の土木建築関係企業は津波で人材も機材も、
その多くを失っているのですから、太刀打ちできる分けがありません。
現地で確実に現金が落ちているのは夜の仙台の飲み屋街だけです。
余所から来た外人部隊が飲み歩いているのです。
 復興関連予算には羽根が生えています。
権益、天下り、丸投げで多くが東京に戻るのです。
甘い汁は東京に、東京に。
 それらを覆せるのは政治の力だけなのですが、
議員連中の無関心振りが透けて見えます。
「予算はつけたから後は現地でヨロシク。
僕たちは消費税増税で忙しいから。
ねっ、子供じゃないんだから分かるでしょう」と。
口にこそ出さないものの、態度がありありです。
 国会を移転する必要があります。
福島原発の隣接地に大きな大きなテントを張ってはどうでしょう。
例えば双葉町。
彼等には相応しい場所だと思います。
役立たずの政治家達の中間貯蔵所とするのです。




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白銀の翼(四面楚歌)118

2012-03-08 21:02:46 | Weblog
 毬子は伯父の気持を察して話題を変えた。
「ところで、バンパイアの新しい映像はないの。
今テレビで流れてるのは大分で撮れたものだけよ。
ねえ伯父さん、誰も撮ってないの」
 伯父は躊躇いながらも答えた。
「これは内緒だ、誰にも言ってはいけないよ。
実は警視庁が撮ってる」
「ええっ、・・・。それを流さないの」
「大分の頃よりバージョンアップしてるそうだから、流せないみたいだ。
都民が恐怖で混乱するのを心配してるのじゃないかな」
「だとするとバンパイアになる前の姿も撮っているのよね」
「たぶん。それを確かめに東京へ行くんだ」
 思わず甘えてみた。
「警察庁よね、私も一緒したいな」
「嫌な大人が集まるからマリは駄目だよ」
 伯父との電話が終わるのをヒイラギが待っていた。
「あの伯父さんも得体が知れない」
「そう言わないで。私の大事な伯父さんよ」
「そうだった。
しかし心配なら『風神の剣』を預けなくてもよかったものを」
 不意にサクラが飛び込んで来た。
「おはよう。
嫌なニュースと、良いニュースがあるんだけど、どっちが聞きたい」
 緊迫感のない精霊だ。
なんだかウキウキと弾んでいるようにも。
 ヒイラギが相手しないので毬子が応じた。
「嫌なニュースならテレビでやってるけど」
「そんな世俗的な話しじゃないわ。
私達の世界が大変なの。
結界を破った者がいるの」
「結界とか世界とか、どこの話しなの。意味が分からない」
「私達精霊が集う場所よ。
都内の真ん中に精霊の類が集まる場所を確保し、
人が入れないように結界を張っているの。
これまで人に発見されたことも、人が偶然に立ち入ったこともないわ。
事もあろうに、そこに踏み込んだ野郎がいるの。
誰なのか今捜索中で、大騒ぎしているわ」
「サクラは捜索に加わらないの」
 サクラは言い淀む。
「んー、・・・。
良いニュースはね、結界に侵入された事よ」
 毬子は自分の耳を疑った。
「何言ってるの」
「だからね、嬉しいの。
結界を管理している奴がね、私は嫌いなの。
融通が利かない奴でね、奴が困った顔をしていると私は嬉しいの。
歪んでるわね私」
 本当に歪んでいた。
精霊の癖に仲間が困っているのを喜ぶなんて。
「喧嘩するほどに仲が良いのね」
 聞いたサクラは絶句。
「えっ、・・・。
仲が良い、ですって。
何を、・・・」
 そしてサクラは不意を突くように笑った。
「ハッハッハッ、・・・。
そうかも知れないわね。
マリに言われるとは、ハッハッハ」
 毬子は聞いてみた。
簡単に教えてくれるとは思わないが、興味を覚えた。
精霊達が集う場所とは。
「その結界を張った場所というのは、どこにあるの」
「皇居の辺りよ。
入り口は一箇所しかないんだけど、それを破られたみたいなの」
「皇居の辺りに人が入れない場所があったかしら」
「人の目には触れないようになってるわ。
人の言葉で表現すれば、空間の窪地かしらね」
 毬子は閃いた。
「もしかして侵入したのは、今ニュースのバンパイアということは」
 ようやくサクラはテレビに目を遣った。
「まさかね。
獣同然の奴に結界が破られるとは思わないけど、・・・。
でも、窪地への入り口さえ見つければ、そこまで跳ぶ脚力は充分よね」




ショート ! ショート !

 夜半に目が覚めた。
身体が動かせない。
痺れているような感覚であった。
手も足も、ピクとも動かせない。
当然ながら顔も動かせない。
声も出せない。
何も聞えない。
 これが噂の金縛りなのだろう。
ただ、目だけは見えていた。
仕方なく天井を見上げていると、その天井が薄れてゆく。
そして透明化した。
頭上は満点の星空。
星々が明るく燦めいていた。
 その一角に大きな空飛ぶ物体が現れた。
これまた透明化しているので具体的な姿形は分からない。
目に見えぬ物だが、俺は感覚でそれを認識した。
何とはなしに大雑把な輪郭が分かるのだ。
 物体から三つの人影が出て来た。
体躯は五頭身。
星空を背にしているので輪郭しか分からなかった。
三人は空中を歩いてこちらに向かって来た。
 記憶回路がフル稼働し、あれを思い出した。
俺の後頭部にはファスナーが付いていた。
今までは何の為に付いているのか不思議だったが、ようやく理解した。
このところの俺は頭痛が酷い。
今にも割れそうになる事が日に二度や三度はあった。
だから彼等がメンテナンスに現れたのだ。
 彼等が近付くにしたがい、俺の意識が薄れてゆく。
そして、ついには意識を失う。
 目覚めたのは翌朝。
アラームで起こされた。
ふと思う。
「昨夜の事は夢だったのだろうか」と。
だが今朝は早出の予定。
いつまでも考えてはいられない。
それに頭痛がまた始まった。
モーニングのノイズ。
どうやらメンテナンスは夢だったらしい。
 無理して起き上がって洗面所に向かう。
頭がズキズキとするが、それでもチャチャチャと顔を洗う。
タオルを手に、顔を上げて鏡を見遣った。
と、見知らぬ顔が映っていた。
それも女。
俺、女、・・・。
 昨夜の連中は脳味噌のメンテナンスではなく、身体の交換に来たらしい。





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白銀の翼(四面楚歌)117

2012-03-04 09:08:37 | Weblog
 判断が早い。
他に選択肢が無かったからだろう。
吸血鬼二人は警察を選び、飛ぶようにして突入して来た。
 篠沢と管理官にも選択肢はなかった。
警告射撃などと悠長な時間もなかった。
ただ対象物を狙って引き金を絞るのみ。
 篠沢は右の相手の腹部を狙って二連射。
近距離すぎて外すなどは有り得なかった。
確実に腹部に銃弾が喰い込む筈だと。
ところが吸血鬼は跳躍して射線の上を越えた。
それを銃口で追うようにして三連射。
しかしこれも空振り。
 隣の管理官も同様の状態らしい。
逃げる吸血鬼に向けて必死で連射していた。
何発かは背中に命中した筈なのに、足の速度は落ちない。
 吸血鬼二人が去って行くのに対し、目の前にバンパイアが迫っていた。
慌てて狙いを変えた。
バンパイアは体躯が大きいので狙いが付けやすい。
篠沢はこれまた腹部に二連射。
 バンパイアの動体視力の凄さを思い知らされた。
跳ぶことなくステップでもって躱すのだ。
そして、信じられぬ速度で目の前を通過し、吸血鬼を追って行く。
 篠沢と管理官は後ろ姿のバンパイアに向け、必死で射程を合せた。
幸い周辺に人影は無い。
この銃は口径は小さいものの、その分だけ装弾数が多かった。
撃ち尽くすつもりで引き金を絞り連射した。
 バンパイアも背後からの銃撃には対応出来ぬらしい。
大きな背中に確実に何発も命中した。
ところが、悉くが弾き返されるのだ。
おそらく9㎜パラベラム弾では口径が小さく、
バンパイアの肉厚な体躯に対しては通じないのだろう。
 撃ち尽くして篠沢は深い溜息。
隣を見れば管理官は頭にきたのか、銃を道路に叩き付けた。
「ガシャッ」と。
堅固さも売り物の一つだから、壊れることはないだろう。
 その管理官が篠沢を振り向いた。
「やっぱり狩猟用マグナムだったな」
 思ったよりも明るい。
銃弾を撃ち尽くしてスッキリしたのかも知れない。
 篠沢は自分の銃を仕舞いながら応じた。
「そんなのは警察には常備してませんよ」
 管理官は片頬を緩めた。
状況を楽しんでいるかのような口調。
「しかしなあ、困った。上から指示がこない。これからどうする」
 まったく困っていない。
管理官の本質を見た気がした。
「バンパイアの追跡は不可能なので、現場の保全に努めましょう。
吸血鬼達がゴロゴロ転がっている筈です」
「生き返らないか」
「バンパイアは吸血鬼が蘇らぬように始末した筈です。おそらく」
「おそらく、だな」

 榊毬子は朝のテレビニュースで、昨夜の一連の騒ぎを知った。
外苑に近い246号線での爆発炎上の映像を背景に、
アナウンサーが説明していた。
今は鎮火しているが、昨夜は激しく炎上したそうで、
無関係の車輌や通行人を巻き込んだそうだ。
これにバイパイアが何らかの関係をしているとか。
そしてバンパイアが吸血鬼達と外苑の駐車場で殺し合いに及んだとか。
 祖母、紀子はテレビに釘付けであった。
通いのお手伝い、重子さんが作り置きしてくれた朝食をチンして、
テーブルに並べたが、祖母の視線は動かない。
 ヒイラギもテレビに釘付け。
幸いにもサクラの指導で触手を覚えたので、
触手でもって目の役目を体現出来るのだ。
毬子が忙しく立ち働いても一切文句を言わなくなった。
 祖母か、「酷いわね」と漏らせば、
ヒイラギが、「いつの世になっても人は人を殺すんだな」と。
 そこに電話。
北海道で牧場を営む伯父、毬谷紘一であった。
毬子の毬は、亡き母の願いで実家の毬谷から取ったもの。
そういう経緯から毬子は伯父に実子同然に扱われていた。
「マリ、ニュースを見てるかい」
「ええ。
伯父様は知っていたのでしょう。
バンパイアが東京に棲み着いているって」
「噂だけは。
それで警視庁の一部隊が極秘に捜査していた」
 本当はもっと知っていると思うが、そこまでは突っ込めない。
電話越しだが、拒否する空気が漂って来るのだ。
「伯父様は今北海道なの」
「そうだ。今空港に向かってる。昼には東京に着くだろう。
話しは変わるが、『風神の剣』に異常はないかい」
「最近は触ってないので分からない。
大事な事なの」
 伯父は一拍置いて答えた。
「触ってないなら良かった。
預けたものの心配してたんだ。
これからも決して触っちゃいけないよ」
 伯父がどういう気持で自分に預けたかが分かった。
『風神の剣』に相応しいと思えるのは毬子だけ。
だけど、預けたものの触って欲しくは無い。
相反する二つの気持に揺れているのだ。




震災から1年が経とうというのに、瓦礫処理に目処がついていません。
岩手、宮城の物であっても、放射性物質による汚染が疑われるからです。
政府が、「これは汚染されてないですよ」「これは微量ですよ」と言っても、
これまでの言動から、まったく信用されてないのです。
各地方自治体が、主に市区町村レベルですが、
受け入れを拒否するのは当然です。
 瓦礫処理の発想を変える必要があります。
長い経験と英知に富む老先生が仰有っておられました。
「現地に堤防の基礎として埋め、盛り土すれば」と。
 まず瓦礫を金属類、木材類、コンクリート片等々に区分けします。
そして金属類は売り物に。
木材類、コンクリート片等々は堤防の基礎に。
穴を掘って木材類とコンクリート片を埋め、上に盛り土します。
こうした津波対策の堤防を万里の長城の如く、南は福島から、
北は、出来れば青森まで構築するのです。
最後に堤防に植林すれば、緑の堤防が完成します。
 とにかくこれで現地の雇用も生まれます。
堤防の基礎部分も無償で手に入ります。
万里の長城の如き堤防に、季節折々に花咲く樹木を植えれば、
これはこれで一大観光資源ともなります。
 コンクリートだけの堤防は時代遅れなのです。
今は時代に即した緑の堤防の完成が望まれます。
 まあ中央で妄想しているだけの政治家、官僚の類は、
天下り先とか利権が優先するから、この手の発想は無理ですかね。




小話です。

 夕方の心地好い風が背を擽った。
俺は本名ではなく、与太郎と呼ばれていた。
誰が呼び始めたのか、何が切っ掛けで呼ばれるようになったのか、・・・。
まあ、どうでも良い。
無視されるよりは良い。
 風呂屋を出て、表で女房子供を待っていた。
俺はカラスの行水なので、ものの五分とかからない。
だけど女房子供は長風呂。
そんなに身体が汚いのだろうか。
 二本目のビールを飲み終わった時に女房が出て来た。
もともとが佳い女なのだが、湯上がりだからか肌に艶っぽさが五割増し。
誰に見せても恥ずかしくない。
自慢しても良い女房だ。
 そんな女房を俺は怒鳴りつけた。
「スカートくらい穿いたらどうだ」
 女房は粗忽者で、よく忘れ物をした。
今は上を着ているだけで、下には何も穿いていない。
事態に気付いた女房は、「イヤー」と小さな悲鳴を上げて両手で下を隠した。
 だけどもっと大事なものを忘れていた。
「美保は」と女房に問う。
 五つになる一人娘だ。
 風呂に残して来たらしい。
 その美保が表に出て来た。
「パパ、ママ」と。
 小走りで駆け寄って来るのだが、この子も母親似の粗忽者。
女房同様に上は着ているが、下には何も穿いていない。
途中でスッテンコロリと転んでしまった。
それも大股開きで。
 行き合わせた外人サンが、たどたどしい発音で言う。
「ケガナイヨ」
「美保、大丈夫」と女房が両手を広げて助けに走った。
 怪我を心配したのだ。
 その女房も、信じられぬ事にスッテンコロリと転んだ。
これまた大股開き。
 外人サンが肩を竦めて言う。
「ケガアルヨ」




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白銀の翼(四面楚歌)116

2012-03-01 21:39:28 | Weblog
 鎖から解き放たれた犬のように多数のパトカー、
覆面パトカーが外苑に突入して行く。
広い外苑だけに出入り口は多数有った。
それらを次々と確保し、新たな入苑を禁止した。
 余った車輌がスピーカーで呼びかけて回る。
「暴力団抗争が勃発しました。大変危険です。
入苑している皆さんは信濃駅方向か、
青山一丁目方向へ急いで避難してください」
 篠沢警部は指揮車を、
国立競技場と神宮第二球場の間にある周回道路に移動させた。
バンパイア達が戦っている駐車場は日本青年館の陰になっているが、
距離的には目と鼻の先であった。
 篠沢はモニターで現場の様子を確認した。
包囲するも攻め手に事欠く吸血鬼達をバンパイアが嬲るように殺していた。
殴りつけ、蹴り倒し、拾い上げたナイフで胸部を切開し、心臓を掴み出すのだ。
いつの間にやら無事に二本足で立っているのは三人だけになった。
これまで頑固に逃げることなく踏み留まっていた彼等だが、
こうまで仲間が斃されては、心境に変化が起こっても不思議ではない。
互いに顔を見合わせた。
それぞれに躊躇いの色。
 篠沢は、「暫く外で煙草を吸ってます」と言い残し、
管理官の返事も聞かずに表に出た。
外は実に騒がしい。
部下達がスピーカーで煩いくらいに警告して回っていた。
移動する入苑者達の足音や悲鳴も聞えた。
何人かが指揮車の脇を駆けて行く。
 篠沢はバンパイア達の居る方角を見た。
前方の日本青年館が視界の邪魔をしているが、
緊張した空気を肌にビシバシと感じた。
猛暑にも関わらず、事態の寒さに汗一つかかない。
緊張感だけが増してゆく。
 管理官も外に出て来た。
「シノさん、一人で立ち向かうつもりかい」
 読まれていた。
「人手不足でしょう。
それに、こうまで力の差を見せつけられたら、
部下達にバンパイア捕獲は命ぜられません」
 煙草ではなく拳銃を取りだし、カチャカチャと手早く点検した。
H&K P2000。
使用する弾丸は9㎜パラベラム弾。
射撃訓練に充分な時間を割けない警官にとって9㎜パラベラム弾は、
射撃の際に反動が弱いことが利点で、各県警も正式拳銃として採用していた。
 篠沢は管理官を振り返った。
「こいつでバンパイアを相手にするんですが、ひ弱ですよね」
「蚊が象を刺すようなもんだろうね。
できれば狩猟用のマグナム弾が欲しいところだ」
 それは望むべくもない。
人の相手が警察の主任務だからだ。
 前方に人影が現れた。
二人が必死に駆けて来る。
街灯の明かりに姿が浮かび上がった。
吸血鬼だ。
顔が恐怖で引き攣っていた。
 そして、その後方にバンパイアの姿があった。
ナイフ片手に、余裕の足取りで追って来た。
弄ぶつもりらしい。
 指揮車からモニターを監視していた捜査員が飛び出して来た。
「駐車場からバンパイアが消えました。逃げた吸血鬼を追ったようです」
 篠沢は震えを感じるが、それを部下に見破られてはならない。
無理して大声を上げた。
「ここは私が引き受けた。お前は車輌に戻って全車に告げろ。
民間人の避難を急げ、全力を尽くせと」
 捜査員も吸血鬼とバンパイアに気付いたらしい。
震える声で返事した。
「りょ、了解」と車内に戻った。
 隣を見ると管理官も銃を取りだした。
見かねて篠沢は強い口調で注意した。
「指揮官は貴方ですよ。車輌に戻って下さい」
「そんな時間はないと思うが」
 間近に迫った吸血鬼は一人が篠沢達を睨み、
一人が背中合わせでバンパイアに備えた。
迷っているようだ。
前方に予期せぬ警察が待ち構え、背後にはバンパイア。




泥鰌サンと自民党の谷垣サンの密会が発覚しました。
実りがあったのかどうかは知りませんが、一種の牽制にはなりましたね。
泥鰌サンにとっては消費税増税に反対する勢力に、
「自民党の消費税増税賛成派と組む選択肢もある」と。
そして谷垣サンにとっては、
谷垣総裁では力不足と思う自民党議員に、
「政界再編も選択肢の一つ」と。
今回の密会が実りないものでも、
二、三回と続ければ、瓢箪から駒も有り得ますからね。

 それにしても昨夜のサッカーには驚きました。
相手は主力を欠いたウズベキスタン。
早い話が一軍半。
対して日本は本田がいないだけ、どう見てもフルメンバー。
それで負けるなんて。
つまるところ海外組の疲労と、国内組の準備不足ですね。
そして両組を交えての練習時間があまりにも少ない。
ザッケローニ監督も、
「チームとしてもっと熟成する時間が欲しい」と協会に要求しても良いのでは。
個人技だけで勝ち抜けるチームなら問題はありませんが、
生憎と日本にはチームワークしかありません。
もっと熟成して欲しいものです。
 10チームが出そろいました。
A組からはイラクとヨルダン。
B組からは韓国とレバノン。
C組からはウズベキスタンと日本。
D組からはオーストラリアとオマーン。
E組からはイランとカタール。
ちなみにイラクの監督はジーコ元日本監督で、勝ち点15、
A組一位での進出です。
韓国も勝ち点13でB組一位。 
日本は勝ち点10でC組二位。
どういう組み合わせになるのでしょう。
勝ち抜ける組に入れば良いのですが。
 まぁ、なでしこジャパンもあるし、・・・。




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