風が吹きスカートの裾が煽られた。
榊毬子は慌てた。
左手は鞄で塞がっていたので、右手を裾に伸ばした。
それで何とか事なきを得たが、下校時間だというのに空気は蒸し暑い。
昼間に道路に滞留した熱が太腿の辺りにまで届いた。
これで六月だというから始末に困る。
歩道を歩く毬子に擦寄るかのように、黒塗りの乗用車が近付いてきた。
スピードを緩めて毬子の真横で停車すると、一人の男を降ろして離れて行った。
降り立ったのは長身の男。
牟礼寺の住職にして、例の辻斬り犯、田原龍一であった。
今日も奇麗に頭を剃り上げていた。
毬子を認めると軽くお辞儀をした。
「お久しぶり、毬子さん」
「この前と同じパターンの現れ方ね。またカラオケかしら」
「いや、今日は歩きながら」と毬子の隣に来た。
そして家路方向に肩を並べた。
「どうしたの」
「毬谷様が色々と忙しいので、私が代理で来た」
それはそうだろう。
なにしろ、あの大分でのバンパイア騒ぎ。
雨に降られたにも関わらず、何台ものカメラが全ての場面を撮っていて、
それが日本のみならず世界に発信されたのだ。
尋常ではない存在に戦慄が走った。
国境を越え、人種、宗教の壁をも越え、全世界が沸騰した。
それから四日目である。
世界のマスコミが大分に特派員を送り込んで来た。
メイド・イン・ウサ、牟礼寺の所有者である毬谷紘一が注目されぬわけがない。
取材が殺到した。
それに応じたのは今日の昼だった。
毬子は昼休みだったので、一部始終をワンセグで見た。
伯父は相変わらずの上物のスーツに身を包み、弁護士同席で会見した。
その口から出たのは、
「申し訳ないが、皆さんの期待には答えられそうもありません。
全てを知るのは祖父と祖父の世代の人間達だけです。
私達世代は何も聞かされていません。
ただ、あの土地を百年は守れ、という遺言に従っているだけです」。
あとは丁寧に質問に応じた。
もっとも、実のある答えは一切出なかった。
最初から最後まで、「知りません」「聞いてません」で押し通したからだ。
そして最後に、
「残念ながら、石棺を管理する私達の仕事は失敗に終わりました。
精一杯努力はしたのですが、・・・。
申し訳ありません」と頭を下げた。
低頭したのは一瞬だった。
次の瞬間には頭を上げ、正面を正視して堂々と言葉を続けた。
「バンパイアが復活しましたが、これから先は私達の仕事ではありません。
石棺を開ける事を決定した方々の責任です。
当方は手を引かせて頂きます。あとは宜しく」と締めくくった。
毬子は龍一に問う。
「伯父様は本当に手を引くつもりなの」
龍一は皮肉そうな視線を返した。
「君はどう思う」
「無責任な人じゃないわ」
「確かに。
でもここは、みんなの関心を引き剥がす必要がある」
「そういう事か」
「そういう事」
毬子は足を止め、龍一の方を振り向いた。
「貴方達が抜き身でバンパイアに襲い掛かる場面をテレビで見たけど、
不法所持で捕まらなかったの」
「あぁ、あれは模造刀だ」
どう考えても龍一達があの場面で、
模造刀でバンパイアに襲い掛かるわけがない。
「ふうん、模造刀という事にしたんだ」
「そう、立派な模造刀」
伯父が裏から手を回したのだろう。
「そういう事か」と毬子。話題を変えた。
「それで、ここには何の用なの」
「毬谷様からの伝言だ。
一つ、
バンパイアには関心を持つな。
二つ。
風神の剣を抜くな」
「何よ、それ」
龍一が笑顔になった。
「分かるだろう、君を巻き込みたくないんだよ」
毬子は少し考えた。
伯父が電話すれば事足りる伝言ではないか。
それを他人に頼むとは。
導き出された答えは。
「事態が悪化しているのね」と龍一を睨む。
世間の知らぬところで、世間に知られてはならぬ事態が進行中らしい。
龍一の口の端が歪む。
それまで黙っていたヒイラギが言う。
「面白いじゃないか。
トラブル大歓迎。バイオレンス ~♪、バイオレンス ~♪」
サクラがヒイラギを嘲笑う。
「すっかり現代に馴染んでるよ、この馬鹿者が」
「二人とも脳天気ね」と毬子。
三人の遣り取りは龍一には聞えない。
それでも毬子の表情の変化から、危惧を抱いたらしい。
「何を企んでいるんだ」
毬子は、「何も」と答えるので精一杯。
脳内でヒイラギとサクラが言い合っていて喧しいのだ。
項羽は、いつものように岩の上に寝そべっていた。
日差しが強いので片手を翳し、雲の流れを見ていた。
もう十日も晴天続き。
戦には絶好の日和なのだが、包囲する劉邦は攻撃の気配すら見せない。
足音が近付いて来た。
虞姫に違いない。
項羽は上半身を起こして彼女を待ち受けた。
虞姫は今日も豊かな胸を強調する衣服を身に纏い、項羽の隣に腰を下ろした。
香しい薫りに鼻を擽られた。
項羽の左手に自分の右手を重ね合わせ、虞姫が尋ねた。
「毎日雲を見ていて飽きないの」
「お前と同じで、毎日見ていても飽きない」
虞姫が照れ笑いで、重ねた手を解き、項羽の肩を平手で打った。
★
民主党の代表選が、・・・。
震災復興には重い腰なのに、自分達の事となると超早いです。
ある意味、偉いです。
ここまで自分達本意で行動できるなんて、普通の人には出来ません。
軽蔑の極みです。
本命、海江田万里。
バブル期に花咲かせた経済評論家でしたよね。
計算に強いから経産省大臣に起用された、かも。
経産省の操り人形、そんな印象しかありません。
二番手、野田佳彦。
太った増税論者。
こちらは財務省の操り人形。
彼もそんな印象ですね。
上の二人の議員としての実績が分かりません。
何をやってのけたのでしょう。
比べて菅サンは、カイワレ大根を食べましたよね。
たしかサラダにして食べましたよね。
三番手、前原誠司。
この人は突っ込みどころ満載です。
始まりは、偽メール事件での対応の悪さ。
近場では国交省大臣として、
八ッ場ダムの中止を明言したものの、言いっぱなし。
JAL問題にしても、モタモタ。
外相となるや、尖閣列島での中国漁船衝突事件で、問題を複雑化させただけ。
そして極めつけは外国人の違法献金問題。
外相を辞任したものの、みんなを納得させられませんでした。
何も起こらなければ説明しなかったのでしょうね、たぶん。
でも代表選が、・・・。
慌てて昨日、詳細を明らかにしました。
代表選の為に厭々説明したとしか思えません。
この人、菅サンに似て口先男にしか見えません。
残りの方は省略です。
代表選で「親小沢」「反小沢」がクローズアップされています。
でも、それは矮小化でしかありません。
今の問題は震災復興、原発対応、増税問題です。
大丈夫ですかね。こんな人達に国を託して。
でも代わりが見当たりません。
なら、クジ引きで代表を決めたらどうでしょう。
たしか・・・昔、室町の足利将軍様の時代だったかな、
クジ引きで将軍様を決めましたよね。
・・・。
いいか、それでも。
★
ランキングです。
クリックするだけ。
(クリック詐欺ではありません。ランキング先に飛ぶだけです)

榊毬子は慌てた。
左手は鞄で塞がっていたので、右手を裾に伸ばした。
それで何とか事なきを得たが、下校時間だというのに空気は蒸し暑い。
昼間に道路に滞留した熱が太腿の辺りにまで届いた。
これで六月だというから始末に困る。
歩道を歩く毬子に擦寄るかのように、黒塗りの乗用車が近付いてきた。
スピードを緩めて毬子の真横で停車すると、一人の男を降ろして離れて行った。
降り立ったのは長身の男。
牟礼寺の住職にして、例の辻斬り犯、田原龍一であった。
今日も奇麗に頭を剃り上げていた。
毬子を認めると軽くお辞儀をした。
「お久しぶり、毬子さん」
「この前と同じパターンの現れ方ね。またカラオケかしら」
「いや、今日は歩きながら」と毬子の隣に来た。
そして家路方向に肩を並べた。
「どうしたの」
「毬谷様が色々と忙しいので、私が代理で来た」
それはそうだろう。
なにしろ、あの大分でのバンパイア騒ぎ。
雨に降られたにも関わらず、何台ものカメラが全ての場面を撮っていて、
それが日本のみならず世界に発信されたのだ。
尋常ではない存在に戦慄が走った。
国境を越え、人種、宗教の壁をも越え、全世界が沸騰した。
それから四日目である。
世界のマスコミが大分に特派員を送り込んで来た。
メイド・イン・ウサ、牟礼寺の所有者である毬谷紘一が注目されぬわけがない。
取材が殺到した。
それに応じたのは今日の昼だった。
毬子は昼休みだったので、一部始終をワンセグで見た。
伯父は相変わらずの上物のスーツに身を包み、弁護士同席で会見した。
その口から出たのは、
「申し訳ないが、皆さんの期待には答えられそうもありません。
全てを知るのは祖父と祖父の世代の人間達だけです。
私達世代は何も聞かされていません。
ただ、あの土地を百年は守れ、という遺言に従っているだけです」。
あとは丁寧に質問に応じた。
もっとも、実のある答えは一切出なかった。
最初から最後まで、「知りません」「聞いてません」で押し通したからだ。
そして最後に、
「残念ながら、石棺を管理する私達の仕事は失敗に終わりました。
精一杯努力はしたのですが、・・・。
申し訳ありません」と頭を下げた。
低頭したのは一瞬だった。
次の瞬間には頭を上げ、正面を正視して堂々と言葉を続けた。
「バンパイアが復活しましたが、これから先は私達の仕事ではありません。
石棺を開ける事を決定した方々の責任です。
当方は手を引かせて頂きます。あとは宜しく」と締めくくった。
毬子は龍一に問う。
「伯父様は本当に手を引くつもりなの」
龍一は皮肉そうな視線を返した。
「君はどう思う」
「無責任な人じゃないわ」
「確かに。
でもここは、みんなの関心を引き剥がす必要がある」
「そういう事か」
「そういう事」
毬子は足を止め、龍一の方を振り向いた。
「貴方達が抜き身でバンパイアに襲い掛かる場面をテレビで見たけど、
不法所持で捕まらなかったの」
「あぁ、あれは模造刀だ」
どう考えても龍一達があの場面で、
模造刀でバンパイアに襲い掛かるわけがない。
「ふうん、模造刀という事にしたんだ」
「そう、立派な模造刀」
伯父が裏から手を回したのだろう。
「そういう事か」と毬子。話題を変えた。
「それで、ここには何の用なの」
「毬谷様からの伝言だ。
一つ、
バンパイアには関心を持つな。
二つ。
風神の剣を抜くな」
「何よ、それ」
龍一が笑顔になった。
「分かるだろう、君を巻き込みたくないんだよ」
毬子は少し考えた。
伯父が電話すれば事足りる伝言ではないか。
それを他人に頼むとは。
導き出された答えは。
「事態が悪化しているのね」と龍一を睨む。
世間の知らぬところで、世間に知られてはならぬ事態が進行中らしい。
龍一の口の端が歪む。
それまで黙っていたヒイラギが言う。
「面白いじゃないか。
トラブル大歓迎。バイオレンス ~♪、バイオレンス ~♪」
サクラがヒイラギを嘲笑う。
「すっかり現代に馴染んでるよ、この馬鹿者が」
「二人とも脳天気ね」と毬子。
三人の遣り取りは龍一には聞えない。
それでも毬子の表情の変化から、危惧を抱いたらしい。
「何を企んでいるんだ」
毬子は、「何も」と答えるので精一杯。
脳内でヒイラギとサクラが言い合っていて喧しいのだ。
項羽は、いつものように岩の上に寝そべっていた。
日差しが強いので片手を翳し、雲の流れを見ていた。
もう十日も晴天続き。
戦には絶好の日和なのだが、包囲する劉邦は攻撃の気配すら見せない。
足音が近付いて来た。
虞姫に違いない。
項羽は上半身を起こして彼女を待ち受けた。
虞姫は今日も豊かな胸を強調する衣服を身に纏い、項羽の隣に腰を下ろした。
香しい薫りに鼻を擽られた。
項羽の左手に自分の右手を重ね合わせ、虞姫が尋ねた。
「毎日雲を見ていて飽きないの」
「お前と同じで、毎日見ていても飽きない」
虞姫が照れ笑いで、重ねた手を解き、項羽の肩を平手で打った。
★
民主党の代表選が、・・・。
震災復興には重い腰なのに、自分達の事となると超早いです。
ある意味、偉いです。
ここまで自分達本意で行動できるなんて、普通の人には出来ません。
軽蔑の極みです。
本命、海江田万里。
バブル期に花咲かせた経済評論家でしたよね。
計算に強いから経産省大臣に起用された、かも。
経産省の操り人形、そんな印象しかありません。
二番手、野田佳彦。
太った増税論者。
こちらは財務省の操り人形。
彼もそんな印象ですね。
上の二人の議員としての実績が分かりません。
何をやってのけたのでしょう。
比べて菅サンは、カイワレ大根を食べましたよね。
たしかサラダにして食べましたよね。
三番手、前原誠司。
この人は突っ込みどころ満載です。
始まりは、偽メール事件での対応の悪さ。
近場では国交省大臣として、
八ッ場ダムの中止を明言したものの、言いっぱなし。
JAL問題にしても、モタモタ。
外相となるや、尖閣列島での中国漁船衝突事件で、問題を複雑化させただけ。
そして極めつけは外国人の違法献金問題。
外相を辞任したものの、みんなを納得させられませんでした。
何も起こらなければ説明しなかったのでしょうね、たぶん。
でも代表選が、・・・。
慌てて昨日、詳細を明らかにしました。
代表選の為に厭々説明したとしか思えません。
この人、菅サンに似て口先男にしか見えません。
残りの方は省略です。
代表選で「親小沢」「反小沢」がクローズアップされています。
でも、それは矮小化でしかありません。
今の問題は震災復興、原発対応、増税問題です。
大丈夫ですかね。こんな人達に国を託して。
でも代わりが見当たりません。
なら、クジ引きで代表を決めたらどうでしょう。
たしか・・・昔、室町の足利将軍様の時代だったかな、
クジ引きで将軍様を決めましたよね。
・・・。
いいか、それでも。
★
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