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金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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昨日今日明日あさって。(帰省)134

2019-10-27 08:13:02 | Weblog
 父はメイドにカールを呼ぶように申しつけると、俺を見た。
「カールが来るまでお茶でも飲んでようか」
 残ったメイドがみんなのお茶を入れ直した。
それを横目に俺はお茶請けのお菓子に手を伸ばした。
尾張名物の煎餅、おんでこ煎だ。
重苦しいとしか思えない醤油味の濡れ煎餅。
これがお茶に合う。

 姿が見えないのを良いことにアリスが現れ、
俺が手にした煎餅に取り付いた。
舌でペロッペロッ。
『なにこれ、癖になりそうな酷い旨み』
『これが大人の味だよ』
『なによそれ、お子様が』

 二枚、三枚と食べているとカールが部屋に入って来た。
笑みを浮かべて俺に目礼し、父達のソファーの後ろに立った。
 何だか、おかしな光景だ。
この中で爵位持ちはカール一人。
その彼が立ちんぼ。
まあ、今の肩書きが冒険者だから良いのか。

 お茶で一息入れた父が顔を上げた。
優しい目色で俺を見た。
「王室から異例な通達があった。
・・・。
お前に子爵位を授けるそうだ。
子爵様だ」
 耳を疑った。
聞き間違い。
そうだ、聞き間違いに違いない。
「はあー、・・・子爵様って聞こえましたけど」
 父は苦笑い。
「だよな。
そう思うような。
でも、そうなんだ。
子爵様だ、ダンタルニャン」
 聞き間違いではなかった。
子爵様。
意味が分からない。
 国王が授けるのが公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の五爵位。
その下に騎士爵、上大夫爵、下大夫爵と三爵位があるが、
そちらは地方の寄親である伯爵が授けるもの。
 何の功績もないのに、いきなり子爵はないだろう。
それに、そもそも最下位爵の下大夫爵ですらない。
爵位の階段の階には程遠い平民の男児。
どこかで手違いが生じたに違いない。
そう俺は確信した。
「これは何かの間違いです。
事務手続きの際に誰かがミスったんでしょう」

 父に促されてカールが口を開いた。
「爵位おめでとうございます。
これは事実です。
私の実家の細川子爵家に確認したので間違いありません」
「ほんとうに」疑いの眼でカールを見た。
「ほんとうですよ」カールは目を逸らさない。
「何の功績もないよ」
「ご心配なく、これは王室の都合です」きっぱり言い切った。
「都合・・・」
「国都の貴族街で焼き討ちがあったそうですね」
「外郭北区画のエリオス佐藤子爵邸」
「そうです、それに関して色々と噂が飛び交っています。
知ってますか」
「無責任な噂ばかりだけど、
中で一つだけ聞き逃せないのがバイロン神崎子爵かな」
 真実味のある噂を聞いた。
始まりは宮中での一件。
バイロン神崎子爵がエリオス佐藤子爵に刃傷沙汰、斬り付けた。
佐藤子爵は命は助かったものの、
後遺症で寝たきり生活をせざるを得なくなった。
加害者の神崎子爵は爵位と領地が没取され、当人は断頭台送り。
それで一件は落着した筈だった。
忘れた頃に起きたのが今回の焼き討ち。
多くの者が神崎子爵家遺族や遺臣の関与を疑った。

 アリスが腹を抱えて笑う。
『お子ちゃま貴族って、人材不足なの~』
 俺は無視した。

 俺はカールに尋ねた。
「もしかして、佐藤子爵家と神崎子爵家が関係するの」
「おおありです。
最初に佐藤子爵家はこちらの佐藤家とは無関係と申し上げます。
あちらもジョナサン佐藤の血統と謳っていますが、
傍系にしても信憑性は甚だ疑わしいものです。
・・・。
あちらの佐藤子爵家も分家を率いていて、
それなりに貴族として権勢を誇っています。
でもこの度の焼き討ちで、その本家の佐藤子爵家が滅びました。
そうなると誰が子爵家を継ぐのか、そこが問題になります」
 幾つかの分家が後継者として名乗りを上げた。
それに疑問を持ったのが姦しい貴族雀達。
暇を持て余しているのか、口を極めて罵った。
 刃傷沙汰から焼き討ちまでの一連の騒ぎに対し、
分家は総じて貴族らしい対応をしていない。
弓馬の家であるジョナサン佐藤を謳うのであれば、
神崎子爵家の遺族や遺臣を警戒し、
襲撃に備えるのが当然ではないかと。
 実際、本家も分家も何もしていなかった。
無警戒で過ごしていたところに焼き討ちを喰らった恰好だ。
それらの事情をカールが丁寧に説明してくれた。

 俺は釈然としない。
「それが今回の爵位に繋がるの」
「はい。
貴族には貴族としての権利があれば義務もあります、が、
それよりなにより大切なのは恥ずかしくない行為です。
・・・。
今回は見過ごせないそうで、王室としては一罰百戒で望むそうです」
「それはどういう」
「ジョナサン佐藤の血統を謳う貴族間を相互に結ばせ、
弓馬の家柄として一纏めにし、立て直すそうです」
 先が見えてきた。
我が家がジョナサン佐藤の直系であることは知られている。
しかし、他の家が直系ではなく傍系を謳うのであれば、
それは覆しようがないのも事実。
なにしろ千年を超えた血統。
この間に長い戦乱があったので、どこで、なにが、どうなったのか、
誰にも証明の仕様がないのだ。
「もしかして、僕が御神輿に担がれる分け」
「そうです」
「纏め役と言われても、僕、子供だよ」
「ご心配なく。
ダンタルニャン様は何もなさらなくても結構です。
全ては我等、大人にお任せを」
「ねえ、僕である必要があるの。
僕、未成年だよ。
幸い、成人した兄貴が二人がいるんだ。
どちらかに爵位を授けても問題ないでしょう」
 カールに代わって父が答えた。
「上の二人には役目がある。
役目がないのはダンだけだ。
ここは一つ、喜んで受けると良い」

 俺は深い溜め息をついた。
「冒険者になりたかったのに」
 カールが応じた。
「貴族でも冒険者の兼業は可能ですよ。
私のようにね。
他にも大勢いますよ。
貴族の責務を果たせば誰も文句は言いません」
「そうなんだ」
「ええ、領地持ちの貴族、
王宮で文武官として使える宮廷貴族。
私のように貴族街に屋敷を持たず、兼業で稼ぐ野良貴族。
色々ですよ」

昨日今日明日あさって。(帰省)133

2019-10-20 06:17:04 | Weblog
 一際、甲高い笑い声はアリスだった。
『キャッハッハッ・・・。
うけるう~、顔が涎でベチョベチョ』
 念話が外に漏れないか心配になったが、アリスは気にしていない。
『犬に押し倒されて喜んでる、どんだけ馬鹿なの』と付け加える始末。
 少し複雑・・・。
五郎がマウントを取りながら視線を左右に走らせた。
アリスの気配に勘付いたのだろう。
鼻で臭いを嗅ぐ仕草を始めた。
まずい、これは不味い。
俺は慌てて五郎の鼻を撫でまわし、気を削いだ。

 兄二人が五郎から助け出してくれた。
やれやれだ。
ところが、二人は俺を両側から抱え上げると、
そのまま屋敷に入って行く。
「下ろしてよ」頼むのだが、無視された。
 これも兄弟のお約束か、抵抗を諦めた。
厚い絨毯が敷かれた広間で家族が待っていた。
重厚そうなテーブルを真ん中に、上座のソファーには父と母。
左のソファーには祖父と祖母。
俺は下座のソファーに投げるように落とされた。
俺は狩られた獲物か、はっ。
兄二人は笑いながら右のソファーに腰を下ろした。
 家族以外に二人いた。
メイド二人が両親の背後に控えていた。

 俺は立ち上がって、みんなを見回した。
「ただいま戻りました」軽く会釈した。
 挨拶もそこそこ、矢継ぎ早に質問が繰り出された。
特に母と祖母が熱心であった。
「美味しい物、食べてるの」
「友達はできたの」
「洗濯してるの」
「勉強には付いて行けるの」
 それに一つひとつ丁寧に答える俺。
面倒臭いが、これも家族であってこそ。
女達の勢いに押されたのか、男達はお手上げ状態。
苦笑いを浮かべて聞き入っていた。
「冒険者に登録したそうね」
「危ない事はしてないでしょね」
「女の子達と組んでるそうね、どんな子達なの」
 父は長話に待ち草臥れたのか、
メイドにお茶とお茶請けを持って来させた。
「採取してる薬草って、高く買ってもらえるの」
「貴族様のお姫様も仲間にしたそうね」

 きりがないので俺は質問の隙間を突いた。
立ち上がって兄二人に正対した。
「トーマス兄さん、カイル兄さん、成人の祝いです」
 二人は年子なので、今年の正月明けに成人の儀が行われた。
生憎、俺は国都にいたので参加していない。
そこで帰省に合わせて祝いの品を用意した。
当然、錬金魔法で造った鋼製の逸品だ。
それをズタ袋から取り出してテーブルの上に置いた。
短剣二振り。
 ケイト達のナイフは他の者達に嫉妬されぬように、外装を質素にした。
でも兄達のは意味合いが違う。
貴族に嫉妬されては困るが、流石は佐藤家と言わせ、
仲間内で一目置かれる必要がある。
刀身部分だけでなく鞘、柄、鍔にも力を入れた。

 兄二人は短剣と俺を見比べた。
「これは立派だな」
「いいのか、俺達が貰っても」
 俺は何でもなさそうに答えた。
「言ったでしょう。
パーティメンバーの三人は商家の娘さんだって。
その伝手で安く買えるんです」嘘だけど。
「喜んで貰っておきなさい」父の言葉で兄達がようやく手を伸ばした。
 長兄が選んだのは黒系の短剣、残ったグレー系を次兄が手にした。
二人は剣帯に下げると短剣を抜いた。
軽く振り回し、納得する仕草で刀身を立てて見入った。
兄弟だからか、その仕草はそっくりだった。

 俺は祖母を見た。
「お祖母様、これを」
 化粧品の積み合わせをテーブルに出した。
ダンジョンで鋳造した硬貨で買い求めたものだ。
幾らでも鋳造できるので価格は無視できる。
でも人目を引くのは下策なので、平民の富裕層向けの品にした。
 祖母は喜色満面。
「ありがとう」手にするや、箱を開けた。
 
 祖父が羨ましそうに隣を見ていた。
そんな祖父に声をかけた。
「お爺様にも有ります」
 小さな壺酒の詰め合わせをテーブルに出した。
これも平民の富裕層向けの品。
それを見て微笑む祖父に説明した。
「国都で評判の薬用酒の詰め合わせです」
 途端、顔を歪める祖父。
「苦いのか」
「店主の話では、癖になる苦さだそうです」
 隣の祖母が嬉しそうに頷いた。
「長生きしてもらわなきゃね」
「まだ尻に敷くつもりか、もう勘弁してくれよ」

 母が今か今かと待ち構えていた。
「母上にはこれです」
 テーブルに化粧品の詰め合わせを出した。
母がお祖母様の物と見比べた。
外装が全く違うので、首を捻り、俺を見遣った。
だから俺は言った。
「化粧品なんて、どれがどうか分からないから、
違う店でも同じ様な物を買ってみたんだ」
「分からないか、男の子だからそうよね」母が納得した。

 最後なったのは父。
こちらも期待に満ち溢れていた。
「父上にはこれです」
 錬金魔法で造った鋼製の長剣を取り出した。
これも短剣と同じ様に刀身から鞘、柄、鍔まで力を込めた逸品。
佐藤家の家長に相応しいものにした。
 父は手にすると剣帯に下げて長剣を抜いた。
兄達と同じ様に軽く振り回し、刀身を立てて繁々と見た。
ふむふむと呟き、「これは鋼か」と問う。
「はい」
「兄達のもそうだろう」
「はい」
「この辺りでは鋼の剣は滅多にお目にかかれない。よく買えたな」
「国都では、ありふれてますからね」
 父は俺をジッと見た。
「無理してないか」
 俺は子供らしく頭を搔いた。
「薬草の採取をしてると、不思議な事に魔物によく遭遇するんです。
その度に討伐してるので、大人のパーティ並みに稼いでいます」
 父の目が鋭くなった。
「遭遇じゃなく、誘い出しているんじゃないのか」
 見透かされた。
だからと言って認める分けには行かない。
「違いますよ。
国都の周辺は魔物が溢れてるんです。
採取してると、よく魔物が現れるんです。
無茶な事は一つもしていません。
それに女の子達の守り役の大人がサポートしてくれています」
「守り役・・・」
「はい。
三人は元国軍の魔法使い。
一人は貴族の剣士です」
「・・・そうか」腕を組み、視線を上に向けた。
 俺は言葉を重ねた。
「そうです、大丈夫です」
「ふむ、そうか。
女の子達に怪我をさせるんじゃないぞ」
「はい、危ない時は逃げます」
「よしよし、・・・それもだが、改めてお前に話がある」
 その言葉で室内の空気が一変した。
隣の母が背筋を伸ばした。
祖父や祖母、二人の兄も姿勢を正した。
あらかじめ俺以外の、みんなは聞かされてる様子。

昨日今日明日あさって。(帰省)132

2019-10-12 06:38:23 | Weblog
 村の入り口に看板が立てられていた。
俺はアリスに説明した。
『ここから村に入るよ』
『はあー、立派な看板だこと』
『知られてない村だから、ここまでしないと分かってもらえないんだよ』
 アリスが溜め息混じりで応じた。
『・・・田舎なのね』
 確かに田舎だ。
でも恥ずかしいとは思わない。
『このまま街道を進むと三河大湿原と言う所に出る。
珍しい獣がいっぱいいて、アリスは楽しめると思うよ』
『珍しい獣って』
『見てのお楽しみ』
『魔物なら魔卵が取れるから楽しめるけど、獣じゃ無駄足でしょう』
『普通の獣じゃないよ。
あの辺りは魔素が濃いから、魔物が生まれ易いみたいなんだよ。
でも大きく育つ魔物はいない。どうしてだと思う』
『・・・もしかして、育つ前に獣に喰い殺されるの』食い付いてきた。
『当たり。
獣が魔物の幼体を餌にしてるんだよ。
迷わないんだったら、今から行ってきても良いよ』
『強い獣みたいね、面白そう。
でも後にする。
ダンの家族を検分してからにするわ』
 検分ときた。
アリス、お前は何様だ。

 看板の所で右に折れた。
すると道路が一新されていた。
道路幅が広げられ、しっかり踏み固められていた。
雑草とて生えていない。
半年の間に村で道普請を行ったのだろう。
 少し進むと見慣れない建物が見えて来た。
煉瓦造りの広い平屋。
見た感じ、村の入り口の番屋か。
何やら違和感。
 違和感の正体に気付いた。
他の村や町が外壁で守られているのに対し、
戸倉村だけは木の柵すらも設置していなかった。
一帯の魔素が少ないせいで魔物が生まれないからだ。
偶にだが、他所から魔物が流れて来る事もあるが、
村の外周を警戒している獣人達が駆逐しているので、
村そのものは至って平和。
なのに番屋。
この半年の間に何かがあったのだろうか。

 番屋の前に立哨らしき人影。
俺は脳内モニターでズームアップした。
軽武装の兵士が二人。
一人は見覚えはないが、もう一人は知っていた。
村人だ。
 俺が近付いても二人が警戒する様子はない。
村人の方が俺の顔を見て、嬉しそうに声を上げた。
「ダンタルニャン様ではありませんか、お帰りなさい」
 声が聞こえたのだろう、番屋の中から数人が飛び出して来た。
軽武装をしているのが三人。
非武装の村人が一人。
顔見知りの子供が三人。
みんなが俺を歓迎してくれた。
 俺は馬から降りて軽く会釈した。
「お久しぶりです。
ところで、番屋があるけど、何かあったの」
「最近、村を訪れる商人や旅人が増えたのに紛れて、
怪しい動きをする者がいるんですよ。
何かあっては遅いので、その対策として番屋が三つ建てられました。
ここと、漁村と、その間にある新しい集落、その三つに置かれて、
定期的に巡回もしています」
 外から来る人が増えるのは良い事と思っていたが、
そう単純には喜べないようだ。

 非武装の村人が俺が乗ってきた馬の手綱を受け取った。
「村長に放牧場で預かるように申しつけられています」
 都合が良すぎる。
俺の日程から推測して待機していたのか。
疑問に子供三人のうちの一人が教えてくれた。
「カール様の読みですよ」
 獣人の娘、ケイトが俺に微笑む。
その瞬間、風が吹き、帽子の飾りの極楽鳥の羽根が揺れた。
ケイトは俺より二つ上。
彼女の後ろには俺と同年齢のブレットとデニスがいた。
 村人と馬が遠ざかるが、
俺は気にせずに足を止めて子供三人と相対した。
肩に袈裟懸けしているズタ袋を示して、頭を下げた。
「これをプレゼントしてくれて有り難う」
 幼年学校に入学した際、
この三人が小遣いを出し合ってカールから買い上げ、
俺にプレゼントしてくれたズタ袋タイプのアイテムバッグ。
とても子供の小遣い程度では買い上げられる物ではないが、
相談されたカールが気遣って格安で譲ったそうだ。
 気まずそうな表情の三人に俺は笑顔を向けた。
「半年前は色々と擦れ違いがあったけど、そこは忘れよう。
昔の事なんだから」
 ケイトが代表して言う。
「本当にごめんね。
あの時はダンタルニャンが別人に見えたから」
 魔物との遭遇戦が強烈だったのだろう。
「しかたないよ、俺もビックリだったから」
 まあ、あの時の俺の戦い振りは大人をも越えていた。
力を見せすぎた。

 実家が見えて来たところで俺は三人を振り返った。
「そうそう、三人にもお土産がある」
 ズタ袋から鞘付きのナイフ、三本を取り出してそれぞれに渡した。
受け取った三人は剣帯に下げると、さっそく抜いて繁々と検分した。
最初にケイトが首を傾げた。
「もしかして、これ鋼」
 鉄のナイフよりも高価と言いたいのだろう。
「心配しないでいいよ。
カールから聞いているだろう。
冒険者に登録したって。
それで稼いで買ったんだ。
それに国都だから、尾張よりも安く買える」
 実際は錬金魔法で造り出した物なので実費はゼロ。
そこは子供達、予想通り価格よりも冒険者話しに食い付いてきた。

 誰かが知らせたのだろう。
実家の前で兄二人が待ち構えていた。
六つ年上のトーマス。
五つ年上のカイル。
 二人はダンとは違い十一才から領都の学校で学んでいた。
トーマスは今年から士官学校の一年生。
カイルは幼年学校の五年生。
 半年ぶりではあるが、二人は身体が一回り大きく成っていた。
そんな身体で俺をハグする気満々なのが丸分かり。
弄ばれるのも弟の宿命と諦めていたら、門から黒い影が飛び出して来た。
 ペットの犬・五郎だ。
甘えるような声を上げ、勢い良く俺に飛び掛かって来た。
半年前なら押し倒されていただろう。
でも今は熟れた身体強化がある。
即座にスキルを始動すれば万全の体勢で五郎を受け止められる。
・・・。
 お約束のように五郎に押し倒されてみた。
すると五郎が嬉しそうに俺の顔を舐め回す。
・・・ベトベト。
兄達の笑い声が心地良い。



★★★☆☆☆★★★

 無事に退院しました。
手術は、つつがなく終えたようです。
ただ、ごめんなさい。
この台風・・・。
退院のお土産のように付いて来ていますが、
私とは無関係です。
たぶん・・・。

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