モーニングは他とは違っていた。
冒険者ギルドの併設のカフェなので、まず量から違っていた。
焼き肉大盛り。
大人向けの焼き肉大盛りなのだ。
最初は閉口したが、慣れとは恐ろしいもので、
今ではペロリと完食出来るようになった。
これにトースト二枚、スープ、ゆで卵、ドリンク付き。
運ばれて来たモーニングを口に運んでいると、
キャロルが呆れるように言う。
「そんな量をよく朝から食べられるわね。
これ以上育ってどうするつもり」
三人は自宅で朝食を食べて来たようで、
手元にはジュースしか置かれていない。
「学校の食堂のモーニングに比べ、ちょっと多いくらいだよ」
マーリンに含み笑いで尋ねられた。
「今日は何の肉」
俺は舌触りで確認した。
「たぶん・・・、定番のガゼローンかな」
国都の周辺は狐の生息域で、それから枝分かれした魔物。
ガゼローンはEクラス。
他にも狐から枝分かれした種は多い。
例えばDクラスのガゼミゼル。Cクラスにはガゼラージュ。
その三種は俺達が昨年暮れの大晦日に遭遇した魔物でもあった。
ガゼローンは国都の人々には珍しくもない魔物なので、
肉は低価格で売買されていた。
「味付けはどう」
「良いんじゃないかな。屑肉だけど、無難に口に入れられる」
キャロルが切れ気味に言う。
「私の質問に答えていない。
これ以上育ってどうするつもり。
枯れ木にでもなるつもりなの」
今の俺の体軀は痩身に近い。
幾ら食べても余分な肉が付いてこないので、
このままだと骨と皮だけになってしまいそう。
「だからちょっとでも肉を付けようと、頑張って食べてるんじゃないか」
「もっと筋肉を付けなさいよ」
「ええっ、今の時期、筋肉は付けないよ」
「どうして」
「育つ時期に筋肉を付けすぎると、
伸びようとする骨を阻害するだけで何の益もないからだよ」
「えっ・・・、そうなの。
筋肉を付けすぎちゃ駄目なの」
「たぶん駄目だと思う。たぶんだけどね。
村一番の筋肉自慢の人は背が低かった。二番目も」
「それは・・・」キャロルが愛くるしい目を見開いた。
俺は前世で耳にした説を分かり易く口にした。
「人間はね、赤ちゃんからすくすく、
縦横平均に大きく育つんじゃない、と思うんだ。
肉が付いて横に丸くなる時期、骨がスクスク上に伸びる時期、
この二つの時期を交互に繰り返している、と思うんだ。
だから僕は筋肉だけは、鍛えすぎないようにしてきたんだ」
キャロルが幼馴染みの二人を見、
「今の話、聞いたことがある」と尋ねた。
「私は初耳」マーリン。
「私も」モニカ。
俺は三人を見比べた。
「キャロルは二人とは違っているよね」
「何が」
「無責任な言い様になるけど、でも言うよ。
二人に比べてキャロルは動きすぎで、
食べた物全てを消費しているイメージしかないんだ。
たぶん、身体の成長に回す分を残してないんじゃないかな」
マーリンとモニカが顔を見合わせ、
「あってるかも」口を揃え、頷いた。
「そうなの・・・」とキャロル。
「アンタは道場でも一番最後まで残って鍛えているじゃない」モニカ。
「そうそう、朝も自己鍛錬とか言ってるし」マーリン。
俺は話しを締め括った。
「育ちきっていない身体を全力で鍛えたら、故障しか思い浮かばない。
少しは手を抜く事も覚えたら」
「そうなんだ」と溜め息のキャロル。
元気を無くしたキャロルを俺は励ました。
「試しに、これから手を抜いてみたらどう。
まだまだ十才、育ち盛りの真っ最中じゃないか。
手遅れじゃないと思うよ」
モーニングを終えた頃合い、ギルドを見ると人が少なくなっていた。
多くの大人の冒険者は依頼を請負、現場に向かったらしい。
俺達も立ち上がった。
先ず掲示板で最新の魔物情報を見た。
平地に出没する魔物はFクラスかEクラス、たまにDクラス。
山中だとCクラスにBクラス。
この一月、AクラスやSクラスの魔物は確認されていないそうだ。
次に依頼を見た。
俺達が請けられる薬草採取は、大半が年間を通した常時依頼。
それとは別に期限付き依頼が張り出されている事も、ままあった。
希な病気が発生した場合などだ。
急ぎの仕事なので見返りの報酬も多い。
それだから掲示板の確認は必要な手順なのだ。
背の高い俺が掲示板の上の方を読み、下をキャロルが読む。
その様子をマーリンとモニカが眺めている、といった図だ。
「急ぎの依頼はなし」と俺が言うと、「こちらもなし」とキャロル。
俺達は受付カウンターに一声掛けてから出掛けた。
東門から外に出た。
内も外も、相も変わらず行き交う人々で溢れていた。
街道から逸れて間道を行く。
間道も人が多い。
行商人、農夫、旅人等々、流石は人も物も集める国都。
俺達は途中で枝道を選んだ。
★
ランキングの入り口です。
(クリック詐欺ではありません。ランキング先に飛ぶだけです)
★
触れる必要はありません。
ただの飾りです。
冒険者ギルドの併設のカフェなので、まず量から違っていた。
焼き肉大盛り。
大人向けの焼き肉大盛りなのだ。
最初は閉口したが、慣れとは恐ろしいもので、
今ではペロリと完食出来るようになった。
これにトースト二枚、スープ、ゆで卵、ドリンク付き。
運ばれて来たモーニングを口に運んでいると、
キャロルが呆れるように言う。
「そんな量をよく朝から食べられるわね。
これ以上育ってどうするつもり」
三人は自宅で朝食を食べて来たようで、
手元にはジュースしか置かれていない。
「学校の食堂のモーニングに比べ、ちょっと多いくらいだよ」
マーリンに含み笑いで尋ねられた。
「今日は何の肉」
俺は舌触りで確認した。
「たぶん・・・、定番のガゼローンかな」
国都の周辺は狐の生息域で、それから枝分かれした魔物。
ガゼローンはEクラス。
他にも狐から枝分かれした種は多い。
例えばDクラスのガゼミゼル。Cクラスにはガゼラージュ。
その三種は俺達が昨年暮れの大晦日に遭遇した魔物でもあった。
ガゼローンは国都の人々には珍しくもない魔物なので、
肉は低価格で売買されていた。
「味付けはどう」
「良いんじゃないかな。屑肉だけど、無難に口に入れられる」
キャロルが切れ気味に言う。
「私の質問に答えていない。
これ以上育ってどうするつもり。
枯れ木にでもなるつもりなの」
今の俺の体軀は痩身に近い。
幾ら食べても余分な肉が付いてこないので、
このままだと骨と皮だけになってしまいそう。
「だからちょっとでも肉を付けようと、頑張って食べてるんじゃないか」
「もっと筋肉を付けなさいよ」
「ええっ、今の時期、筋肉は付けないよ」
「どうして」
「育つ時期に筋肉を付けすぎると、
伸びようとする骨を阻害するだけで何の益もないからだよ」
「えっ・・・、そうなの。
筋肉を付けすぎちゃ駄目なの」
「たぶん駄目だと思う。たぶんだけどね。
村一番の筋肉自慢の人は背が低かった。二番目も」
「それは・・・」キャロルが愛くるしい目を見開いた。
俺は前世で耳にした説を分かり易く口にした。
「人間はね、赤ちゃんからすくすく、
縦横平均に大きく育つんじゃない、と思うんだ。
肉が付いて横に丸くなる時期、骨がスクスク上に伸びる時期、
この二つの時期を交互に繰り返している、と思うんだ。
だから僕は筋肉だけは、鍛えすぎないようにしてきたんだ」
キャロルが幼馴染みの二人を見、
「今の話、聞いたことがある」と尋ねた。
「私は初耳」マーリン。
「私も」モニカ。
俺は三人を見比べた。
「キャロルは二人とは違っているよね」
「何が」
「無責任な言い様になるけど、でも言うよ。
二人に比べてキャロルは動きすぎで、
食べた物全てを消費しているイメージしかないんだ。
たぶん、身体の成長に回す分を残してないんじゃないかな」
マーリンとモニカが顔を見合わせ、
「あってるかも」口を揃え、頷いた。
「そうなの・・・」とキャロル。
「アンタは道場でも一番最後まで残って鍛えているじゃない」モニカ。
「そうそう、朝も自己鍛錬とか言ってるし」マーリン。
俺は話しを締め括った。
「育ちきっていない身体を全力で鍛えたら、故障しか思い浮かばない。
少しは手を抜く事も覚えたら」
「そうなんだ」と溜め息のキャロル。
元気を無くしたキャロルを俺は励ました。
「試しに、これから手を抜いてみたらどう。
まだまだ十才、育ち盛りの真っ最中じゃないか。
手遅れじゃないと思うよ」
モーニングを終えた頃合い、ギルドを見ると人が少なくなっていた。
多くの大人の冒険者は依頼を請負、現場に向かったらしい。
俺達も立ち上がった。
先ず掲示板で最新の魔物情報を見た。
平地に出没する魔物はFクラスかEクラス、たまにDクラス。
山中だとCクラスにBクラス。
この一月、AクラスやSクラスの魔物は確認されていないそうだ。
次に依頼を見た。
俺達が請けられる薬草採取は、大半が年間を通した常時依頼。
それとは別に期限付き依頼が張り出されている事も、ままあった。
希な病気が発生した場合などだ。
急ぎの仕事なので見返りの報酬も多い。
それだから掲示板の確認は必要な手順なのだ。
背の高い俺が掲示板の上の方を読み、下をキャロルが読む。
その様子をマーリンとモニカが眺めている、といった図だ。
「急ぎの依頼はなし」と俺が言うと、「こちらもなし」とキャロル。
俺達は受付カウンターに一声掛けてから出掛けた。
東門から外に出た。
内も外も、相も変わらず行き交う人々で溢れていた。
街道から逸れて間道を行く。
間道も人が多い。
行商人、農夫、旅人等々、流石は人も物も集める国都。
俺達は途中で枝道を選んだ。
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