金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

昨日今日明日あさって。(どうしてこうなった)17

2024-03-17 12:05:57 | Weblog
 近衛の制服の一団が案内されて来た。
隣の侍従が俺に教えてくれた。
「元帥と副官、そして護衛の者達ですね」
 真ん中の恰幅の良い男の肩章襟章がそれを物語っていた。
元帥の鋭い視線がこちらに向けられた。
何かを探る様子。
それは俺で止まった。
どうやら俺を見知っている様子。
俺は知らないけど。
副官が前に出た。
肩章は少佐。
「君が佐藤伯爵だね。
聞かせてくれるか。
表で縛られているのは、うちの長官なんだろう」
「ええ、そうですね」
「あの様な仕置きの理由は」
「謹慎の沙汰を聞き入れてもらえず・・・。
結果、あのような処理に相成りました。
まあ、ダイエットにはなる筈です」
 元帥も長官同様に恰幅が良い。
割腹ダイエットにでもするか。
が、そこまでは口にしない。

 少佐は納得できぬ色。
ところが後ろの元帥は違った。
噴き出してしまった。
人目がなけれは腹を抱えて笑ったかも知れない。
一頻り笑ってから俺に尋ねた。
「儂も謹慎かな」
「ええ、そうですね。
誰が敵で、誰が味方か分からぬ状況です。
そこでお偉い方には静養して頂こう、そう考えています。
これはお互いの為です」
「確かに、それが最も手っ取り早い。
近衛はそれで良いかも知れんな。
ところで、国軍や奉行所はどうする」

 秘密裏に事を運ぶには、まず、全容を知る関係者を絞る。
情報統制を徹底して優先する。
今回の作戦区域は王宮区画と限られていた。
狭い範囲なので、近衛高官と一部関係者の抱き込みだけで済む。
費用対効果からすると、最低の費用で最大の効果を得られる。
コスパが良い。
成功すればだが・・・。
「国軍と奉行所は外郭が担当なので、管領は声掛けしていない筈です」
 試し見るような目色の元帥。
「ほう、自信たっぷりだな、もし違っていたら」
 俺は無表情で言い切った。
「ごめんなさい、そう謝ります」

 元帥は鼻で笑った。
「ふっ、子供だからそれで許されるか」
 元帥は俺の隣の侍従を見た。
そして彼に言う。
「分かった。
だが、謹慎は断る。
儂は王妃様の呼び出しがあるまでは有給休暇だ。
後は任せて良いか」
 侍従が深く頷いた。
「万事お任せを」

 元帥が一団を連れて引き揚げて行く。
それを侍従が見送りに出た。
俺にとっては、やれやれだ。
別の侍従が俺に囁いた。
「元帥だけあって巧妙ですな」
「えっ、そうなんだ・・・」
「ええ、そうですよ。
管領との間に密約があったのか、なかったのか、
当の管領が姿を消したので確かめようが有りません。
おそらく永遠に分からないでしょう。
それを元帥は逆手に取って戦術的撤退をしたんでしょうな」
 なるほど、王妃様の呼び出しを持つ姿勢をアピール。
呼び出しを受けたら、忠臣の顔をして御前に跪く 。
「ああ・・・、なるほど」
「ご心配なく。
こちらはその逆手を利用させて貰います。
元帥代理も含め、要所をこちらで固めます」

 俺は、大人の汚い作法を一つ学んだ。
ダンタルニャン、一つお利口になっちゃった・・・なっ。
それはそれとして、この後、国軍や奉行所の長官や元帥も現れた。
まるで近衛の元帥が無事に帰ったのを見たかのように・・・。
意外とそうなのかも知れない。
それが高官諸氏の処世術なのだろう。
批判するつもりはない。
王宮権力の仕組みを理解していれば、それも仕方ない。
 俺は彼等の相手をした。
そこで感嘆させられた。
彼等は子供の言葉を真摯に受け取り、唯々諾々と従うのからだ。
委細の説明を求めるものの、反論や拒否はない。
おそらく近衛元帥の周辺からレクチャーを受けたのだろう。
この状況から無難に抜け出すつもりらしい。
まあ、それで良いか。
俺も早く普通の日常に戻りたい。

 イヴ様付きの侍女が顔を出した。
「そろそろお昼ですよ」
 そんな時間か。
難儀な諸氏がこちらのテーブルに回されて来るので、
すっかり脳味噌が疲弊してしまった。
俺は背伸びしながら返事した。
「はい、参ります」
 背後に控えていたうちの者達も同様らしい。
大きく欠伸する者もいた。

「あっ・・・」
 メイド、ジューンの声が上がった。
庭木から飛び立った大きな鳥を見掛けてのこと。
濡れたような黒い羽根。
育ちの良い魔鴉。
健康優良児なのかな。
 魔鴉は俺を一瞥して、大空に駆け上がった。
それから魔波が感じ取れた。
うちの妖精の一人だ。

 アリスとハッピーの執拗な要求に負け、条件付きで許可した。
妖精魔法の透明化でも魔導師には見破られる公算大。
そこで、スキル【変身】を条件とした。
形ある物ならば見過ごすとの思惑からだ。
もし疑われたら、高々度へ逃れるだけのこと。
人であれば追っては来れない。
たぶん、間違ってない、よね。

 黒猫が前を横切った。
俺を横目で見て、「にゃ~ん」と。
笑われてる気がした。
魔波はハッピー。
王宮には普通に、野良猫や鴉が営巣していた。
それに魔猫や魔鴉が紛れていても不思議ではない。
危険性が皆無なので誰も気にしない。
警備の近衛も気にしない。
 とっ、お尻から背中にかけて軽く温い感触。
それは、ポテポテポテ。
何かが俺の身体を駆け上がって来た。
それが俺の肩で止まった。
「にゃ~ん」
 白い子猫。
紛れもなくアリスだ。
『何してんだよ』
「にゃ~ん」
『ほんとに何してんだよ』
「にゃにゃ~ん」
 猫である事を強調していた。

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