学校生活は順調に進んだ。
座学も実技も村での教育が行き届いていたせいか、
少しも遅れることはなかった。
そんな矢先、来客があった。
四日目の授業が終わり、構内の図書館に向かおうとしたところに、
担任のテリーがわざわざ俺を探しに来た。
「おっ、よかった。
お前にお客だ。
織田伯爵家の者だそうだ。
とりあえず応接室に通しておいた。
・・・。
平民のお前に伯爵家の家臣が面会、というのも変な話しなので、
担任の俺が立ち会う」
本館の応接室に入ると、にこやかな笑顔があった。
織田伯爵家のお嬢さまがいた。
ジャニス織田。
俺より二つ上だから今は十二才だ。
彼女の後ろには守り役のエイミーもいた。
彼女は俺の七つ上だから今は十七才。
金髪二人がいるせいか、室内が華やいでいた。
俺は戸惑いながら、状況を読んだ。
ジャニスが魔法学園の生徒の紫色のローブ、と言うことは・・・。
そして彼女のスキルを思い起こした。火の魔法。
彼女が国都の魔法学園に在籍している事は想定していなかった。
戸惑っている俺をテリーが救ってくれた。
「どうやら知り合いのようだな」
「はい。
と言うか、顔見知り程度です。
相手は伯爵家のお嬢さま。
僕は僻地の村の平民ですから」
ジャニスが割って入った。
「ニャン、遠慮はいらないわ
平民と言っても、貴方は旧家の生まれ。
家長は家名を許されているのでしょう。
それに何と言っても、始祖は弓馬の神・白銀のジョナサン佐藤。
その本家に生まれた貴方に比べ、私なんて塵も同然よ」
ニャンで入って来た。
猫扱いは無視して、・・・対応に苦慮した。
こうベタ褒めでは・・・。
素直に彼女の言葉に同意していいのか。
それとも生家を形ばかりにでも、卑下すべきなのか。
テリーがまたもや救ってくれた。
ジャニスに問う。
「面識がある事は分かりました。
それでは本日のご用件を伺いましょうか」
「私はニャン本人かどうかを確かめただけ。
用件は、後ろの者達が申します」
彼女の背後に控えていた男が前に進み出た。
陰に隠れるように控えていたので、従者だとばかり思っていた。
「織田伯爵家の国都屋敷に務めるウォルト柴田と申します」
第一印象は大柄で強面。
彼の言葉はダンに向けられたものではなく、
明らかにテリーに向けられたもの。
「それでご用件は」
「ダンタルニャン殿にだけ」
「それは出来ません」
「何故ですかな」
「生徒は学校の庇護下にあります。
親代わりに担任が同席しても問題はないでしょう」
「困りましたな」顔を顰めた。
「私も困りましたな」切り返した。
互いに苦笑いの応酬。
奇妙な静寂が続いた。
素知らぬ顔でジャニスが割って入った。
テリーに向かい、
「私の用件は済みました。先生、ニャンを宜しくお願いします」
そしてウォルト柴田に、
「私達は急用が出来たので先に帰ります。
馬車は貴方に残して置きます」言い捨てると、返事も聞かない。
エイミーを促して立ち去った。
あ然とするウォルトにテリーが言葉を掛けた。
「後を追わなくて宜しいのですかな。
伯爵様のお嬢さまなのでしょう」
ウォルトはジャニスの立ち去った方向と俺を見比べた。
暫し躊躇った後に、俺に言う。
「伯爵家の屋敷にダンタルニャン殿の部屋を用意しました。
ささぁ、私と一緒に参りましょう」
俺に部屋、それも伯爵家の屋敷に・・・。
話の道筋が・・・。
混迷する俺。
テリーが笑う。
「白色発光合格者なので織田家で囲う分けですか」
キャロル達に聞いていた。
上昇志向の女子だけでなく、貴族にも狙われる、と。
学内の女子の熱い視線は感じていた。
まさか貴族までとは。
ウォルトは表情を改めた。
「いいえ、領地の子弟が入学したのです。
扶助するのは当然でしょう」
「白色発光だからでしょう」
「いいえ、違います」
「尾張から入学した生徒が数人、寮に入っています。
こちらは如何なさるつもりで」
ウォルトは一瞬、双眼を怒らせたが、表情をつくろう。
「そうでしたか、それはそれは、後で善処しましょう。
・・・。
さあ、ダンタルニャン殿、屋敷に移りましょう」
何が面白いのか、テリーは笑い声を漏らしながら俺を見た。
俺のターンらしい。
俺はウォルトを正視した。
「有り難いお話ですが、お断りさせて頂きます」軽く、軽く頭を下げた。
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触れる必要はありません。
ただの飾りです。
座学も実技も村での教育が行き届いていたせいか、
少しも遅れることはなかった。
そんな矢先、来客があった。
四日目の授業が終わり、構内の図書館に向かおうとしたところに、
担任のテリーがわざわざ俺を探しに来た。
「おっ、よかった。
お前にお客だ。
織田伯爵家の者だそうだ。
とりあえず応接室に通しておいた。
・・・。
平民のお前に伯爵家の家臣が面会、というのも変な話しなので、
担任の俺が立ち会う」
本館の応接室に入ると、にこやかな笑顔があった。
織田伯爵家のお嬢さまがいた。
ジャニス織田。
俺より二つ上だから今は十二才だ。
彼女の後ろには守り役のエイミーもいた。
彼女は俺の七つ上だから今は十七才。
金髪二人がいるせいか、室内が華やいでいた。
俺は戸惑いながら、状況を読んだ。
ジャニスが魔法学園の生徒の紫色のローブ、と言うことは・・・。
そして彼女のスキルを思い起こした。火の魔法。
彼女が国都の魔法学園に在籍している事は想定していなかった。
戸惑っている俺をテリーが救ってくれた。
「どうやら知り合いのようだな」
「はい。
と言うか、顔見知り程度です。
相手は伯爵家のお嬢さま。
僕は僻地の村の平民ですから」
ジャニスが割って入った。
「ニャン、遠慮はいらないわ
平民と言っても、貴方は旧家の生まれ。
家長は家名を許されているのでしょう。
それに何と言っても、始祖は弓馬の神・白銀のジョナサン佐藤。
その本家に生まれた貴方に比べ、私なんて塵も同然よ」
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素直に彼女の言葉に同意していいのか。
それとも生家を形ばかりにでも、卑下すべきなのか。
テリーがまたもや救ってくれた。
ジャニスに問う。
「面識がある事は分かりました。
それでは本日のご用件を伺いましょうか」
「私はニャン本人かどうかを確かめただけ。
用件は、後ろの者達が申します」
彼女の背後に控えていた男が前に進み出た。
陰に隠れるように控えていたので、従者だとばかり思っていた。
「織田伯爵家の国都屋敷に務めるウォルト柴田と申します」
第一印象は大柄で強面。
彼の言葉はダンに向けられたものではなく、
明らかにテリーに向けられたもの。
「それでご用件は」
「ダンタルニャン殿にだけ」
「それは出来ません」
「何故ですかな」
「生徒は学校の庇護下にあります。
親代わりに担任が同席しても問題はないでしょう」
「困りましたな」顔を顰めた。
「私も困りましたな」切り返した。
互いに苦笑いの応酬。
奇妙な静寂が続いた。
素知らぬ顔でジャニスが割って入った。
テリーに向かい、
「私の用件は済みました。先生、ニャンを宜しくお願いします」
そしてウォルト柴田に、
「私達は急用が出来たので先に帰ります。
馬車は貴方に残して置きます」言い捨てると、返事も聞かない。
エイミーを促して立ち去った。
あ然とするウォルトにテリーが言葉を掛けた。
「後を追わなくて宜しいのですかな。
伯爵様のお嬢さまなのでしょう」
ウォルトはジャニスの立ち去った方向と俺を見比べた。
暫し躊躇った後に、俺に言う。
「伯爵家の屋敷にダンタルニャン殿の部屋を用意しました。
ささぁ、私と一緒に参りましょう」
俺に部屋、それも伯爵家の屋敷に・・・。
話の道筋が・・・。
混迷する俺。
テリーが笑う。
「白色発光合格者なので織田家で囲う分けですか」
キャロル達に聞いていた。
上昇志向の女子だけでなく、貴族にも狙われる、と。
学内の女子の熱い視線は感じていた。
まさか貴族までとは。
ウォルトは表情を改めた。
「いいえ、領地の子弟が入学したのです。
扶助するのは当然でしょう」
「白色発光だからでしょう」
「いいえ、違います」
「尾張から入学した生徒が数人、寮に入っています。
こちらは如何なさるつもりで」
ウォルトは一瞬、双眼を怒らせたが、表情をつくろう。
「そうでしたか、それはそれは、後で善処しましょう。
・・・。
さあ、ダンタルニャン殿、屋敷に移りましょう」
何が面白いのか、テリーは笑い声を漏らしながら俺を見た。
俺のターンらしい。
俺はウォルトを正視した。
「有り難いお話ですが、お断りさせて頂きます」軽く、軽く頭を下げた。
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