goo blog サービス終了のお知らせ 

金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

金色の涙(白拍子)60

2008-09-28 09:09:39 | Weblog
 宙に浮かぶ女を見ていたヤマトの脇に緑狸・ポン太が並んだ。
浮かぬ顔をしている。
そういえば先ほどより、ポンポコリンの音が聞こえない。
 ヤマトがポン太に声を掛けた。
「どうしたんだい」
「んっ・・・」
「・・・」
「あの怨霊から感情が大量に溢れて、ポンポコリンどころじゃないのさ」
「悲しみの感情かい」
「そんな生易しいものじゃない」
「・・・痛哭」
「痛哭・・・、そうだな。それにしても手強そうな白拍子だ」
「知ってるみたいだね」
「無駄に長く生きてるからな」
「名は」
「そこまでは知らない。あの格好が白拍子の踊る時の衣装なんだよ」
「どうだい、一緒に踊ってみたら」
 ポン太が笑い飛ばす。
「おいおい、それはないだろう」

 実体化した白拍子がゆっくりと着地した。
背中の翼が、格納されるかのように背中に中に消える。
軽い足取りで、小太刀で雷鬼と戦っていた女の方へ向かう。

 出雲阿国が身構えた。
いつでも腰の小太刀を抜けるように半身になる。
 鈴風が空気を読み、庇うように阿国の前に出て、白拍子を威嚇した。
 そこへ前田慶次郎達三人が到着した。
状況は分らないが、阿国と白拍子の間に割って入る。
慶次郎が鬼斬りを、山三郎が野太刀を構える。
五右衛門は太郎の亡骸を、手近の僧兵に預け、槍を借りる。
 狐や狸達も、いつでも飛び出せるように、白拍子を遠巻きにした。

 白拍子は女以外には目もくれない。
手前で足を止め、じっと女を見る。
 相手は睨むように見返してくる。
 白拍子が、やおら口を開く。
「そちの名は」
「・・・」
 挑発するように嘲笑う。
「私が恐いのかい」
「出雲阿国」
「そう、出雲阿国かい」
「何の用」
「踊りをやるのかい」
「少し」
「やはりね」

 空気が一変した。
バロンを追ってきた白犬達が、どこに潜んでいたのか、不意に目の前に現れ、
白拍子に襲い掛かったのだ。
 どうやらを白拍子の内にバロンの影を見つけたらしい。
逃さぬように、前後左右から間を空けずに飛び掛かる。
そして牙か爪に掛けようとする。
いずれも必死の形相。
相手の底知れぬ力量に、死を覚悟して臨んでいる。
 それを白拍子は紙一重で躱してゆく。
無駄の無い動き。まるで舞っているかのようだ。
時には笑みさえも浮かべる。

 鈴風が阿国を振り向く。
それに阿国は、無言で答えた。躊躇うことなく騎乗する。
 鈴風が阿国を背に乗せ、白拍子に突っ込む。
慶次郎達の間を駆け抜け、白犬達を尻目に大きく跳ぶ。
 合わせて阿国が小太刀を抜き、白拍子の首に斬りつけた。
難なく躱されるが、それは承知の上。
 鈴風が着地し、再び白拍子に向き直る。




ブログ村ランキング。
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

FC2ブログランキング。
http://blogranking.fc2.com/in.php?id=299929
FC2 Blog Ranking

大臣就任早々に放言した中山国土交通相が閣僚辞任する見通しだそうです。
大臣の仕事より、自分の政治信条が優先するとは・・・
これでは麻生の「おぼっちゃま」もお気の毒。

仕事量が目に見えて減っている我々に比べ、
首相・大臣の職を投げても、
議員の席には居残れる人達は気楽ですね。

ああ秋風が身に「凍み」てきます。

金色の涙(白拍子)59

2008-09-25 20:08:30 | Weblog
 聚楽第から真田幸村率いる一隊が出て行く。
いずれも騎馬で、十三騎。
真田家から人質として大阪城に入ったのだが、秀吉に家来十二騎を与えられ、
いつかしら近習として働かされていた。
 一隊は人目を引かぬように、悠然と鞍馬へ向かう。
もっとも行き交う人々は、晴れ日の落雷に首を竦めて歩きながら、
鞍馬の上空の稲妻を気にしていた。
 途中で先に行った筈の大輔を追い越す。
大輔は足軽の格好で、のんびりと歩いていた。
 幸村は配下の者達に「鞍馬の山門で待て」と指示し先行させた。
それを見届けて大輔に馬を寄せる。
「大輔殿、急がないのですか」
 忍者といえども、大輔は年上なので敬う口調になる。
 彼、大輔にはとかくの評がある。
女癖の悪さが噂される一方で、出来物として見る向きも。
秀吉の出世の影の立役者の一人、との話には信憑性がある。
そんな大輔に幸村は興味を覚えるのだが、なかなか二人で話す機会がなかった。
 大輔が笑顔で振り向く。
「真田殿はいつも丁寧な言葉遣いだな」
「いけませんか」
「いけない事は無いが・・・まあ、いいか」
「一緒に行きますか」
「いや、俺の方は急いではいない」
「どうしてですか、殿下に怒られますよ」
 大輔は鞍馬の上空を指差す。
先ほどより晴れ空に、稲妻が大量に発生している。
「見えるか」
「はい、姿は見えませんが、何かが空にいるみたいですね」
 幸村は鞍馬上空に強烈な「もの」の存在を感じていた。
それから稲妻が放射されているようなのだ。
すでに何個もが洛中に落ちている。とてもただの落雷では片付けられない。
 と、稲妻が静まる。
空にいる「もの」が、稲妻の代わりに白銀の光を放ち始めた。
白銀の光が「もの」の全体に広がる。
巨大としか言いようが無い。
「あれをどうやって相手にする」
「それは・・・」
「考えてしまうだろう」
「思っていたよりも、手強そうな魔物ですね」
「いるんだよな、あんな魔物」
「魔物の相手をしたことがあるのですか」
 大輔は少し考え、頬を緩めてから答える。
「毎日だ」
「・・・」
 どうやら秀吉のことを指しているようなのだ。
幸村としては応じようがない。
「空に浮かんで、光る奴が相手だぜ。一体全体、どうしろってんだ」
「まあ、行くしかないですね」
「お主の親父殿だとそうは答えない」
「知ってるのですか」
「ある意味、有名だからな」
「どういう風に」
「それは後でおいおいと・・・」
 変化してゆく白銀の光体に目を奪われる。
白銀の光体が縮小していくではないか。
このまま消えてくれれば・・・

 怨霊は白銀の光体から、縮小して実体化した己の姿を繁々は見ていた。
巫女装束に、紫の烏帽子、白鞘巻きの小太刀。
かつての白拍子時代そのままである。
ただ2メートル余の長身には苦笑い。自分ではないような違和感を感じる。
 何故か背中にも別の違和感。
どうやら翼が生えているらしい。

 「金色の涙」はその怨霊を解析した。
三つの光体を吸収して、怨霊の質が目まぐるしく向上している。
なんでもない怨霊だったのに、ここまで進化するとは驚きだ。
 実体化に至っては論外。
怨霊の域を脱したのかもしれない。
 その全身には力が漲っており、どういう特性を持つのか不明なので、
迂闊には近づけない。




ブログ村ランキング。
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

FC2ブログランキング。
http://blogranking.fc2.com/in.php?id=299929
FC2 Blog Ranking

正しい「職を辞する」とは、王さんのような辞め方でしょうね。
チーム成績の責任を取って辞める。
自分の体調が原因として、他者を非難しない。
立派です。
これでONが去り、一つの時代が終りました。

金色の涙(鬼)58

2008-09-21 09:40:59 | Weblog
 大きくなったのはいいが、彼女は悲しみだけを抱える怨霊。
その心の奥には大きな穴が開き、深い闇が顔を覗かせていた。
そこに三つの光体の力が吸い込まれていく。
 雷鬼が必死で抵抗するが、彼女に触れることが出来ない。
力のみか、ついには干乾びた本体までもが吸い込まれる。
雷鬼は彼女の心の側壁に扉を見つけると、試しにそれを強引に押し開けた。
そして最後の力を振り絞って飛び込んだ。
 昔の記憶が詰った部屋であった。
一つの記憶が転げるようにして出て来る。
 愛する男に従って西国を転戦した武将の顔。
彼が沈鬱な顔で、深夜密かに彼女を訪れて来た。
「殿は衣川館で自刃し果てられました」
彼は傍らの弓を握り締めながら涙を流していた。
 さらに別の記憶。
愛する我が子を捜していると、密かに聞こえてきた声。
「あんたが教えてやりなよ」
「馬鹿、殺されたなんて言えるかい」
 とたんに彼女の悲しみが凍り付いた。
目を逸らし耳を閉じ、心の深遠に沈殿させてきた記憶。
それが・・・
 彼女の気が一ッ気に変貌した。
触発されて心の奥底から怒りが噴き出してきた。
長い間、声を立てずに積もり積もった怒り。
問答無用で三つの光体を本体ごと吸収すると、全身から稲妻を放つ。
凄まじい雷鳴を轟かせながら、さらに宙高く飛び上がる。

 先の爆風で飛ばされた小物の怨霊達が、再び戻ってきた。
これに新顔の怨霊達や、悪霊そのものといった種も混じっている。
しかし、彼女が圧倒的な存在を示すと、恐怖に駆られたのか、
たちまち蜘蛛の子を散らすようにして逃げ始める。
 
 京洛に封じられた怨霊達が目覚め、地を割って出ようと蠢動していた。
それに気付いた守護の神社仏閣の者達が、鎮めようと躍起になる。
結界を強化する為に方術者達を掻き集める。
 蠢動していた怨霊達は、鞍馬方向から発せられる怒りに身を強張らせた。
先っきまでの人と魔物との戦いが終り、別の物が生まれていた。
鋭い氷の刃を突きつけられた気分に襲われる。
触らぬ神に祟りなし、とばかりに首を竦め、動きを止める。
 結界を張っていた方術達も、心配気に鞍馬の方を見やる。
萌来のこの所の行動を見聞きしていたので、他人事ではないのだ。

 聚楽第にいた秀吉も先ほどより縁側に立ち、鞍馬方向を見ていた。
彼も鞍馬の状況は以前より聞いていた。
所司代が把握していたのだ。
 争う気は感じていたが、これほどまでに大きくなるとは。
萌来達の力量は知っていたし、慶次郎達もいる筈。
それに魔物の狐や狸達。
そして黒猫。
彼等で始末はつけられると思っていた。
 庭に下りて、木陰に呼びかける。
「大輔」
 庭の手入れをしていた小物が振り返る。
「なんでげしょう」
 猿飛一族の頭領で、佐助の親父でもある。
頬被りの下は良い男振りで、人懐こい目をしている。
「佐助も鞍馬だったな」
「そうでげす」
 秀吉の顔が歪む。
「その喋り方は止めよ。いいな」
 大輔は首を捻りながら頷く。
「承知」
「様子を見て来い」
 大輔が消えると秀吉は真田幸村を手招きする。
「手の者を率いて行け」
 幸村には多くの言葉はいらない。

 稲妻が四方八方へ飛び、落下して、ありとあらゆる物を壊した。
大樹が二つに割れ、寺院の屋根が消失する。
各所で町家が延焼、大勢が逃げ惑う。
 放電を終えた彼女の気が縮み始める。
内側より白銀の光。激しく発光しながら全体を白銀の光体に変化させる。
同時並行で縮小と光体化を行う。
そして最後に実体化する。
 かつての白拍子の姿となる。
身長は2メートル程で、巫女装束に、紫の烏帽子、白鞘巻きの小太刀。
妖艶な微笑みを浮かべながら、己の姿を確認する。




ブログ村ランキング。
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

FC2ブログランキング。
http://blogranking.fc2.com/in.php?id=299929
FC2 Blog Ranking

台風が逸れました。
これで安心して洗濯ができます。

金色の涙(鬼)57

2008-09-18 21:36:31 | Weblog
 佐助の小太刀「李淵の剣」から、清らかな鈴の音。
小さな音色だが余韻が残る。
 佐助は弾かれたように疾駆を始めた。
目指すは前方に現れた巨大な気の塊。
凄愴な気で、辺りの空気を幽暗色に染めている。
 それは地面スレスレを漂いながら、こちらに向かって来た。
佐助は手前で跳び、勢いよく気の塊の頂上から斬り下ろす。

 ヤマト達にもその気の塊が見て取れた。
怨霊に違いない。
正体は分らないが、味方で無い事は確かだ。
 佐助の小太刀が再び鈴の音色を響かせた。
切っ先から光を発っし、怨霊を真っ二つにする。
 怨霊が重苦しい悲鳴を上げ爆発した。
凄まじい爆風が四方八方を襲う。
 ヤマト達は素早く身を伏せた。
鈴風や阿国もそうだ。
小物の怨霊達や、修行の未熟な狐達が遠くへ吹き飛ばされる。

 その怨霊は誰に気付かれる事もなく、ひっそりと木の枝に腰掛けていた。
生きている時から人を捜す旅が始まり、もう彼此400年。
一人は我が子、もう一人は愛する男。
二人を捜して日本中を歩いた。
しかし再会叶わず、いつからかこの山に居ついてしまった。
 誰に邪魔される事も、邪魔する事もない。
何時しか人捜しを忘れ、ついには愛する二人の名前のみか、己の名前も忘れ、
ただじっとこの木の枝に腰掛けていた。
 そんな彼女の目を覚ましたのは出雲阿国。
小太刀片手に戦う阿国の所作の美しさに、思わず魅せられてしまった。
銀鬼や雷鬼との戦い方はまるで舞踏。
かつての己を思い出した。彼女は男装で踊る白拍子であった。
 不意の爆発に彼女は否応無く巻き込まれてしまう。
爆風をもろに受けて宙に吹き飛ばされる。
回転しながら、昔を思い出す。
 男子に産まれた為に、その場で取り上げられ、行方知れずになった我が子。
遥か奥州の地に消えた愛する男。
そして二人を捜し歩いた自分。
 宙で体勢を整え、空気の流れを読み、素早く風に乗り移る。
しだいに悲しみが湧いてくる。
いつしか涙が流れ、堪え切れずに嗚咽までが漏れる。
 そんな彼女の目に、宙で絡まる三つの光体が映る。
薄い桃色の光体。青白い光体。そして銀色の光体。
彼女と同じ怨霊ではないようだ。
 絡み合う光体に、何かしら心魅かれるものを感じる。
涙を袖で拭い、そちらに向かう風に乗る。

 ヤマト達は新たな怨霊を見据えていた。
その怨霊は存在を隠しているわけでは無い。
はっきりと宙に浮かんでいる。
悲しみの塊のような怨霊で、それがヒシヒシと伝わってくる。
 萌来がヤマトの脇に腰を下ろす。
「あれをどう見る」
「害はなさそうだね」
「今の所はな」
 萌来は怨霊から目を離さない。
「あの怨霊に、何か心当たりでも」
「無い事もない。たぶん・・・」
「たぶん・・・」
 萌来は口を噤む。
名を口にしたくないようだ。
「『頼芳公』かい」
「それは先っき佐助が始末した」

 彼女の悲しみが深まるにつれ、気も大きくなる。
倍の早さで巨大化する。
先っき爆発した怨霊よりも大きい筈だ。
 絡まる三つの光体に近づくと、何の考えもなしに両手を広げた。
纏めて抱き寄せたくなる。
どうなるかは分らないが、思いのままに両腕で胸元に包み込む。

 バロン達三つの光体は、実体のない怨霊に、実体のない光体が、
捕らえられるとは思わないので無視していた。
いま直面しているのは、誰が三者の争いを勝ち抜くか、なのだ。
 それが、いとも簡単に捕らえられてしまった。
きつくはないが身動きがとれない。
圧迫を感じる。
 身体から力が抜けていく。
バロンのみではない。他の二体からも抜けていく。
どうやら怨霊に吸い取られているようだ。




ブログ村ランキング。
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

FC2ブログランキング。
http://blogranking.fc2.com/in.php?id=299929
FC2 Blog Ranking

台風がくるので
「台風が 問題山積 吹き飛ばす」
五人組の総裁選
「汚染米 株価急落 他人ごと」

金色の涙(鬼)56

2008-09-14 09:45:04 | Weblog
 雷鬼の右手が動く。
首を守る為に、顔の前に上げようとする。
予期せぬ攻撃に、それが手一杯の防御なのだろう。
 その右手を鈴風が両の前足で蹴り払う。
すかさず阿国が雷鬼の首を小太刀で一閃する。
骨を断ち切る手応え。
 首が音も無く落ちた。
それでも胴体は二本足でしっかりと立っている。
 間を置いて、血飛沫が胴体から噴き出した。

 首の切り口から抜け出したバロンは、噴き出す血に喜色満面。
慌ててそれを捕捉するために飛び上がる。
 拳大の光体となって力は弱まったが、相手が血であれば何の問題も無い。
薄い桃色の半透明の光体を精一杯拡げて、光の輪の内側に大量の血を包み込む。
 そして光の輪で絞り込むようにして吸収を開始。
選別して無駄な物は黒い血として、輪の外へ排出する。
 しだいに光の輪が色を変える。
赤味を帯びてくる。

 仁王立ちの胴体が膝から崩れ落ちた。
首の上に圧し掛かるようにして、うつ伏せに倒れる。
急激に生気が失われていく。
首を斬り離された瞬間に、鬼としての生を終えたのだ。
しかし執念は残っていた。
 雷鬼の亡骸から、青白い光体が抜け出した。
細長い紐のような状態で上昇を始める。
全長およそ10メートル。
雷鬼の亡霊なのだろう。
周囲に火花を撒き散らしながら、上空のバロンを目指す。
 少し遅れて銀色の光体も抜け出す。
これも紐状で、全長5メートル余。
どうやら銀鬼か。

 血の選別・吸収で忙しいバロンは、無警戒であった。
そこを青白い光体が、襲うようにして巻き付いた。
さらに銀色の光体。
 気付いたときには遅かった。
二体の光体に雁字搦めにされる。
いずれもがバロンの体内に侵入しようと試みる。
辛うじて防ぐが、脱出する手立ても無い。

 「金色の涙」は三者の絡み合いから発せられる気を分析した。
どうやら三者共に弱っていて、勝負がつきそうにない気配だ。
 それよりも気になるのは、この辺りの空気の重さだ。
みょうに圧迫感らしきものが漂い始めている。
 若菜がヤマトを覗き込む。
「どうなってるの」
「感じるのかい」
「なんか嫌な気がするの」
「そう、その通りだよ」
「・・・」
「どうやらこの争いが、怨霊達を呼び寄せたみたいだね」
「怨霊・・・」
「この世に怨みを持ち、成仏出来ない者達のことさ」
「いるの」
「いるさ。今のところは小物達が遠巻きにしてるだけだけどね」
「小物・・・、大物は」
「大物は地に封じられているよ」
 いつの間にか傍に萌来が来ていた。
「ヤマト、まるで別人だな」
 繁々と観察する。
「魔物だから、色んな顔を持つのさ」
「いいだろう。ところで、地に封じられた怨霊だが、目覚める兆しがある」
 ヤマトは若菜の胸から飛び出すと、地に伏した。
そして地中の気の流れを読む。
確かに地中を、異様な気が走っている。
闇黒の塊のようで、重苦しい。
「心当たりはあるのかい」
「京洛には無数の怨霊が封じられている。近いところでは『頼芳公』」

 封じられていない小物の怨霊達も、集団となって力を得たと勘違いしたのか、
露骨に姿を現し始めた。
 対して方術師達が怨霊退治を開始する。
これに狐達が加勢。各所で術でもって怨霊に当たる。
 狸達は無関係にポンポコリン。




ブログ村ランキング。
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

FC2ブログランキング。
http://blogranking.fc2.com/in.php?id=299929
FC2 Blog Ranking

朝の食事の林檎と梨を、包丁で皮むきしたら、手を二ヶ所も切ってしまった。

金色の涙(鬼)55

2008-09-11 20:18:30 | Weblog
 ヤマトは術で生じた狐火のような炎には強い。
しかし本物の炎や、術の炎でも異物混じりには弱い。
 異物とは燃えるバロンと雷鬼のことだ。
2匹から発生する物が絡み合い、炎が汚れていく。
 ついにヤマトの全身が炎で包まれる。
悲鳴を上げて、雷鬼の背中でのた打ち回る。
 ヤマトの身体が失われても「金色の涙」が死ぬわけではない。
だからといってヤマト一匹を死なせるわけにはいかない。
居候には居候の意地がある。
最後の手に出る。
 全長40センチ足らずのヤマトに比べ、「金色の涙」は直径1メートル余り。
強引に入ればヤマトは破裂してしまう。
そこで必要最小限のものを残し、他は全て圧縮してから居候した。
それが今の「金色の涙」だ。
 今はヤマトの為に解凍の時。
ただ、全てを一ッ気に解凍させたらヤマトが破裂してしまう。
 これまで自由にさせておいたドングリとタニシ、そして猫又を同期・圧縮、
己の内部に取り込む。
 空いたスペースに「龍の雨」を解凍した。
それは龍の全身を覆う鱗を治癒させる物。
 大空を飛ぶ龍は直射日光や風雪に晒され、外皮の鱗が真っ先に痛む。
それを癒す為に、己の周辺に霧状の雨を降らせる。
その雨は「龍の雨」とも呼ばれ、強力な治癒力が秘められている。
 全身火傷のヤマトの周辺で「龍の雨」が発生した。
霧状の雨が炎を遮断し、ヤマトを厚く包み込む。
巨大な龍を癒す雨だ。小さなヤマトに効かぬわけが無い。

 バロンが激突した衝撃で、雷鬼の後頭部に小さな亀裂が走る。
それを見つけたバロンは、強引に火傷した部分を切り離す。
残った無傷の部分は拳大の大きさ。
薄い桃色の光を発っする半透明の球体だ。
 その亀裂からバロンが雷鬼体内に強引に侵入した。

 ヤマトの皮膚が、体毛が、そして焼け爛れた顔が再生・復元していく。
筋肉部分も。ついに四足で立つ。
目がキラリと光る。
口を大きく開けて深呼吸。
黒い体毛を逆立て、雄叫びを上げた。
 そして宙高く跳んだ。雷鬼の背中から大きく離脱。
大きな岩の上に軽々と着地して、雷鬼の様子を窺う。
どうやら炎の影響で治癒に拍車が掛かったようだ。
 涙顔の若菜が、ヤマトに気付いて駆け寄る。
「大丈夫だったの」
 雨に濡れたヤマトを不思議そうに抱きかかえた。
「オイラは不死身だよ」
 嬉しそうにヤマトに頬ずり。
「どうしてこんなに濡れてるの」
「焼かれないようにさ」
 佐助が若菜の後ろから顔を覗かせる。
「よう」
「ようかい、他に言葉を知らないの」
「子供だからね。無事でよかった」

 炎に包まれたまま雷鬼の外皮に生気が漲ってゆく。
銀色の体毛が再生、骨折部分が治る。
狐火とバロン混じりの炎は雷鬼には最高の薬らしい。
 そして後頭部の亀裂も塞がる。
雷鬼は体内に侵入したバロンは無視する。
脅威となるような気は感じられない。
まるで逃げ込んできたかのようだ。
 ゆっくりと立ち上がり、辺りを睥睨するかのように見回す。
視界にヤマトを見つけると、凄みのある顔が綻ぶ。
身体をほぐしながら近づいて行く。
 
 若菜が片手でヤマトを抱きながら、短剣を抜いて構えた。
「ヤマトは私が守るわ」
 その前に佐助が廻り込み、若菜とヤマトを庇う。
「まず一番手は俺だ」
 小太刀を抜いて、雷鬼を睨み付けた。

 手始めに稲妻を放とうとした雷鬼は、背後に迫る殺気に気付いた。
警戒しながら振り返る。
なんと馬。
裸馬で女が振り落とされまいと、必死でしがみ付いている。

 鈴風は女に気を使いながら、山道を駆け上がった。
息切れ一つとてない。
紅葉ヶ原に入っても、足はいっこうに衰えない。
凹凸を見極めながら、先を急ぐ。
 そして相手を見つけた。
始めて見る魔物だ。
自分より大きいが、退く気はない。
 背中の女が鈴風の耳元に口を寄せた。
「あいつを斬るよ」
 小太刀を抜いて振り翳すのを感じた。
言葉は分らないが、自分に何を求めているかを察する。
女ながらも慶次郎みたいに乱暴な奴だ。
けっして嫌いではない。
 戦慣れした鈴風と、殺気溢れる阿国の気が一体となった。
馬上の阿国が小太刀を抜き身のまま肩に担ぐ。
鈴風が勢いをつけて地を蹴り、高々と宙に舞い上がる。




ブログ村ランキング。
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

FC2ブログランキング。
http://blogranking.fc2.com/in.php?id=299929
FC2 Blog Ranking

雷雨の合間に
「雷雨浴び 木陰で震える 揚羽蝶」
それとも
「葉の蔭に 雨宿りする 揚羽蝶」

金色の涙(鬼)54

2008-09-07 10:02:03 | Weblog
 鞍馬山の麓で、慶次郎、山三郎、五右衛門の三人が足を止める。
前方から強い気の塊。
慶次郎の愛馬・鈴風ではないか。
上杉の京屋敷に預けておいたのだが、主人を心配して逃げてきたらしい。
 黒光りする馬体は一際大きく、威風を放っていた。
幾度もの戦場を無傷で駆け回り、その名は慶次郎同様に知られている。
そして旧主・前田利家の愛馬・松風とは兄弟馬でもある。
 鈴風は慶次郎を見ても気を緩めない。
山の上を睨んでいる。何かを感じているらしい。
 慶次郎は阿国を背負い、山三郎は小猿・太郎の亡骸を抱えている。
安心させようと、手空きの五右衛門が鈴風に駆け寄る。
 
 背負われていた阿国が、薄目を開けた。
先ほどより気がついていたのだ。
逃れる隙を密かに窺っていたところに、この鈴風。
素早く動く。
 慶次郎の両肩に駆け上がるようにして立ち、鈴風の背に跳んだ。
一瞬の事で、慶次郎になすすべは無い。
 阿国は裸馬の鈴風に必死で跨った。
振り返る怪訝顔の鈴風に目を合わせつ、その耳に口を寄せる。
「お願い、乗せて」
 通じたのか、鈴風が返事代わりに両の前足を高々と上げ、駆け始めた。
振り落とされまいと阿国は首筋に縋り付く。

「戻れ鈴風」
 と、慶次郎が叫ぶが、効果は無い。
鈴風は阿国を乗せたまま山道を駆け登る。
阿国に従ったというよりは、山の上の「もの」が気になるのだろう。
 五右衛門が山三郎にしみじみと言う。
「若菜といい、阿国といい、女は扱い難い」
「確かに。そこでだ・・・頼む」
 山三郎は太郎を五右衛門に強引に渡すと、阿国を追う。
慶次郎も同様だ。
「まったく」
 と、五右衛門も太郎を抱えたまま、2人を追う。

 稲妻と火花に捕らわれたヤマトは、身動きが取れない。
「金色の涙」が全身を気で防御しているが、いつまで持つのやら。
 ヤマトの両の目から涙が溢れ始めた。
ヤマト本体の限度が近いのだ。
 涙の向こう側に、助けに戻ろうとする若菜の泣き顔が見える。
それを佐助が羽交い絞め。顔を歪めながら止めている。

 バロンは狐火が当たる度に爆発するので、体力を消耗していた。
狐火の集中砲火を浴び、炎に包まれるがそれでも踏ん張るバロン。
気力のみで耐えていたのだが、狐達の関心が雷鬼に移ると、気持ちが緩む。
全身火傷に加え、飛行能力が衰え始める。
意識のあるうちにと降下先を探す。
かっこうの場所がある。
目指すは瀕死の雷鬼。
己が光体でないのは不安だが、他に選択肢は無い。
一か八かの賭けに出る。
 雷鬼の体の上で死んでいる狐達が邪魔だが、贅沢を言ってはおられない。
慰めはヤマトを巻き込める事だろう。
異様で正体の読み取れない魔物だが、道連れに出来そうだ。
 身動き出来ぬ雷鬼の後頭部を、真上から直撃した。
鈍く、何かが割れる音。
バロンの炎が、雷鬼が全身の体毛から放つ稲妻・火花と融合する。
狐火から生じた炎は他の火種を喜んで喰らう。
勢いを得、たちまちの内に巨大な炎となる。
 
 雷鬼の全身の体毛が燃え始めた。
狐火から生じた炎は粘着力が強い。
ヤマトをもしっかりと包み込む。
 ヤマトと狐火は相性が良い。
かつては吸収したこともある。
黒狐・康平の狐火だ。それは良質のエネルギーの塊であった。
だがこの炎には雷鬼から生じた火種が混じっている。
「金色の涙」の解析によると、異物混じりで吸収は不可能だそうだ。
 そうこうするうちに、ついに「金色の涙」の防御線が突破される。
ヤマトの体毛に火が燃え移る。
全身に燃え広がるのに時間はかからない。


 

これがブログ村なんだな。
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

FC2ブログ・ランキングなんだよ。
http://blogranking.fc2.com/in.php?id=299929
FC2 Blog Ranking

岡田ジャパン、勝ったものの最後は拙いよ。
アタフタアタフタ。

私も締めに向かってアタフタアタフタ。

金色の涙(鬼)53

2008-09-04 21:24:59 | Weblog
 ヤマト達の前を行く狐数匹が、激しく立ち騒ぐ。
どうやら見つけたようだ。
 雷鬼はかなり遠くに弾き飛ばされていた。
森の中の空き地にうつ伏せで倒れ、身動き一つしない。
身体の彼方此方から出血している。
手足の曲がり方も奇異。どうやら折れているようだ。
それでも微かに息をしている気配が伝わってくる。
 ヤマト達が慎重に囲みながら、接近を始めた。
しかし全く反応しない。
試すかのように、ぴょん吉が腕に噛み付く。
それでも反撃しない。
 ぴょん吉を真似て、他の狐達も噛み付く。
生憎歯が立たない。外皮を噛み切れないのだ。
狐達は意地になって噛み続ける。
 コスモと哲也は、雷鬼が不意に動いても対応できるように身構えている。
 
 萌来達が姿を現した。
方術師や僧兵達は狐達を警戒し、手前で足を止めた。
萌来一人は平然と前へ進み、コスモの傍にまで来た。
コスモとは顔見知りなのだ。
「どうする」
 コスモは答え代わりにヤマトを見る。
萌来もその意味に気付く。
「猫又殿は、これをどうされるのかな」
 ヤマトは萌来を見据える。
「オイラが片をつけるよ」
「身体が弱ってるみたいだが」
「それは雷鬼も同じだよ」
「いっその事、ここで焼いてしまえば」
「雷鬼も銀鬼も炎の中から蘇っているからね」
「それでは、慶次郎の鬼斬りはどうかな」
「呼び戻す必要はないよ」
「・・・信じていいのかな」
 ヤマトは少し回復してる気を、萌来に向かって放った。
軽いものであったが、人には充分。
萌来は躱そうにも躱せない。鳩尾に衝撃を受けた。
 萌来は膝から崩れた。
「わかった。・・・年寄りなんだから少しは手加減して欲しいもんだ」
 「金色の涙」は手足の折れた雷鬼の自然治癒には、失った血の回復も含め、
少なくても三日は必要と解析していた。
対してヤマトは半日もあれば充分に回復する。
 回復したら、見覚えた斑猿の破砕術を、雷鬼に応用する心積もりでいた。
斑猿の破砕術は、生命体でない岩等のみに通用する。
それを「金色の涙」は生命体にも通用させる自信があった。

 そこへ離脱したはずの若菜が戻ってきた。
佐助も少し遅れて現れ、目でヤマトに詫びる。
どうやら佐助は若菜を制止をしたが、無視されたらしい。
「ヤマトが心配で」
 と釈明しながら、若菜がヤマトの傍に寄ってきた。
ヤマトは怒りを示すために視線を外し、そこから離れる。
そして慎重に雷鬼の背中に乗った。
 若菜も慌てて後を追い、同じように雷鬼に乗る。
「ねえヤマト、こいつは死んでるの」
 
 雷鬼は狐達に噛まれても、害はないのでじっとしていた。
自然治癒するまで我慢だ。
 と、黒猫の気配。
離れて様子を窺っていた筈なのに、どうしたことか。
 さらに小娘の気配。
雷鬼は、黒猫が小娘を気遣っているのを見抜いた。
そうと分れば手はある。
ここで一番手強い黒猫を排除できれば、それに越したことはない。
 自然治癒を待たずとも、いくらかの気は残っていた。
読みに賭け、決断した。
稲妻を口からではなく、全身の体毛から放った。
放電と同時に火花が飛ぶ。
 
 雷鬼の全身に噛み付いていた狐達が甲高い悲鳴を上げる。
体毛から放たれた細い稲妻に身体を貫かれ、火花で火傷する。
逃げられない。阿鼻叫喚。
嫌な焼け焦げる臭いを発しながら、次々と倒れる。
 ヤマトは間一髪で逃れようとして、若菜が目に入る。
躊躇うことなく若菜に体当たり。雷鬼の背中から弾き飛ばした。
 ヤマトはその為に逃げ遅れた。
稲妻に捕らえられ、全身を火花で包み込まれる。




これがブログ村。
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

そしてFC2ブログ・ランキングなのです。
http://blogranking.fc2.com/in.php?id=299929
FC2 Blog Ranking

夏の疲れが抜けません。
とにかく調子が悪い。

* フォントサイズ変更

* フォントサイズ変更 * drop here