金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

昨日今日明日あさって。(足利国の国都)58

2018-06-24 07:46:36 | Weblog
 ブルーノが長考しているとベティが優しく言う。
「何を躊躇われているのですか。
もしかして管領殿が恐いのですか。
遠慮はいりませんよ。貴方様が主なんですから」
 管領職というものは本来は国王が未成年の場合に設けられ、
国王が成人に達するまで補佐するのを役目とした。
そんな臨時の職務であったのが、いつの頃からか正規となり、
評定衆と肩を並べる権威を得るようになっていた。
現在、管領職にあるのはボルビン佐々木侯爵。
幼少期のブルーノの守り役であった関係から、
今以て全く頭が上がらない。
「一に和を以て貴しとなす、そう教えられた」
「それは昔の話しです。礼節があった頃のお伽噺です。
今は時代が違うのです。
上も下も隙あらば、と付け狙う当今には相応しくありません」
「お前は強いな。
・・・。
お前の守り役の顔が見てみたい」
 ベティが鼻を鳴らした。
「ふっ、貧乏貴族の家の守り役ですよ。
嫡男ならまだしも、・・・。
メイドが兼任でしたわ」
「そうか、メイドか。羨ましい」心底からそう思っている様子。
「羨ましいのですか、驚きましたわ」
「ボルビン佐々木卿は堅苦しい。それに、むさ苦しい」
 ベティが口を大きく開けて笑う。
ひとしきり笑ったあと、ブルーノを正視した。
「今はボルビン様が貴方様を守ってくれています。
でも残念な事にボルビン様は高齢です。先が短いのです」
「うむ、それで・・・」
「これからは内緒話ですよ、良いですね」
「分かった」
 ベティは周囲を見回してから口を開いた。
「失礼な言い様ですけど、
今の貴方様の側近の方々は口は達者ですけど、
残念な方々ばかりです。
分かっていますわよね」
「ああ、残念な者ばかりだ。
信用できる者は二人か、三人・・・」
「そこでバート斉藤伯爵の登用です。
かの者は未だ色に染まっておりませぬ。
呼び寄せては如何ですか」
「斉藤卿も高齢だった筈だが・・・」
「うっふ、将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、ですわ」
「将を・・・、もしかすると斉藤卿は・・・馬扱い・・・か。
それで将・・・誰か・・・、そうか、ゴーレムか」
「そうですわ。
土の魔法でゴーレムを操れる者自体は珍しくはありません。
でも、土のゴーレムだけでなく、岩のゴーレムもですよ。
今時、岩のゴーレムを操る、と言う話しは聞いた事がありませんわ。
それも一体や二体ではなく、十体を越えたのですよ」
「レオン織田男爵か」
「そうです。
尾張のフレデリー織田伯爵家の長男に生まれましたけど、
諸事情から嫡男ではないそうです。
男爵位を買い与えられ、後継候補からも外されています。
それをどう見込んだのか、娘婿にしたのがバート斉藤卿です。
最愛の娘を嫁がせ、自分の息子達よりも可愛がっているそうです」
「斉藤卿を餌にして織田男爵を手繰り寄せろ、ということか」
 ベティが悪戯するように目を輝かせた。
「織田男爵は私達と同世代。
都合が良いではありませんか」
 ブルーノは頷きながら、空を見上げた。
「面識がない。
上手く飼い慣らせるかな」
「織田男爵が面倒臭い性格なら、間に取り次ぎ役を挟めば宜しいかと」

 二月になった。
二月一日。
今日は待ちに待った入学式。
俺はカールと一緒に幼年学校に向かった。
学校に近付くにつれ、人が多くなり混雑してきた。
その多くは同じ方向に向かっていた。
入学する子供より付き添いの方が多いようで、
あちこちから、取り止めのない会話が聞こえて来た。
「ハンカチ持ったの」
「持ってるよ」
「合格通知は」
「それはお母さんだろう」
 途中で箱馬車も合流して来た。
それも一両や二両ではない。
何両も何両も。
貴族や商人とかの富裕層の子弟を乗せているのだろう。
強引に人波に割り込むのが、さも当然であるかのように、
速度を落とさずに突っ込んで行く。
その度に罵声が飛び交う。
「馬鹿野郎、危ねえじゃねえか」
「この野郎、轢き殺すつもりか」
「馬車に乗ってるからと言って、偉そうにしてるんじゃないわよ」
 箱馬車は止まらない。
入学式にその門前で諍いを起こしては拙いとばかり、
罵声を無視して、門を潜って行く。
 カールが俺に言う。
「門を入れば身分は問われない。
王族だろうが、貧民だろうが、同じ生徒だ」
「王族の子を殴っても問題にならないの」
「殴る前提か・・・。
ダンはそういう性格じゃないだろう」
「たとえばだよ。
馬車の走り方を見ていると、
それに似た子供に育っているんじゃないか、と心配してるんだ」
 前世のペットの散歩を思いだした。
電柱に立ちションするペットがいるが、
それは飼い主の真似をしている、と聞いた。
たぶん、そうなんだろう。
「馬車の走らせ方は馭者の性格。
・・・。
殴る殴らないは難しい問題だな。
王族や貴族の従者が別棟の控え室で待機している。
彼等がそれを聞いてどう思うか」




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昨日今日明日あさって。(足利国の国都)57

2018-06-17 07:54:54 | Weblog
 校長は俺の言葉に不満げ。
「それらしい兆候とかないのかな」
「それは僕が聞きたいです。
前もって分かっていれば、そちらに力を注げば良いだけでしょう。
・・・。
そうそう、魔水晶に答えは浮かび上がらないのですか」
 校長は目を見開き、
「ほう、便利そうだね。
残念なことに、これは光って教えてくれるだけだ」
と言いながら視線をカールに転じ、
「付き添いの方ですね。
ご覧になられていたように、この子は魔水晶に認められました。
それでは入学の手続きをサクサクと進めてしまいましょう」楽しげに言う。
 俺達は本館の出入り口にある事務室に案内された。
適当な机に座らされたカールの手元に二枚、書類が置かれた。
「どちらも付き添いの方に書いて頂く書類です。
一枚目は本試験の前に提出して頂くお子様の身上書。
二枚目は合格された方に提出して頂く宣誓書。よろしいですね」
 手早く書き上げたカールが誰にともなく尋ねた。
「白色発光で合格した者は、入学金とか授業料とかは免除ですか」
 一人が肩を竦めて答えた。
「そう誤解されて当然ですね。
でも本試験の免除だけで、
諸費用は他の生徒達同様に負担していただきます。
そういう決まりですので」

 足利国の国王・ブルーノ足利は執務を中断すると、
王宮と後宮との境にある庭園に足を向けた。
王族専用になっているので、広い割りに人影は少ない。
庭番の衣服を身に纏っている者しか目に映らない。
彼等もブルーノに気付くと、そそくさと、その進路から離れて行く。
 ブルーノは小川に沿ってゆっくり歩いた。
付き従っているのは気心の知れた侍従のみ。
誰も無駄な言葉は発しない。
 石橋を渡っている間に寒風に襲われた。
頭の中のモヤモヤを吹き飛ばしてくれるようで、心地がいい。
ブルーノがベンチの前で足を止めると、
侍従の一人がそこに座布団を置いた。
ブルーノは座布団に腰を下ろし、
陽光を浴びながら深い溜め息をついた。
 暫く休んでいると、軽やかな足音。
それも複数。
漂って来る香気から女達と分かった。
王妃のベティが侍女達を引き連れて現れた。
「あら、奇遇ですわね」とブルーノに微笑んだ。
 侍女の一人がブルーノに断りを入れ、その隣に座布団を置くと、
ベティが当然のように腰を下ろした。
「今日から幼年学校の本試験が始まるそうです」
「そうか、もう半月過ぎたのか」
「ええ。
聞きましたか。
白色発光の合格者が現れたそうですよ」
 ブルーノは初耳だった。
「それは聞いていない」
「このところ執務に忙殺されていらっしゃいましたから、
聞き逃されたのかも知れませんね」
「そう、そうなんだろうな。
区切りが付いてないから、まだ休ませて貰えない」
「国王様なのに思うに任せませんのね」
 ブルーノはベティの目を見た。
ここに来合わせたのは偶然では・・・なさそうだ。
何やら・・・。
ブルーノは周りの者達を下がらせた。
侍従も侍女も全て、島の外で待つように命じた。
 人払いを待っていたかのようにベティが口を開いた。
「評定で合意がなされない、と聞いております」
 国王の下に評定衆と呼ばれる役職が設けられていた。
国王を補佐する役職で、定員は十席。
彼等の合意がなくても国王は決定が出来る。
が、彼等の協力なくては何も実行出来ない。
身体に喩えれば国王は頭。肝心の手足が評定衆。
頭が命じても手足である評定衆の協力がなければ、
身体は動かせないのだ。
 今回の評定は、魔物の大移動の後処理にあった。
美濃の木曽谷の大樹海から魔物の群が大移動を開始し、
西進したのだが、それを美濃の斉藤伯爵が阻止した。
被害を美濃のみで最小限に押さえたのは良いが、
大移動を阻止した前例がなく、その報奨を如何にするのか、
それで評定が揉めていた。
 ブルーノは苦笑いした。
「領地を増やしてやろうにも、割り振る直轄地が少ないのだ」
 治世が長い為、これまでの報奨で粗方の土地は与えてしまい、
直轄地自体が少なくなっていた。
これ以上減らしては国体が立ち行かなくなってしまう。
それを懸念して、報奨をどうすべきか、と評定が揉めていた。
「領地以外の報奨は」
「褒美として金の延べ棒を下げ渡す、と言う意見もあったが、
どうかな」
「陞爵されては如何」
「伯爵から侯爵だな。
それは考えているが、それだけでは今回の一件には釣り合わない」
「では、評定衆に加えては如何でしょうか」
「評定衆に空きはない」
「増やしては」
 ブルーノは顔を顰めた。
「増やす、定員は十席で決まりだ。
昔からの決まり事で、勝手には増やせない」
 ベティがブルーノの耳に口を寄せた。
「国王の権限で増やして、こちらの味方にしてはどうですか」
 評定衆には二大勢力があった。
三好侯爵家と毛利侯爵家だ。
共に建国以来の重職の家柄で、縁戚も多く、
互いに牽制し合うだけでなく、
場合によっては直接戦火を交えることもあり、
仲裁に駆り出されるブルーノとしては苦々しく思っていた。




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昨日今日明日あさって。(足利国の国都)56

2018-06-10 07:51:29 | Weblog
 脳内モニターから聞こえる忙しないノイズ音。
同じ文字が続けて打たれた。
「いい加減に目を覚ませ。
いい加減に目を覚ませ。
いい加減に目を覚ませ」
 ハッと我に返った。
予期せぬ事態に俺は為す術もなく、ただ、突っ立っていた。
その間の時間の経過が分からない。
たぶん、一分か二分だったのでは・・・。
慌てて俺は周囲を見回した。
俺やカールだけでなく、みんなも同じであった。
体育館にいる全員が、ただ、突っ立った状態のまま、
光に包まれている俺を見詰めていた。
集団で茫然自失。
そこには慣れている筈の学校職員も含まれていた。
 俺が魔水晶に翳していた手を引くと光が消えた。
それで、みんなも我に返った。
途端にガヤガヤと、別のノイズが体育館全体を覆う。
俺を指差す者。
魔水晶を指差す者。
双方を交互に指差す者。
何やら騒然と・・・。
 人波を割るようにして、如何にも古手の職員然とした者達が現れた。
三人。
俺を見て、「付き添いの方は」と問う。
カールが応じると、「案内しますので私共に付いて来て下さい」と。
理由は言わないが、丁寧な態度で俺達に接してきた。
 俺はカールとアイコンタクト。
面倒ごとに巻き込まれた感がするが、面白そうな展開。
何も問わず、案内に応じることにした。
さて、鬼が出るかジャガ芋、否、蛇が出るか。
 体育館の外に連れ出された。
職員の内の一人が俺達から離れ、前方へと駆けて行く。
「説明がありますので、先に走らせました」と別の一人。
 どこかへの前触れなのだろう。
「面倒ごとですか」とカールが尋ねた。
「悪い意味での面倒ごとではありません。
どちらかと言うと、吉兆ですね」
「吉兆・・・、・・・もしかして、噂のアレですか」
「噂のアレ、と言うのは」
「十年か二十年に一度、出ると言うアレです」
 二人が足を止め、繁々とカールの顔を見た。
その一人が頷くように言う。
「どこかで見たことのある顔だと思った。
君、うちの卒業生だよね」
「そうです。卒業して十四年ですかね」
「どうりで見た顔だと思った。
この子は君の子供かい」
「いいえ、結婚自体まだです。
今日は、ただの付き添いです」
「今、どんな仕事をしているんだい」
 話が、噂のアレに移らない。
そこで俺は誰にともなく尋ねた。
「噂のアレって何なの」
「それは・・・」カールが言葉に詰まり、他の二人に首を向けた。
 二人も顔を見合わせるだけで、確とは答えてくれない。
「私達には答える資格がないんだ、悪いね。
答えは校長先生に確認してもらってからになる。
さあ、急ごう」
 学校の本館、その奥に案内された。
重厚なドア。
ここが校長室だそうで、先触の職員がその前で待っていた。
「説明しておきました。さあ、どうぞ」とドアを開けた。
 白髪の老人がデスクから顔を上げた。
これが校長先生らしい。
入る俺達を一瞥すると、やおら立ち上がった。
俺一人を優しい眼差しで手招きした。
「いらっしゃい。
話の前にコレを済ませましょう」とデスクの上の魔水晶を指し示した。
 脳内モニターに文字が表示された。
「審査の魔水晶の類似品。
かなり年代物です」
 意図は分かった。
早くて面倒がない。
俺は魔水晶の上に手を翳した。
途端、これが反応した。
光を放ち、部屋を占拠した。
体育館と同じ白色発光。
俺以外の五人が顔を綻ばせながら顔を見合わせた。
 俺が手を引くと光も消えた。
「コレは何なのですか」
 校長が得意そうな顔で俺を見た。
「審査の魔水晶で受験資格を調べているのは聞いているだろう。
青く光と資格あり。光らないと資格なし」
「はい」
「組み込まれた呪文は昔の魔法使いがやったことだから、
正しいのか、正しくないのか、素人の儂達には皆目分からない。
でも結果は出している。
これまで授業に支障をきたした者は一人として入学していない。
能力の低い者を確実に弾き出している、と言うことだ。
ああ、授業に付いてこれる、と言うのは一年生初期の授業に限ってだ。
そこから先、卒業出来るかどうかは当人の努力次第だからな。
ここまでは分かってくれるか」
「はい」
「これは通常は青く光だけなんだが、たまに、希に、
五十年に二度か三度、白色発光することがある。
今回のようにな。
詳細は分からないが、受験資格だけでなく、
異才を見出す機能があるそうだ。
それで、白色発光させた者は無試験で入学させるように、
と昔から伝わっている」
「無試験で・・・。初めて聞きました」
「儂も君が初めてだ。
五年前までは王宮に務めていたからな。
・・・。
ところで、つかぬ事を尋ねるが、お主の異才とは何だ」
 咄嗟のことで答えに詰まった。
「僕はただの十才です。
異才と聞かれても・・・。田舎者ですから・・・」
 子供らしい言葉遣いと、戸惑いで逃げた。




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昨日今日明日あさって。(足利国の国都)55

2018-06-03 07:59:59 | Weblog
 翌日、俺はカールに連れられて幼年学校に向かった。
受験手続きの為である。
カール一人が出向いて書類を書いて提出すれは事足りる、
と考えていたが、そうではないそうだ。
受験者が多いので、事前に審査で振るい落とすのだそうだ。
「どう審査するの」とカールに聞いてみたところ、
「面白い物だ」と返され、詳しくは教えてくれなかった。
彼の表情から、それなりに面白い物なんだろう。
興味が湧いた。
 幼年学校は南門の近くにあった。
巨大な自然石を左右に置いた異様な門構え。
その奥の広大な敷地に、歴史を感じさせる校舎群。
一目で田舎者の俺は圧倒されてしまった。
醸し出される空気が国都のそれとは全く違うのだ。
ここだけが場違いなのだ。
権威・・・なのだろうか。
 年末年始の長期休暇に入っている筈なのに活気があった。
人波が次々に校門に吸い込まれて行く。
「受験手続きの初日だから混むんだろうな」とカール。
「もしかして前夜から並ぶ人も」
「行列好きは二日前からだ」
 受験受付が六日から十日までと限られていたので、
これに間に合うように地方から受験生と付き添いが大挙して上京した。
その影響で国都の旅籠・旅館・ホテル等はほぼ満室だそうだ。
裕福な貴族・商人は国都に屋敷を構えているので苦労はないが、
そうではない者達は宿泊先確保に四苦八苦。
確保出来ない場合は神社か教会に駆け込むのが常とか。
 豪華な箱馬車が何両も門前の近くに停めてある。
裕福な貴族・商人の子弟の送り迎えなのだろう。
それを横目に俺達も門を潜った。
 声を掛けられた。
「ダン」
 キャロルの笑顔があった。
傍にはマーリン、モニカ、それに彼女達の付き添いの姿も。
彼女達も幼年学校を狙っていた。
地方出身者にとって幼年学校受験は滅多にない機会だが、
国都生まれの者達はその限りではないそうだ。
上京費用や宿泊先確保の苦労をしないで済むので、
年齢上限ギリギリまでは何度でも挑むのだそうだ。
この点は前世の首都圏の受験生と共通している。
実家から何度でも超難関大学に挑むことが出来る。
失うのは年月と受験代、交通費なのだが、得るものもある。
得るのは何ものにも代え難い現実。
 昨夜、カールに状況は説明しておいた。
キャロル達とパーティを組むことになった、と。
それを聞いたカールが笑った。
「友達が出来て良かったな」
「どういう意味・・・」
「ダンの性格が性格だから心配してたんだ。
みんなと馴染めるかな、と」
 心配されていたらしい。
カール一人ではなく、それが家族の認識なんだろう。
 カールは腰を低くした。
女児達に軽やかな言葉を掛け、
付き添いの大人達には深々と頭を下げた。
「うちのダンが迷惑を掛けたら容赦なく叱って下さい」
  駄弁りながら行列を続けていると、時折、
叫び、泣き、怒号が前方の体育館から聞こえてきた。
俺が不審に思っていると、カールが教えてくれた。
「審査で不合格になったんだろう」素っ気ない。
 途中から行列が二つに分けられた。
少し進むと体育館前で四列になり、中に入ると六列にならされた。
俺達の順番が近付いてきた。
各列の先のテーブルに魔水晶が置かれていた。
「あれが審査の魔水晶だ。
鑑定に近い機能の呪文が組み込まれていて、
あれで受験生の素質を調べるそうだ」
「鑑定すれば一発なのに、そうはしないの」
「鑑定の呪文は組み込みが難しいらしい。
それで審査の呪文で代用している、と言う話だ」
 魔水晶が青く発光すれば受験資格有り。
全く発光しなければ不合格。
 俺の二つ前の身形の良い男児が喚いた。
「えー、嘘だろう。馬鹿な、馬鹿な」
 魔水晶が反応しないことに、男児が激しく反応していた。
付き添いの騎士と覚しき者が職員に詰め寄った。
「何かの間違いだ。
もう一度、やり直せ」今にも腰の長剣を抜かんばかりの勢い。
 職員は意外に冷静。
左隅を指差した。
「あちらへどうぞ。
やり直し希望の行列に並んでください」慣れていた。
 左隅のテーブルにも魔水晶が置かれていて、短い列が出来ていた。
 俺は脳内モニターで自分のステータスを確認した。
「名前、ダンタルニャン。
種別、人間。
年齢、九才。
性別、雄。
住所、足利国尾張地方戸倉村住人。
職業、なし。
ランク、E。
HP、75。
スキル、弓士☆」
 異常なし。
国都に入る前、鑑定スキルで偽装したままだ。
これを審査の魔水晶がどう読み取るのか興味がある。
 順番がきた。
俺は魔水晶に片手を翳した。
反応がない。
これまでの合格者には即座に反応していた。
もしかして、不合格。
と、小さな発光・・・次第に・・・大きくなり、
不自然なまでの強烈な白い光を放った。
我が目を疑った。
これまでの合格者とは全く違う白色発光。
気付くと俺は全身が光に包まれていた。




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