金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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昨日今日明日あさって。(どうしてこうなった)16

2024-03-10 12:31:50 | Weblog
 俺の説明にアリスとハッピーが喰い付いた。
『面白そう』
『パー、イヴが可哀想だっぺ』
『私達が手を貸そうか』
『ピー、だっぺだっぺ』
『よし、手を貸す』
『プー、貸す貸す』

 煩い、煩い、煩いんだよ。
俺は妖精達を人間の争いに関わらせたくない。
人類特有の醜い、終わりのない争いに。
しかし、それも今更か。
 うちの妖精達は、関東代官の反乱で暴れ、南九州の反乱でも暴れ、
ついでにコラーソン王国にまで足を伸ばしてしまった。
そして王都とその周辺に甚大な被害を与えた。
たぶん、彼の地は魔物が跋扈する地になったのだろう。
 王国の被害者の皆様、誠に相すまん。
遥か遠くの地から、謹んで哀悼の意を表する。
届かないと思うけど、この気持ちを理解して欲しい。

 俺は白旗を揚げた。
『分かった分かった。
でも一つ約束して欲しい』
『やっと分かったのね、私達のこの力。
敵に、思う存分に味わせて遣ろうじゃないの』
『ペー、やっちゃうぺー。
ペッペッペーのペッペッペー』
 おい、聞けよ最後まで。

 その夜、アリスとハッピーは別にして騒ぎは起こらなかった。
俺はイヴ様とのモーニングを終えると安堵して本営に向かった。
外に、殺気も殺伐とした空気もなかった。
警備陣の動きにもそう。
立哨も巡回からも、何の違和感も感じ取れなかった。
 とっ、軍幕近くの庭木に不審な者がいた。
何者、・・・。
その者は立ったまま庭木に縛り付けられていた。
太いロープでぐるぐると。
首には【魔法封じの首輪】。
思い出した。
「あっ」
 執事、スチュアートが口にした。
「私もすっかり忘れていました。
これ、生きていますかね」
 急いで鑑定した。
瀕死と表示された。
それはそうだろう。
一晩放置されたのだ。

 軍幕から近衛が一人出て来た。
俺に気付いて慌てて敬礼した。
「おはようございます」
 俺を見てびくついていた。
俺は恐怖の対象か。
苦々しく思いながら、子供らしく答礼した。
「その手にあるのはポーションかい」
「はい、HP回復のポーションです」
「あれに」
「はい、あれにです」
 現職の近衛長官なんだが、あれ扱いされていた。
「まあ、死なない程度にね。
・・・。
そうそう、夕食や朝食は」
「摂っています」
「君じゃなく、あれ」
「あれですか。
しっかり夕食は与えています。
これは朝食です」
 夕食と朝食は高価なポーションだった。

 本営の軍幕に入って驚いた。
顔触れが・・・、だ。
俺は思わず尋ねた。
「皆、交替してないのか」
 ちらほら新顔もあるが、多くは昨日の顔触れだ。
一人が渋い顔で応じた。
「大丈夫です、慣れてます」
「食事や風呂は」
「非常時なので交替で取ってます」
「倒れない、平気なの」
「まだ二日目、始まったばかりです」
「終わったんじゃないの」
「後片付けから補修、事情聴取やらと色々、そして最後は報告書提出、
後始末が一番大変なんですよ、特に文官は。
・・・。
伯爵様、卒業したら上の学校へ進むんでしょう。
文官コースにしませんか」
「そのつもりはないよ。
知ってると思うけど、事業が拡大してるんだ。
そちらで王家に貢献するよ」
 聞いていた侍従や秘書の皆が揃って苦笑いした。

 俺は勧誘話を打ち切る為に、昨夜の報告書を手にした。
各官庁や各貴族からの問い合わせやが記されていた。
彼等の関心は概して最高権力の有り所だ。
実に分かり易い。
生き残りに必死と言うべきか、日和見と言うべきか、生き汚い。
それに対して本営に居残った者達が明確に答えていた。
 王妃様から権力を奪取しようとしたボルビン佐々木管領は、
イヴ様拉致を試み、その警護の者達と争いになった。
結果、管領とその一派は敗走し、現在行方不明。
だからして権力は移行しておらず、権力は王妃様にある。
従い、この本営が王妃様帰還までその権限を代行する。
本営にての責任者はダンタルニャン佐藤伯爵である。
異論があれば来られたし。
佐藤伯爵がお相手します。
そう説明し、それぞれに持ち帰らせたそうだ。

「ねえ、徹底してるよね」
 俺がそう言うと、軍幕内者達が小首を傾げた。
「「「何がですか」」」
「徹底して、僕を前面に押し出しているよね」
「「「まさか」」」
 答えた皆が視線を逸らした。
「そうとしか思えないんだけど」
 右隣の侍従が言う。
「ここでの爵位は伯爵様が最上位です」
「えっ」
「多くの者達は貴族の次男三男四男か、女性達です。
一部に平民も居りますがね。
そして、自分で言うのも何ですが、仕事は出来るのですが、
爵位が足りない者ばかりです。
ですから、佐藤伯爵様、諦めて下さい」

 あれこれ雑談していると本営が、
官庁の始業時間に合わせて再稼働した。
入り口の係官が訪問者を三つに分かれたテーブルに案内し始めた。
右のテーブルは官庁を担当。左のテーブルは死傷者を担当、
そして真ん中のテーブルは小難しい者を受け持った。
俺は真ん中のテーブル。
 左右のテーブルはそれなりに訪れる者がいた。
生憎、俺のテーブルは閑古鳥、ヒマ~、ヒマ~。
俺の顔色を見てか、右隣の侍従が言う。
「これからですよ。
長官や元帥は遅い出勤ですからね。
まず役所へ顔を出し、部下から報告を受けて、
それからこちらだと思います」
「それを聞いて嫌になった。
帰っても良いかな」
「諦めて下さい。
あっ、そうそう。
評定衆のお歴々も来られると思います。
昨日は一人も来られなかったので」

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