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安保法制の精神分析

2015-08-05 21:12:18 | ブックレビュー

 安保法制がどうやら参議院も通過して成立するようだ。
この間の流れをどのように理解するか、は立場によりさまざまであることはいうまでもない。私は精神分析を授業で取り扱う関係で、その立場からの分析に注目してきた。
若手の論客として今注目される白井聡(上、写真)を取り上げる。私は今年に入りすぐ彼の『永続敗戦論――戦後日本の核心 (atプラス叢書04)』を通読した。なぜ、安倍晋三に代表される勢力がこの安保法制の制定に躍起になるのか。白井は言葉としては一言も精神分析などという表現は使っていないが、その精神分析を〈敗戦〉を「終戦」と呼び続ける心性に向けている。アメリカという国に対する負い目、コンプレックス。日本の保守とされる側、いや右、もっとはっきりと右翼とされる側がもつ、アメリカに対するコンプレックスを抑圧する一方で抑圧されたコンプレックスの補償を中国や韓国へと向けるという防衛機制だ。
 『永続敗戦論』が難しいと思う方は、内田樹との対談の『日本戦後史論』(徳間書店)のほうがわかりやすいかもしれない。こちらは、内田樹のやはり目からうろこ話が加わる。
 しかし、よく考えてみると、はるか以前に同様の近代日本の政治家の精神分析を試みた研究者がいる。岸田秀である。彼の『ものぐさ精神分析 (中公文庫)』に収録されている論文はどれもこれもおもしろいのだが、冒頭の「日本近代を精神分析する」は白井の分析の視点を理解するにはまたとない視点を与えてくれる。戦後の政治史をひもときたいと考えている方はぜひ、これらの文献にあたられるといい。


 永続敗戦論――戦後日本の核心 (atプラス叢書04)ものぐさ精神分析 (中公文庫)

 

『永続敗戦論の展望』白井 聡 文化学園大学助教 聞き手 藤生 健

 
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