中井久夫
分裂病の研究で有名な中井久夫ですが、中井といえば、私が大変興味深く分裂病を教えられた『分裂病と人類』ですね。 文字通り、狩猟民族は人類の発展段階として分裂病を生きています。分裂質といったほうが適切でしょう。この本は、分裂質の特質を、未開と呼ばれる部族の生活を通して明らかにしてくれます。ぜひ、ご一読することをお薦めします。
また、中井は『アリアドネからの糸』というエッセイ集で、いじめに関するきわめて注目すべき精神分析を披露しています。高価な本なので、図書館等でご覧になられるといいと思いますね。
私がこの夏、全てを網羅するのは大変ですが、中井の近著『兆候・記憶・外傷』を読みたいと思っています。
「トラウマ」「統合失調症」「多重人格」
といった現代の精神医学の先端を中井の解説で学んでみたいと思っています。
木村敏
同じく分裂病の研究で有名な木村敏をこの夏読みます。彼の、『時間と自己』は神経症と分裂病という二大精神病を「時間」という視座を使って説明していきます。
みなさんは、独り言を言った経験を一度くらいはもっていますよね。独り言って何でしょう?フッサール、ハイデガー、サルトルといった実存思想を駆使しながら、木村は解析していきます。独り言というのは、過去が現在になお存在しているということです。過去の自分の体験を現在、反復しているということだと木村は言うのです。過去は、存在しません。しかし、その過去が、もう少し厳密にうと過去の状況が、過去生きたということが現在存在する問うことです。神経症とは基本的にこの構造をもちます。英語では現在完了形をhaveという動詞で表現しますね。ドイツ語でもhabenですし、フランス語でも、avoirがつきます。すべて「持つ」って言う意味なのです。そうです。過去をもつこと、これが神経症の基本構造だ、というのです。それに対して、私なんかもそうですが、今しかない人間、今、今、今、と今が分裂して続く人間、これが分裂病です。こうした時間性を分析の道具として使用していくのが、現象学的精神分析の特徴です。かれの『自己・あいだ・時間』を併せて、かつて読んだときにひいたアンダーラインをもう一度確認したいと思っています。
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