高校公民Blog

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2010 この夏の読書 1 フロイトをめぐって

2010-08-10 23:48:43 | ブックレビュー
夢・神経症



 心の深層を分析するという観点を、現代に入って理論化し、体系化した代表的思想家はフロイト(上・写真)です。私は、フロイトの厖大な著作群を解説した書物を尋ねられたら、迷わず、

精神分析入門

をあげます。『精神分析入門』はフロイト自身によるフロイトの思想体系の解説です。フロイトが講義をした講義録なのです。

 今回、私はフロイトの夢と神経症に関する議論を、この本を通して勉強し直したいと思っています。私はこれまで何度もこの本を読んできました。ノートをとり、何度も何度も繰り返し読んできました。もう一度、フロイトの夢と神経症に関するものの見方を学びたいと思っています。

抑圧・固着・退行・症状・検閲

といったフロイトのキイワードは、現代の私たちが、精神病理を読み解く作業をおこなうとき、大きな土台を提供してくれるのです。
  私は来年度、新しい科目をつくることを計画しています。

「思春期の精神分析」

といった仮のタイトルをつけておきますが、内容はこのようなものです。
 私たちが思春期を過ぎていく時、だれしも突き当たる課題をとりあげ、その課題をフロイトの精神分析の手法を駆使しながら、原因と脱出口を探ろうというものです。
 そのフロイトの基本的な思考は、この「夢」と「神経症」という問題を考えるところから発しています。 私たちがいじめなどで直面する「トラウマ」や「フラッシュバック」の問題を、たとえばフロイトは『快感原則の彼岸』という論文で戦争という悲惨を題材にして追求しています。キイワードは、「外傷性神経症」です。
 しかし、よく考えてみると、この病理を説明するフロイトは、いま私があげた『精神分析入門』(「入門」ですよ「入門」!)のなかで、とりあげているキイワードを組み合わせながら、分析を進めていくのです。

エロスとタナトス

  もうひとつ、フロイトの精神分析が私につきつけてきている大きなテーマが、

エロス」と「タナトス

です。「性欲動」と「殺人本能」と翻訳するこのテーマは、現代の私たちの精神病理を解明するために、きわめて大きな射程をもちます。
 フロイトは、人間の無意識の欲動としてこの二つの欲動をあげます。晩年のフロイトは思弁の色合いを濃くしていきます。フロイトの議論はしたがってある意味では実証的に証明されないものです。私は、そうした仮説的な枠組みとして、フロイトのこの議論を取り上げてみたいと思っています。



フロイトの著作は、いずれも難解です。かんたんには、理解に迫れません。しかし、どの著作を読んでも、みなさんがその気になれば、強烈なメッセージをフロイトは送ってくるはずです。簡単には、しかし、フロイトはメッセージをくれません。フロイトの著作は、彼の晩年のものが大変多い。50代から60代という人生の終わりにかけてフロイトは、作品をまとめていっています。それは、そのくらい長い期間かけて考えてきたことを書いているわけです。簡単にはかけないから難しいんです。それは、人生の問題が難しいからです。ぜひ、みなさんも、フロイトという高い山に登ってみてください。そこからの眺望を楽しんでいただきたいのです。


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