高校公民Blog

高校の公民科(現代社会・政治経済・倫理)教育に関連したBlogです

野ブタ。をプロデュース ② いじめの掟

2006-11-23 21:35:40 | 映画・演劇・ドラマ
いじめられるのは一人

 『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系列)はけっこういじめの実態を映しています。いじめられる人間はひとりです。大体、4人以上が一人をいじめる、これが定式なんですね(この件についてはよければ、こちらの文章をお読みください)。初回に野ブタのいじめが坂東 梢たちから行われるんです。そのときに、もちろん、いじめらしく一方通行で行われるのです。それは、結構なまなましく、リアリズムがありましたね。野ブタが街を逃げてゆく姿は、逃げ場のないいじめの風景をよく現わしていたと思いますね。 

まわりは見てみぬふり

 もう一つ私が気づいた、この作品のいじめの設定のリアリズムがありました。
 最初、その野ブタに対して、修二がこのままでいいのか、と問うのです。いつまでも、うつむいて生きて、逃げ回る人生でいいのか、と問うのです。もちろん、これは、修二という人間の実は、声ではありませんよ。作者が、いじめられている人間のなかから読み取った声なんです。実は、現実には、そんなことをいってくれる人などいないのです。それがいじめの現実なんですね。だからこそ、修二という架空の人間の逆説的なリアリズムがあるにちがいない、というのがこの作品のポイントなんです。
 物語はしかし、修二と彰が野ブタとこうした会話を交わし、野ブタをプロデュースしているところを彼ら自身が隠し、だれにも見せようとしない、というシーンを繰り返し私たちに示すのです。野ブタとかかわっているということ、野ブタと友人であること、

「えっ?マジ、それ冗談?(ニヤっと笑って)」

こういうノリで何度も修二は野ブタとのかかわりを否定します。
野ブタと修二と彰が学校で話しているところはいつも、だれもいない校舎の陰、屋上、非常階段、などなのです。それが前半から中盤にかけて続くのです。
そうです。いじめの掟には、こうあります。

「まわりは見てみぬふり」

物語は、じつは、この掟を使って盛り上げを何度も行うのです。それは、この掟の強さと、それに反抗しようとする物語の作者のかつての果たしえなかった思いなのです。
現実はまわりは見てみぬふりなのだ、こうしていじめられている人間を見捨てるのだ、それくらい、いじめの掟、それを支える構造は根深いのだ、そう物語は私たちに語っています。そうだよ、下手にいじめられる側にたってみろ、いうのはかんたんだ。こうした構造が人を沈黙へと誘うのです。(もしよければ、詳細はこちら

野ブタ。をプロデュース ① 転校
野ブタ。をプロデュース ② いじめの掟
野ブタ。をプロデュース ③ 小さな政府
野ブタ。をプロデュース ④ 消費する他者へ 1
野ブタ。をプロデュース ④ 消費する他者へ 2
野ブタ。をプロデュース ⑤ ストリートへ 1
野ブタ。をプロデュース ⑤ ストリートへ 2




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3 コメント

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中央でのいじめ? (Q)
2005-12-27 10:27:22
僕は中央高校に来てから3年になります。この学校は入るとき○自由な学校で、個性を尊重してくれる○と聞いて、なかなか期待して入学しました。ですが実際高校生活を終えようという今になって振り返ってみると、自由とか個性  何かが違っていると思いました。もっと活発で明るく、授業中も自由に発言してよくお互いの隔たりのない生徒の尊重された場所であると言う当初のイメージとは全く違う場所だった。



全国的に見ても早くから新しいシステムを導入する学校ですから、この学校自体はシステムの中では先端を行っていると思っています。しかし僕が観察してきたこの学校の授業風景は、新しく備えられたシステムとはどこかかけ離れた、木村先生が述べていらっしゃる「見てみぬふり」という寒々とした人間関係で、こうした形がいじめとしての認識をお互いがまだもっていないため、沈黙を余儀なくさせられる。

別の言い方で言わせてもらうと



    「見てみぬふり」を「見てみぬふり」 





のような、”オレは関係ない的冷たさ”の観察の連続だったようにも思われ、どこかさびしさを感じており、もっとこの学校が全体としてよい性格?になれば、システムと調和してよい学校になっていくのでは?それを求めるのは難しいでしょうか。それとあわせ、こうしたいじめの性格はプラスの方向には向かわないものでしょうか。

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最後のところでまた (木村正司)
2005-12-27 13:07:16
Qさんへ

なかなか重たいご意見です。いま、『野ブタ。をプロデュースの』連載中で、明日には完結させたいと思っています。その後でまた、こちらについてご返事させていただきたいと思います。実は、今日、明日と連載する内容は私なりにあなたのご意見へのお返事になっているように思っているのですが・・・。ちがうかなあ。
返信する
かなり (Q)
2005-12-27 13:28:31
それにしても、いつも関心しているのは、きむら先生は常にいじめの当事者の立場からものごとを考えてくださっていることだと思います。そういう先生がいてくださり大変心強く感じます。最終回まで楽しみにしております。
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