高校公民Blog

高校の公民科(現代社会・政治経済・倫理)教育に関連したBlogです

正義をめぐって―――アメリカのリベラリズム

2016-10-01 15:21:04 | ブックレビュー
私はよく左翼と勘違いされるんですが、私はあまり政治的な活動には参加していません。私は職人というカテゴリーがとても自分にあっていると思っています。アナルコサンディカリズムというのが私の立ち位置です。そういう意味では、アメリカのリベラルはきわめて重要な思想です。私はリベラリズムはきわめて現代日本にとっても重要な思想だと考えています。私が日本の左翼に?と感じるのは、彼らが市場が嫌いだからです。市場は重要です。市場がなければ自由はありません。 . . . 本文を読む
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憲法と安全保障を問う ---- 対談 井上達夫・東京大大学院教授、木村草太・首都大学東京教授

2016-07-07 23:29:56 | ブックレビュー
憲法9条をどう扱うかは戦後日本が抱えた大問題だ。昨年、政府が進めた安保法制をめぐる解釈改憲論争もその延長線上にある。9条を将来どうしていけばいいのか。発展的な議論とは何か。リベラリズムの立場から護憲派憲法学者を批判している法哲学の重鎮、井上達夫氏と、集団的自衛権行使容認反対の立場で活発な発言を続けている気鋭の憲法学者、木村草太氏が討論した。【聞き手・冠木雅夫、まとめ・及川正也、写真・中村藍】毎日新聞2016年5月3日 東京朝刊. . . . 本文を読む
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宮台真司――青年期の社会学 ③

2016-07-05 23:53:26 | ブックレビュー
■宮台真司は現在は、大きく二つのことに関して論陣を張っているように見えます。一つは政治的な問題、もう一つは性愛についてです。宮台真司は教育についてかつてかなり積極的な発言をしていました。現在では、それが私には性愛という論点で論じているように見えます。今回紹介する著作は若い宮台がいち早く日本社会が消費社会化しつつある現実を論じたものです。いずれも、90年代に発表されたものです。■ 宮台真司 (みやだい・しんじ) 1959年宮城県生まれ。社会学者。映画批評家。首都大学東京教授。公共政策プラットフォーム研究評議員。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。社会学博士。1995年からTBSラジオ『荒川強啓 デイ・キャッチ! 』の金曜コメンテーターを務める。社会学的知見をもとに、ニュースや事件を読み解き、解説する内容が好評を得ている。 . . . 本文を読む
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いじめ学の文献――青年期の社会学 ②

2016-07-02 06:12:25 | ブックレビュー
社会学者の内藤朝雄が「いじめ学」を提唱し、旺盛な活動をしています。 私も、かれこれいじめを高等学校の「現代社会」の授業で展開して、20年余の歳月が過ぎました。私が、いじめを授業で扱いたいと思ったのは、1986年でした。ちょうど30才になったときでした。いじめは、どうしても扱わなければならない一級のテーマだ、と感じました。若い頃は、知恵はありませんが、直感は鋭いものです。私はしかし、どこから、どう手をつけたらよいのかわかりませんでした。 私は教員になってすぐ、生徒の興味をひく授業のネタやテーマに悩みました。いえ、悩むというのは正確ではありません。扱いたい素材はありました。そういう意味で、私は若い頃の木村を現在もそれほど超えていません。作家がよく、処女作に帰るといいます。私も、若い頃の直感へとたえず帰っていくように思えます。私は、そういう意味で、生涯若い頃の直感に帰り続けている自分を発見します。 . . . 本文を読む
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土井隆義――青年期の社会学 ① 

2016-06-30 10:21:46 | ブックレビュー
土井隆義の著作は、高校生を考える上で外せない論点を提供してくれます。 たとえば授業中スマホをやっている姿があります。ま、LINEをはじめとしたSNS、ゲーム、いろいろですが、中心はSNSです。その姿を見て、ただけしからん、とか、いやがらせのように注意したり、とか、果ては体罰という反応まで、その本質は相手にされていない年寄の嫉妬というリアクションには事欠かないわけです。 その姿をどうみるのか? たとえば、土井の著作はすべてここに関係していくのです。土井 隆義(どいたかよし、男性、1960年 - )は、日本の社会学者。筑波大学人文社会系 教授。専門は犯罪社会学、法社会学、逸脱行動論、社会問題論。 . . . 本文を読む
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井上達夫・東大教授(2)リベラリズムとは「他者に対する公正さ」

2016-06-18 21:11:12 | ブックレビュー
憲法9条の問題を私は学校の授業でほとんど扱ってきませんでした。それがなぜか、長らく自分でも明示的に表現できなかったのです。井上達夫はそこを解説してくれていると思ったのです。改憲派も護憲派もどちらも私には大した違いがないのではないか。ただ、今回の安倍首相の一連の解釈改憲は、そういう私にも考える必要を迫ってきたように思えました。といっても、私は今年も9条問題について深く生徒のみなさんと考えることはないようなのです。それは、届かないという感覚ですね。この問題を扱っても届かないのです。だったら、もっと深く、そして普段考えることはないが、思考訓練をするうえで大事なことがあるのではないか。たとえばいじめ問題ですね。そういう思いにさせられるのです。さりとて、この問題を考えることは重要です。井上達夫はそのもっとも深いところで、もう少しで生徒に提起できるのではないかと思わせる深さで私に憲法問題を提起してくれたのです。長谷部恭男ともうひとり木村草太も重要で機会を改めて紹介しますが、とりあえず、井上達夫のイントロダクションとして紹介できたらと思い、このブログを立てました。 . . . 本文を読む
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井上達夫・東大教授(1)安保法案議論の不毛、その原因は?

2016-06-16 10:04:06 | ブックレビュー
これは毎日新聞のサイトからの転載です。井上達夫さんは東京大学の法哲学を専攻する教授です。いわゆるリベラルリズムの代表的な思想家です。近著の『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください--井上達夫の法哲学入門』はインタビュー形式の(井上教授の本は、ちょっとむずかしいんですがこの本は)たいへんわかりやすくよみやすいものになっており、現在ベストセラーとなっています。ぜひ、ご一読を。安保法制についての井上教授の主張は大変重要と考えます。【いのうえ・たつお 1954年、大阪市生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科教授(法哲学専攻)。「共生の作法−−会話としての正義」でサントリー学芸賞、「法という企て」で和辻哲郎文化賞を受賞。近著に「リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください」】 . . . 本文を読む
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田川建三――イエスとはだれか?

2016-06-12 19:35:41 | ブックレビュー
イエスに限らないが、「倫理」の教科書に出てくる人物たちは、ほぼ全員安楽な人生など送っていない。一生逃げ回っていたり、イエスのように処刑されたりと時の権力者から排除されたり、抑圧された人たちが多い。それは、時代にとってとてもヤバいことをいっていたからだ。それは、普通の人には口にすることさえできない、思いもつかない、それを言ったらヤバいという言葉だったのだ。しかし、それは、人が生きる上で、どうしても向かい合わなければいけないこと、人生の肝のような言説だったのだ。そういうことを私たちはイエスから取り出し、伝えることができているのだろうか。イエスはそういう意味で謎に満ちた存在であり、もっともスリリングな存在なはずだ。その緊張をまず私たちが感じ、そして、語ることができるのか、翻訳することができるのか。そこが問題なのだ。 . . . 本文を読む
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柄谷行人 Ⅰ 世界史の構造

2016-06-12 16:15:07 | ブックレビュー
現代社会を読み解く上でのカギを提起し続ける思想家柄谷行人。公民科目だけでなく歴史を読み解く上で極めて大きなヒントを提供する。 . . . 本文を読む
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この夏の読書 2 鈴木翔『教室内(スクール)カースト』

2015-08-06 23:36:36 | ブックレビュー
この本、鈴木翔著『教室内(スクール)カースト』(光文社新書)は、一度通読している。2012年12月に出版されているのだが、著者鈴木翔は当時、東京大学の大学院生、教育社会学専攻となっている。私がかねてから注目している本田由紀のゼミの所属のようである。本田が解説を書いている。 鈴木によればこのスクールカーストという用語は森口朗の『いじめの構造 (新潮新書)』のなかで展開されていた用語である。 カーストというのは、インドの階級制度の名前だが、いわば身分制度というのが彼らがこの言葉で言おうとしていることだ。学校には、明確な身分が存在している、それが彼らの主張だ。私も学校で教員をしていてその存在は間違いなく確認している。このカーストといじめを関連させることは容易に想像できる。 . . . 本文を読む
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安保法制の精神分析

2015-08-05 21:12:18 | ブックレビュー
安保法制がどうやら参議院も通過して成立するようだ。この間の流れをどのように理解するか、は立場によりさまざまであることはいうまでもない。私は精神分析を授業で取り扱う関係で、その立場からの分析に注目してきた。若手の論客として今注目される白井聡(上、写真)を取り上げる。私は今年に入りすぐ彼の『永続敗戦論――戦後日本の核心 (atプラス叢書04)』を通読した。なぜ、安倍晋三に代表される勢力がこの安保法制の制定に躍起になるのか。白井は言葉としては一言も精神分析などという表現は使っていないが、その精神分析を〈敗戦〉を「終戦」と呼び続ける心性に向けている。アメリカという国に対する負い目、コンプレックス。日本の保守とされる側、いや右、もっとはっきりと右翼とされる側がもつ、アメリカに対するコンプレックスを抑圧する一方で抑圧されたコンプレックスの補償を中国や韓国へと向けるという防衛機制だ。 . . . 本文を読む
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夏休みの研修 1 とにかく並べる

2013-07-24 10:57:56 | ブックレビュー
はっきりいうと、私の見立てでは、教員は研修する民度にない。本を読む、それも、系統的に、本格的に読むということができない。それは、そういう習慣がないからです。本を読む、という行為はそう簡単なことではありません。現在、高等学校でも管理職は研修を夏休みにとることをよく思っていません。「遊んでる」なんです。それは、私がみてきた30年の教員生活で、否定できない。その問題はまた別に論じます。しかしね、他にいつきちんとした勉強ができるのです。勉強をしないでどうして、良い授業ができるのです。私は、県民の皆さんにこのご理解をいただく努力をまだわれわれは十分にしていないと思っています。それと、なんといっても、それにみあう、授業に対する満足度を私たちが県民の皆さんにお尋ねしていません。ここでは、そうした問題があることをもちろん含みながら、もし、この夏研修を一生懸命したい、読書をしたい、と考えている人への、私のメッセージです。 . . . 本文を読む
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2013 この夏の読書 1 ユダヤ、キリスト教

2013-07-07 17:07:51 | ブックレビュー
◆夏休みはとりあえず、明日の授業の準備から解放される季節です。つまり、授業の準備という目の前の脅迫から一応解放されます。そして、この一ヶ月を除いたら、まとめて大きな本を読むことが学校という場所で仕事をしているとできません。きわめて重要な一ヶ月なのです。◆この夏の読書の中心はユダヤ・キリスト教です。あらゆる意味でヨーロッパの思想の源流の一つであるユダヤ・キリスト教ですが、私のなかでは、「いじめ」というテーマのなかでユダヤ・キリスト教を使いたいというテーマがあります。◆ユダヤ・キリスト教にはいくつもの不可解な論理の飛躍があります。大体、イエスが処刑されたことが「贖い」って意味が私には今ひとつわからないのです。 . . . 本文を読む
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ブックレビュー 児美川孝一著『若者はなぜ「就職」できなくなったのか?』

2012-08-22 22:56:22 | ブックレビュー
 著者、児美川孝一(上写真)は法政大学キャリアデザイン学部の教授です。この本の構成をかんたんに紹介しましょう。全部で4章からなる本です。最後の「ブックガイド」は、現在の「学校経由の就職」を考える上で基本となる文献をほぼ網羅しています。ぜひ、ご一読され、もしあなたが「学校経由の就職」の実態についてご存じなければ、この本の「ブックガイド」を是非ご活用いただければと思います。 さて、この本の . . . 本文を読む
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2012夏の読書 3 ヘーゲルに挑め!

2012-08-12 11:55:05 | ブックレビュー
おそらく書物でヘーゲルとラカンくらい難解な書物はないでしょうね。私は、これまでヘーゲルの『精神現象学』に三度挑んできました。二度の夏休みを費やし、けっきょく、途中で投げ出しました。何が書いてあるのか????わからないのです。三度目、二ヶ月かけてこの本の半分ほどまでを読破し、ようやく意味がわかりました。 みなさんも、よかったら挑戦してみたらいかがでしょうか。肉体と同じように精神も鍛えなければいけません。持久力、集中力ともに必要です。 . . . 本文を読む
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