かえるネット木津川南

大阪市南西部で活動する日本共産党の青年後援会のブログです。

日本経済の長期停滞・・・活路をどこに求めるか5

2011-01-04 22:15:40 | 論文紹介

3.長期経済停滞の基本構造(2)

・内需停滞の悪循環

だが、リストラは失業率の高止まり、雇用者報酬の減少などを通じて国内の消費をさらに停滞させる。そして国内消費の停滞は、逆に輸出圧力を強め、いっそうのリストラを引き出す。こうして、内需停滞の悪循環が形成されることになる。悪循環は、さらに内需に大きく依存する建設やサービス産業、さらに生産現場の海外移転が困難な石油化学などの装置産業や中小企業の経営を直撃する。こうして、内需停滞の悪循環の大きな連鎖が作り出されることになる。このような悪循環の形成は、輸出に偏った経済構造や輸出一辺倒の経済運営が限界にきていることを意味する。

だが、悪循環はこれにとどまらない。内需停滞の悪循環は、生産現場の海外移転(産業空洞化)を促し、それによって内需をさらに停滞させるというように別の悪循環を生み出している。つまり日本経済は、消費市場としても生産基地としても活力を失いつつあるということである。

生産現場の海外移転は、輸出産業が立地する地方の経済と財政を直撃する。さらに地方経済の衰退は、地方からの人口移動を引き起こし、地方経済をさらに衰退させるという悪循環までも生み出すことになる。そしてこのような悪循環に拍車をかけたのが、小泉内閣の構造改革であった。日本経済が停滞基調にある中での強引な企業淘汰や地方切り捨ての結果、日本経済全体はいっそう深刻な事態に陥り、その延長線上で医療、介護、雇用、年金などの国民生活の基盤が激しく動揺し続けることになったのである。また産業空洞化は、いわゆる経済のサービス化を助長し、それはまたパート労働の増大などを通じて内需停滞を加速化させる。

このような内需停滞の悪循環は次のような内容をともなっている。第一は、生産、投資、雇用、消費の絡み合いである再生産構造全体が沈み込んでいるということ、第二は、沈み込みが激しいために、輸出の増大が設備投資や雇用の増大につながりにくいといった再生産構造の破断・変容をともなっているということである。そして逆に、再生産構造の沈み込みや破断が悪循環を強める作用をしている。

停滞からの脱却が困難になっているのは、このためであるといってよい。そしてこのような悪循環が存在する限り、輸出によって一時的に内需が拡大しても、企業は積極的な投資や雇用に踏み切れず、景気拡大は一時的で弱々しいものに終わり、したがって<o:p></o:p>

また景気循環も弱々しいものとならざるを得ない。

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以上のように、日本経済の停滞の原因は供給力の絶対的過剰というよりは、内需の冷え込み、つまり需要サイドの沈み込みの悪循環にあるといってよい。つまり悪循環は、国内の消費力の低下、国民の生活基盤の劣化を起点にしたものであるといってまい。だとすれば、単純に供給力を削減しただけでは、日本経済の再生は期待できないということになる。むしろ供給力の削減は、雇用、所得の低下を通じて内需をいっそう停滞させかねない。またかりに輸出競争力が強化されたとしても、再生産構造が破断されている限り、日本経済の再生には結びつきにくい。となれば、どこまでも供給サイドに目を向け、ひたすら企業の競争力強化とそのための法人税率の引き下げを最優先課題にする政府に、日本経済再生を期待することはできないということになる。<o:p></o:p>

 ・政府の失政が停滞を加速化<o:p></o:p>

だが日本経済の停滞原因を、企業の容赦ないリストラだけに求めるわけにはいかない。今日の深刻な事態は、長期にわたって放漫で歪んだ財政支出を行ってきたばかりか、企業のリストラを支援し、さらには消費税率や医療・年金保険料の引き上げなどを通じて国民生活基盤を破壊し続ける一方で、担税能力のある大企業や富裕層に対する優遇措置をとり続け、日本の経済構造を大きく歪めてきた政府の失政にも大きな原因がある。 <o:p></o:p>

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破壊は、二〇〇〇年代に入ってからの小泉内閣の下での強引な企業淘汰策によって加速化した。政府みずからが国民生活のセーフティネットをことごとく動揺させてしまうようでは、内需の拡大などは望めない。したがって、日本経済が停滞の悪循環から抜け出すには、政府の失政を是正し、国民生活のセーフティネットを再生することが最優先課題となる。

 

だが、増税を起点に経済、財政を再生しようとする政府にそれを期待することはできない。いずれにせよ、経済構造の歪み、企業のリストラ、政府の失政が「弱い社会保障」を作り出し、それが「弱い経済」と「弱い財政」を作り出すという、悪循環を作り出しているといってよい。

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・経済政策効果の希薄化

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 失政に加えてさらに問題なのは、経済政策が効きにくくなっているということである。その理由として、以下のような要因を考えることができる。

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 第一に、巨額の累積債務を抱える中での政府の財政支出は、将来の国民負担の増大懸念を高め、消費の停滞要因となっていると考えられること。第二に、財政支出で穴埋めしきれないほどの巨額の需給ギャップが存在するということ。第三に、企業の海外進出が加速化しているために、企業に対する助成措置も効果が期待できないこと。政府は今年になって産業空洞化対策として国内工場の整備をする企業に補助金を出し始めたが、これによって空洞化の流れを止めることはできないであろう。

 

第四に、従来型の公共事業支出では、大手のいわゆるゼネコンを潤すだけで国民の消費を拡大する力にならないということ。第五に企業行動が世界市場の動向に左右されるグローバル化社会では、国内の雇用対策も効果を発揮しにくいということである。第六に、国民生活の基盤が崩れているために、財政支出をしても消費の拡大につながりにくいということである。第七に、長期の経済停滞下では、資金需要も弱く、金融政策も効きにくいことである。また日銀は、円高、デフレ対策としてI〇年一〇月五日、四年ぶりにゼロ金利政策に復帰した。だが米国経済の停滞懸念から、円は翌日からゼロ金利政策を無視するかのように高騰に転じた。こうなると、もはや日銀に打つ手はない。デフレ下にもかかわらず円高が進行し、しかもそれに歯止めをかけることもできない状態では、日本経済は漂流するほかはない。

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日本経済の漂流状態の底流には、二つの大きな悪循環が絡み合って存在している。一つは、すでに見た再生産構造の破断をともなう内需停滞の悪循環である。そしてもう一つは、この内需停滞の悪循環を土台にして生み出されている「弱い経済」、「弱い財政」、「弱い社会保障」の悪循環である。そしてこの二つの悪循環の根底には、国民の生活基盤の動揺とそれによる内需の深刻な停滞がある。言い換えれば、「弱い社会保障」を起点として悪循環が生み出されているということである。したがって、この悪循環から脱出して日本経済を再生するには、国民生活の基盤整備を最優先する必要があるということになる。<o:p></o:p>