「既得権」打破というが・・・・
中身は元自民議員と大型開発
都構想前面に
年の瀬から年明けにかけ、橋下知事率いる地域政党「大阪維新の会」の動きがあわただしさを増しています。
同会は今春のいっせい地方選で大阪市・府両議会の過半数議席獲得を目標に掲げ、「府議選の3人区には2人たてる。多分どちらかが落ちるが過半数をとるためには仕方がない」「中選挙区の市議選では同志間でも互いに競争してもらう」(松井一郎幹事長)となりふり構わぬ姿勢です。
橋下知事は、これまで府政を支えてきた民主、自民、公明の「オール与党」と、これに一貫して対決してきた日本共産党を「既存政党」の名でひとくくりにし、「既得権益に群がるグループ対大阪維新の会という対立構図がはっきりした。既得権益を壊さない限り大阪の未来はない」と批判。
高い支持率を背景に、大阪市と府を解体する「大阪都構想」と進めようとしています。
いずれ復党?
しかし、維新の会の松井幹事長、浅田均政調会長をはじめ所属の大阪市議13人中11人、府議29人中27人が元は自民党議員です。
在阪の全国紙記者は維新の会の実態を「選挙互助会」と指摘します。「信念をもって移った議員もいるかもしれないが、大部分は選挙を前に背に腹はかえられない人たち。大阪の自民党の足腰の弱さを象徴している。橋下知事はいなくなれば自民党に戻ってくるのでは」と予想しています。
橋下知事の高支持率の背景について同記者は、「毎朝必ず知事室の前でぶら下がりがあり、発言が記事になりやすいので楽できる。メディアが知事だよりの部分があった。反省点だ」と語りました。
大阪市立大学の宮本憲一名誉教授は、橋下知事や河村名古屋市長の動向に「議会や政党と対抗して自分のサークルをつくり、一元的な支配をねらう小さな独裁者が出現してくるというのは、戦後政治史のなかでも注目すべき危機だ」と警鐘を鳴らします。
「大阪市と府を壊して大阪都をつくるというが、住民の生活基盤として出来上がった自治体を行政目的だけで壊すことはできない。大阪都構想は単に一地域の問題ではなく、地方自治をどうするかという根幹にかかわる全国的な問題。住民が自らの問題として討議してほしい」と語ります。
財界が求める
「大阪都構想」で何が変わるか。
西淀川区で開かれた12月18日の演説会で、新人府議候補は大阪の高い失業率や生活保護率の問題をあげ「この人たちを守るために税金を使うべきだ。よわ人の声が届く政治を実現したい」と力を込めました。
ところが、マイクを継いだ橋下知事は「市民に身近なことは市長、区長の仕事。知事は大阪全体のことを考えて空港や道路、リニアモーターカーの駅をどこにするのかを考えるのが仕事だ」と表明。
具体的な府民施策は一切触れないまま、知事と大阪市長という広域行政の指揮官が2人いることが大阪衰退の原因だと強調し、30分以上超過した演説すべてを、「大阪都構想」に反対する「既存政党」や大阪市長の批判に費やしました。
橋下知事が大阪都を実現し1人の指揮官で進めるとしている中身は、高速道路淀川左岸線や大阪湾岸開発といった従来から関西財界が求めてきた大型開発ばかり。どれも横山ノック、大田房江両知事をはじめ歴代府政下で破たん済みの計画です。
橋下府政誕生から3年。道州制を見据えた「大阪都構想」のもと、なにがおきているのか追います。